ソードアート・オンライン 狂戦士の求める物

弓兵と暗殺者

同時に地を蹴る。

空中戦などしない。同じ土俵で、同じ地面で、ただひたすらに互いの感情をぶつけ合う。

とある暗殺者の名前をつけた遥の分身、『ハサン』は右手に持った小太刀を左上段に、シノンは右手に持ったそれと同じ長さを持つダガーを左下段に構え、それぞれ斜めに振り下ろし、振り上げる。

二つの刃が衝突する。

同時に弾かれる。

これで二人の筋力パラメータが全く同じである事を知る事になった。

弾かれた事で態勢を崩した二人は同時に立ち直り、ハサンが仕掛ける。シノンはカウンターを狙うかの様にダガーを逆手に持つ。

上から降り下ろす。シノンはそれを防ごうとダガーを動かす。そして接触する瞬間、いきなりその小太刀が引かれる。

（やられた！？）

そのまま弧を描く様に下段から切り上げられる。それをなんとか体を下げ、掠り、HPがほんの少し減る。

シノンは元の持ち方に直すと今度はこちらから仕掛けた。

高速で放たれる突きを、ギリギリでかわすハサン。腹の辺りに掠り、HPを減らす。

「「ッ！」」

一度距離を取った二人は即座に攻撃に、ほぼ同時に攻撃を仕掛けた。

俊敏さえも同じ、筋力も同じ二人は互いの剣を何度も交差させ、肩を斬り、足を斬り、頬を掠め、武器を何度もぶつけ合わせる。

「このッ！」

「！？」

いきなり顎に衝撃を受けるシノン。ハサンが顎を殴ったのだ。

「やったなッ！」

「！？」

シノンも負けじと倒れる反動でサマーソルトキック、『弦月』を放ち、ハサンの顎を蹴る。

態勢を立て直したシノンはまだ地面に仰向けになっているハサンに剣を突き立てようとする。だが、右手の剣をいきなり弾かれる。

「！？」

ハサンが蹴り飛ばしたのだ。

おそらく、シノンをわざと誘う為に仰向けになっていたのだ。

そして右手に持った小太刀を右上段に持ち、振り下ろす。

「ぐぅ！」

両手で小太刀を持った右手の手首を掴み、止める。

「この・・・ッ！」

「うう・・・シェイッ！」

「な！？」

ハサンが左脇腹の辺りで衝撃を感じる。

シノンの蹴りが炸裂していた。その反動で右に吹き飛んだハサン。

シノンは武器を確保するべく、距離を取り、後ろ右斜め辺りになる武器を視認する。

そしてそこに向かって走り出す。

それを阻止するべくハサンが追いかける。距離的には、シノンとハサンの距離は、シノンとダガーの距離よりも短い。

更に距離短縮でいくら離れていても追いつかれてしまう。

そして、シノンの背中に小太刀を突き立てようとした瞬間、いきなりシノンが振り向く。

「な！？」

そして右で正拳突きを放つ。

それは油断していたハサンの腹に諸に直撃する。

その衝撃で大きく下がるハサン。シノンはバックステップで短剣を拾い、もう一度走り出す。

「おおお！」

叫び、突進する。

ハサンも突進を開始する。

「あああ！」

そしてシノンは右手を左に持っていき、上段に構え、本来なら片手直剣専用のソードスキル、『ソニックリープ』の構えを取る。

ハサンも同じ構えを取る。あちらではその技を―――

雅流小太刀術『角猪(つのいのしし)』

互いの渾身の一撃が真正面から激突する。

「「ッッッ！？」」

腕が弾かれ、状態を大きく仰け反る。その衝撃で、互いの武器が手から離れ、飛んでいく。

武器が無くなり、互いに丸腰になる。

―――だからなんだ？

「詩乃ぉぉぉぉぉ！！」

「遥ぁぁぁぁぁ！！」

互いに絶叫。次の瞬間、互いの左頬に互いの右拳がねじ込まれる。

その衝撃で互いによろける。だが・・・

「「アアアアアアアアアアァァァァァアァアアアアァァァァアアアアッッッ！！！」

殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る殴る蹴る・・・・

額と額をぶつける。

「「ハア・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・」」

少し、息を整え、また始める。

終わる事の無い、殴り合い。技も糞も無い、防御を必要としない殴り合い。

足を払われ、地面に座り込んでしまうシノン。その上にハサンが覆いかぶさる様に馬乗りになる。

顔面目がけ拳を振り下ろす。その拳がシノンの顔に炸裂する。

だがシノンも黙ってやられる訳が無い。下から拳を振り上げ、お返しとばかりに顔面を殴る。

「このおぉぉぉぉぉおぉおぉぉぉお！！！」

「があああああぁぁあぁぁぁぁああ！！！」

そこからまた滅多打ちの殴り合い。

時折、上下が入れ替わりシノンが上、ハサンが下になる事もある。

そして、また上下が入れ替わり、ハサンが上になり、下になったシノンがハサンを押しどける。

「どきなさいよ！！」

「あ！？」

おろされたハサン。シノンはそのハサンを追撃する事はせず、四つん這いになって、まるで同格の敵が立ち上がるのを待つ猫の様に待つ。

ハサンも四つん這いになり、シノンを睨む。

まさに、猫の喧嘩。

糞もへったくれも、技も技術も、何もかもが力で決まるこの戦い。

詩乃(シノン)はソラを助ける為・・・

遥(ハサン)は逆らえない支配者の為・・・

突如起こった轟音と爆発の瞬間、二人は走る。走り出す。

遥、私は貴方の事は嫌いじゃなかった。寧ろ、好感だって持てた。

貴方なら、すぐに助けに行けた筈。そんなに、ソラの事が好きだったのなら、すぐに助けにいった筈だよ。なのに、なんで屈服してしまったの？

家の為？そうかもしれない。貴方は、自分の家の為に頑張れる。なら何故、戦おうとしなかった？あの支配者に立ち向かおうとしなかった？ソラなら直ぐに反抗する筈だ。私も、過去から一度逃げようとした。だけど、ソラのお陰でここまで強くなれた。貴方はソラから何を学んだの？何を教わったの？どうして彼の勇気を知ろうとしなかったの？あなたは、学校では、ずっと彼の傍にいたはずなのに。

貴方なら断れた筈だ。綾香の誘いを断れた筈だ。

右拳を振り上げる。

抗えた筈だ。

限界まで振り絞る。

貴方は、ソラを助けられたはずだ！

矢を放つかの如く、打ち出される。

もし、貴方にとって、彼女が魔王の様な存在で、絶対に逆らえないといのなら・・・

腕が交差する。

「まずはそのふざけた幻想を打ち砕くッッッッ！！！」

バキィッ！！！

「・・・・」

仰向けに倒れる女性が一人。

「・・・・」

右手に剣を持つ女性が一人。

「・・・そっか」

倒れている女性は、顔に左手をかざす。

「負けたんだ、私」

「そうだよ、遥」

立っている女性、シノンがハサンの横に立つ。

「・・・詩乃」

「何？」

「私は蒼穹が好き」

「・・・私も、ソラが好き」

「でも、もう届きそうにも無いよ」

「なんで？」

「だって、蒼穹と付き合ってるんでしょ？詩乃」

「・・・そうだよ」

否定はしない。だって、本当の事だから。

「そっかぁ、うらやましいなぁ・・・」

ハサンの頬に、涙が流れる。

「諦めなきゃって思ってた。だから、今やっと決心が着いたよ」

「・・・そう」

シノンは、しゃがみ、右手に持ったダガーをかざす。

「・・・約束して」

ハサンは手をどけ、シノンを見つめる。

「私の刀も持って行って。そして、必ず蒼穹を助けて」

彼女は鞘を差し出す。シノンはそれを無言で受け取り、左腰に装備する。

そして口を開く。

「ええ、必ず。現実(向こう)で、オフ会をするから、その時、貴方を招待するから」

「ええ、楽しみにしてる」

そして、ダガーが振り下ろされた。

「お」

戻ってみると、そこにはサラマンダーの姿は無く、キリトたちとケットシーとシルフの会議組がいた。

どうやら勝ったようだ。

「ボロボロだな」

「あんたもね」

互いに苦笑を漏らすシノンとキリト。

「待っててください」

リーファが詠唱をはじめ、シノンが負ったダメージが回復する。

「ありがと。それで、どうなったの？」

「なんとか勝ったぜ」

「すごかったっすよ。まさか二刀流だなんて思いもよらなかったな」

レンが感心する様に言う。

「二刀流が使えるのはキリトだけだからね・・・それはそうと、まだ決着はついていないみたいだけど？」

と、シノンはシルフの領主、サクヤに視線を向ける。

「ああ、これからアリシャの月光鏡で、奴に連絡を取る所だ」

「月光鏡？」

「わかりやすく言うと、通信魔法だよ〜」

ケットシーの領主、アリシャ・ルーが、気楽な口調で言う。

その説明で大体理解したシノン。

「それじゃあ始めてくれ」

「あいよ」

そしてアリシャが詠唱に入る。すると辺りが暗くなり、まるで夜の様な明るさになる。

そしてサクヤの前で光る縦長の円形の何か、否、鏡だった。

その鏡に映し出されたのはとある部屋。事務室の様な所で、そこにある大きな机に偉そうに座っている男が一人。

スイルベーンを出発する時、リーファとレンに暴言を吐いたシグルドだ。

「シグルド」

サクヤが彼の名を呼ぶ。

「！？ サクヤ！？何故・・・！？」

するとシグルドは、こちらの存在に気付いたらしく、鏡から視線を送ってくる。

「ああ、残念ながら、私はまだ生きている」

シグルドは驚愕した顔をしており、わなわなと指を動かしていたが、すぐに平静を取り戻したかの様に、表情をニヤつかせる。

「どうしたサクヤ？こんな時間に連絡をよこすなど？」

「いや、少しごたついてな。ああ、そうだ。ユージーン将軍がお前によろしくと言っていたぞ」

それを聞いたシグルドは、また表情を引き攣らせ、怒ったような表情をする。

「あの役立たず共が・・・・」

だが、直ぐにまた平静を取り戻すと、今度は醜悪な笑みを浮かべる。

「ならどうする？俺を執政部から追い出すか？だが、それじゃあプレイヤー達に反感を買うぞ」

「いや、シルフでいるのが耐えられないなら、その望みを叶えてやる事にした」

サクヤが右手を振ると、通常の物とは異なり、かつ複雑なメニューウィンドウが現れる。おそらく、領主専用のメニュー画面だろう。

そして、鏡の向こうのシグルドの前にも何かのウィンドウが現れる。

それを見たシグルドの顔に、驚愕と憤怒が入り混じった様な表情を浮かべる。

「本気か・・・俺を・・・追放するだと？」

「ああ、中立地帯をさまよえ、シグルド」

そして、サクヤの指が、とあるウィンドウに触れる。

その時、シグルドが何か言いかけたが、それが届く事は無く、次の瞬間、鏡、いや、部屋の中から消えた。おそらく、どこか中立の街に転送されたのだろう。

哀れな事だ。

「サクヤ・・・」

「この行為が正しいのかは次の領主投票で、決まるだろう。ともかく、礼を言うよ、リーファ、レン。執政部への参加を頑なに拒み続けた君や、サラマンダーでもあるお前が救援に来てくれたのはとても嬉しい。それにアリシャ、シルフの内紛のせいで危険に晒してしまって済まなかったな」

「生きてれば結果おーらいだヨ！」

と、ケットシー領主のお気楽なセリフに首をぶんぶんと横に振るリーファ。

「いえ、お礼を言うならお兄ちゃんに行って下さい」

「ほう、リーファの兄か・・・」

そこで二人の領主が、あらたな疑問符を頭の上に浮かべ、キリトの顔をまじまじと見る。

「ねえ、君。スプリガンとウンディーネの大使って本当なの？」

「ふ・・・」

そこでキリトはおおいな笑みを浮かべるとまたしてもとんでもない事を言い放つ。

「もちろん大嘘だ。ハッタリ、ブラフ、ネゴシエーション！」

「やっぱり・・・」

シノンは呆れながらも笑いながら額に手を当てる。

それに絶句する領主たちのみならずその会議組全員。

「無茶な男だな、まさかあんな土壇場でそんな大法螺を吹くとは・・・」

「手札がショボい時はとりあえず掛け金をレイズする主義なんだ」

「悪びれもせずにぬけぬけと・・・」

更に呆れるシノン。

そこへアリシャがいきなりニヤリと笑うと、一気にキリトの顔を至近距離から覗き込む

「おー嘘吐き君にしては君、結構強いネ。知ってる？さっきのユージーン将軍はこのALO最強と言われてるんだヨ。それに真正面から勝っちゃうなんて、スプリガンの秘密兵器だったりするのかな？」

「まさか。しがない流しの用心棒だよ」

「ぷっ、にゃははははは！」

おおいに高笑いするアリシャ。そしていきなりキリトの腕にくっつき、こう言う。

「ねえ、フリーなら君、ケットシー領で傭兵やらない？おやつ三食付きでどうかな？」

そこでリーファの口がピキッと引きつる。

「いやま」

「おいおいルー、抜けがけは良くないな」

シノンが割り込もうとした瞬間、キリトの反対側からサクヤがくっつく。

「彼はもともとシルフの救援に来たんだ。ならば交渉優先権はこちらにあるはずだろう？どうだ？シルフ領で酒でも・・・」

サクヤがその豊富な胸をキリトの腕に押し当てる。

「だから」

「あー、サクヤちゃんズルーイ！色仕掛けはんたーい！」

「お前こそ、密着しすぎだ」

そこでシノンの歯止めがヤバい位置に来る。

「い・い・か・げ・ん・に」

「ヒィィッ！！」

「ん？」

「む？」

キリトがシノンを見て震え上がる。やっとの事でサクヤとアリシャがシノンの事に気付くと、その表情を引き攣らせ、気付いた時にはキリトが吹っ飛んでいた。

「しろぉぉぉぉぉ！！」

「そげぶぅ！？」

渾身のドロップキックがクリーンヒットォッ！キリトが地面を転がりまくる。

「な、何故俺を・・・」

「あら、ごめんあそばせ」

ガクッと地面に倒れ伏すキリトとそれをどこぞのお嬢様の様に笑いながら見下すシノン。

やがて復活したキリトは、二人の誘いを断る。

「お言葉はありがたいんですが・・・俺たちは、リーファやレンに世界樹まで案内させて貰うと約束しているんです」

「そうか、それは残念だ」

残念そうな顔をする二人。そこでサクヤはリーファに向き直る。

「アルンに行くのか？物見遊山か？それとも・・・」

「領地を出る。―――つもりだったけどね。でも、いつになるか分からないけど、きっとスイルベーンに帰るわ」

「そうか。ほっとしたよ。必ず必ず戻ってきてくれよ、彼らと一緒に」

「途中でウチにも寄ってね。大歓迎するヨー」

そこで二人は表情を改めると、二人そろってお辞儀をする。

「今回、助けに来てくれてありがとう。ここで討たれていたら、サラマンダーとの格差も確実な物になっていただろう。何か礼をしたいのだが・・・」

「いや、いいよ。妹の領の為だ。当然の事をしたまでだ」

「お兄ちゃん・・・」

「ああ、そういえば・・・」

そこでシノンが何かを思い出したかのように、サクヤに問いかける。

「この調印式の究極の目的って、他種族合同でグランドクエストに挑戦するって事でしょう？」

「ああ、鋭いな。確かにそうだ。グランドクエストで同時にアルフになれるならそれで良し、片方だけだったらもう一度やる、ていうのがこの調印式の骨子なんだがな」

「だったら・・・むぐ！？」

「だったら、これ」

リーファが何かを言いかけた所を遮り、シノンはウィンドウからある革袋を取り出す。

それを受け取ったアリシャは、シノンが軽々持っていたはずの革袋いきなり落としそうになるも、中身を覗いた瞬間、その顔を驚愕の色に染める。

「さ、サクヤちゃん、これ・・・」

「？・・・こ、これは！？十万ユルドミスリル貨・・・これ全部・・・！？」

流石にサクヤも驚いたらしく、その表情を引き攣らせる。

「良いのか？」

「まあ半分だしね」

「じゃあ俺も」

更にキリトからもシノンの物より一回り大きい革袋が出てくる。

もう中身は解っている。

「こんなに・・・・これなら目標金額に追いつけるどころかお釣りが帰ってくるほどだぞ！？」

「いいよ。俺にはもう必要ない」

「それといっちゃなんなんだけどさ・・・」

そこでシノンが満面の笑みで二人を見る。

「それで装備が準備できたな連絡して。私たちは、世界樹に行きたいから」

その後、事情をあらかた、そして大まかに説明し、それぞれの領主は、行ってしまった。

「ああ、終わった」

いきなり疲れが押し寄せてきたのか、大の字になって地面に倒れるシノン。

「大丈夫か？」

「結構激しかったから・・・・」

「そういえば、その腰についてるカタナは？」

キリトは、シノンの左腰にある小太刀、『瀧落(たつおとし)』に目を向ける。

「ああ、これ」

左手で鞘から抜き、顔の前まで持っていく。

刀身は、よく見ると紫色に光っており、それが妖刀の様な怪しい輝きを放っている。

「一緒に連れて行ってくれってさ」

「そうか・・・」

「む～」

そこでユイが不機嫌な声を漏らす。

「ユイ？」

「浮気しちゃだめって言ったじゃないですか！」

「うぐ！？」

突然の娘の攻撃に心を抉られるキリト。

「し、仕方ないだろ！男なんだから！」

「じゃあお兄ちゃんが浮気してたってアスナさんに言っちゃおうかなぁ？」

「り、リーファ！？」

さらにリーファも加勢してきて、徹底的にいじくられるキリト。

「ふふ・・・」

その光景を見て、微笑むシノン。

「どうしたんすか？」

「ああ、レン」

そこへレンが話しかける。

「いや、いつかソラやアスナが帰ってきたら、もっと賑やかになるんじゃないか、て思って」

「そうですね・・・なら、速くいきましょう。貴方たちの大切な人を助けるために」

「ええ」

そして、シノンは羽を広げ、飛びあがる。

「ほら！行くよ！」

「あ！？逃げるなぁ！」

「勘弁してくれぇ～！」

その後を半泣き状態のキリトが飛びあがり、そのキリトをリーファが追いかけるように飛び上がる。

「行こう！ソラとアスナを助けに！」

『おー！』

「ソラ君・・・・」

鳥籠の中で、ベッドに寝転がるアスナ。

そこへ、がしゃん、がしゃんと、金属と金属がこすれる様な音が、規則的に聞こえた。

「！？　ソラ君！」

アスナは入り口方を見る。

そこには鎧に身を包んだソラがいた。

「ソラくん！ねえお願い！ここから出して！」

アスナは鉄格子を揺らす勢いで掴み、ソラに向かって叫ぶ。

だがソラは口を開く事はせず、指をある場所に指す。

「え？」

その先には鏡。それにはアスナの姿と、ソラの姿。

そして、ソラの右手が、中にある電子ロックの方へ伸びる。

そして、番号を押し始める。

「！」

アスナは、ソラの意図を読み取り、鏡を凝視する。

そして、鉄格子が消える。

「ソラ君・・・」

ソラはその場に立ち尽くし、やがてまた鉄格子が閉まる。

そして、立ち去っていく・・・・

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次回

アルンに辿り着いた五人。
だがそこで定期メンテナンスのアナウンスが流れ、ログアウトを余儀なくされてしまう。
そして翌日、約束通り、詩乃と恋次はソラの病室に来た。
そこで、恋次は何を思うのか・・・？

「あら？なんでここにいるのかしら？」

そして、今一番会いたくない人物、地条　綾香と遭遇してしまう。

「無駄よ。貴方にソラを倒せないわ」

「それが・・・人のする事ですか！」

そして、次に来た場所は・・・

「俺の、兄の墓です」

次回『狂人と恋人と弟』


ここで後書きターイム！
どうもこんにちは幻在です。
この度この『ソードアート・オンライン　狂戦士が求める物』をここまで読んでありがとうございます。
ここで、現状説明ですが、

ソラ/地条　蒼穹
未だに目覚めていない。
記憶喪失

シノン/朝田　詩乃とキリト/桐ヶ谷　和人
ALOにログイン。
現在、刺客である敵の内、六人撃破。
シノンは新たに『瀧落』を手に入れる。
キリトはリーファと和解。

レン/氷鉋　恋次
直葉と一方的に絶交中。
シノンとキリトに自分のリアルの一部を話す。
リーファが直葉だと気付いていない。

リーファ/桐ヶ谷　直葉
恋次と一方的に絶交中（している方）。
レンが恋次だと気付いていな。
絶交を実は後悔している。

アスナ/結城　明日奈
ALOの世界樹に隔離されている。
ソラから檻のパスワードを教えられる。
脱出計画を練っている。

という感じです。
さて、ここで綾香についてですが、彼女は、実は軍事ネットにも割り込めるほどのハッカーであり、捏造するのが物凄く上手いです。
遥の家がつぶれかけたのもこれが原因。
ヤンデレのレベルは、ソラが別の女子と仲良くしているだけで社会的に潰しにかかる程。最悪の場合、存在自体を消される可能性もあるのだ。
そこで疑問なのが何故詩乃はやられなかったのか。
理由はソラが母親がしている事を知っているからで、詩乃が社会的に潰されると必然的にソラの綾香に対するヘイト値が決定的なものになるので、手が出せなかったからです。
だが、今ではもうソラは自分の手の中にあると思っております。
この先何が起きるかは、この作品を読んでくださっている読者の皆様の想像次第です。
では次回もお楽しみにして下さい！