ソードアート・オンライン 紅鬼と白悪魔   作:grey

27 / 71
1週間以上間が空いてしまいすいません。色々と今後の事を考えながらやっていたので……。
多少強引な所もある気はしますが《圏内事件》ラストです。とはいえ、ここでは《圏内事件》を今後の伏線として使うつもりです。つまり、ここが終わりではなく始まりなのです。次回は少し早めに投稿出来るはずです。


23.事件の裏に赤い影

 俺は部屋から飛び出して行ったレモンさんを追って、外へ出た。索敵によると、街の路地裏辺りにいる事が分かった。

 

 そこへ着くと、やはりレモンさんはいた。体育座りをして嗚咽を漏らしていた。

 

「レモンさん……」

 

「…………レット」

 

 そう言うと、袖で涙を拭った。

 

「……ごめんね。何か、変な空気にしちゃって。迷惑だったよね」

 

「……そんな事ないですよ。誰よりも、あの事件に真剣に向き合っていた、証拠だと思います」

 

「……優しいね、レットは。でもそんなんじゃないんだ。これはケジメなの。もう二度と、目の前で誰も死なせないって決めたんだ。なのに……」

 

「……俺も、同じです。妹を、目の前で亡くしました。俺の決断がもっと早ければ、助けられたかもしれなかったのに」

 

「……レット」

 

 あの時、本当に後悔した。もう、誰も死なせないと本気で誓った。なのに今回、俺は何も出来なかった。

 

「救えなかったなら、それを悔やんで立ち止まる前に、前を向いて進まないといけないんです。俺達は何人ものプレイヤーを同時に助ける事は出来ません。だから尚更、1人でも多くの人を助けるんです。泣いている場合じゃありません」

 

「……うん。そうだね。ウチ、間違ってたね。今やるべき事は泣く事じゃない。この《圏内事件》を解決して、もう二度と悲劇を繰り返さない事。そうと決まれば、こんな所にいちゃダメだね!」

 

 やっぱ、レモンさんは笑顔でいないとらしくない。彼女には、振り回されるぐらいが丁度いい。

 

「さっき、キリトさんから連絡があって、20層の主住区の下町にある店らしいです。その近くの宿屋にあるそうなので行きましょう」

 

「りょーかいっ!」

 

 

「キリトさん、レットです」

 

「おう、入っていいぜ」

 

 中に入ると、キリトさんとアスナさんは何か食べていた。

 

「あれ? アスナ何食べてるの?」

 

「あ、コレ? 2人の分もあるから食べてみてよ」

 

 レモンさんはアスナさんの取り出した紙包みを丁寧に開ける。同じ物を

 俺にもくれた。

 

「わぁ、バゲットサンドだぁ! 食べていいの?」

 

「もちろんだよ。食べて食べて。レット君も遠慮なんかしなくて良いからね」

 

「ありがとうございます」

 

 思いっきり口を開けて、バゲットサンドを頬張る。今まで食べた中で一番美味しいかもしれない。俺も色々作った事はあるが、ここまで好みの味を作り出せた事はなかった。

 

「う~ん、美味しー! ねぇアスナ! ウチ、これすっごく気に入ったよ! これからも作って欲しいな!」

 

「わ、分かったから、作ってあげるから、抱きつかないで!」

 

「えぇっ!」

 

 キリトさんが大声を出して驚く。おそらく、これを作ったのがアスナさんだと知らなかったのだろう。もう既に完食してしまい、手元にないバゲットサンドを惜しんでいる。

 

「アスナさん、今度、これのレシピ教えてくれませんか?」

 

「いいよ。でも、レット君も色々教えてね」

 

「もちろんですよ」

 

 なんて、呑気な会話をしていても、やはり外の様子が気になる。

 

「…………来ないね」

 

「だな。まぁ、シュミットの話でも毎日通ってるってわけではなさそうだし。それに、あの黒フードがグリムロック本人なら、殺人の後すぐにメシ食う気にもならないかもな。……2、3日は覚悟した方がいいかもな」

 

 それも仕方ないだろう。むしろ、張り込みとはそういうものだと思う。

 

「ねぇ、みんな」

 

「はっ……はい!」

 

 どうしたんだろう、キリトさん。

 

「みんなはどうしてた? もしみんなが黄金林檎のメンバーで、超級レアアイテムがドロップした時、何て言ってた?」

 

「……そうだなぁ。元々俺はそういうのが嫌でソロやってる所あるし。SAOの前にやってたゲームじゃ、それが原因でギルド内がぎすぎすしたり、崩壊まで行った経験もあるから……」

 

 それなら俺もある。流石にあれが原因ではないが、そのせいでギルドが崩壊した事はある。そして、それはMMORPGならば避けられない現実だろう。

 

「自分が装備したい、とも言えないけど、メンバーの誰かに譲れる程聖人にもなれないな。だから……もし俺が黄金林檎のメンバーなら、やっぱり売却派に入ったと思うよ。アスナ達は?」

 

「俺も同じですね。むしろ、ドロップしたら隠すタイプです」

 

「ウチにはそーいう難しい事は、よー分からんっ!」

 

 レモンさんは正直者だ……。

 

「私はドロップした人の物。Kob(うち)はそういうルールにしてるの。パーティープレイでランダムドロップしたアイテムは、全部手に入れたラッキーな人の物。SAOじや、どんなアイテムがドロップしたかは全部自己申告じゃない。ならもう、トラブルを防ぐにはそうするしかないわ。それに……」

 

 アスナさんは一度そこで言葉を切る。

 

「……そういうシステムだからこそ、この世界での《結婚》に重みが出るのよ。結婚すれば、2人のアイテム・ストレージは共通化されるでしょ。《ストレージ共通化》って、すごくプラグマチックなシステムだけど、同時にとってもロマンチックだと私は思うわ」

 

 確かにそうだ。今まで隠せたものが、結婚相手にはバレてしまう。まさに、プラグマチックでロマンチックだ。

 

「そ、そっか、そうだよな。じゃ、じゃあ、もしアスナとパーティー組む事があったら、ドロップねこばばしないようにするよ俺」

 

 キリトさんは少し顔を赤くしながら言った。一体何考えていたんだろう。

 

「ば……バッカじゃないの! そんな日、何十年待っても来ないわよ! ていうか、レット君みたいに真面目にチェックしなさいよ! 見落としたらどうするのよ!」

 

 アスナさんはそう早口で怒鳴るとそっぽを向いてしまった。あの人は、おそらく現実ではいい所のお嬢様ではないだろうか。色々出来る器用な人だが、自分の気持ちは素直に表せない。俺はそんな気がする。

 

「ねぇ、レット。はい」

 

 レモンさんが俺に火炙り用の道具を手渡してくる。

 

「ちょっと炙るの手伝ってよ」

 

「……分かりましたよ」

 

 やってみると中々火加減が難しい。あくまでも簡易的な道具なため、火力の調節が難しい。

 

「あっ、もうちょっと火強めて。これじゃあいくら待っても食べれない」

 

 注文が多い人だ。思い切って火力を上げる。

 

「ああっ! 強過ぎ! これじゃあ耐久値が切れちゃうよ!」

 

 今度は弱く。そしてまた強く。更に……と流石にイライラしてきた。イタズラに火力を一気に上げる。

 

「ああっ! ウチのおやつが……」

 

「す、すいません! ついうっかり!」

 

 やり過ぎた。耐久値を失った《フロッグリザードの干物》はポリゴンに変化し四散した。食べ物の恨みは怖い。それがレモンさんなら尚更だ。

 

「…………」

 

 しかし、レモンさんは何も言わない。

 

「……キリト。黄金林檎のメンバーの名簿見せてくれない?」

 

「え? いいけど……。何に使うんだ?」

 

「気になる事があるの。ウチの仮説が正しければ、《圏内事件》の鍵はここにある」

 

 レモンさんは、キリトさんがシュミットさんに教えてもらった元黄金林檎のメンバーの名前の綴りが記されている。

 

「……ああっ! やっぱそうだよ!」

 

「レモン! これって……」

 

「俺達にも分かるようにお願いします」

 

 レモンさんの顔は驚きに満ち、同時に安堵の表情を浮かべている。

 

「レモン、キリト君、レット君。少しは外見てよ」

 

 アスナさんが不満そうに言う。

 

「いいよ、アスナ。もう見なくて。それよりこれ見てよ」

 

「ええっ! だってこれ……」

 

 そこにあったのは、《Cayns(カインズ)》の文字。

 

「嘘……。じゃあ……、俺達が見た、カインズさんは? 双子だとでも言うんですか?」

 

「レット、忘れたの? ウチがその可能性は指摘したじゃん」

 

「パターン6!」

 

「あったりっ!」

 

「じゃあヨルコさんも……」

 

「うん。ヨルコちゃんは間違いなく生きてる」

 

 全部繋がった。あれ? じゃあ《K》のカインズさんの死は……。

 

「ねぇ、キリト君、レモン。じゃあKのカインズさんを、タイミングを合わせて殺したって事なの?」

 

「違う違う。よく考えてみろよ。《サクラの月22日、18時27分》がアインクラッドに来るのは昨日で2回目なんだよ」

 

「「あっ」」

 

 俺とアスナさんはそれを聞いて絶句し、やがて力ない笑みを浮かべた。

 

「なんだ……誰も死んでなかったんですね」

 

「うん。でも……じゃあどうしてヨルコさん達はこんな事を….…」

 

「多分、《指輪事件》の犯人を誘き出すためだ。幻の復讐者を作り上げ、犯人に恐怖を刻み込む。許してもらうために、多分あいつは動くだろう」

 

「じゃあ、シュミットさんがグリセルダさんを……」

 

「あー、ムリムリ。シュミットは、ウチがほんのちょっとキレただけであのビビリよう。誰かを殺したとして、平然としてられるとは思えない。多分、間接的に関わってるんだろうね」

 

 じゃあ、《指輪事件》の犯人は一体……。

 

「でも、後は当事者達に任せよう。3人が殺しあう事はまずない。彼らだけで終わらせるのが、一番いい」

 

 キリトさんはそう言って椅子に座る。俺達もようやく肩の荷が降りたような気がして力が抜ける。

 

 だが、何を思ったのだろう。キリトさんはアスナさんに声をかける。

 

「アスナ。お前、結婚してた事あるの?」

 

 ……バカなんですか?

 

「うそ、なし、今のなしなし!」

 

 キリトさんはアスナさんにどつかれる前に補足する。

 

「そうじゃなくて、さっき結婚がどうとか言ってただろ。ほら、ロマンチックだとかプラスチックだとか……」

 

「キリトさん、プラスチックじゃなくて、プラグマチックです」

 

「そうそうそれ!」

 

「君はついさっきの会話まで忘れてたの! 呆れたわ。因みに、プラグマチックっていうのは《実際的》って意味ですけどね、念のため!」

 

 アスナさん、それすら分かってない人が俺の隣にいます。

 

「実際的……SAOでの結婚が?」

 

「そうよ。だってある意味身も蓋もないでしょ、ストレージ共通化なんて」

 

 すると、キリトさんは何かを考え出した。そして、離婚についての話をしていた。

 

「……そうだ、アスナ、試しに俺と」

 

「試しにあなたと、なあに?」

 

 アスナさんの凍てつく目線がキリトさんを貫く。見てるこっちも怖い。結局、ヒースクリフ団長への質問メールを書く事になった。

 

「レモンさん、どう思います、《指輪事件》」

 

「んー? 正直ウチは興味ないね。間違いなく、その事件の裏には奴等の影があるとしか思えないし。今さら昔の事件を掘り返してもしょうがない。これは本来、当事者同士で解決するべき案件だよ」

 

「ですけど……」

 

「レット、ウチから1つ忠告。関係ない事ばかりに首を突っ込む所、悪い癖だよ。いつか痛い目見る。確かに個人的には、解決したいとは思う。だけど、自分の力ではどうしようも出来ない事はある」

 

 レモンさんの言う通りかもしれない。

 

「でも、ウチは最後までやるよ。キリト、ウチらはどうすればいい?」

 

「……シュミットの所に行こう。彼らが危ない」

 

「りょーかいっ! これから仕事だよ、ワトソン君」

 

「誰がいつ、レモンさんの助手になったんですか?」

 

 俺達は19層に向かった。その間に聞いたキリトさんの推理は納得したと同時に大きな驚きをもたらした。だが、今は彼らを助けなければ。

 

 

 キリトさんが馬で、彼らの間に向かった。

 

「ぎりぎりセーフかな。タクシー代はDDAの経費にしてくれよな」

 

「よう、PoH。ナイトがネタばらしした時以来だな。まだその趣味悪い格好してんのか」

 

 キリトさんは馬のレンタルを解除し、PoHの方を向く。

 

「……貴様に言われたくねぇな」

 

 互いに睨みつけながら、牽制し合う。

 

「ンの野郎……! 余裕かましてんじゃねーぞ! 状況分かってんのか!」

 

 確かジョニー・ブラックのはずだ。彼が毒ナイフを振り回しながら言うが、それをPoHが制止する。

 

「こいつの言う通りだぜ、キリトよ。格好よく登場したのはいいが、いくら貴様でも、俺達を3人を1人で相手出来ると思ってるのか?」

 

「ま、無理だな」

 

 キリトさんが剣を抜いた。これが合図だ。

 

「「1人ならな!」」

 

 俺はヨルコさんとカインズさんの動きを制限していたザザのエストックを弾いた。

 

「システム外スキル、か。流石だな、スカーレット」

 

「俺は、お前らと再会出来る日を楽しみにしていたよ」

 

 こちらの動きを確認したジョニー・ブラックは、倒れていたシュミットさんに狙いを定めた。

 

「こいつがどうなってもいいのか!」

 

 だが、そこには既にシュミットさんの姿はない。

 

 レモンさんが既に救出済みだ。

 

「久しぶり、ジョニー・ブラック。片手剣じゃないから忘れたかもしれないけど、ウチは覚えてるよ」

 

「覚えてるに決まってんだろ、《狐殺(こさつ)》」

 

「それ、かわいくないから嫌なんだけど……」

 

 キリトさんは再びPoHの方を見る。

 

「これで3対3だ。それに人質もいないし、イーブン。いや、もうすぐ、援軍の攻略組30人も駆けつけるだろうな。いくらあんた達でも、攻略組30人を相手に出来ると思ってるのか?」

 

「……Suck」

 

 小さくそう罵ると、3人は逃げようとする。

 

「待てよ。逃げられるとでも思ってるのか? お前ら全員、ここで牢獄送りだよ」

 

 俺がそう言い、抜刀する。レモンさんも、シュミットさんに解毒ポーションを飲ませ、大剣を抜く。

 

「いいや、逃げるさ」

 

 するとPoHはパチンと指を鳴らす。

 

「なっ……!」

 

 現れたのは、20以上はいるオレンジプレイヤー。ギルドアイコンどれもはラフコフの物ではないが、オレンジギルドだろう。

 

「……《黒の剣士》。貴様だけは、いつか必ず地面に這わせてやる。だが、その前にこいつらに殺されるなよ。精々生き延びて、俺の期待に応えてくれよ」

 

 そう言って、PoH達はこの場を去って行った。俺は追いかけようとするが、キリトさんに止められる。

 

「レット、諦めろ。まずはこいつらからを何とかしよう。でも、殺すなよ。無力化するんだ」

 

「はいっ!」

 

 武器を店売りの物に変え、麻痺毒を用意する。

 

「はぁっ!」

 

 システム外スキルや麻痺毒を使い、次々と無力化していく俺達。しかし、装備の割にステータスが高い彼ら。

 

「キリトさん、こいつら」

 

「ああ。何でこんなに強いんだ……」

 

 彼らは時折腰の袋から数粒の豆を取り出し食べている。随分と余裕だな。

 

 俺達3人では3人を守りながらはキツそうだ。グラムロックさんを探しに行ったアスナさんを呼ぶべきだろうか……。

 

「おい、キリト。俺もやる。俺だって、攻略組だ」

 

「邪魔しないでシュミット!」

 

 レモンさんがシュミットさんに言う。

 

「お前から見れば、俺みたいな腰抜けなんか役に立たないかもしれないが、でも……」

 

「タンクがアタッカーより前に出るな。タンクはタンクらしく守ってて。それがあなたの仕事。ウチらが守れない分、ヨルコちゃん達を守って」

 

「……! 分かった、レモン」

 

「お礼はいらないよ。適材適所ってだけ。キリト、レット。ウチ本気出しちゃうから、フォローよろしく!」

 

「分かったよ、レモン」

 

「任せます、レモンさん!」

 

 レモンさんの刃はオレンジプレイヤー達の足にダメージを与える。足へのダメージはプレイヤーの動きを止める。その隙を突いて、俺とキリトさんは麻痺させ、拘束していく。

 

「これでっ、ラスト!」

 

 最後のプレイヤーを拘束し終え、俺達は座り込む。

 

「また会えて嬉しいよ、ヨルコさん。それに……初めましてと言うべきかな、カインズさん」

 

「全部終わったら、きちんとお詫びに伺うつもりだったんです。….…と言っても、信じてもらえないでしょうけど」

 

「そんな事ないよ。ウチはまたヨルコちゃんに会えただけで嬉しいよ」

 

 目に涙を浮かべ、再開を喜ぶレモンさん。さっきまで大剣をもって大暴れしていたとは思えない。

 

「キリトさん。俺、そろそろそいつらを連れて黒鉄宮に行きます。多分クラインさん達攻略組10数人と合流出来るはずなので」

 

「分かった。悪いな」

 

「いえ、この事件の事、後はお願いします」

 

「ウチも行くよ」

 

「ありがとうございます。では、ヨルコさん、カインズさん」

 

「じゃあね!」

 

 俺は縄を引っ張り、オレンジ達を連れて行く。後ろからレモンさんが剣で脅す。

 

 事件を解いたのはキリトさんとレモンさんだ。俺は今回何も出来てない。なのに、どうしてレモンさんはついてきたんだろう。

 

 

 俺達はあの後、クラインさん達に彼らを引き渡し、俺はレモンさんをホームまで送って行く。

 

 途中、キリトさんから事件解決の報告があった。やはり《指輪事件》の犯人はグリムロックさんだった。グリセルダさんとはリアルでも夫婦だったが、その愛情が姿を変え、所有欲となった事が動機だろう。

 

「レモンさん、よかったんですか、最後までいなくて」

 

「どうだろ。多分ウチ、その話聞いて、グリムロックを殴らずにはいられなかったかも。もしかしたら、シュミットの時以上にキレたかも」

 

「それは困りますね……」

 

 だが、なぜラフコフはあれだけのプレイヤーをあそこに連れて来ていたのだろう。あの展開さえ、予想出来ていたのだろうか。

 

「あいつら、何か変な豆食べてたね。もし、あれに何かあるのなら……」

 

「どうかしました?」

 

 レモンさんは「何でもない」と言って後ろ向きにこちらを見た。

 

「レット。ウチ、ラフコフを見た時、殺してやりたかった。あいつらは、昔ウチのいたパーティーを全壊させたんだ。でも、ダメだよね、復讐は」

 

「そうですね。殺しだけは、絶対にダメです」

 

 俺はそう答えた時、嘘をついた。だってあの時俺は、1人なら殺そうとしていたからだ。復讐はいけない事だ。でも、被害者遺族に、その権利はあるはずだ。

 

「また明日から攻略、頑張りましょうね」

 

「だね!」




【DATA】

・no data


次回もお楽しみに、

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。