prologue 狂戦士と呼ばれた男
ソードアート・オンライン。
それは、世界初のフルダイブ型
そのゲームはたちまち日本中のゲーマーたちを熱狂させ、一万本あったカセットは飛ぶように売れた。
だが、そんな歓喜は束の間、このゲームを作った天才プログラマー、茅場彰彦から告げられた一言により、プレイヤーは恐怖のどん底に突き落とされる。
この世界でのゲームオーバーは、現実世界の死に直結している。
それは真実だった。
ゲーム中にHPゲージが0となったプレイヤーは、現実世界で装着したヘッドギアからの信号により脳が破壊され、二度と目覚めることはなかった。
「ソードアート・オンライン」はデスゲームと化した。
それから二年。
ある一人の男の噂が、浮遊城「アインクラッド」に流れていた。
人々は口々に言った『
剣とは思えない程大きな鉄塊の様な大剣を持ち、左腕には黒い手甲を着けているが右にはない。
ボロボロのマントを羽織り、体格はその大剣にはわずかに見合わず、十四、五歳を思わせる。
名前は不明、素顔も素性も不明と、謎の多いプレイヤーである。
その強さという点では称賛される一方、
さらにはボス戦の為に召集されたレイド(複数のパーティ)には参加せず、戦闘が始まった直後に勝手にフィールドに割り込み、ボスが倒れるといつの間にか姿を消している。
どうやらボスのダメージを大きく削った後に、その場から離れているようなのだ。
その戦い方は、自分の安全を省みず、ただ敵を屠ろうとする、まさに『狂戦士』の名にふさわしいデタラメな強さを持っている。
自身の事より他人を優先。
いつHPが無くなってもおかしくないほどダメージを受け、回復もせず、そして最後には消える。
そんな戦い方に血盟騎士団副団長及び『攻略の鬼』のアスナはいささか気に入らなかった。
「と、私は思うんだよね」
「俺に言われても困るぞ」
アスナの愚痴にキリトは答えた。キリトは同じ攻略組のソロプレイヤーである。
「だけど、確かにあの戦い方は危険だ」
「あの人はラフィンコフィン壊滅の手助けをしてくれたけど、その時どれくらいの死亡者が出たか、あの人は解ってるのかしら?」
ラフィンコフィンとは、殺人などの犯罪を楽しむこの
アスナは双方ともに死者を出したくなかったのだが、その男は容赦なく剣を振り下ろし、その命を奪っていった。
「あの時あいつ、全身真っ黒な鎧を着てたよな」
男の装着していた鎧には、隙間から赤いラインが覗いていた。
アスナは続けた。
「ラフィンコフィンの死亡者数は、あのギルドの半数に上るのよ。」
キリトとしては、あまり思い出したくない事なのだが。
「今度あったら文句言ってやる!!」
「はいはい、その意気ですよー」
と、気の抜けた言葉を発するキリト。
「キリト君!しっかりしなさい!」
「お前は俺の母親か?」
そうして昔からの馴染みのような会話の後、二人は去った。
そこに一人の男が現れる。
「・・・・随分と、嫌われているようだな」
自分の命を省みない、それは誤解だ。
死にたくない、生きて帰る。それが彼の本心だった。
だけど、それを理由に誰かを見捨てるなんて事は出来ない。
だから、攻略組のレイドパーティの後をつけ、勝手に戦いに参加する。
全ては、皆と帰る為に、孤独な彼女の元へ帰る為に。
「俺は死ぬ訳にはいかない。この城から皆が出られるなら、俺はなんだってする」
それを妨げるプレイヤーは殺し、攻略組に資金が渡るように暗躍する。
それが彼のしている事だ。
これが、プレイヤー《ソラ》の、
ソラ
ゲーム開始時十四歳
現在十六歳
武器、両手大剣『竜殺しの剣』
スキル
ユニークスキル『???』
索敵1000
料理576
両手剣1000
防具
不明
次回を楽しみにしてください。