そして俺は幾度となく間違いを繰り返す。   作:めろんぱん@

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遭遇

退屈だった1日が終わり、俺は教科書をのそのそと鞄にしまうと、目を閉じて寝たふりを始めた。

 

 

 

別に、修学旅行の疲れが残っていて早く帰って寝たい…!とかいうわけではない。

 

 

 

いや、まぁ本音は愛しの妹である大天使コマチエルの待つお家に飛んで帰りたいんですけどね?

 

 

 

あ、でもこの前、雪ノ下に用事があって部活が休みだった時、家にすぐ帰ってごろごろしてたら、『ごみぃちゃん、小町はシュークリームの気分なのです』とか言われて追い出されたな。

 

 

 

あれ?もしかして俺って家にも居場所ないの?大事な兄を気遣えないとか、それ八幡的にポイント低いよ?てか、なのです口調でシュークリームを要求とか、それどこの羽入だよ。なんなの?昭和58年から先に進めないの?

 

 

 

「修学旅行が終わったばっかりで、気が緩んでるやつも多いと思うが、寄り道とかするなよ、じゃあ解散!」

 

 

 

バカな事を考えていると、いつの間にかHRが終わっていたようだ。

 

 

 

鞄を手に取り、足早に教室を出る。急がないと由比ヶ浜が話しかけてくるかもしれないからな。

 

 

 

さっさと家に帰って、録画していたぷりてぃできゅあきゅあなアニメでも見よう。可愛い女の子が頑張ってるってだけで涙が出てくるよね。

 

 

 

…やだ、俺って父性にあふれすぎ?そろそろマザー・テレサと並んでファザー・ハチマンと呼ばれるまである。いや無いな。

 

 

 

そんな、どうでもいい事を考えながら昇降口に向かって歩いていた所為だろうか。俺は、ステルス八幡を看過され、声をかけられてしまった。

 

 

 

「あれ?比企谷君だ!」

 

 

 

めぐりっしゅの使い手、めぐ☆りんこと、城廻めぐり先輩である。

 

 

 

「…こんにちは」

 

 

 

俯きがちに、軽く挨拶を返す。少し時間ロスになるかもしれないが、由比ヶ浜は、まだ教室で三浦たちと話しているはずだし大丈夫だろう。だが城廻先輩は、そう気持ちを取り直した俺に衝撃を与える発言をした。

 

 

 

「ちょうど良かった!私ね、今から奉仕部にお願いしに行くところだったんだ!」

 

 

 

少し戸惑い、顔を上げると先輩の後方に一人の女子が立っているのを見つけた。奉仕部への依頼者なのだろう。目が合うと、私困ってますオーラを出しつつ、上目遣いで見てきた。

 

 

 

その姿に、俺は反射的に警戒を強める。

 

 

 

恐らくこいつは俺の苦手とするタイプだ。可愛さを作り、周りを動かし、その幸せを享受する。

 

 

 

関わりたくない。というか俺はもう奉仕部に行くつもりはないのだ。

 

 

 

「…すみません、今日は用事があるので奉仕部には行けないんです」

 

 

 

そう断ると城廻先輩は、しゅん…と残念そうな顔をした。

 

 

 

「そっかぁ…。じゃあ仕方ないね!明日は大丈夫?」

 

 

 

大丈夫じゃない。

 

 

 

「いえ、実はしばらく奉仕部にはいかないつもりなので…」

 

 

 

「え?どうしたの?…何か重い病気?」

 

 

 

「いえ別に。俺はいませんが、奉仕部はやってると思いますよ」

 

 

 

「うーん…。体育祭の時とかすごく頼りになったから、できれば比企谷くんにお願いしたかったの…」

 

 

 

…面倒だな。しつこい子は嫌われるんだってハチマン知ってるよ?ソースは俺といんたーねっと。すごい、いんたーねっとにはなんでも書いてあるなー。

 

 

 

「依頼については、あいつらだけでも十分かと」

 

 

 

「そっかぁ…。分かった奉仕部に行ってみるね。比企谷くんもできれば後から手伝って欲しいな」

 

 

 

「…善処します」

 

 

 

返事をして歩き出すと、「ごめんね一色さん、じゃあ行こっか」という声が聞こえた。

 

 

 

これで大丈夫だろう。明日あたりに平塚先生に呼び出されるかもしれないが、そんなものどうにでもなる。

 

 

 

早く家に帰ろう。そしてアニメでも見よう。

 

 

 

そう思い、家に急ぐ俺は違和感があったにも関わらず、深く追求することもなかった。

 

 

 

 

 

ーーだから気付けなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

癒しの存在となっていた城廻先輩でさえも、疎ましく感じていた事実に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

城廻めぐりside

 

 

 

比企谷くん、どうしたんだろう…。

 

 

 

前は嫌々でも真面目に仕事してたから、引き受けてくれると思ったんだけどなぁ。

 

 

 

仕方なくそのまま奉仕部に向かっていると、後ろを歩いていた一色さんが声をかけてきた。

 

 

 

「あのぉ、城廻先輩…、今のって…」

 

 

 

不安なのだろうか。まぁ比企谷くんってパッと見た感じは頼りなく見えるし。仕方ない。ここはお姉さんが誤解を解いてあげよう!

 

 

 

「今の男の子のこと?あの子比企谷くんって言うんだよ!すっごく頼りになるの!」

 

 

 

胸の前で握り拳を作りながらそう教えてあげる。だが、一色さんから帰ってきた言葉は予想外のものだった。

 

 

 

「いや、そうじゃなくてですね…。あの、なんというか…」

 

 

 

ん?どうしたのだろうか。もしかして知り合いさんなのかな?だとしたら挨拶させてあげれば良かったかな。

 

 

 

けれども一色さんは、怯えたように細々と呟く。

 

 

 

「あの人、最初に目があった時からと言いますか…、こっちの事がまるで見透かされているかのようで怖いです。理由はわからないんですが…」

 

 

 

どうやら知り合いではないみたい。

 

 

 

比企谷くんって怖いかなぁ。でも何か今日は様子がおかしかったような気がする。まぁいっか!これから奉仕部に行くんだし、雪ノ下さんたちに聞けば分かるよね!

 

 

 

「今日は体調でも悪かったのかなぁ…?いつもはすっごく優しい子なんだけどね。少し捻くれてるけど!」

 

 

 

一色さんは、あまり納得していない様子だったが、それでも頷いてくれた。

 

 

 

「じゃあ、行こっか!れっつご〜!」

 

 

 

「…お、お〜!」

 

 

 

頼りになるのは比企谷くんだけじゃない。

 

 

 

部長の雪ノ下さんだってそうだ。いつもでも真剣に物事に取り組んでいるし、文化祭での実務方面の能力は凄かった。それに、あのハルさんの妹だ。比企谷くんに向けるのと同様に、私は密かな信頼を寄せていた。

 

 

 

もちろん、由比ヶ浜さんだって頼りにしている。文化祭や体育祭ではクラスとの仲を取りもち、繋いでくれていたという。実は争いごとを収める事ができる人、そもそも争いが起きない空気を作れる人と言うのはかなり重宝するのだ。これは私の経験則だよ!

 

 

 

そういえば、奉仕部の仲も由比ヶ浜さんがいる事で、うまく回っている感じなのかな。

 

 

 

ううん、きっとそれだけじゃない。奉仕部は、あの3人でいるから。あの3人だからこそうまくいっているのだろう。きっと、それは誰か一人欠けても成立し得ないもの。

 

 

 

あの3人には私なんかでは立ち入れないような物が確かにある。

 

 

 

思わず微笑みが溢れる。

 

 

 

…何も心配する必要など無いだろう。

 

 

 

これまでも助けられてきたのだから。

 

 

 

そして私は依頼者である一色いろはさんを救うべく、奉仕部の扉をノックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーそこにはもう、あの居心地の良い空間は無い事など知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




徐々にアンチヘイトを増やしながら、話を進めていこうと思います。

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