やはり俺を中心とした短編集を作るのはまちがっている。 作:Maverick
無謀だとわかってるんです。
それでも…それでも俺は……陽乃ssを書きたい!!
ちょーーっと胸糞展開です!!というか、両親クズ化しますた。お気を付けて…。
今回の場面設定…を言うとなかなかネタバレになるので深くは言いませんが…八幡年齢=彼女いない歴で素人童貞です。
ではでは…。
比企谷八幡は素人童貞である。
大学を卒業した頃はまだ抑えられた。しかし、しかしだ。28歳ごろに俺の性欲がエクスプロージョン!!を起こしてしまい、一人暮らしをしていたこともあり呼んでしまったのだ。そう、デリヘルを。
それから月イチで電話をかける日々。いやね、ちゃんと避妊してるから問題ないさ、うん。そして今日はその日。新たな出会いを求めるというか、毎度何かやらかすわたくしめは指名せずに運任せです。
この日ほど俺は指名していなかったことを良かったと思ったことは無い。
「さあ、そろそろかけるか」
こういうのって携帯からかけるべきじゃない気がしないでもないけど、家電ないんだよな、このアパート。
もはや電話帳の1つに追加されている連絡先に電話をかける。いつも通りに済ませ、女の人が来るのをしばらく待つ。にしても理性の化物とどこかのお姉さんに言われた俺がデリヘルを愛用するようになるとは…。人生とはわからんものですたい。
数分経って部屋着でぼけーっと座ってるとインターホンが鳴る。人間慣れると緊張しないというのは一部だけで、俺は毎回このドアを開ける瞬間はドキがムネムネしている。玄関に着きドアを開けると…。
「こんばんは!今日はう…ちの…比企谷くん?」
「……雪ノ下…さん?」
かつての魔王様がいらっしゃいました。
「まあ、これでも飲んで落ち着いてください」
そう言って俺はリビングで座っている陽乃さんにコーヒーをさしだす。陽乃さんに出せる程の高級品じゃないが、まあいいだろう。
「それで、なんで雪ノ下さんがデリヘルなんてやってるんですか?」
「そ、その前にうちの会社に電話かけてもいい?行く途中に体調悪くなったとか言っちゃうから」
「え、ええ。じゃあこっちからキャンセル入れときます」
「ご、ごめんね。追加料金もかかるのに」
今はそんなこと気にしてる場合ではないし、一人暮らしで金の管理は当たり前だが俺がしてるからそのへんは今月乗り切れば大丈夫だろう。てか、陽乃さんとこのかなりホワイトだな。それで許されるのか。
二人とも電話が終わり、向かい合う。
「……改めて、どうして雪ノ下さんがデリヘルしてるか。聞いても大丈夫ですか?」
「……うん、いいよ」
了承してくれたもののとても気分が良さそうには見えない。しかし、だからと言ってきっと何を言っても聞いてくれない人だ。待つしかない。
「実はね、私勘当されたの。だいたい一年と半年前くらいに」
「…勘当、ですか?なぜ雪ノ下さんほど優秀な人が?」
「そう、その優秀なのが問題だったの。私ね、大学院出た後は勿論お父さんの会社に入った。今言った通り、基本優秀な私はすべてうまくやってた。でもね、どんな人にも慢心は出来るからさ、全部トントン拍子で進んでたんだけどある大きなプロジェクトを任された時にね、あと一歩で倒産するところまでやっちゃったの。
そのせいでお父さんとお母さんはもう、頭でお湯がわかせるくらい怒ったの」
致し方ないだろう。自分の娘が傲慢で会社を倒産なんてどこのドラマだという話である。確かに、陽乃さんは優秀だ。しかし、優秀なだけだ。この世界のどこにも完璧な人はいない。欠点というものがあるからこそヒトは相互補完するのだ。しかし、彼女は違った。自分の欠点、何でもできるが故にここぞという時に油断してしまう癖を補完してくれる人は誰もいなかった。故に綻びが出来てしまった。
「それで、あっという間に雪乃ちゃんに私の場所が奪われちゃったの。雪乃ちゃんも優秀だから、私ほどじゃないけどね、文系に進んでたあの子でも私の代役になれた。寧ろ私を超えてる」
「…で、お金が無かったから仕事を探したと」
「そ、預金もあったんだけどそれもつい先月きれてね。お父さん達が何をしたかったのか分かんないけど、そう簡単に就職出来なかったから渋々この仕事を選んだの」
「大丈夫なんすか?もし戻ってこいとか言われたら」
「絶対ないよ…この前試しに電話してみたら『あら、昨年のダメ社員さん』とか言われちゃったんだもん」
陽乃さんは声を震わせながら呟く。その姿はあまりに切なく、見てるだけで息苦しかった。なんとかしてあげたい。何か、何かいい方法はないのか。誰も傷つくことのない、そんな方法が…。
「雪ノ下さん…いや、陽乃さん」
「な、なに?比企谷くん」
「ひとまず俺とヤってくれませんか?明日は有給とるんでまた明日考えましょう。ちゃんと避妊しますし、お金が必要なら勿論渡します」
何言ってんだ、この素人童貞って顔された。当たり前だ、こんなシリアスは朝だけで充分だって話だ。ってそれはシリアルだ。
「…いいよ、私はそのためにここにいるんだからね」
「俺なんだかんだで社畜してますから、有給そろそろ消化しないといけなかったんで。ありがとうございます」
このあと当たり障りnightしますた。ぶっちゃけると、陽乃さんがめっちゃくちゃ可愛かった。
朝起きると横には上に俺の普段使っているポロシャツを着た陽乃さんがいた…昨日俺こんなこと頼んでたのか…途中からふたりで酒飲みながらヤってたから記憶飛んでるわ。
朝チュンを感じながら天井のシミを数えていると横の陽乃さんが起きる。
「おはよ、八幡」
昨日からいつの間にか八幡と呼ばれているが別にいいだろう。ついこの前一色に『先輩って言っても社会人の一歳差なんてあってないものですから、八幡って呼びます!!』とか言われたし。いや、繋がり全くないな。
「おはようございます。朝飯どうしますか?」
「え、ご馳走になってもいいの?」
「大したもんは出来ませんよ」
どうやら食べるらしい。さて、料理してる間にどうするか考えますか。
「陽乃さん、何処ですか?ご飯できましたよ」
軽く作った後、陽乃さんを探すが部屋の中にはいない。何処だろうと家中を探そうと廊下に出ようとした時に陽乃さんは部屋に入ってきた。
「ごめんね。棚にあった歯ブラシ開けちゃった」
「別にいいですよ。買い置きしてますし」
「ありがと。……あ、朝ごはんだ。目玉焼きとソーセージと…普通だね?」
だから大したものはできないと言ったでしょう。陽乃さんは楽しそうにリビングの机の前に座る。一人暮らしだからダイニングに椅子は一つしかない。
「いいから食べますよ」
「はいはい。もう、つれないなぁ、八幡は」
「「いただきます」」
ふたりで手を合わせて朝ごはんを食べ始める。と、そうだ。
「陽乃さん」
「ふぁひ?」
「今日の予定教えてくれますか?俺、行きたいとこあるんですよ」
「……ゴクッ。そういえばそのへん決めないとね、まあ私はまだここに泊まる気だから。服とか持ってこようかな?」
「マジですか」
「マジですよ」
そう言って陽乃さんははにかむ。何この人、めっちゃ可愛い。雪ノ下には過干渉な人で厄介な人だなと思っていたけれど、やはりこの人も仮面を取ればただの女の子だ。寧ろ仮面に覆われていた心は常人よりやや子供っぽいかもしれない。
「じゃあ、俺しばらくデリヘル呼ばないんで夜の相手お願いしますね」
「いっそのこと同棲しちゃおっか。私働かずに八幡のこと待ってるよ?」
「俺の夢である専業主夫奪うのやめてくれます…?」
一瞬想像していいかなと思った自分を殴りたい。この人が俺と同棲とかちょっと現実味がない。
「八幡、私…これ以上汚れたくないな…」
「よし、買い物のついでにそのへんの手続きしてきましょうか。世界平和を考えれば消費電力とか減りますしいいですよね」
いや、無理。涙目上目遣いにプラスして谷間はあかん、谷間は。照れてそっぽ向いてついうんって言うてもーた。
「やったー!そうと決まれば早く出かける準備してよ、八幡!」
「そういう陽乃さんも。あなた俺のポロシャツ着たまんまじゃないですか」
「あ…。わ、私着替えないじゃん」
「……出かけるのは昼からにしますか」
そういうとえへへと笑って、ポロシャツを脱ぎ始める。ちょちょちょ、ここで着替えるのん?着替えても着るものないよ?
「また服貸して。部屋着かなにか」
「……うす」
ですよね。
そんなことからはや半年。本当に同棲しちゃった俺たちは今日、もう何回目かわからない当たり障りnightの日を迎えた。
「じゃあ、八幡。今日もしよっか」
「そ、その前に。少しいいですか?」
「どうしたの?」
勇気を振り絞れ!!!俺ならできる、俺ならできる。一度呼吸を整え、動悸を整える。ゆっくり息を吸って、言葉を紡ぐ…。
「避妊、しなくてもいいですか?…俺、陽乃さんとの子供欲しいです」
あまりにも恥ずかしすぎて陽乃さんのほうを見れない。そっぽ向いて頬をかいていると前から衝撃がきた。勿論、陽乃さんである。
「……いいよ。できちゃった婚…シよ?」
こんな青春ラブコメ間違っている?
もうそんな歳じゃない、大人ってのは間違ってナンボだろ?
……ごめんなさい。ただ、ただそれだけ。