ソードアート・オンライン 紅鬼と白悪魔   作:grey

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まぁ題名の通りです。本当に、この題名を考えるのが一番苦手です。話は、面白いかは別としてある程度は思いつくんです。そりゃ好きで書いてますから。でも、題名が難しい。内容を短い単語や文でまとめる様なものですから。多分、これからはより、適当な題名になりそうです。
更に、最近と今回、【DATA】に書く事がない。その内アンケートとかで、この作品について知りたい事などを募集するかもです。


12.決別

「そろそろ、正体を明かしたらどうだ、ヴァイス!」

 

 俺は声のボリュームを上げ、ナイトに告げる。

 

「……何言ってんだよ。俺がヴァイスだって? 流石に笑えないぜ、その冗談」

 

「どうしたナイト。普段の余裕がなくなってるぞ。いつもなら、“違う”と断言しなかったはずだ」

 

 ナイトは悔しそうにして溜息を吐いた。その後、右手を振り、ウィンドウを呼び出した。すると、ナイトの名前の横に、あの棺桶のアイコンが追加された。更に、装備を一度外し、シャツだけになった。次の瞬間、ナイトの装備はさっきまでのものよりもランクの高い物へと変わった。右腰には、白に、赤いラインが入った片手剣《クリムゾンヴァイス》。

 

「ハハハハハッ! いやぁ……流石キリト。いや、もう仲間じゃねぇから、呼び方変えた方がいいよな。《黒の剣士》は面倒いし、《ビーター》は可哀想か……。よし、じゃあブラッキー」

 

 呼び方を変えた。つまり、俺とナイトは仲間じゃない。そう宣告された。

 

「どうしてオレがヴァイスだと? いつ気づいた?」

 

「簡単だ。ベータテストの頃、お前が名乗っていた名がヴァイスだからだ。それだけで怪し過ぎる」

 

「ホントにそれだけか? お前はもう少し考えてると思ったんだけどなぁ」

 

 相変わらず、ナイトの観察眼には驚かさせられる。今まで、どんなに救われて来た事か……。

 

「理由は他にもあるさ。レットがヴァイスについて話した日から俺は、お前がヴァイスじゃない、という証拠を集めてた。アインクラッド中の情報屋を訪ねまくってな。でも、探せば探すほど、お前がヴァイスだという証拠ばかりが出て来たよ」

 

 本当にショックだった。仲間を、ただ助けたかっただけなのに、そのために無実を証明しようとしただけなのに、証明出来たのは望んでいた結果の真逆。

 

「そして、今日の出来事が決め手だ。ロザリアたちが言ってたのはお前の事だな。昨日、追いかけて行った後、あいつらと話したんだろ」

 

「ご名答、ほぼ満点解答だ。流石ブラッキー先生。で、これからどうするの? オレを捕まえる? それとも殺す?」

 

 開き直ったナイトは、どこまでも俺を煽る。確かに、今俺は、殺してやりたいぐらい怒っている。でも、そんな事、出来るはずがない。

 

「どれでもないよ。俺は、お前を説得する。どうして、こんな事をしてるんだ? 攻略組として、第1層から戦い続けているお前が。あの日、レットやアスナ、エギルたちを守るため、レットに攻撃をしたお前は、誰よりも辛そうな顔だったじゃないか! レットは誰よりもお前の無実を信じてた! なのに……どうしてお前は裏切ったんだ!」

 

「……はぁ。なぁ、ブラッキー。今時そういう力説で説得して改心させるとか、時代遅れ。結構冷めるんだけど。殺り合おうぜ、ブラッキー。それがシンプルで一番楽しいだろ」

 

 俺が仲間だと思ってたナイトは、もうここにはいないのだろうか? そもそも、攻略組のナイトとラフコフのナイト、どちらが本当のナイトなんだろう。

 

「俺は……お前とそんな事したくない! 今ならまたやり直せる。だから……「うるせぇよ」……ッ!」

 

 ナイトは剣を抜くと、ソードスキル《ヴォーパル・ストライク》を放つ。俺は突然の攻撃に対し、体を捻り、ダメージを軽減する事しか出来なかった。

 

「……ッ! ナイト……お前……」

 

 目の前には、剣を持ち、カーソルをオレンジに変えたナイトの姿。もう、既に遅かったのかもしれない。ナイトは、自力で戻る事の出来ない所まで来てしまっているのかもしれない。

 

「さぁ、ブラッキー、剣を抜け! オレを、楽しませてみろよ!」

 

 ナイトは俺に真っ直ぐ突っ込んで来る。俺は、どうすればいいのだろう。俺も……剣を抜かなければいけないのか……。ただ、俺は迷うだけで、剣を抜く事は出来なかった。

 

 だが、そんな俺とナイトの間に割って入った奴がいた。

 

「ナイト……。俺が、目を覚まさせてやるよ」

 

「クククッ。おもしれぇ、やれるもんならやってみろよ、紅鬼ぃ!」

 

「レット! まだ呼んでないぞ!」

 

 こうなる事を多少は予想して、レットをこの近くに待機させていた。ピナを生き返らせてすぐ、呼び出したのだ。でも、俺が連絡したら来させるつもりだったのに。

 

「すいません、キリトさん。でも、もう耐えられません。ヴァイス、いや、ナイトは俺が殺ります!」

 

「バカ! やめろ!」

 

 レットは俺の制止を聞かず、ナイトに向かって刃を振るう。ナイトの剣とぶつかり、激しい金属音が聞こえる。

 

「ナイト……。俺は信じてたんだぞ!」

 

「へぇ。オレも随分いい子だったんだな。それとも、オレってもしかして、演技の才能ある?」

 

 ふざけてる。ナイトは明らかに楽しんでいる。それに対して、レットの表情は険しい。一番ショックなのはレットなのだ。

 

 その時、背後に何者かが現れた。

 

「随分遅いと思ったら、こんな所で油を売ってたのか、ナイト」

 

 黒いポンチョに身を包んだ男。何度も、攻略組の間で話に出た奴。

 

「ラフコフの首領PoHか……」

 

「俺の事を知ってたのか」

 

「当たり前だ。殺人なんて事をやってる、狂った奴等のリーダーだからな」

 

 まずい……。ナイト1人ならともかく、PoHもとなると俺たち2人じゃキツいぞ。

 

「PoH、何の風の吹きまわしだよ。お前が迎えに来てくれるなんてな」

 

「心配してるんだ」

 

「心の篭ってねぇ、心配をどうも。で、何しに来たんだよ。《タイタンズハンド》なら不合格。殺しちゃいねぇが、ブラッキーが牢獄に入れたよ」

 

「そうか。ナイト、帰るぞ」

 

 何? 殺さないのか……?

 

「……分かった。命拾いしたな、お前ら。でも、次はねぇぜ。もう一度会う時、それがお前らの最期だ、ブラッキー、紅鬼」

 

 ナイトとPoHは《転移結晶》を持ち、離脱しようとする。今の俺たちに、2人を止める力も度胸もない。少なくとも、俺はプレイヤーの命を奪うと分かって尚、剣を振るう事は出来ない。

 

「待てよ! ナイト……お前ホントに!」

 

「うるせぇよ、紅鬼。勘違いしてる様だから、この際ハッキリさせておく。オレとお前らは最初から仲間でも何でもねぇ。オレの住む世界は、最初からコッチだ」

 

 俺もレットも、ナイトをただ見つめる事しか出来なかった。

 

「それと、最後にもう1個。オレは《隠蔽》をカンストしてる。950で、ギルドアイコンやHPが他人から見えなく出来る。1000で、フレンドからの索敵も回避出来る。もう、お前らがオレを探し出す事は出来ない」

 

 《隠蔽》にそんなスキルがあったのか……。おそらく、あのローブにも《隠蔽》へのボーナスがある。もう、《索敵》でも探せないだろう。

 

「転移! サンドロ!」

「転移、シファレス」

 

 ナイトとPoHが結晶を片手に唱える。これら2つの街は、街という程大きくはない、言わば村。そして、宿屋の部屋を除けば、《アンチクリミナルコード》が設定されていない。つまり、圏外村だ。オレンジプレイヤーが移動する場合は、迷宮区を通るか、その圏外村を転移先に指定するか、少し高いが、《回廊結晶》を使うしかない。

 

「……逃げられたな」

 

「はい。多分、転移先からまた転移するでしょうし、追いかけられませんね。ホントに、すいませんでした」

 

「いや、レットが気にする事ないさ。俺も、少し説得すれば改心してくれると思ってた。甘かったんだ」

 

 その後、情報屋の新聞によって、アインクラッドを震撼させるニュースが流れた。25層で軍が崩壊。50層で公開された、ヒースクリフのユニークスキル《神聖剣》。それ以来の大ニュースだった。

 

 

 ~ナイトside~

 

「【アインクラッドを脅かすレッドギルドのサブリーダー“ヴァイス”。その正体は攻略組《純白の騎士》ナイト】大きく出たなー、ヴァイス! ていうか、バラしちゃってよかったの?」

 

「うっせぇぞ、ジョニー。いいんだよ。どうせバラすんだ、時期なんてどうだっていいだろ。それと、ヴァイスって呼ぶな。オレはナイトだ」

 

 ヴァイスは、オレがベータテストをプレイしていた頃の名前だ。でも、ベータテストが終わって1週間ぐらい経った頃、こんな事ってあるんだ、と思うような事が起こった。オレは色々と荒れ、正規版はやるつもりはなかったが、茅場晶彦の言葉「これはゲームであっても遊びではない」という言葉にやはり惹かれた。そして、正式サービスが始まるのを期に別の名前でプレイする事にした。

 

 だから、ヴァイスの名をこのゲームで名乗った事は一度もない。レッドプレイヤーとしてのオレがこう呼ばれたのは、オレの剣の名前から勝手に呼ばれただけだ。

 

「分かったから、そんな怖い顔すんなよ、ナ・イ・ト。これでいいんだろ」

 

「分かればいい」

 

 次に口を開いたのはザザだった。

 

「でも、ナイト。良かったのか? 《アレ》と、一緒に、バラさなくて」

 

「ん? いいんだよ。攻略組のトッププレイヤーが一転、自分たちの命を脅かすレッドプレイヤー。これだけでも十分なインパクトだ。後は、攻略組がオレを捕まえに来た所で、《アレ》を公開する。その時の奴等の顔が楽しみだぜ! なぁ!」

 

 その時の事を想像しただけで、笑いが止まんねぇ。早く、もう一度捕まえに来いよ、攻略組。

 

「相変わらず素敵な性格だな、ナイト。俺は、お前のそういう所が気に入ってんだ。これからも、俺を楽しませてくれよ」

 

「任せとけ。さてと、結晶も使い過ぎたし、ちょっと調達してくるか。おーい、ベルデ、ルクス!」

 

 このギルドでも珍しいオレ直属の部下であるベルデの元に行く。そういや、シリカの言ってたのってコイツだったよな。

 

「ナイトさん、ルクスは今、グウェンの所ですよ。忘れたんですか?」

 

「そういやそうだった。あいつも女の子だしなぁ、友達との時間は邪魔しちゃ悪いよな」

 

「ナイトさん、言ってる事は割と優しいのに、顔が悪人ですよ。それも極悪の」

 

 オレは部下のそんな言葉に少し笑いながらも話す。

 

「……知ってる。それとさ、ベルデ。今日、竜使いん所行って来たんだよ。結構可愛かったよなぁ」

 

「……知りませんよ。俺はシリカって奴の事なんて」

 

 ふーん、そういう事な。

 

「あれ? オレ、シリカなんて言ってないんだけどなぁ」

 

「……ハメましたね」

 

「お前がチョロいだけ。何があったんだよ。お前もあいつと対して歳変わんねぇだろ。ああいうの、好みじゃねぇのかよ」

 

 何か、だんだん面白くなって来た。

 

「……別に。つぅか、ナイトさん、俺の事バラしてませんよね」

 

「あれ? 言っちゃまずかった?」

 

「当たり前じゃないですか! んな事したら……」

 

「んな事したら?」

 

「って、またハメられた。何でもないですよ。ただ、1年ぐらい、コンビ組んでただけです」

 

「……そうか。また、気が向いたら喋ってくれよな。じゃあ、ルクスが帰って来る前にグリーンに戻すか。頼むぜベルデ。後、もう何人かお前ら潜入員から手伝い出してくれ」

 

 この前やったら、ルクス含めて3人でも中々時間がかかった。

 

「……分かりました。でも、あんまり威嚇しないでくださいよ。それと、俺ばっかり話すの嫌なんですけど。ナイトさんの、昔話とかないんですか? 例えば、ラフコフに入った経緯とか」

 

「……ラフコフに入った経緯ねぇ。なぁベルデ、世の中、聞いていい事といけない事があるんだよ。いくらオレとお前の仲でもな」

 

 オレは静かに殺気で圧力をかける。まだ、それを誰かに知られるわけにはいかないんだ。

 

「……ッ! …………分かりました」




【DATA】

・no data


次回もお楽しみに!

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