夢見る乙女達と英雄王は舞踏会へ   作:969

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以前執筆していたモノを再編したものです
それでは


魔法と夢と王
王と灰被りの夢


「ことみねー、どこだー。我はおなかすいたぞー、ことみねー。」

 

言峰教会に響く英雄王の声

第四次聖杯戦争を終え暇になった王はうろちょろとしていた。

愉悦などと言い遊び呆けてたのだが飽きた

 

「ギルガメッシュ…」

 

「言峰!? どうしたのだそんなにボロボロになって!」

 

満身創痍…ヨロヨロとギルガメッシュに近寄り倒れた言峰を抱え起こした。

頬がコケ、あの男と戦った体も見るに耐えぬほど衰弱していた

 

「…は…」

 

「は…? 何を言いたいのだ!」

 

コヤツがここまで追い込まれるとは何事か。

 

「働いてくれ…」

 

「む?」

 

人を食らう事をしない大食らい英雄王のせいで家計は火の車

副業を兼ねてラーメン屋をやっていたのだが遂に口座の底が見えてきた。

 

「…我に働け…だと? フハハハハハ!! よいぞ言峰!! 貴様の苦労、我も味わってみようではないか」

 

ポイッと衰弱した言峰を捨て教会を出ていく英雄王

 

「現世にも興味があったところだ。 我を楽しませるような仕事はあるのか」

 

「…何も問題が起きなければいいんだが」

 

英雄王が歩いていった方向を見つめ少々不安になった言峰の呟きは虚空へと吸い込まれていった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「さて、街中に来てみたものの仕事とはどう探すのだ? 言峰に聞いてから来ればよかった」

 

駅前の椅子に座り周りを見渡す。

どれもこれもつまらなさそうな雑種ばかり…されど、この世界では一人一人が歯車として何らかの役目を担っている…手出しは出来ない。

その中で1人だけ圧倒的なオーラを持つ黄緑色の服を着た女がいた。

我のgoldなオーラではなく奴はmoneyの金であろうオーラだ

あの女にしよう…腰を上げ近づく

 

「おい、そこの女」

 

「はい? 私でしょうか?」

 

突然呼ばれた女は困惑しながらも王と向き合った。

やはり只者ではない。この我を前にしてこの威圧感!

搾取する人間の目をしている

 

「我に仕事先を寄越せ」

 

「仕事先…ですか? えーと、職業案内所とかには…」

 

「我は貴様に言っているのだ」

 

「私にですか…そうですねぇ…」

 

ここまでの横暴な物言いに表情を曇らせることなく考え込む。

髪を結い片方におさげを作ったような髪型。年齢もわかりにくく若く可愛らしい女だった

 

「あ、そうだ! ちょうどウチ、人手が足りないんですよ。 よかったら来てくれませんか?」

 

「ほぉ、それは退屈しない仕事なのだな?」

 

「えぇ、それは勿論。最近立ち上げたプロジェクトで今がスタートラインなんです」

 

ニコニコと笑いながら名刺を差し出してくる。王はそれを受け取り社名を見た

 

「346プロ…? よかろう、この我が手伝ってやるのだ成功は間違いあるまい!!」

 

「それは心強いですね! これからよろしくお願いします。 プロデューサーさん」

 

「プロデュ…なに?」

 

黄金の王と緑の女帝の出会いがアイドル業界に激震を走らせるのはまだ先のお話

 

 

 

 

 

「ところでお名前は?」

 

「ふっ、名を知りたくばそちらから名乗るのが礼儀というものであろう?」

 

「あぁ、そうですね。私は千川ちひろといいます。これからよろしくお願いしますね」

 

「我はギルガメッシュだ。よろしくしてやろう」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「――というのがプロデューサーとしての仕事です。大丈夫ですか?」

 

二ヶ月に渡り、プロデューサー知識を詰め込まれた。

初めはそんなのいらん。と突っ撥ねたのだがあの女の笑いの無い笑顔を見ていると何故か受けねばならない気がした

 

「ようはアイドルに仕事をとってくれば良いのだろ?」

 

「え、えぇ…そうです」

 

この二ヶ月何を聞いてたのだろうか…

少々、早計だったかもしれない彼を事務所に迎え入れたのは

 

「しかし、ちひろよ」

 

「ここにはアイドルがまだ居ない…そう言いたいんですね?」

 

「その通りだ、このフロアで見かけたのは貴様ぐらいだぞ」

 

他のフロアではそれっぽい雑種がちょろちょろとしていたがここには自分とちひろのみだ。

 

「ギルガメッシュさんのお眼鏡に叶う女の子をスカウトして来てもらおうと思いまして。」

 

「この我の目に叶う女などセイバーぐらいしか…「スカウトしてきてください」 あい分かった。行ってこよう」

 

逆らってはいけない。本能が諭してきた

 

 

--------

 

 

「我がスカウト…か。」

 

右を見ても左を見ても雑種雑種…ろくなモノが居ない。

 

「一生見つからんかもな」

 

宛も無くさ迷い始める…スーツという格好も結構暑いものだ。言峰の神父服なども同じだろうか…そうだ、給料が出たら奴とワインでも飲もう。

 

そんな仕事に関係ないことをダラダラと考えているとすれ違った1人に目がいった。

 

「あれは…」

 

我の好みとはかけ離れている。しかし、何か別のものを感じ取った。

アイドルとは人に愛され人を笑顔にする存在だと緑の女帝が言っていた。あの女ならば出来るやもしれん…

とりあえず、奴に習ったとおりやってみるとするか。

 

「あー…あー…こほん

すまない、少々話をいいか?」

 

「へ? アタシ?」

 

「あ、おねーちゃんナンパされてる!」

 

こちらに振り向いた少女はピンクの髪というドギツイ色をしているが中々の顔立ち、中々のスタイル。そう評価した

 

「我…じゃなくて、ワタクシ、346プロダクションでプロデューサーをしてる者でして是非スカウトをと…」

 

口がムズムズする。本当にこんな口調をせねばいけないのか!と切れたら正座をさせられた。王たる我が正座を

 

「あー…そういう勧誘系はパスで」

 

「えー! 芸能事務所だよ!? チャンスじゃんー」

 

「こら莉嘉、静かにして。という事で…すみません」

 

逃げようとする姉妹を(というか、姉だけしか見ていなかったが)目にして英雄王は…………キレた

 

「我がスカウトしに来たというのに何だその態度は!! 光栄に思うのが当たり前であろう!?」

 

「は、はぁ!? アンタ何様なの!?」

 

「王様だぁぁ!!!」

 

ギルガメッシュからしてみれば事実しか言ってないのだがこの少女からしてみたらチンプンカンプン。ただの怪しい人だ

 

「な、何言ってるの…この人…」

 

「貴様は! アイドルになる素質があると我が認めたのだ! 拒否など許さん」

 

実に暴君である。

 

「り、莉嘉…先帰っていて…ヤバイ人かも」

 

「お、お姉ちゃんも逃げよ?」

 

「大丈夫…だと思うから」

 

妹の背を押し先に帰らせる。危ない目には合わせれない…

 

「よし、行くぞ!」

 

「いや、アタシまだ決めて…ひゃぁ!?」

 

少女を軽々とお姫様抱っこし…王は飛んだ

 

「な、ななな!? なに、こここれ?!」

 

「事務所に向かうのだ。言ったであろう?」

 

「こ、この移動方法が無茶苦茶だって言ってるの!? なにドッキリ?! 映画の撮影!?」

 

ビルとビルを軽々飛び越えていく

見知らぬ男に抱き抱えられ高層ビルを飛び越えて行くのは並大抵の恐怖ではない。が、それと同時にファンタジーに出てくるお姫様の気分もあった。

 

「そろそろか…身を屈めておけ!」

 

「は、はい!」

 

バリーンと窓を割り帰社に成功した

 

したのだろうか?

 

「プロデューサーさん…ちょっと♪」

 

待ち構えていたのかちひろが居た。

 

「む? 我に用か? 少し待っていろ女よ」

 

少女を下ろしちひろと呼ばれた女性にスタスタと着いて行った。

 

10分後、ガクガクと震えながら横暴な王様は戻ってきた。

 

 

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「えーと、お名前は?」

 

「あ、城ヶ崎美嘉…です」

 

「城ヶ崎さんね。城ヶ崎さんはアイドルになりたいのかしら?」

 

「え、えーと…急に連れて来られたというか…」

 

先程の状況を事細かに説明した…

 

「ギルガメッシュくーん? それは拉致って言うんですよー?」

 

「そうなのか? 知らなかった」

 

テーブルに置かれている茶と菓子を貪り平らげる。

 

「ちひろ、茶をくれ」

 

「300円になりますよ」

 

「貴様!? 同僚から金をせびり取るのか!?」

 

チャリンと金を払い茶を貰う

 

「ごめんなさい、城ヶ崎さん…」

 

「い、いえ…でもアイドルの素質があるって言われたのは嬉しかった…かな? この人怪しいけど嘘はついて無さそうだったし」

 

「我は嘘をつかんぞ?」

 

「だから…や、やってみようかなーって」

 

頬を少し赤く染め俯きがちに言う

 

「ホント!? やりましたねギルガメッシュくん。 この部署初めてのアイドルですよ!」

 

「流石は我のスカウト!! ちひろ、茶」

 

「600円です」

 

「値上がっておるぞ!?」

 

シンデレラプロジェクト初のアイドル

城ヶ崎美嘉が事務所に入ってきた頃のお話

 

この後、まさかあぁなるなんてアタシは考えてもいなかった。

魔法がかかるなんて…ね

 


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