ソードアート・オンライン 紅鬼と白悪魔   作:grey

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本編は未だに6話しかないのに番外編です。ネタがないわけではなく、今後に向けての事です。自分は原作で報われないヒロインたちにも、個別の相手を設け、幸せになってもらいたいんです。そのためのオリキャラです。ちなみに、アスナの相手が原作通りキリトである事に変わりはないです。少し短めですが、どうぞ。


番外編 《血盟騎士団》副団長補佐 アクア

 もうすぐ、この世界で2回目のクリスマス。後何回、仮想世界で聖夜を迎えるのだろうか。

 

「アクア君! 何サボってるの! モミの木は見つかったの!」

 

「見つかってたら言うよ、アスナ」

 

 僕はアクア。《血盟騎士団》副団長補佐をやっている。とはいえ、《血盟騎士団》に入ったのは、約半年前。自分でも驚くぐらいの勢いで出世出来た。

 

 ん? アクアって誰?何それおいしいの、だって? 今までの話を遡って確認してみな。第1層のボス戦とか、レットがヘマした時とかさ。な、いたろ。どちらもナイトに指示してもらってるだけだけどな……。

 

「ああ、もう! どこなのよ!」

 

「なぁ、アスナ。僕らも情報屋から買わないか? 僕、アルゴの助手と幼馴染だからさ、何とかなるかもしんないんだけど……」

 

「その手があったわ! 今すぐアポ取って!」

 

「りょーかい!」

 

 僕は現実でも1コ下の幼馴染、レモンにメッセージを送る。彼女は《狐のレモン》と呼ばれ、アルゴの助手兼用心棒をしている。しかも、大剣使いの攻略組だ。彼女はかなりのレアアイテムのおかげでAGI特化とSTR要求値の高い大剣の使用を両立させている。あの小さな体でよくあのでかい剣を扱うとは……。

 

 まぁ、そんな事はどうでもいい。メッセージが返ってきた。返事はOK。僕とアスナは指定された《ミュージエン》のレストランに向かった。

 

 

「遅かったナ、スイ君、アーちゃん」

「遅いよ、スイ、アスナちゃん」

 

 上から《鼠のアルゴ》と《狐のレモン》。僕の情報源と同時に、僕の財布に巣食う魔物だ。

 

「今日は奢ってくれるんだってナ。いやぁ、悪いナ~。オネーサン嬉しいヨ」

 

「アルゴちゃん、今日は遠慮なんかいらないよ。むしろ、スイの財布を食うつもりでね」

 

「分かってるサ。もちろんダ」

 

 マジでふざけんな。《血盟騎士団》で頑張った分が全部吹っ飛ぶ。特にレモンの胃袋はこの世界にして膨れ上がっているだろう。

 

「アルゴさん、レモンちゃん。今度のクリスマスイベント、モミの木の下にイベントボス《背教者ニコラス》が出現します。その木の場所に心当たりはありませんか?」

 

「その質問をするのは何人目かね、アルゴちゃん」

 

「そうだナ~、2人の前にもキー坊やナー君、スー坊も聞きに来たからナ」

 

 2人は少し考え込む仕草をした後、話し始めた。流石情報屋と言うべきか、僕たちがギルドメンバーを総動員して、探したポイントよりも多い数のポイントを教えてくれた。もちろん、僕の財布の中身の9割近くは彼女たちの胃袋の中へと消えたが。

 

「今日はありがとうございました。おかげで、いい手がかりがゲット出来ました」

 

「いやいや、アスナちゃん。あんまり期待しないでね。今回のイベントボスの情報は少なくて。それに、そのポイントの木は、クリスマスツリーっぽい見た目でもモミの木じゃない方が多いから。 下手すると、ウチらでも把握しきれてない木があるかも」

 

 普段は自信家のレモンが今日はやけに自信なさげだ。それほど、今回は情報が少ないのだろう。

 

「まぁ、それは仕方ねーよ。こっちも頼ってる身だ。文句は言わねー」

 

「そうですよ。これからも、私たちと《血盟騎士団》をよろしくお願いします」

 

「いえいえ、これからも《鼠のアルゴ》と《狐のレモン》をご贔屓ヲ」

 

 最後にパスタを頼んだ2人を軽く殴った後、僕とアスナは本部のある、39層の田舎町へと戻った。

 

 

「まぁとりあえず、出来る事はやれたな」

 

「そうね。これでモミの木が見つかるといいんだけど……」

 

 そう上手くはいかないと分かっている。2人には悪いが、今回に関してはそれほど当てにはしてなかった。それは多分……僕が同じ攻略組の黒ずくめに《背教者ニコラス》を倒して欲しいと思ってるからだろう。アスナには言えないが。

 

「ねぇ、アクア君」

 

「ん? どうした?」

 

「イベントボスも重要だけれど、最近は……、中層でのPKの方も考えないとね」

 

 プレイヤーキル、通称PK。今までのオンラインゲームでは、推奨しているものとしていないもので別れる行為。だが、このゲームにおいて、それは過去のゲームとは比較にならないほどの意味を持つ。この世界での“死”が現実での“死”に直結する《ソードアート・オンライン》の世界では。

 

 だが、残念な事に、この世界でPKのハードルはかなり下がっている。理由は約一年前。第1層ボス攻略終了後、攻略組のソロプレイヤー《ナイト》によって、同じくソロの《スカーレット》が攻撃された事。これにより、ナイトはオレンジプレイヤーとなった。これが直接的ではないとはいえ、ハードルを下げた要因の1つだろう。

 

「エストック使いの《ザザ》。毒ナイフを使う《ジョニー・ブラック》。この2人にも警戒しないといけないけど、あと2人、もっと警戒しないといけない奴等がいるのよね」

 

「ああ。外国語を流暢に話す短剣使いの《PoH》。ふざけた名前に似合わない実力とカリスマ性を持つ男。口癖は“イッツ・ショウ・タイム”。

 そしてもう1人。名前の分かっていないオレンジ、血塗れの白(クリムゾン・ヴァイス)、通称《ヴァイス》。左利きの片手直剣使い。口癖と言うか、特徴であるのは殺しの前に必ず本人にとっての“大事な物”や“譲れない事”を聞く。答えが気に入らなければ殺す。

 全く、タチの悪い奴等ばかりだ」

 

 PoHとヴァイスには特に注意しなければならない。2人のレベルはともかく、プレイヤースキルは攻略組に勝てずとも劣らない。むしろ、人を殺す事に慣れていない攻略組の方が不利と言える。

 

「それに、最近は各地のオレンジプレイヤーたちが何やら怪しい動きをしてるそうよ。近いうちに、攻略組ギルド間だけでなく、《軍》や中層ギルドとも対策を話し合わないとね」

 

 僕たちの懸念が最悪の方向に向かう事を、まだ、誰も知らない。




【DATA】

・アクア《Aqua》
《血盟騎士団》副団長補佐。実は、第1層ボス攻略や第28層ボス攻略にも出ているオリキャラ。武器は片手槍を選択し、ショートランスを使うプレイヤー。金属系防具をほとんど装備しない、槍使いのダメージディーラー。
レモンという1個下の幼馴染がいる。あまりに小さい頃から一緒のため、恋人に発展は100%ない。

・レモン《Llemon》
通称《狐のレモン》。アルゴと共に行動する情報屋兼護衛であり、大剣使いの攻略組。AGI優先でその次にSTRというステータスだが、レアアイテム《シフトリング》の効果で大剣が持てる。口が達者で、言葉において彼女に勝てる者はアルゴぐらい。
アクアは1個上の幼馴染だが、恋愛対象ではない。

・《シフトリング》
25層のボスのLAボーナス。装備するとAGI値が半分になり、その分だけSTR値が増えるというアイテム。良く言えば、軽量系装備から重量系装備に変える事が出来るアイテム。悪く言えば、ステ振りをミスった奴のための救済処置。


次回もお楽しみに!

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