シンデレラのクロスなのに『シンデレラ』のアイドル達は一切出ません。あしからず
もしかしたら続くかも?
Over Turn
セイバーに敗れ現界も保てなくなった肉体から意識を手放した英雄王の聖杯への帰り道のことだ。
負けた、そんなたった一つの出来事が彼の心を満たした。自然と零れる笑みだったが不意に残してきた彼女達を思い出す。
「はっ、我も丸くなったものよな」
言い訳のつもりか、誰も居ない世界に吐き捨てた言葉。
「む、分かれ道…だと?」
どちらかは聖杯へと戻る正しい道、ならばもう片方は何処へ繋がるか…
暫し考え込んだ英雄王は友に任せる事にした。
「天の鎖よ、どちらに行けば愉しいと思う」
『 』
「そうか、なればそうしよう」
王は一息笑うと右の道へと歩みを進めた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…これは」
王が目にした世界は彼女達アイドルと共に生活した世界と寸分違わぬ時代である事は目に見えて分かった。違う所を上げるとすれば、所々のビルが倒壊し人々が悲鳴を上げ逃げ惑っているところか。
全く同じ世界で何かあったか。 それともただの似た世界か。
「何用だ? 我は今、考え事をしてるのだ。邪魔だてをするならば死を見るぞ娘」
異様な闘気を纏った娘、美嘉達と同じぐらいだろうか。 英雄王を目の前にしても殺気を収めず1歩、また1歩と近付いてくる。
刹那、少女の姿はブレ、残像を残しながらギルガメッシュの懐へと潜り込み、その手に握った一振りの剣を振るった。
「戯け、欠伸が出るわ」
振り切った。そう確信した一線は王の2本の指にしっかりと摘まれ微動だにしない。 つまらなさそうに欠伸をしたギルガメッシュはお返しとばかりに一撃。蹴りを叩き込み少女の身体は吹き飛んでビルを瓦解させる。
「ちっ…生きているな」
「私に……切れぬものは…ない…」
「はっ、我を切れなかったようだが?」
瓦礫の雨の中、少女は立ち上がり降り注ぐ瓦礫を次々に木っ端微塵に斬り刻んでいく。その剣速は徐々に速まり、最後の一刀に至っては神速の域まで達している。
「………切る」
「少しは…愉しませろ雑種ゥ!!!」
距離を感じさせぬ殺気と剣の一撃は10数メートル離れているギルガメッシュに飛ぶ斬撃となり襲い掛かるのだが全てを最小限の動きで交わしていく。 一つの斬撃がギルガメッシュの足元へと落ち砂煙を巻き上げた。
「目眩しのつもりか」
砂煙の中から尚も飛んでくる斬撃を避けるもザワりと、背筋に何か感じたことの無い感覚が走る…
ギィィィン!!!!!!!!
高音を響かせた正体は黄金の剣と黒の刀。
背後からの奇襲。 少女の身体は人の身を超える稼働をし至る所から血を吹き出しながらギルガメッシュに襲い掛かる。
「我に剣を抜かせるなど…フハッ…フハハハハハハハハハ!!!!! 存外やるではないか!! 良い良いぞっ、名を名乗る事を許そうではないかっ」
「…我が名はダークセーラー…我がデストル刀に…切れぬものは無し…!!」
豪快に笑い飛ばしたギルガメッシュは鍔迫り合いの状態から少女の周囲に黄金の波紋を生み出し容赦なく破壊を打ち込んでいく。
対するダークセーラーは忌々しい青い雑種犬に匹敵する驚異的な速度で後退し王の財宝からの連撃を躱し弾き凌いでいく。
その様は人間ではなく歴戦の英霊に近しく並大抵の英霊すら歯牙にも掛けぬ程だ。
「よし、興が乗った!! 貴様は我が殺してやろうではないかっ」
満面の笑みを見せ王の財宝から黄金の双剣を引き抜こうと手を伸ばした時、王の腕は薔薇のムチで締めあげられた。
「そこまでですよぉ…デストルドー。 バインドウィップからは逃げられません…っ」
「紗代子ちゃん!!」
「ジェットウルフも到着だぞっ! ってどうなんてるんだー?」
色とりどりかしましい娘共が現れあれよあれよ状況が変わっていく。ダークセーラー自身も好機と姿を眩ませた。撤退したのだろう。
それにしても…だ。我を見下しあまつさえムチなんぞで縛り上げるとは……………………………………………
「よい度胸を……しているなッ!!!」
「なっ…!?」
ムチが絡みついた腕を強引に引きバインドウィップと名乗った彼女を宙から引き摺り落とすとそのまま地面に叩きつける。
「バインドウィップっ!! よくもっ『超はやいパンチ』ッッッ」
宙を蹴り駆け寄ってきた幼子の拳は確かに早い…が。
「ちっ…」
以前の世界で触れ合った…橘ありすを思い出し殴り飛ばそうと握った拳を解き、ジェットウルフの額にキツいデコピンをかまして吹き飛ばした。
「2人ともッ!? このマイティセーラーが相手よ…デストルドー!!!」
「我をあの娘の仲間とでも思っているのか? やれやれ…仕方あるまい………こい、雑種共!! 格の違いを見せてやろう!!!」
崩壊した街の中央に君臨するは黄金の王。
たった1人の戦争が今始まる