今回の話、若干説明多めなので分かりづらいかもです。ただ、自分ではこれが限界。説明パート、やっぱり苦手です。
題名が、何か小説自体のタイトル風ですが、別に何か意味があるわけではありません(笑)
それでは、第七話スタートです!
――なんて、美しい街なんだ。
それが、初めてシルフ領《スイルベーン》を見た時の感想だ。街全体はジェイドグリーンに輝き、それが暗闇の中浮かび上がっている。同じ仮想世界でも、SAOでは、こんな幻想的な景色はそう滅多に見る事が出来なかった。
俺とキリトさん、ユイちゃんの三人だけではなく、ここを拠点にしているリーファさえも、この光景に見入っていた。
「リーファちゃん! 無事だったの!」
その時、一人の少年が声をかけてきた。
「あ、レコン。うん、どうにかねー」
レコンと呼ばれた少年は、目を輝かせながら言った。
「すごいや、アレだけの人数から逃げ延びるなんて。流石リーファちゃん……って……」
今更過ぎるが、彼はリーファの隣にいる俺達の存在に気づいたらしい。口を半開きにしたまま数秒間立ち尽くす。
「な……スプリガンじゃないか! それに……その隣はもしかして…………さらッ!」
「声がデカいッ!」
彼が俺の正体を口に出す前に、リーファが彼の口を塞ぎ阻止してくれた。
危うく、周りのシルフから袋叩きにされるところだった。
「り、リーファちゃん! この際、スプリガンはともかく、何でサラマンダーなんか連れて来たの!」
小声で叫ぶという高度な技を披露してくれた彼は、そのまま俺の方を指差す。俺が着ているのは、全身のシルエットを隠せるほどのローブだが、覗き込めば俺の種族はすぐにバレる。だから、あまり騒ぎ立ててほしくはないのだが。
「大丈夫よ、レコン。その彼が、あたしを助けてくれたのよ」
「へっ……」
リーファは、唖然とする彼を指差しながら、俺達の方を向いた。
「こいつはレコン。あたしのフレンドなんだ」
「よろしく。俺はキリトだ」
「えっと……、俺はスカーレット。レットでいいよ」
「あっ、どもども」
何となく、レコンには敬語を使う必要がないように思えた。リーファもそうだが、親やすいというか、安心するというか、初めて会った気がしない、みたいな感じなのだ。
キリトさん、俺の順で握手をしたレコン。ぺこりと頭を下げた。
「いやそうじゃなくて!」
そしてまた飛び退る。
「大丈夫なのリーファちゃん! スパイとかじゃないの? 以前だって、そのバグ利用してウチにサラマンダーが入り込んでたじゃないか」
ほら見ろ。明らかに怪しまれてるじゃないか。バグなんて利用するからこうなるんだよな……。
「大丈夫よ。スプリガンの方は、ちょっと天然ボケ入り過ぎてるし。サラマンダーは、自分の種族をキルして来たばかりだからね。スパイだったとしても、今は顔を合わせ辛いはずよ」
キリトさんは、リーファから下された評価を聞いて苦笑い。俺の場合、自分がどれだけの事をやらかしたかを再認識する羽目に。
もしも、俺が殺した二人や、取り逃がした奴等が自領に戻り、領主に報告すれば、俺はサラマンダー内ではお尋ね者。ナイトほどではないが、大変生き辛くなるだろう。
ただでさえ、トラブルメーカーなキリトさんと一緒なのに、俺自身もこんなことになるなんて。この旅は俺にとって、最初から超ハードモードだ。胃薬が必要かもしれない。
「シグルド達が、《水仙館》で席取ってるよ。分配はそこでやろうって」
レコンは、まだ納得し切れていないようだが、リーファの様子を見て、渋々受け入れたらしい。
普段から、リーファに振り回されているんだろうな、レコンは。
「あ、そっか。うーん、今日はいいわ、あたし」
リーファは、両手を合わせて「ごめんね」という言った。それにしても、可愛い子はどんな仕草でも様になるなー。当事者じゃない俺はそう思っていた。
「えっ! 来ないの?」
「この後、お礼にレット君に一杯奢る約束してるんだ。ついでにキリト君にもね」
「ついでかよ…………」
レコンは、俺とキリトさんを交互に見た後、俺を思いっ切り睨みつけてきた。予想出来なくはないが、思い当たる節はない。
「レコン。妙な勘繰りはしないでよね」
リーファがレコンのつま先を蹴る。そして、慣れた手つきでウィンドウを操作する。
「これ、あんたに預けるから、四人で分けてね! もう行くね。ほら、レット君、キリト君」
「あっ……リーファちゃんっ!」
リーファは、レコンとの会話を強引打ち切り、俺達を引っ張って行く。その時のレコンの表情が何とも言えなかった。
今の会話からでは、この二人の関係性がよく分からない。というか、どういう繋がりなんだろう? 現実でもこんな性格ならば、余計に接点がなさそうなのに。
レコンと別れ、リーファお気に入りの店に向かう。
さっきから黙っていたキリトさんが、「なあ、リーファ」と切り出し、ずっと気になっていたであろう事を訪ねる。
「さっきの子は、リーファの彼氏?」
「コイビトさんなんですか?」
「ハァ⁈」
キリトさんとユイちゃんが、リーファに対して、ど真ん中直球を投げ込んだ。彼女の顔は見て分かるほどに赤くなる。
それが事実であろうとなかろうと、急にそんな事を言われれば、動揺もするし、恥ずかしくもなるだろう。現に、リーファは歩き慣れているはずの道で躓き、慌てて翅を広げて体勢を立て直した。
「ち、違うわよ! パーティーメンバーよ、単なる」
声を荒げ、必死になって否定する彼女。似たような事を、俺もかつてレモンさんにやられた。
「ふーん。その割には、結構仲良さそうだったけどな。そうやって、ムキになって否定する所が余計に怪しい」
だが、俺も参戦した。そういう経験があるからこそ、今度は誰かにやりたくなるというものだ。
「レット君まで……、もう。リアルでも知り合いって言うか、学校の同級生なの。別に、そんなんじゃないわよ」
「へえ……クラスメイトと一緒にやってるのか。いいな、そういうの」
キリトさんが、どこかしみじみとした様子で言う。
「うーん、色々と弊害もあるんだけどね。例えば……、宿題を思い出す、とかね」
「ははは、なるほどね」
ゲームでリアルの事を思い出すという、本来当たり前である事が、ちゃんと当たり前である事に嬉しく思う。
俺達は、そのまま他愛のない話を続けながら裏通りを歩いて行く。傍から見れば、シルフのリーファが、スプリガンのキリトさんと、ローブで全身をすっぽりと覆った俺を連れて歩いているのを、不審に思わないはずがないだろう。
「あれか、リーファ」
「うん、そうだよ。小さいけど、いい感じでしょ」
店の前には、《すずらん亭》の文字。リーファがスイングドアを押して開ける。中には、NPCの店員がいるだけで、他のプレイヤーの姿は見られない。飲食の場でローブを着続けるのはどうかと思っていただけに、それはありがたい。
奥の窓際の席に座り、フードを取る。正面にはリーファ、横にはキリトさん。ユイちゃんは、キリトさんの肩から降りてテーブルの上に。
「さ、ここはあたしが持つから何でも自由に頼んでね」
「じゃあ、お言葉に甘えて……」
「……キリトさん。少しは抑えてくださいよ」
美味しそうなデザートや、味の想像が出来ないドリンク類など、豊富にメニューが揃っていた。原因不明のバグにより、SAO時代のスキルが引き継がれている今、俺の料理スキルで是非とも再現してみたい。
「ユイちゃん、何か食べたいのある?」
「えっ?」
ユイちゃんが、キリトさんの手元にあるメニューを覗き込んでいるのを発見した。俺は、ユイちゃんの名前を呼んで手招きする。
「頼んでいいよ。俺と分けて食べよう」
「いいんですか! ありがとうございます、レットさん!」
表情がパアッと明るくなったユイちゃん。俺の肩まで飛んで来て、目を輝かせながらメニューを選ぶ。
「悪いな、レット」
「全然問題ないですよ」
キリトさんが申し訳なさそうにするが、俺は別に気にしてはいない。ユイちゃんが嬉しそうにしてくれるのを見てると、こっちまで嬉しくなる。
「レットさん! この、チーズクッキーを食べてみたいです!」
「オッケー、分かったよ」
どうやら、俺達が一番遅かったらしい。その事を謝るが、リーファは大丈夫と言ってから、NPCを呼ぶ。
リーファはフルーツババロア、キリトさんは木の実のタルト、それに俺とユイちゃんのチーズクッキー、飲み物にワインをオーダーした。
「それじゃあ、改めて、助けてくれてありがとう、レット君」
不思議な緑色のワインをグラスに注ぎ、かちんと合わせてから飲み干す。SAOと違って普通に美味い。
「いやいや。こちらこそ、色々助かったよ。俺もキリトさんも、リーファみたいに、色々教えてくれる人を探してたんだ」
俺はグラスを置いてそう答えた。実際、俺の無茶に付き合わせちゃった部分も多い。だから、あれに恩を感じる必要はないというのに。まあ、奢ってくれるのに、それを受け取らない理由はないのだが。
「そういえば、一体何があったんだ? 俺、ほとんど聞いてないんだけど」
「サラマンダーにちょっかいかけられたのよ。お互いにお互いを目の敵にしてるから」
「シルフとサラマンダー、やけに仲が悪いんだな。種族間で競い合ってるのは分かるんだけど、スプリガンにはそこまでキツくなかったよな」
確かにキリトさんの言う通りだ。シルフとサラマンダーの対立っぷりは、明らかに異常だ。あの戦闘だけでも、お互いどれだけ憎しみ合ったのかが分かる。
「11月の終わり頃かな。サラマンダーが《グランドクエスト》に挑戦してね、コテンパンにやられちゃったのよ。それで、今は資金集めに奮闘してるの。シルフとサラマンダーには、昔から因縁があるから、それでね」
昔からの因縁とやらが何かは知らないが、良くない関係である事は確か。PKを楽しむスタイルは如何なものかとは思うが、SAOのような特別な事例を除けば、PKは手っ取り早く自身を強化出来る方法の一つだと言える。ALOでは、むしろそれが推奨されているのだから。
「関係があるかは分からないけど、それに乗じて、キヤーナを筆頭にサラマンダーのノーマナープレイヤーが増えているのよ。今日のでさえ、まだマシな方よ。
だけどね、それに対抗するかのように、シルフでも同じような動きが出始めて、仲は過去最悪。顔を合わせたら最後。お互いどんな手を使ってでも相手を殺そうとするわ」
妖精の国、どんだけ物騒なんだよ……。顔を合わせたら最後なんてフレーズ、久々聞いた。
「うちの場合、領主が無意味なPKをしたがらないから、そこまで激化してないんだけど……。サラマンダー側はそうでもないから、関係の修復はまずないわ」
俺、バレたら何されるんだろう……。絶対に隠し通さなければ。
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
リーファも、キリトさんも、ユイちゃんも、もちろん俺も、何も言わなかった。いや、言えなかった。とにかく、気不味い空気になった。沈黙がこんなに辛いとは。
「何か、変な空気になっちゃったね。ほら、早く食べよ!」
「……そうだな」
この重たい空気に、真っ先に耐えきれなくなったリーファが話題を変える。不自然な流れではあるが、それがこの場での最適解。
俺は、目の前のクッキーを一つユイちゃんに渡す。彼女が小さい手でそれを持ったのを確認して、俺も一枚取る。
「美味いな、これ」
「そうでしょ! あたしのお気に入りなんだから当然よ」
「どうだ、ユイ。美味いか?」
「はいっ。とっても美味しいです」
重苦しかった空気は、今のでリセットされた。本当に、他のプレイヤーがいなくてよかった。
「それで、二人は世界樹について聞きたいんだっけ?」
「ああ。何でもいい。行き方とか、そこに何があるのかとか。どうしても、俺はそこに行かなきゃいけないんだ」
キリトさんの声が真剣になる。俺達の目的は、その世界樹の上にいるかもしれないアスナさんを助ける事。手掛かりはいくつあっても困らない。
「そう思ってるのは君だけじゃないよ。あたしも含めた全プレイヤーが思ってるわ。その世界樹の上に辿り着いて、妖精王オベイロンに謁見した種族は、
このゲームが、ハード仕様にも関わらず人気なのは、その《飛ぶ》という他にはないアクションを備えているから。だが、今は飛べる時間に限界がある。それがなくなるのなら、誰もがそれを目指すだろう。ましてや、最初の一種族だけなら、種族同士の争いも激化する。
だけど、GMの趣味がいいとは言えないな。どこかのチートGMを思い出す。
「それで、どうすれば上に行けるんだ?」
今のキリトさんには、アルフ転生よりも大事な事がある。ゲーマーとしての性を強引に抑え、自身の目的のために情報を集める。
「世界樹の内側、根元の所はドームになってるの。その頂上に入り口があって、そこから内部を登るんだけど、そのドームを守ってるガーディアン軍団がすごい強さなのよ」
「あれ? でもさ、リーファ。このゲームって確かに、サービス開始から1年は経ってたよな。流石に時間がかかり過ぎじゃないか?」
どんなに強いボスだろうと、必ず倒す方法はある。時間をかけて攻略方法を練れば、出来ない事はないはずだ。
「でしょ。ホント無茶苦茶なのよ、ガーディアンの強さが。それに、この間のサラマンダー達の挑戦で、また一歩、遠退いたわ」
「遠退いた? コテンパンにやられたとか言ってたな。何度も挑戦してるのに、そんな事って……」
キリトさんも流石に驚いたらしく、思わず反射的に聞く。
SAOのクォーターボスでさえ、そう何度もやられる事はなかった。なのに、そんな事が起こるなんて。
「彼らは、確かに過去最高地点まで行けたわ。でも、そこに到達した瞬間、新たなボスが現れたのよ。そいつが本当にチート過ぎるの。あまりのチートさに、運営がお詫びに、ホームページにボスの動画を出したほどよ」
ただでさえ難しいクエストに、まだ未知のボスが存在したというのだ。クリアの方法が見つからない。絶望的とはこの事だろう。
「一体、どんなボスなんだ?」
「実際には見た事ないから、あたしから言える事は少ないんだけどね……。一言で言えば速い。魔法がほとんど当たらない速度で飛んで、手に持った剣で攻撃。しかも、その剣も速過ぎてまともに対応出来ないらしいわ」
速過ぎる剣か……。SAOのソードスキルみたいな感じだろうか。
「ボスの名前は《Knight of Black Fairy》――黒妖精の騎士よ。全身黒の鎧を着てて、割と小柄な人型よ。こいつが出て来てから、優勢だったサラマンダーの大部隊は全滅したわ」
いくら何でも、それはバランスブレイカー過ぎではないか。無茶苦茶過ぎる。
「何か見落としがあるとか。例えば、クエストとかキーアイテム。それによって、そのボスが味方になるとか。それか、単一種族では攻略出来ないとかはどうだ?」
「へえ、いい勘してるじゃない。ボスが味方になるっていうのは、結構有力よ。黒妖精なんて名付けられてるしね。それは今、全種族が躍起になって探してるわ。でも、後者は絶対に無理ね」
「まあ、そうだろうな。グランドクエストの報酬とも矛盾してるし」
どうやら、アスナさんを助けるために世界樹の上に行くのは中々大変らしい。それぐらいで諦める気はさらさらないが。
やはり、その黒妖精が鍵を握っているという事なのだろうか?
「黒妖精に関する事、何でもいいから教えてくれ」
「そんなに焦んないでよ、レット君。今ちゃんと言うから。
黒妖精って言ってるけど、実際スレとかだと誰もそんな風には呼んでないわ」
「えっ? そうなのか?」
「ええ。奴は、大きな白い翅が一対しかないの。それに、ヘルムの少し上にリングみたいなのが浮いてるわ。それが天使の羽と輪っかに見える事から、大抵の人はこう呼ぶわ。《黒天使》ってね」
黒天使か……。あまり、良いイメージは抱けないな。
「でも、そんな強い敵がいて、ほとんど無理と分かっても、やっぱり諦め切れないよね。一旦飛ぶ事の楽しさを知っちゃうと」
「――それじゃ遅過ぎるんだ!」
キリトさんが立ち上がり、リーファの言葉に被せ気味に叫ぶ。
「パパ……」
ユイちゃんが、心配そうに声をかけた。キリトさんは、ハッとして椅子に座り直した。そして再び、真剣な眼差しで言った。
「ごめん……。でも俺は、どうしても世界樹の上に行きたいんだ」
大切な人が囚われている。そして、その人を助けたい。キリトさんはその一心で、もう一度ナーヴギアを被り、この世界にやって来た。例え、黒妖精とか、黒天使なんて呼ばれるモンスターが相手でも、立ち止まる気はないのだ。
「何で……、そこまで……?」
「人を、探してるんだ」
「どういう事?」
「簡単には、説明出来ない」
もしも、時間をかけてでも説明してくれと言われても、リーファに話すわけにはいかない。俺達の二年間、そして、それを終わらせるための戦い。その意味と重さを、彼女に理解してもらう事も、一緒に背負ってもらう事も、叶う事ではないからだ。
キリトさんが立ち上がり、それに続くように俺も立った。
「ありがとう、リーファ。色々教えてもらえて助かったよ。ごちそうさま。最初に合ったのが、君で本当によかった」
「俺も、ありがとう。これからは、俺達でやります」
「世界樹に……、行くつもりなの?」
当然の反応だろう。聞いた感じ、二人ではクリアなんて100%不可能に近い。行っても、ただ死ぬだけだ。
「ああ。この目で確かめないと」
「無茶だよ、そんな……。ものすごく遠いし、途中で強いモンスターもいっぱい出るし、そりゃレット君も強し、キリト君も只者じゃないだろうけど……。
……じゃあ、あたしが連れていってあげる」
「「えっ……」」
二人して、リーファの言葉に驚く。だって、彼女は何も関係ない。俺達も、彼女に何も話していない。一緒に行く理由がない。
「いや、でも。会ったばかりの人にそこまで世話になるわけには……」
「いいの、もう決めたの!」
中々強引な子らしい。頼もしいというか、何というか。
「キリトさん。これは手強そうですよ」
「……だな。よっぽど黒天使の方が楽そうだ」
「それ、どういう意味よ」
リーファの視線を躱しつつ、俺達は顔を見合わせて苦笑い。
「じゃあよろしく、リーファ」
「うんっ」
俺、こういう裏表のない笑顔に弱いんだよな。考え方の歪んだ俺にはないものだから。
「二人は、明日も入れる?」
「ああ」
「俺も大丈夫」
「じゃあ、明日の午後3時にここで。あたし、もう落ちないといけないから。ログアウトには、上の宿屋を使ってね。じゃあ……、また明日」
リーファは早口で一気に言い切ると、ウィンドウを出してログアウトしようとする。
「リーファ!」
「どうしたの、レット君」
「ありがとう。助けた事、お礼言ってくれたけど、それは俺達も一緒だから。随意飛行とか、この世界の事とか、一緒に来てくれる事とか」
「うん。またね」
リーファは、最後に笑顔でそう言ってログアウトした。
「レット、俺らも落ちようか」
「そうですね」
キリトさんが、ユイちゃんを呼んだ。
「レットさん、ありがとうございました。クッキー、とても美味しかったです」
最後に、礼儀正しくそう言ったユイちゃん。やはり、彼女がAIだとは思えない。
俺達は、そのまま上の宿屋に向かった。キリトさんも、ユイちゃんと話したい事もあるだろうから、お互い部屋を分けた。
ベッドに座ってからこれからの事を考える。
明日の事は、また明日キリトさんと話せばいいだろう。ただ……、一つだけ気になる事がある。
黒妖精の騎士――黒天使。お前は一体、何者なんだ。
えっと、簡単に補足説明します。
グランドクエストに登場するボスの現時点での紹介です。
名前:“Knight of Black Fairy”/“黒妖精の騎士”
別名:黒天使
容姿:黒い鎧と片手剣を装備。背中の翅は大きめのが一対のみで白い。ヘルムの上にリングが浮いている
特徴:
・ある程度の高さに到達すると出現
・魔法が当たらない程の速さ
・剣のスピードはソードスキル並み
こいつは、今後の話の鍵の一つです。次話の前半でも、こいつについて触れていきます。
お気に入り登録をしてくださっている皆さん、ありがとうございます。今後も応援よろしくお願いします。
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それではっ!