ソードアート・オンライン 狂戦士の求める物   作:幻在

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誰もが知っているあのシーンです!

では、どうぞ!


君を守り続ける、最後の一瞬まで

ギルド本部。

「あんたが俺の上司かよ!?」

「いやー、奇遇だね」

ソラはライコウの元と一緒に廊下を歩いていた。

キリトの面倒はアスナが見ているのだが、ソラは何故か別の人物に指名されたので来てみた所、血盟騎士団№3のライコウだったという訳である。(実力者ランキング)

因みにアスナは四番目である。

当然一番はヒースクリフだ。

「っといっても、氏名したのは俺じゃなくてハクヤなんだけどね」

「ハクヤ?・・・ってあの」

「そう、内の実力者ランキング二位にして、『戦乙女(ワルキューレ)』、ハクヤだ」

それなら知っている。

何せ知り合いなのだ。ソラとハクヤという人物は。

しばらく廊下を歩いている内にとある大きなドアの前に立つ。

そして、ライコウがドアをノックする。

「ライコウです」

「入れ」

中から美しい声が聞こえた。

中に入ると、そこには、鎧は着けていないが、紅白の服装と純白の長い髪の、とても美しい女性がいた。

「久しぶりだな、ハクヤ」

「そうね、ソラ」

「おや?知り合いだったんで?」

ライコウが割って入る。

「ええ。このギルドに入る前に、ね」

「おお、なら丁度良いじゃねぇか」

ライコウがケケケと笑う。

「それで、あんたが俺の上司か?」

「ええ、指名したのは私よ。しばらく血盟騎士団に入るみたいね」

「休みは貰いますよ」

「ええ、愛する妻が待っているものね」

「く~、羨ましいぜ」

ライコウが技とらしく悔しがる。

「貴方は下がっていいわ。今日はもう休みなさい」

「お、良いんで?そんじゃ、また明日!」

と、部屋を出ていくライコウ。

しばらく間をおいて、ソラが切り出す。

「それで、なんであんたがあいつの上司なんだ?」

「そうね。何から話しましょうか・・・じゃあ、これから」

そしてハクヤはこう語り出した。

「まず、私が何故、ライコウの上司なのかと言うと、団長から、『ユニークスキルの部隊の上官になってくれ』って言われたわ」

「お前・・・ユニークスキル持ってないだろ?」

「いえ、一ヶ月前に出現したわ」

「なに!?」

いきなり予想もしなかった言葉が出てきた。

「ど、どうゆう事だよハクヤ!?」

「まあ落ち着きなさい。私が習得したスキルは、貴方が力、団長が守り、えっと・・・キリト?君は手数、ライコウはスピード、シノンは距離、といった所でしょ?私の場合は『体術の進化版』っといった所でしょう」

「進化版?それってどういう・・・」

「いわば、武器を持っていなくても、フロアボスを相手取る事が出来るスキルなのよ」

「なぬ!?」

それはつまり、たとえ武器を紛失しても、そのスキルで十分戦えるスキルって事だ。

「口外して無いって事は、バレてないのか?」

「団長とライコウ以外にはね。私の場合は、体術を主として戦ってきたから解るけど、やっぱり、他のプレイヤーに言うのは、抵抗があるのよね・・・」

「確かに、そこまで体術スキルを酷使しているプレイヤーは他にいないもんな・・・」

ハクヤは、体術を主体に戦うプレイヤー。身軽な動きに軽業スキルで機動性に関しては誰も追いつけない。

「『戦闘術』、それが私に与えられたユニークスキルよ」

「なるほどな、つまりあんたのスキルは『機動性』を重視したスキルって事か・・・」

「本来は護身用スキルの筈なのにね、笑っちゃうわ」

ここで本題に戻る。

「それで、ユニークスキルの舞台って言うけど、キリトはどうしたんだ?」

「アスナに『私がキリト君の面倒を見るの!』って言われて追い返されちゃったわ」

「なるほど」

確かに、アスナはキリトに恋しているから、独占したい気持ちは解る。実際にソラだってシノンを独占している訳だし。

「わかった。俺がこの部隊に入ればいいんだな?」

「その通り、話が早くて助かるわ」

「それで、何をすればいいんだ?」

そこで説明を受けた所。

 

ユニークスキルのみの特殊部隊『血盟精鋭隊』の活動は、主に攻略で殿を務める事だ。

他にも、迷宮区のマッピングをやらせたり、危険なクエストに向かってクリアするなどの事もする。

ただし、この部隊は独自の機動性を持っているのでその全てが自由行動。

ただし、上官の指示には従う事。

更に、ギルドに入っていないユニークスキル使いの場合は、ボス攻略の際、このパーティに入って貰う事。

 

「・・・以上だ」

「つまり強制的にシノンやキリトをこの部隊に入れるって事っすか?」

「その通りだ」

「まあ、大丈夫だろ」

しばらくして、ソラは部屋を出て、しばらく本部の中を見て回った。

中は中世の城のような作りになっており、広いので油断すると迷子になってしまいそうだ。

やっとの事でアスナの部屋を見つける。

「アスナ、入るぞ」

「あ、ソラ君。入って」

ドアを開け、中に入ると、そこにはアスナしかいなかった。

「あれ?キリトは?」

するとアスナはぷく~っと頬を膨らませ、いじけるようにそっぽを向く。

「ゴドフリーに連れていかれちゃったのよ」

「ゴドフリー?」

「内の幹部よ。それなりに実力はあるけど、キリト君の敵じゃないわ」

「ははは、本当に好きなんだな」

途端にアスナの顔が真っ赤に染まる。

「だだだ誰がキリト君の事を!?」

「あっれ~、今までの態度見てると、そうだと思うんですが?」

「ううううるさい!う~」

ソファに顔をうずめるアスナ。

「どんなに否定しても、マップでキリトをモニタリングしてるだろ?バレバレだぜ」

「!? だ、黙ってて!副団長として命令します!!」

「はいはい、副団長様」

頭が湯気が出そうな程に顔を真っ赤に染めたアスナが副団長の権限でソラを黙らせる。

ソラも一応、血盟騎士団の団員なので、従うしかない。

だがそれでもケラケラ笑うソラ。

しばらくすると、不意にアスナの顔が険しくなる。

「どうした?」

「ゴドフリーの反応が消えた」

「!?」

それが指すは『死』。つまり・・・・

「何かあったのか」

 

ビュンッ!!

 

「行動早!?そして走るの速!?」

物凄い勢いで走るアスナ。

仕方なくソラも狂戦士の鎧を装備し、狂化で向上した敏捷でアスナをなんとか追いかける。

ゴドフリーの反応が消えたという事は、死んだという事。つまり、キリトの身に何かが起きたのだ。急がないと、キリトも危ない。

全力で走る事五分。

身体のあちこちが(本来、このゲームの中なら痛みは感じないのだが)軋み、さらに狂戦士の鎧の効果で体中が酷い筋肉痛にでもなったかのように痛い。

そして、キリトを見つけた。

アスナは、キリトを襲っていた相手に容赦なく細剣(レイピア)を抜剣し、ソードスキルを叩き込む。

キリトは、何故か腰掛けていたであろう岩の上に倒れている。

『麻痺』だ。

「ま、間に合った、間に合ったよ、神様」

「か、体中痛ぇ・・・」

なんとか回復結晶を取り出したソラがキリトに向かって「ヒール」と唱える。

すると結晶が砕け散り、代わりにキリトのHPが回復する。

解毒結晶は持ち合わせていないので、麻痺を回復する事は出来ない。

そこへ、先ほど吹っ飛ばした重犯罪(レッド)プレイヤーが起き上がる。

「お前・・・クラディール!」

そう、クラディールなのだ。

アスナはキッとクラディールを睨み付けると、立ち上がり、細剣を手に歩き出す。

「あ、アスナ様・・・何故ここに?こ、これは、不幸な事故でして・・・」

いくら弁解しようとしてももう遅い。アスナが恋するキリトをゲームオーバー寸前まで卑怯な手で追い詰めた上に見られたので手遅れだ。

アスナが華麗な剣技でクラディールを攻撃する。

「ぐあ!?こ、この(アマ)ぁぁぁぁあああ!!」

クラディールが剣を振り上げる。だが、アスナは容赦なく剣を弾くと、そのままオレンジまで追い詰め、とうとうレッドまで削った。

「ひ、ひぃぃぃ!!わ、悪かった!も、もうあんた達に近付かねぇ!もうギルドも抜ける!」

アスナは、そんな言葉を無視して、最後の一撃を与えようとする。

「い、嫌だァァァァ!!()()()()()()ぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「ッ!?」

その声を聞いて、アスナの攻撃の手が止まる。当然だ。命乞いする相手を一方的に痛めつけるなど、アスナに出来る訳がない。

その躊躇いが致命的だった。

クラディールが剣を振り上げ、アスナの剣を弾く。

「甘えんだよぉ!副団長様ァァァ!!」

「ひ!」

アスナが目を見開く。

「アスナ・・・!?」

ソラがアスナの名を呼ぼうとした瞬間、横を白い影が通り過ぎていく。

それはアスナの前に立ち、クラディールの凶刃を左手首で受け止める。するとその手は切り落とされ、部位欠損を起こす。

キリトだ。

「うおぉぉぉぉおッ!!」

右手がオレンジ色に輝き出す。

パターンが全く同じだ。あの時と。

 

体術スキル《エンブレイサー》

 

その閃きがクラディールの鎧の隙間に叩き込まれ、クラディールの残りHPを全て削り切る。

「この、人殺し野郎が」

その言葉を最後に、クラディールはこの世界から消滅した。

キリトが地面に膝をつく。

アスナはそっとキリトの後ろに歩みより、キリトの切断されていない右手を掴もうとしたが、やめた。

代わりに、言葉が漏れた。謝罪だ。

「ごめんね・・・わたしの・・・わたしのせいだね」

ソラは静かに見守る。

アスナの顔は涙で濡れていた。

「アスナ・・・」

「ごめんね」

キリトが振り向く。

「も、もう・・・私・・・キリト君とは・・あ、会わな・・・」

その言葉を遮るように、キリトが強引にアスナの唇を塞ぐ。

口で。

「・・・・oh」

ついアメリカンで声が漏れてしまった。

しばらくして、キリトがアスナから唇を離す。そして抱きしめる。

「この命は君の物だ。アスナ。だから君の為に使う。最後の一瞬まで一緒にいよう」

キリトは、告白をする。

「私も守り続ける。一生守り続けるから、だから・・・・」

アスナは、涙を流しながら、キリトの告白に応えようとする。

「君は何が何でも帰す、あの世界に」

その先を、紡ぎ、キリトは・・・

「アスナ、今夜は一緒にいたい」

それを聞いた瞬間、ソラは急いでその場から退散した。流石にこの雰囲気を壊すのはまずいだろう。

今日は帰ると上官のハクヤにメッセージを送り、二十四層の家に帰った。

「ただいま」

「あ、お帰りさない」

出迎えてくれるのはシノンだ。

「腹減ってないか?」

「大丈夫よ。それに、仕事帰りの旦那様に無理なんてさせないわ」

「と、言っているがよぉ」

 

きゅるるる・・・・

 

「お腹は正直の様だぜ」

「~~~///ば、バカ」

そんなこんなで結局は飯を食べ、寝室で一個しかないベッドに腰を掛け今日の事を話した。

「へぇ、ユニークスキル使いだけの特殊部隊ねぇ」

「俺はそこに配属された。なにせ即戦力だからな」

「それと、キリトは・・・」

シノンは気まずそうに聞いてくる。

「大丈夫さ」

ソラは自身を持って言う。

「アスナがいる。もうあいつはソロじゃいられねぇよ」

「なら、良かった」

シノンは安心した様に、ソラに寄り添う。

「たぶん、今日、やるぜあいつら」

「ソラの話しを聞く限り、するでしょうね」

そういい、互いに笑いあう二人。

 

明日、二人の元に、例の二人の結婚の報告が来た。




次回

キリトとアスナは、しばらくの休暇を貰ってから、一週間がたった。
血盟騎士団で、マッピングを担当しているソラは戻ったら、ハクヤから、命令が下された。

「第一層に行き、黒鉄宮の地下にあるダンジョンにいきなさい」
「地下ダンジョン?」

シノンと共に、一層に行くと、そこにはキリトとアスナ、そして、彼らをパパ、ママと呼ぶ謎の少女、ユイと出会う。
その少女が持つ秘密とは何か?

答えは、未知のダンジョンの中に・・・

「こいつ・・・九十層クラスだ!」
「いつもいつもお前の思い通りになると思うなよ!」
「ママ、笑って」
「ユイちゃん!!」

次回『ユイの涙、それぞれの決意』

「次の層、必ずクリアしてやる」

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