やはり俺を中心とした短編集を作るのはまちがっている。   作:Maverick

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由比ヶ浜のバレンタインって聞くだけで戦慄する字面じゃないですか?少なくとも自分は食べたくないです。

今回ほんと短めです…いつの間にか終わってた。これが俺の由比ヶ浜愛の限界か(自分由比ヶ浜そんな好きじゃないんですよね)

では、どうぞ!


食った瞬間電撃くらったんだけど

今日は20××年2月14日、世間一般はこの日をバレンタインデーというらしい。

何でも昔バレンタインって人が死んだ日がこの日だからそう言われてるんだとか。

だったらアインシュタインが死んだ日はアインシュタインデーで、リンカーンが死んだ日はリンカーンデーなのかと言われれば、それは否である。

そもそもバレンタインって誰だよ。世界史でも聞いたことないぞ、そんな人。

 

「ヒッキー!!何ブツブツ言ってるの!」

 

とまあここまでの思索は簡単に言えば現実逃避である。勿論ぼっちの俺でもバレンタインデーくらい知ってるさ。あまり馬鹿にしないでくれ。え、そんなこと思ってない?ならいいや。

ともあれ俺は大学に入ってから既に一年が経とうとしている今、窮地に立たされている。

 

「いや、なんもない。これ食っても死なないよな?大丈夫だよな?」

 

俺の目の前にあるは、一見普通のチョコレート。しかし、作った人が人だから不安になるのも頷けるはずだ、

机を挟んでメロンを強調するように胸を張っている女の子は由比ヶ浜結衣。俺の彼女でこのチョコを作った張本人。例え彼女がいようと俺はぼっちであることを主張する!今は関係ないね、そんなこと。

 

「だ、大丈夫だし!…多分…きっと…おそらく」

 

怖いわ!だんだん声と確信を小さくしてくんじゃねーよ。さらに不安になるだろ。

全く、何故こうなったのか。俺は振り返っても仕方がない過去を思い出すこととした。

 

 

 

 

 

話の発端は今年の正月、小町と結衣と3人で初詣に行ったところから始まる、と思われる。なぜここで推量が入るかは後々話す。

 

「いやあ、すみませんね。小町までご一緒してしまって」

 

「いいよー、気にしないで」

 

「ああ、やっぱり初詣は小町たちと行きたいしな」

 

「ふーん、小町たちと…ねえ」

 

こら、小町ちゃん。何かを察したようにニマニマするのはやめなさい。結衣の顔が赤くなってるでしょうが。

付き合い始めて、初めての正月なのだが、俺はともかく結衣も交際には奥手でふたりで初詣に行きたくとも、どちらも誘えずにいた。家から大学に通っている俺は去年同様小町と行こうとしたのだが、小町にそれをあっけなく拒否され、小町が結衣先輩と3人で行きたいと言ったのでそれに乗っかった。

今までの小町なら俺と結衣を2人にしようと頑張ろうとするのでは、と思っていた。しかし小町いわく、もう相手が決まったから後はいざこざが出来ないように仲良くしていくつもりとのこと。この子ほんと策士。

何はともあれそれによりこうして3人で初詣に来ているというわけだ。

 

「さ、参詣も終わったし帰るか」

 

「ヒッキー相変わらずすぎだし!」

 

「お兄ちゃん、今のは小町的にポイント低いなあ。あ、そうだ結衣さん!」

 

俺へのポイント減少宣告をした小町は何やら結衣に話したいことがあるらしく、俺から離れたところでこそこそ話している。うん、さすが俺。妹と彼女と初詣に来てもぼっちになれる才は誰も彼もが持っているわけじゃないだろう。しかしこうなると潰さなければならない時間ができるのは自明の理なので、なぜ俺が心では結衣と呼んでいるかを改めて考えよう。

と言っても結衣がそろそろ名前で呼んでほしいなって言うのが悪いんですけどね!!なのでせめて心の中では結衣と呼ぶことによって、呼ぶ練習をしているのだ。いきなり呼ぶのは無理だし。

 

 

 

 

 

恐らくその時に小町と結衣が話し合っていたのだろう。が、本人達に確認したわけでもないので、推量に過ぎなかったわけだ。

小町ちゃん、確かに結衣からバレンタインのチョコを貰えるのは嬉しいんだけど、貴女この子の料理センス…いや、もはやあれは料理のセンスというより錬金のセンスか。ともかくそれを知らなかったのかと問い詰めたい。

 

「食べても死なないよな?」

 

「ヒッキー流石に酷すぎ…」

 

あ、ガチで凹ませてしまった。ええい、なるようになれだ!!俺は目の前の物体Xを口に放り込む。途端体に電流が走った。その後まもなく俺は命を狩られる寸前まで行き、結局代わりに意識だけ刈り取られた。

 

 

 

 

 

意識が覚醒するも俺の瞼は依然幕を下ろしている。このまま起きてしまえばまた食べることになるのではないかと怖い訳では無い。ほんとだからね!

が、一度落ち着くと柔らかいものの上にいることに気づく。しかし頭辺りのみ、なにか感触が違う。ついでに俺は横たわっている。不思議に思って目を開けるが、見えるのは天井のみ。上半身をあげる。

 

「あ、ヒッキー起きた?」

 

「…由比ヶ浜」

 

正直起きた時は膝枕かなーと疑ったがそれにしては頭の下の感触に違和感があった。起き上がってみると、何をされていたかよくわかる。どうやら俺は結衣に腕枕されていたらしい。場所はベッドなんだけど、どうやって俺を運んだんだこいつ。

 

「もー、せっかくのバレンタインなのにヒッキー寝すぎ!」

 

結衣も体を起こす。動作一つ一つに反応して動く胸に無意識に目がいく。が、我慢だ俺。まだそれをするべき時間ではない。白昼にするやつもいるらしいけどな。恥じらいを知れ!

 

「いや、どう考えてもお前のチョコが悪い。食った瞬間電撃くらったんだけど」

 

「ええ!そんなにまずかったの…」

 

まずいなんてそんなチャチなもんじゃねぇ。

 

「今何時だ?」

 

自分が何時間意識を沈めていたか気になる。結衣ではないが、俺とて付き合い始めて一回目のバレンタインを無下にしようとするほど落ちぶれちゃいない。ありきたりで気持ち悪いが、結衣の笑顔を、今日くらいは絶やしたくないものだ。

 

「えっと…5時だよ」

 

「よし、今から2人でチョコを作ろう。その後晩御飯食べて一息ついたらそのチョコ食べようぜ」

 

「…うん!」

 

こいつに悲しい顔はしていて欲しくない。幾度となく救われたその眩しい笑顔で、俺の傍に居続けて欲しい。

こういうバレンタインは日本中探してもないんじゃないだろうか。彼氏と彼女が2人で協力してチョコを作って、それを自分たちで食べる。でも、それでいい。それがいいんだ。世間のバレンタインは少し浮つきすぎてる気がする。俺たちみたいに大切な人と笑いあう時間を創り出せたのなら、それはもう誰よりも立派で素敵なバレンタインデーなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「料理上手くなったな…かなり頑張ったろ」

 

「うん!ゆきのんが昔付きっきりで教えてくれたからね」

 

「母さん、それって雪乃さんのこと?」

 

「雪ちゃん?」

 

「…いい加減それ直せよ」

 

「い、いいじゃんヒッキー!」

 

「それを言われたらお前もこいつらもヒッキーなんだが」




ほんと、短くなっちゃいました…。別に由比ヶ浜のことが好きでも嫌いでもないんですが、なんせ最近忙しいものですから。

もちろんホワイトデーに続編書きますからそれで許してください。

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