夢見る乙女達と英雄王は舞踏会へ   作:969

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まさかこんな事になるとは…



英雄王ギルガメッシュ

ちひろside

 

大歓声が聞こえるステージ裏

ひと仕事終えたギルガメッシュくんが戻ってきた

 

「開演の挨拶お疲れ様です、ギルガメッシュくん」

 

「うむ、これで我の最後の仕事は無事に終わりだ」

 

「…最後…?」

 

「美城に今西、武内を揃えよ。我からのありがたい言葉をやろう」

 

引っかかる言葉を聞きながらも言われた通り3人を集める。

 

「揃ったか…さて、まずは美城! これをくれてやる!」

 

封筒を叩きつけるように常務に投げた。それは見間違えるわけが無い…しっかりと辞表と書いている

 

「何のつもりだ?」

 

「ふん、今この瞬間をもって我は346プロダクションを辞める。3年前に我を雇い散々迷惑を掛けたことをこれで許せ」

 

「確かにキミには多大な迷惑をかけられたが…」

 

「つまり、成功しなかったら事務所をクビになるって噂…自分で流したんだね? でもそれだと、彼女達が舞踏会が失敗したと勘違いしてしまうんじゃないのかい?」

 

今西部長が確信と疑問を口にした。

たしかにその通りだった。ここで辞めてしまえばこんなに盛り上がっているのに自分達がいけなかった…と彼女達は思うだろう。

 

「何、今の奴らには心配などするだけ無駄というやつだ。我が居なくなった如きで今宵の舞踏会が失敗と思う程度の器ならあの場には居なかろうよ。

それにだ、あやつらも何時か我が居なくなる…と薄々気がついているだろうしな」

 

「しかし…彼女達には…ギルガメッシュさん、貴方のようなプロデューサーが必要です」

 

「武内、プロデューサーとは確かにアイドルを導くものだ…が、それは城の階段まで。

言わば馬車だ。馬車が独りでに進めばシンデレラ達は城に着かず道に迷ってしまう」

 

不敵に笑うギルガメッシュは武内プロデューサーに問う

 

「武内、我らが馬車ならば魔法使いは誰だ?」

 

「それは…」

 

彼女達をシンデレラにした魔法使いは誰?

そんなふうに聞かれると答えが思いつかない。

 

「魔法使いは自分自身だ。奴らが自らを変える勇気、それこそが全ての人間が持つ真なる魔法だろう。十年、この事を思い出すのに十年も要してしまったわ!」

 

「自分自身…」

 

「そうだ、我は永き間それを忘れてしまっていたな。いや、アレを飲み干したから忘れたのか? まぁ、どうでもいいことだ。

しかし、急に我がいなくなれば貴様も困るだろう。事務所の我の机を開けよ。マニュアルというものを作っておいた」

 

「……はい」

 

俯き陰を落とすプロデューサーの背を叩き笑う。

そのような顔を王に見せるでない、と

 

「美城、という訳だ。辞表をくれてやる」

 

「……では、受け取ろう」

 

受け取る常務はどこか寂しげに彼を見ていた

 

「今西、3年という短き間だが世話を掛けたな。ご苦労だった」

 

「いやいや、王様くんのおかげでここは大きく変わった…いい事しか無かったよ。世話なんてしてないさ」

 

何時も…まるで我が子を見る様な目でギルガメッシュくんを見守っていた今西部長

 

「そしてちひろ、3年間大義であった。…どこか、シドゥリの様な女だな。懐かしく…愉快だったぞ!

貴様があの日あの時あの場に居なくてはこの瞬間最高の喜びを我は得ることが無かった。礼を言おう」

 

「…っ…は……い」

 

次々と目から涙が溢れ出る。

今生の別れになるとは決まってないはずなのに、このワガママで自己中心的な王様がどこか遠くに行ってしまう気がしてならなかった。

 

「泣くでない。貴様が泣くのは美嘉達のライブが終わる瞬間だ」

 

「…はいっ!」

 

「では、我は美嘉達にどやされる前に消えるとしよう。王の不在の間、城は任せたぞ。………我が臣下達!」

 

眩い光に王が包まれるとそこには誰も居なかった。

 

「いってらっしゃい…王様」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

淀む空気…然しながら身を包むこの空気はどこか心地がいい。

別れは済ませた。後はこの場で本当の最後の仕事を果たすのみ

 

二つの足音が近づいてくる。

 

あぁ…この音だ。我がこの10年間待ち続けた女のモノ

 

「来たか…」

 

金の髪を持ち、蒼き瞳

その姿は間違える事などない

 

 

 

「やはり、ここでしたか英雄王!」

 

 

 

「フハッ…フハハハハハハ!!!

そうだ、そうだともセイバー!! この地にて貴様との決着をつけるっ!」

 

現れたのは騎士王に…贋作の小僧

こちらを睨みつけ既に戦闘態勢は整っているようだ

 

こちらを打倒するつもりなのだろう…だがな、我とて負けられぬ戦いなのだ

 

空間が軋む、大気が揺れる

開かれた王の宝蔵から英雄王の剣が引き抜かれる。かつて世界を分けた乖離剣

 

英雄王最大の切り札にして最強の神造宝具

 

これを見た瞬間から騎士王と贋作者は肌に殺意を感じ取った

 

「慢心は捨てた。我にあるのは勝利のみ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

幾合の剣戟が行われただろうか。

贋作者の腕はもう既に限界がきている

セイバーは天の鎖にて束縛した。

 

 

後は殺すのみ…

 

「っ!!」

 

切り結んでいる最中に贋作者がその手から白と黒の剣を投げるも読めていた一手。 三流ながらも考えた行動だったのだろうが当たるわけがない

 

「当たるか阿呆が!」

 

「お前なら避けてくれると思っていたよ!」

 

ガシャンッと後ろで音がなる。

まさか…!!

 

「一瞬でも緩めば十分です!」

 

先程の双剣が天の鎖に当たり一瞬なれど腕を縛り上げていた部分が緩んだのだ。

星の聖剣が鎖を砕く

 

「貴様…」

 

「ありがとうございます、シロウ!」

 

英雄王は剣を下ろし2人を見つめた

 

「セイバー、そして贋作者よ…名を名乗れ!」

 

「……クラスセイバー…アルトリア・ペンドラゴン」

 

「衛宮士郎だ…!!」

 

アルトリアにエミヤシロウ…

 

「なるほど、アルトリア…そしてエミヤシロウよ。貴様らのこと未来永劫忘れる事は無いだろう…」

 

爆発的な魔力がギルガメッシュとアルトリアを飲み込む

 

「英雄王…いえ、ギルガメッシュ。以前と何か変わりましたね?」

 

以前までの英雄王とは違い戦いの中ながら笑顔だった。何かを守る為に戦っているようだ

 

「貴様こそ心が豊かになったのではないか?」

 

以前までの騎士王とは違い戦いの中だが確固たる意志を持って戦っていた。

 

 

互いに違う目的ながらも誰かの為に何かの為に戦っている

 

「しかし、ここで終いにしよう。

世界を…悪を裁くは、我が乖離剣!!」

 

エアが唸る、風を切り裂き空間を抉り全てを飲み込むべく

 

「シロウ…私に力を!!」

 

「令呪を以て命ずる! セイバー、勝つぞ!!」

 

「はい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「天地乖離す開闢の星………!!!!!!」

 

「約束された勝利の剣………!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「アルトリア…エミヤシロウ。我の最後の願いを聞いてもらえぬか?」

 

仁王立ちをし英雄王は倒れているセイバーと贋作者を見下ろす

二つの宝具の余波に吹き飛ばされたようだ。

 

「…貴方が願いとは……らしくないですね」

 

倒れながらも騎士王は微笑みをこちらに向けていた。

贋作者もだ

 

「アルトリア、大聖杯を破壊せよ…貴様にしか出来ん」

 

「自分ですればいいじゃないですか」

 

「それは無理なことだ、我の足を見よ。既に消え始めている」

 

光の粒子が足から上へと登ってくる。我が現界をしていられるのも時間の問題だろう…

 

「分かりました、英雄王…貴方の願いこの騎士王が引き継ぎましょう…!」

 

「頼もしい限りだ。

そしてエミヤシロウ。貴様にはこの世界に生きる者として…そして我を葬った罰として…命ずる、それは――」

 

 

それは王としてでは無く1人の男としてここまで殺しあった相手に頼む一つの願いだった

 

 

 

 

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美嘉side

 

「ギルガメッシュ、今日のライブ完ペキだったでしょ★」

 

サイコーのライブ、サイコーの仲間達!

 

それにサイコーのプロデューサーが居たから…

 

こんなに幸せな気持ちになれたんだ! 一分一秒でも早くアイツにお礼を言わなきゃ!!

 

ライブの途中からギルガメッシュが見当たらなかった。いつもの事だから事務所に居るんだろう。皆が帰った中、アタシは事務所に向かって走っていた。

 

アイツの部屋へ

 

「プロデューサー!!」

 

開け放った部屋には明かりがなく、人影もなかった…

おかしいな…?

 

いつかの時みたいに机へと歩み寄った。写真が入っていないフォトフレーム、数多くの手紙に書類

 

城ヶ崎美嘉と書かれた手紙が一つあった

 

? なんだろ

 

 

アイツには悪いけど見ちゃっていいよね…?

 

手紙を開けば綺麗な字でこう書かれていた

 

【美嘉、貴様がこの手紙を開いているという事は我はもう貴様の近くから消えているのだろう。

何心配はいらん、美嘉ならばこの先、どのような苦難に襲われようとも乗り越えられる。またいつか我が現れた時は成長した貴様を見せよ。】

 

 

【期待しているぞ。我の最高の宝よ】

 

 

 

「………バカみたい」

 

 

その日以降、アイツがアタシ達の前に現れることはなくなった




戦闘シーンを書こうとしたのですが圧倒的な語彙不足でした。

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