さてこの後、アイドル達はどうなるか…
美穂side
最近、卯月ちゃんの様子がおかしい…
なんだか無理して笑っているような、どこか上の空のような…体調でも悪いんだろうか…
「せっかくのお仕事…すみません!」
「ううん、大丈夫だよ? 次一緒に頑張ろ?」
「…はい」
まただ、また顔に影が落ち始める…お仕事上手くいっていないのかな…
「…島村さん、少し休みましょう」
「プロデューサーさん、わ、私頑張れますから! 頑張れますっ!」
鬼気迫るような言い方だった。
「美穂、帰るぞ」
「あ、ギルガメッシュさん…だ、大丈夫でしょうか…」
「我が知ったことか。シンデレラプロジェクトの問題であろう」
そ、その通りなんですけど…
ギルガメッシュさんも時折、余裕が無いような…そんな気がする。
事務所から現場が近かったからか歩いて移動するようだった。
「クローネの様子はどうなんですか?」
「うむ、メンバー各々最終調整というところだな。不安は残るが奴らならば大丈夫だろう…シンデレラプロジェクトが足を引っ張らなければ…な!」
「美嘉ちゃんと楓さんと凄いですよね…ソロもやってクローネもなんて…私も頑張らなきゃな」
あの2人と瑞樹さんはプロデューサーと付き合いが古い3人なのは前から知っている。私は少しあとだったけど
そんな2人をクローネに入れて、瑞樹さんは私達ファーストプロジェクトのメンバーを上手くまとめてくれている。
それほどギルガメッシュさんにとって今回の事は本気なんだ…
「どうした、美穂。ニヤついて」
「えへへ、嬉しいんですっ。新しい仲間と一緒に…成長した自分をファンのみんなに見せれることが」
「……ふっ、それが島村卯月に足りない所だな」
ん? なんだろう、今すごく引っかかること言ったような…
「仕方あるまい…奴らに足を引っ張られては我の苦労も水の泡というもの…あくまでも助けるのは武内だが、我も手を貸すぐらいはしてみるか」
「ほ、本当ですか? 卯月ちゃんをよろしくお願いしますっ!」
「あくまでも助言をするだけだ! 奴がその後どうするかまでは見切れん! まゆ、まゆは居るか!」
何故か、道のど真ん中でまゆちゃんを呼び始めた…
「はぁい、あなたのまゆですよー」
居た!?
え、何処に!?
「島村卯月が通っていた養成所の場所を調べろ」
「わかりましたっ」
「後で褒美をやろう。期待しておれ」
まゆちゃん何者なのだろうか…
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美嘉side
最近、どこのプロジェクトも躍起になって仕事をしている。
それもこれも美城常務にプロジェクトを白紙にされないため。
そんな中、アタシはいくつか持ってきた衣装案をギルガメッシュに見せてるんだけど…
「ギルガメッシュ、こんな衣装どうかな?」
「露出が多い。却下」
「これは?」
「地味。却下」
「…こっちは」
「似合わん。却下」
「もー! どれもダメじゃん!?」
全てダメ出しされた。
「当たり前であろう! 露出が高いのやら貴様に合わん色やらばかり持ってきおって!
よいか、貴様らアイドルは客に見られるのでは無い。客に魅せるのだ! 」
「じゃあ、ギルガメッシュも意見出してよ。えらーいえらーい王様ならアタシにピッタリの衣装案あるんだよね★」
少し煽ってみた。
するとだ、ギルガメッシュは何処からか…いや本当に何も無い所から紙を取り出した。
「これだな」
ギルガメッシュが出してきた原案図はパープルを基調としたドレス風の衣装だった。
薔薇をあしらい普段の衣装より大人っぽく纏まってる。
だけど…
「これアタシが出したヤツより肩とか…む、胸とか出てない?!」
「気の所為だ」
「は、ははぁん? 実はそんな事言いながら胸とか見たかったわけだね★」
「興味ないが」
ぐはっ!?
そ、そこまではっきり言われると傷つくというか…相変わらず乙女心が分からないプロデューサーだ。
「貴様らクローネにとっての初舞台だ。我にとっても楽しみだからな」
「あはは★ ギルガメッシュが楽しみって言うのなんか珍しいじゃん」
「プロデューサーさん。 あ、美嘉さんお疲れ様ですっ」
「お疲れ様、ありすちゃんっ」
「橘ですっ!」
「何用だ、ありす」
「えっとですね…」
プロデューサーはありす呼び良くてアタシはダメなの…
ありすちゃんもアタシと同じで衣装案の話だった。
どうも今回は皆ドレスで固めるらしい…
「ねぇ、ギルガメッシュ。みんなドレスなの?」
「あぁ、シンデレラプロジェクトと行うライブもあるがその後が本番だ」
「その後ですか…?」
「うむ、その後に行うライブ…これは武内が付けた命題なのだが【シンデレラの舞踏会】というらしい」
「舞踏会…か。確かにそれはみんなドレスで着飾らないとね★」
「それじゃあ、王子様はプロデューサーですね」
ありすちゃん凄いグイグイ攻めるね…
「戯け、誰が王子か!! 我は王であるぞ!」
「「えぇ…」」
この後、加蓮に奈緒も似たようなやり取りをやったそうで…
プロデューサー人気過ぎ!
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英雄王side
まゆに調べてもらった住所
王の我、自らが足を運び来てやった
あの爆弾を処理しなければクローネの足を引っ張られてしまうからな。
「島村卯月はいるか!!」
「ひゃい!?」
鏡に映る自分を見つめた阿呆が一匹居た。
酷い有様だった
何も服や髪が乱れてる訳では無い
表情だ
「くっ…くははははっ!? どうした、その顔! その表情!! まるで武内ではないか!!」
感情のない顔
奴にとって有るべきものがない顔
「わ、わた…私は…」
「その様な顔を続けるならばアイドルを辞めろ。貴様に資格はない」
「そんな…」
「我はこうなる事を見越して貴様をオーディションで落とした。」
だが…
「だがな、勘違いはするな。才能がないとは言ってない。むしろ貴様はアイドルになる為にこの世に生を持ってきた数少ない人間だ」
ここで少し、島村卯月の顔が破顔した
大粒の涙を流し嗚咽混じりに言葉を紡ぐ。我慢をしてきたことを吐き出すように
「私…には、笑顔しか…出来ないです。笑顔なんて…笑顔なんて誰にでもできます!!」
「凛ちゃんみたいに歌が上手くありません! 未央ちゃんみたく何でも挑戦できません! 2人に追いつかなきゃって…頑張らなきゃって思って…それでもダメで…!」
「みくちゃんにも李衣菜ちゃんにも…他のみんなも色んな凄いところがあるのに私には何にもなくて…っ」
「貴様には笑顔しかないか…」
俯き泣きじゃくる小娘
この時代の人間は弱すぎる
「島村卯月、貴様の笑顔は渋谷凛も本田未央も…346プロにいるどのアイドルも持っていない最大の武器なのだ」
「最大の…武器?」
「貴様はどんな困難があっても笑顔を絶やさなかった。それによって救われた人間は数多くいる…その笑顔は人を勇気づける笑顔だ」
そうだろう? とあらかじめ連れてきたあやつを呼びつける。
暗いレッスンルームにやって来たのは他でも無い我の最初のアイドル
「卯月の笑顔のお陰でアタシ頑張れたんだよ」
「美嘉…ちゃん…?」
「ほら、卯月達をバックダンサーに選んだ時さ…
最初はアタシ、プロデューサーを見返してやろうと張り切ってたんだけど本格的に人に教えるのは初めてだったし、もし失敗して3人が嫌な思いをしたらどうしよう…って悩んでた時もあったんだ」
「そんなこと…」
「でもね、卯月がどんなに辛くても笑顔を絶やさないで頑張ってくれたから…アタシも自信を持って出来たんだよ★」
「確かに、笑顔は誰にでもできる。
だが、我が笑っても誰かが笑う訳では無い。 しかし、貴様の笑顔は人を笑顔にする! それを、心に刻み付けよ!!
そして今一度全てを考え直せっ。帰るぞ美嘉」
言いたい事は全て言ったのでもうここに用事はない。
さっさと部屋を出た。
そうだった、通話を切らねばな
「あれで良かったのギルガメッシュ…?
って、誰と電話?」
「渋谷凛と本田未央だ」
「も、もしかして…今の会話全部?」
「電話越しに聞かせていた。あとは奴らと武内が島村卯月を再起させるだろうよ。我らはクリスマスの後に控えるライブに向けて邁進するのみ!」
「本当…不安を全部取り除いてくれるよね…」