夢見る乙女達と英雄王は舞踏会へ   作:969

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王妃の帰還

英雄王side

 

「なるほど、今西が言っていた通り戻ってきたか」

 

ある日の夕方…サマーフェスティバルが終わりシンデレラプロジェクトにも多くの仕事が舞い込んできた頃だった。

奴が城へと戻ってきたのは。

 

「キミがまだこの事務所にいるとはな。意外だ、すぐに投げ出すと思っていたが」

 

「ふん、誰にモノを言っている美城。我は王だぞ? 王が城を捨て出ていくものか」

 

「勝手にキミの城にしないでほしいのだが…まぁいい、確かにキミの功績は大きい大したものだ。たった3年で10人以上のシンデレラを限りなくトップに近い位置まで導いた…しかし、今キミが肩入れしているあれはなんだ?」

 

美城のオフィスにての話し合い

ちひろや武内は心配をしていたがなんて事がない世間話程度だ。

 

「さぁな、我は知らん」

 

「…そうか、では明日の午後、全部門のプロデューサーを集め会議を行う。キミも出席するように」

 

「気が向いたらだ」

 

「遅れないように」

 

部屋を後にする。

何やら良からぬ予感がするが…まぁ、何とかなるであろう。

 

「プロデューサーさん」

 

背後から声をかけられた。この心地よい声は聞き間違いようがない

 

「文香か。 我を呼ぶとは珍しい…珍しさに免じて話を聞いてやろう」

 

「ありがとう…ございます。 その、私…」

 

「ダンスが苦手か」

 

髪の毛で隠れた瞳が驚愕に開かれる…そんなに驚くような事か? 貴様を見ていれば一目瞭然だが…荒療治をしてもいい。しかしそれで潰れてしまっては本末転倒だ。

 

「来るがいい文香」

 

「え、あのその…」

 

手を引き事務所内を歩いて行く。

時折…「ぷぷぷぷろでゅーさーがふみかちゃんのてを…」やら「あー、美嘉ちゃんでも握ったことなかったかー」とか「美嘉ちゃんここに散る…」など聞こえてきたが知らん。

 

「あの、何処へ…」

 

「あれを見ろ」

 

ダンスレッスン場、そこで踊っていたのはまだ小さいながらも必死に周子や大槻唯に食らいつこうとしている1人の少女。

 

「ありすちゃん…」

 

「あやつもダンスが苦手と言っていてな。自主的に練習をしていたのだが指導者がいなくては身に付くものも身に付かん」

 

ありすの曲質上、激しいダンスなどは一切ないのだが本人曰く、

 

「私の曲は激しく無かったとしても、他の皆さんと共に取り組むことになった時、私が子供だから…という理由で足を引っ張りたくありません」

 

らしい。全くもって我が前に言った【今の自分の魅力】の話を分かっているのだろうか

 

「貴様はどうする。諦めるのか? まさか、そんな訳はあるまい…やることは分かっているな?」

 

「…はい、ありがとうございます。プロデューサーさん…その、行ってきます」

 

あぁ、行ってこい! 背を押し笑い飛ばす。

今日の我は少し気が利きすぎだな!!

 

フハハハハっフハハハハハハハハハ!!

 

 

 

 

 

 

 

翌日の事だ、あの女が言っていた会議に参加せざるを得なかった。理由は至極簡単、ちひろに出ろと言われた。

 

「さて、皆集まったようだな。今回集まってもらったのは他でもない…」

 

シンデレラオーディションの時に書類の山をかき分けた雑種共と肩を並べ美城の言葉を聞く…やれやれ、この我が驚くようなことなど有り得ん。

 

「アイドル部門全てのプロジェクトを白紙に戻す」

 

「「フザケルな!!!!!!!」」

 

バァン!!!と二つの机が割れた

割ったのは我と…向井拓海だったかのプロデューサーだ。

 

「美城…貴様、言うに事欠いてプロジェクトを白紙にするだと?」

 

「おいおいおい、こっちは炎陣がやっと軌道に乗った所なんだよ!」

 

「はぁ…やはり君達が問題だな。これ以上、私に逆らうならばクビだ」

 

「王の我をクビにする? はっ、笑わせるな痴れ者が!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、シンデレラプロジェクトと共に結果を出さないとクビになると」

 

「あれは美城が 「ギルガメッシュくーん?」 …ちひろ、その、なんだ。我は悪くないぞ」

 

容赦なくクビを言い渡された

 

「なぁ…その、プロデューサーさんよ。悪い事は言わねぇからさ謝りに行こうぜ?」

 

「そうそう、あたし達デビュー前からなんでこんな崖っぷちなの?」

 

声をかけてきたのは我のために設えた最高級のクッション!のようなモフモフを持つ神谷奈緒と病弱北条加蓮だ。

 

「我が謝るだと!? そこに座れ説教してくれよう!!」

 

「説教されるのは……アンタよー!!!!」

 

「ぬぁ!?」

 

耳元で叫ばれた。誰だ、我にこのような仕打ちをするの……は……?

 

振り向けば般若の様な面をした美嘉が居た。

 

「そこに座りなさい」

 

「ふん、美嘉。貴様も偉くなったものだな! 我にすわ 「座れ」 …なんだ、我が悪いのか? んん?」

 

ちひろ以上の威圧感を放つ美嘉とちひろにこの我が説教をされた。

 

「なぁ、加蓮…本当に大丈夫なんだろうか…」

 

「どうだろう…」

 

 

 

 

 

説教も終わり日が落ちた頃

二人の影が一つの部屋で会話を交わしていた。

 

「ちっ、美城め…貴様の企みも我のクローネで叩き潰してくれるわ…!」

 

「まぁ、プロデューサーさん。落ち着いて? まだデビューもしてない私だけれど必ず力になる」

 

「ふん、貴様も美嘉に比べればまだまだだ」

 

「そりゃあ、現役カリスマJKの彼女と比べられたらね…? 大丈夫、クローネとLiPPSが何とかするわよ」

 

我の新たなプロジェクト

プロジェクトクローネ…それに美嘉を含めた5人のメンバーで構成される新クインテットLiPPS

 

「奏よ、貴様は思う様に自らを表現し魅せろ。それ以上は求めん」

 

「あら、求めてくれないの? 寂しいじゃない」

 

「ハッ、生娘がイキがるではない。あと8年は早いわ」

 

「あら、意外にスグなのね?」

 

最近、妙な胸騒ぎがする。

我の予感は当たるが…たまには当たってほしくないものだな。


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