「君の名は。」、皆さんはご覧になりましたか? 実は自分は映画館で見た事がなくて、今回初めて見ました。感想とか、上手い事言えないのでここには書きませんが、やはり伏線の張り方・回収の仕方は見習いたいと思いました。
前半はレット、後半はアスナの視点でお送りします。前話の反動で、今回は4千にも満たないですが、これで勘弁してください。
「…………世界樹…………」
隣でリーファがそう一言呟いた。
「…………間違いない。ここが《アルン》だよ。アルヴヘイムの中心。世界最大の都市」
「ああ。……ようやく着いたな」
ここまで来るのに色々な事があった。スイルベーンを出発したのは今日なのに、もう何日もずっと旅をして来たかのように感じる。
だが、それもここで終わりだ。アルンの中心部にある巨木──《世界樹》。俺とキリトさんは、その上にいると思われるアスナさんを探しにALOに飛び込んだ。アルンは旅のゴールであり、俺達の目的のスタートでもある。
「……なんか、久々に空を見た気がしますよ」
「確かにな。流石に、もうあんな経験は懲り懲りだ」
《蝶の谷》を出発した俺達は、ログアウトのために小さな村に立ち寄った。だが、そこは丸ごとモンスターが擬態した村だったのだ。俺達はその巨大なミミズのようなモンスターに飲み込まれ、アルヴヘイムの地下にある高難度ダンジョン──《ヨツンヘイム》に迷い込んでしまった。そこには、邪神──俺が戦ったユージーン将軍が秒殺されるレベル──と呼ばれるモンスターが徘徊しているのだ。
「えー、またトンキーに会いに行こうよ。ね、レット君」
「……えっと……、そ、そうだね……」
トンキーというのは、俺達がヨツンヘイムで出会った動物型の邪神だ。巨人型の邪神から攻撃を受けていた所を、リーファの願いを受け助けた。〝象クラゲ〟とも言うべき姿で、「可愛い」か「可愛くない」かと聞かれれば、100人のうち99人が「可愛くない」と答えるような見た目なのだが、リーファは大変コイツを気に入っている。
しかし、体力を回復するために寝ていたトンキーを、ウンディーネの部隊が討伐しようとしたのだ。俺達はスイルベーンから振り出しになるのを覚悟で彼らに挑んだ。もちろん、たったの3人で敵うはずがなかったのだが、その時トンキーが〝羽化〟し、形勢逆転。見事にウンディーネ達を追い払ったのだ。
翅を手に入れたトンキーは、俺達をアルンに続く階段まで連れて行ってくれた。その途中で俺達は、ALOに存在する
「わたし、こんなにたくさんの人がいる街、初めてです!」
ユイちゃんがキリトさんの胸ポケットから顔を出し、そう嬉しそうに言った。
その時だった。何かの楽器のような音が響き渡り、続けて女性の柔らかな声が聞こえて来た。どうやら、これからメンテナンスが行われるらしい。
「今日はここまで、だね。一応宿屋でログアウトしよ」
「了解」
俺はそう言って頷いた。
「なあリーファ。メンテってのは何時までなんだ」
「お昼の12時ぐらいまでかな。でも、アプデが近いみたいだし、ちょっと長くなるかも」
「そうか……」
そう言うと目を伏せ、それからキリトさんは上を見つめた。視線の先にあるのは、アルンの、アルヴヘイムのシンボルである世界樹。
「さ、宿屋を探そうぜ。俺達、もう素寒貧だから、あんま豪華じゃないとこがいいな」
「……キリトさんと一緒にしないでくださいよ。俺はちゃんと半分ぐらいは残してるので」
「まったく、キリト君は。イイカッコして全額渡しちゃうからだよ。宿代ぐらい、取っときなさいよね!」
おかしいな。キリトさんはアスナさんと結婚して、所持金も一緒になったはずなのだが。どうせ無駄遣いをしたのだろう。
「リーファ、俺達はそれなりの所行こうよ。ボロ屋はキリトさんだけで十分だ」
「──おいおい。そりゃないだろ……」
「パパはああ言ってるけど、近くに安い宿屋ある?」
ユイちゃんはどうやら世界樹を凝視していたようだが、リーファに尋ねられるとすぐに笑顔を浮かべて答えた。
「ええ、あっちに降りた所に激安のがあるみたいです!」
「げ、激安かあ……」
顔を引きつらせて呟いたリーファだが、そんなのお構いなしに、キリトさんはスタスタと歩いて行ってしまう。それを見て、リーファは「仕方ないか……」と呟きながらついて行く。
「ほら、レット。先行くぞ」
「……えっ? あ、ちょっと! 待ってくださいよっ!」
◆◆◆
「──っ!」
目の前の男は、私の身体を軽々と鳥籠の中に投げた。そしてパネルを操作して、籠に鍵をかける。
「まったく、あのアスナ嬢がこんなお転婆だったとは。デスゲームで2年間も過ごせば、人間ここまで変わるという事か」
私──結城明日奈は、SAOがクリアされた後、現実に帰還する事なく、ALOと呼ばれる別のVRMMOに幽閉されている。犯人は、現実で私との結婚を狙い、結城家とは既に深い関係にある須郷伸之。
先程脱出を試み、彼の目論見の核心に辿り着いたのだが、後少しの所で捕まってしまった。
「あなたの事をやっと思い出したわ、紅林
そして彼は紅林家の長男──紅林蓮音。研究一筋だった須郷伸之とは違い、学生時代は柔道などのスポーツの道でも結果を残している天才。私も以前、何度か彼と会った事がある。
「ああ、正解だ。流石は結城家のご令嬢。2年間のブランクがあっても、記憶力は確かなようだ」
「あなたのアバター、他の人とは違うのね」
「まあね。俺の役割には、この姿が都合がいいのさ」
「そうなのね。じゃあ、ナイト君をあんな目に遭わせたのはあなたなのね」
私は彼の後ろに佇む1人の騎士を見る。
そいつは《
そしてその正体は、私達がSAOで共に戦い、対立したプレイヤー──ナイト。SAOでは、ある戦いの後、黒鉄宮にある牢獄エリアに投獄されていたのだが、彼もどうやら私と同じようにここに幽閉されたらしい。
「人聞きの悪い事を言わないでもらいたいな」
「人を洗脳する事の、どこに弁明の余地があるのよ!」
現在ナイト君には意思が存在していない。というのも、彼らの実験によりナイト君はそれを奪われ、いわゆる洗脳状態にあるそうなのだ。故に、彼は私の事が分からないし、須郷さんや紅林さんの言う事に黙って従う人形に成り下がっている。プライドの高い彼に限って、こんな奴らの言いなりになるなんて考えられない。
「アスナ嬢、君の目の前の事実は確かにそうだ。だが真実は違う。彼はここに来た時点で既に壊れていた。おそらく、あのまま現実に帰っても、まともな生活は送れなかっただろうね」
「──っ! そんなの、あなたの想像じゃ……」
「別に、信じる信じないは君次第さ。でも、思い当たる節があるんじゃないのか?」
確かに、私にはそれがある。
《
「俺達の実験のテーマは、人間の思考、感情、記憶の制御。つまり彼は、俺達の実験の一つの成功の形なのさ」
「ナイト君は人間よ! そんな事が許されると思っているの⁉︎」
「許されないだろうね。でも、誰か俺達を裁くんだ? 茅場晶彦はもういない。警察共は無能ばかり。SAOをクリアした英雄は、所詮はたたの学生。俺達の邪魔をする者は誰もいないという事さ」
そんな事はない。須郷伸之は、キリト君に会ったと言っていた。もしもキリト君がALOで起こっている事の手掛かりを掴めば、必ずここまで辿り着いてくれる。それに、キリト君なら私を助けに来てくれる。そう自惚れてもいいはずだ。
「気に入らねえな、その目」
「──ッ!」
突然放たれた殺気と威圧感。口調も先程とは違い荒々しくなった。
「いいか? 伸之がお前の事をまるでお姫さまのように扱っているのは知ってる。だけどな、俺にはそんなの関係ない。お前の脳を弄り倒して、黒騎士のようにしてやる事も簡単なんだ」
今の自分の無力を私は呪う。せめて腰に剣があれば、この男の言葉に圧倒される事もなかったはずなのに。
「だから、あんまりおいたはするなよ、アスナ嬢」
そう言うと、彼はナイト君に私の監視を命じ、この場を後にした。
「……ナイト君」
そう目の前に佇む彼に聞こえる声で呟くが、彼は反応しない。
「…………ナイト君のこんな姿を見せられたら私、もう耐えられないよ」
私はここに幽閉されてから初めて弱音を吐いた。ここの様子が録画されていないのは分かっているから、この声が誰かに聞かれたという事はないだろうが、やはり一度言葉にしてしまうと、今まで抱いて来た恐怖とか焦りとか、色々な感情が溢れそうになる。
「でも私、絶対に負けないよ、キリト君」
こっそりと隠し持っているカードキーを強く握りしめ、私は呟いた。どれだけ不安を感じても、希望を失ってはいけない。だって、
──君なら必ず助けてくれるって、信じてるから
レット達は無事アルンに着きました。アスナの脱走劇は省き、蓮の兄との会話&黒騎士の正体をちゃんと明言しました。以上です(笑)
蓮の兄のキャラがあまりというかほとんど掴めておらず、書くのに大分苦戦しております。そしたらびっくり、グダリまくりです。今回短いのは、どう考えてもそれが原因。それと、正月ボケもありますね(笑)
そういえば、SAOの2期が再放送してましたね。【FB】編を書くためにも、ちゃんと見てプロットを練ります。
それではっ。