読者達のアインクラッド   作:秋宮 のん

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外伝ストーリーなので短いです。
それでも少し時間かかっちゃいました。


第二章クエスト01:サヤの手作りクッキング

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「第三層~~~~~~っ!!」

 両手を上げて万歳する僕。

 アクティベートされた転移門を潜り、僕達は遂にこの地にやってきた。

 この層から僕達プレイヤーにはギルドを作る事が許される。僕はここでギルドを作り、まずは目標の第一歩に向けて歩み始める。

 新しい仲間、ルナゼスを加え、僕達の三層の物語が今始まる!

「っと言うわけで、パーティーを一旦解散させたいと思います」

「いきなりどうしたのウィセ~~~~~~っ!!?」

 あまりの唐突さに、泣き出してしまった僕。ウィセは嫌そうな顔をしながら片手を振って宥めてくる。

「ただの合理性の話です。最後まで聞いてください」

「うん………」

 いつかこのパーティーはバラバラになるかもしれないとは覚悟してるけど、それでも脈絡なさ過ぎるとビックリするよ。

 僕の涙が収まらない内に、ウィセは説明を始める。

「三層に入った時点で、私達パーティーのリーダーとなっているサヤは、何を目的に動きますか?」

「もちろん。ギルドリー()ーのクエストを受けるよ」

「『リー()ー』ですよ? ………そのクエストは、アナタ一人しか受けられませんし、私達が手伝える事はありません。おまけに要領の悪いアナタがそのレベルですぐにクリアできるとも思えませんし。従って、私達は大変手持無沙汰なんですよ。その間は個人的にレベリングなどに努めても構わないのではないですか? 皆さん、やりたい事とか色々目的もあるでしょうし?」

 ウィセの言葉に皆も頷いてきた。

 集合場所として、皆で同じ宿にはチェックしておくけど、基本的には全員別行動が決まってしまったみたい。

 まあ、仕方ないよね? 皆だってやりたい事があるわけだし。

 それに、僕も一つ、個人的な用があったし………。

 

 

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 第三層にて、カノンは困った状況に陥っていた。

 っと言うのも、現在組んでいるパーティーメンバーから御使いを頼まれたのだが、その内容が素材アイテムの回収で、フィールドに出なければいけないと言う事だ。

「う~~~ん、さすがに僕のレベルでソロは危険ですよね~~~?」

 誰にともなく呟き、カノンは周囲に目くばせする。

 SAOは普通のMMORPGとは違い、一度パーティーを組んでしまうと、それが定着化する事が多い。命を掛けたデスゲームである以上、信頼できる仲間から離れたがる酔狂な人間もいないと言う事だ。そのため、訳あって一人でフィールドを出なくてはならなくなり、一時の旅のお供にパーティーを組もうと思っても、気軽に誘える相手など見つかるはずがない。

(これがデスゲームじゃなかったら、ソロでやってみるか? って、開き直れるんだけど………)

 考えても仕方ない。カノンはとりあえずフィールドに向かって足を進める。

「あれ?」

「ん?」

 フィールド前の門前。そこで彼女と再会した。

 華奢な身体つきに、濡れ羽色の黒髪。黒曜石の様な瞳で見上げ、青い振袖をパタパタしている槍使いの女の子。つい数日前に二層で、一月前には一層で、どちらも彼女の命を救った事がある。

「カノンだ!」

「サヤさん? こんな所でまた一人ですか? ………他の皆さんは?」

「一旦解散。僕が『ギルドリーダー』取るまでは皆身動きとれなくなっちゃうから」

「サヤさんもですか?」

「カノンも?」

「はい。僕もメンバーが一人『ギルドリーダー』の資格狙いで行動しているので、しばらく解散です。ついでに御使い頼まれちゃいました」

「御使い? なにするの?」

「この階層のフィールドMobからドロップできる素材アイテムを集めに」

「そうなの? じゃあ、僕と似てるかも! 僕は食材アイテムを集めに行くところなんだ!」

「食材を?」

「うん! ≪料理スキル≫取ったの! ココ、御飯が病院食よりまずいから!」

 そんな元気に言わなくても………。苦笑を浮かべるカノンは、それならと、彼女に提案してみる。

「「そうだ! しばらく一緒にパーティー組まない?」」

 見事に声が揃った。

 カノンが可笑しそうに笑いを堪えていると、サヤの顔が恥ずかしそうにドンドン赤くなっていく。あまり女の子っぽく照れる姿を見られない彼女だが、どうやら今のは彼女的に恥ずかしい事だったようだ。

(基準が解らないだけで、やっぱり女の子なんだな………)

 基準漏れが全て子供属性と言うのはどうなのかとも思えたが、あまり深く考えないで上げる事にした。

「よし、それじゃあ行こうか?」

 恥ずかしがってしまったサヤの代わりに、カノンは率先して先導した。

 

 

 2

 

 

 向かってきた≪レッサートリス≫と言う鶏みたいなモンスター三体を、サヤは見事な槍捌きで払いのける。

 ヘイトがやたらと溜まっているのか、鶏もどき達は執拗にサヤに襲い掛かるのだが、彼女は慌てた様子も無く、矛先と石突で払いのけ、攻撃を命中させない。かと言って強い攻撃も当てないので、鶏もどきは攻撃の手を弱めない。自分達のヒットポイントが確実に減らされている事に気づいていない様に。

 とあるタイミングで、サヤが大きく動いた。殆どノーモーションで槍を大きく振り払い、三羽の鶏もどきを押しのけたのだ。

「スイッチ!」

 タイミング良く、カノンが叫び前後を入れ替える。

 カノンのソードスキルがヒットポイントを削られていた鶏もどきを襲い、一度にポリゴンの破片として消し去った。

 ストレージを確認しながらカノンは舌を巻いていた。

 サヤが戦う姿を見るのは初めてだったが、彼女の戦い方はとても理想的だった。

 『強い』のではない『理想的』なのだ。

 彼女の戦い方は多対一にとても適している。そして、集団でもソロでも無く、『パートナー』との戦いを得意としている。

 自分の戦いは集中し、必ずパートナーのために最大のチャンスを作る。それまでの間は相手を捌くだけで無理をしない。故に、相方は安心して見ていられる。

 何よりカノンが驚いたのは、サヤは『攻撃的であり、守備に長けている』っと言う矛盾した面が両立している事だ。

 攻める時は必ず先手を打ち込み、相手の間合い深くに入り込む。遠距離タイプの槍スキルにも拘らず、彼女の槍の使い方に遠、近、中を感じさせない戦い方をする。

 守る時は敵集団の中心でひたすら捌き、絶対にまともに攻撃を受けない。体術スキルがある所為で、無理に突っ込んで来る相手も逆にカウンターで殴り飛ばしている。

 だが、彼女一人なら、何処か危なっかしい傾向は見られた。『攻撃的』なところだ。もし、彼女が一人だったなら、彼女は猪突猛進に、ただ攻撃だけを優先していた事だろう。そうなっていたら、この子はすぐにヒットポイントをすり減らし、今頃ポリゴンの欠片になっていたかもしれない。

(本当に、誰かと共にあるために生まれた様な子だな………)

 リポップの早いフィールドなため、新たなニワトリたちが出現してくる。

 カノンとサヤは、示し合わせたわけでも無く、自然と背中合わせになり、互いの死角を埋め合う。

 この時、サヤが背中をくっつけない様に僅かに距離を取った事には苦笑を浮かべてしまう。

(サヤさん、あんまり触られるの得意じゃないって言ってたけど、こう言う時もダメなんだな~~………)

 それだけに思い出してしまう。

 あの時、自分を助けてくれた恩人だと気付いたサヤが、自分を呼びとめ、手を取ってまでお礼を言ってくれた姿。彼女の触れられるのが苦手と言う事実を知った今では、あの行為がとても胸に来てしまう。

(本当に、自分の想いを伝えるためなら、一生懸命になる子なんだな)

 まるで子供が、大好きなお兄ちゃんへ下手なりにお礼をしようとしているみたいで、カノンは照れた様な笑みを浮かべてしまう。

「カノン? どうかしたの? さっきからずっと笑ってるけど?」

「い、いや、何でも無いよ!」

 背中越しにサヤに問いかけられ、慌ててしまうカノン。

 そんなに自分はニヤニヤしてしまっただろうか? 少し自重しなければ。

「………あれ?」

 ふと彼は思い至る。

 サヤと自分は、戦闘が開始されてからずっと、互いの表情を見る暇も無く、背中合わせに戦っている。それなのにどうしてサヤは自分が笑っていた事に気付いたのだろう?

(声でも漏らしちゃってたかな?)

「カノン、左―――じゃなくて右から大きいのが来てるよ」

「え?」

 サヤの声に従って右を見ると、確かに大きめの鶏もどきが飛び掛かってきている。

 気付くのが早かったおかげで、何の苦も無く叩き潰せた。

 そして思う。またサヤは後ろを振り返らずに敵の動きを察知して助言までしてきた。一体これはどう言う事だろう?

 疑問に思って、視線を後ろに向けると―――そこでカノンは驚愕してしまう。

 サヤは、戦闘中にも拘らず、目を瞑って戦っていたのだ。それも、実際に瞼を閉じているところを見ない限り、そうと解らない程、鮮やかで優雅な、とても自然体の動きなのだ。

 以前見た、サヤの仲間で同じ槍使いのタドコロ、彼の槍捌きは、まるで槍自身が意思を持っているかのような印象を得た。それはサヤも同じなのだが、タドコロの槍は『蛇』にも思える。主の身体や腕を縦横無尽に動き回り、敵の喉笛に牙を突きつける『蛇』その物。対するサヤは、“槍捌き”と言うより“バトン繰り”という印象を持たせる。同じ意思を持った槍でも、彼女の槍は小動物、さしずめ『リス』と言ったところだろうか? 主と一緒に身体全体を使って遊び回る、鋭い牙を持った二匹の小動物。そんな風に見えなくもない。

 目を瞑っている彼女は、本当に『リス』になった槍と遊んでいるかのようで、森の妖精と言う印象まで与えられた。

(って!? なに恥ずかしい発想してるんだ僕はっ!?)

 そう思っても印象は変わらない。

 サヤの優雅さは、否―――、サヤと言う人物は、目を閉じている時の方が、本当の姿を晒しているかのように、とても優美で大人びて見える。

「………、今ならアレ使っても大丈夫かな?」

 ポツリと呟いたサヤが、右手をダンスの一部であるかのような自然な動きで動かし、何かを操作した。瞬間、彼女が持っていた槍≪アイアン・アングル≫が消え、別の槍が出現した。槍の名は≪ショートランス≫、片手剣ほどの短い槍、『短槍』だった。

 刹那にダンスのリズムが変わった。

 先程までが、森をイメージにした静かで優雅な森の妖精なら、今やっているのは小動物とニンフが互いにじゃれつく軽快なマーチの様だ。

「うわ………」

 カノンは我慢できずに声を漏らした。

 サヤの動きは、優雅さから軽快な物に変わっている。だと言うのに、その大人びた姿は全く衰える事無く、むしろ、森の中に住む小動物達と戯れる女神がいるかのように神秘的だった。

 それ故に、カノンは気付いてしまった。

 こんなに軽快で、楽しいはずのリズムで、ここまで大人びた姿をさらせるのは………痛みを知る者だけだ。

 現実の世界で、彼女は抱えたくもない、決して避けられない痛みをその身に負っている。だから、それから解放されるSAOの中でだけ、彼女は全身全霊を傾ける事が出来るのだ。

 それでも現実を忘れる事は出来ず、目を背ける事も出来ない。その『現実』と言う理解が、彼女を大人びて見させるのかもしれない。

 彼女の抱える『痛み』それがなんなのかは気になった。

 それでも、彼は訪ねる事はしない。

(だって、僕はもう、見ちゃってるから………)

 カノンは、脳裏にとあるビジョンを思い浮かべ、気持ちを切り替える様に戦いに集中していく。

 彼の脳裏に思い浮かべられたのは―――笑顔の裏で、怯えて泣いている、サヤの姿だった。

 

 

 3

 

 

 あらかた食材を手に入れた二人は、街に戻ると、カノンの間借りしている宿の厨房を借り、さっそく料理を開始する事にした。

 サヤが、手伝ってもらったお礼に、カノンに料理を作ると言いだしたのだ

「今まで、アインクラッドの料理は、皆味音痴だってよく解る食べ物ばかりだったからね! 美味しい物を食べるために、ここで料理スキルをガンガン上げるよ!」

「サヤさん、気合が入ってるね」

 拙い動きでアイテムの卵をオブジェクト化し、あれこれ戸惑いながら料理を進行していくサヤの姿は、正真正銘、初めて料理にチャレンジする子供の姿丸出しで、かなり可愛らしい物がある。

(現実だったら、むしろ危なっかしくてハラハラしてたんだろうなぁ。ここがSAOで良かった)

「え、えっと………? ここをタップすれば火が付くのかな? うひゃあっ!? 手を付いてるところがいきなり燃えたっ!?」

(ほ、本当にSAOで良かった………)

 現実なら火傷である。

「え~~~? え~っと? これは数字だから………? タ、イ、マ、ー? ああ、完成までの残り時間ね? こっちは………数字? えっと………3? あ、三分ね!」

(SAOで苦戦している!?)

 文字がスラスラ読めないサヤは、表示される数字や文字を、必死に思い出しながら読み上げ、時間を掛けながら意味を理解していく。

(それでも数字くらいは知ってようよ! ステータスとかにも問題が出るよ!?)

 文字が読めないという事実を直感的に理解しながら、カノンは別の意味危うさを感じずにはいられない。

 

 三十分後………。

 

「ただ焼くだけなのに………、ただ焼くだけなのに………、ただ焼くだけなのに………」

 黒焦げになっている物体×10を前に、サヤは恨めしい声を漏らす。

 俯くと長い髪が顔を隠すので、怪談に出てくる典型的なお化けの様でかなり怖い。

「ま、まあまあ、熟練度0じゃ、こんなモノだよ? もう十個も作ったんだから、それなりにレベルアップしてるって? ね?」

「う、うん………、がんばる………」

 涙をいっぱい溜めた瞳で、サヤは何回も繰り返した操作を続ける。

 三分後にできたのは『炭』だった。

「いっそ、この炭を食べると言う選択肢も………」

「どんな思考でそんな選択肢にっ!? そんな選択肢は存在してないよっ!?」

 考え方が末期だ。カノンは、この少女がどんだけ食に飢えているのかと心配になってきた。

 だが、そうでなくても失敗続きと言うのは良いもではない。一度も成功しなければ気も滅入り、変な事を考える様にだってなると言うものだ。何とかしてあげられないものだろうかと考えるが、カノンに良い案など思いつかない。自分には料理スキルは無いし、それ以外のアイディアなど………、いや、一つだけ方法がある事に思い付いた。確かにこれでサヤはいとも簡単に笑っていた。いや、しかし、それを自分がやって良いものか? 空気と言うものがあるのではないか? いくらサヤが子供っぽいとは言え、場の空気を無視した発言に、彼女が乗ってくるかどうか………?

 悩むカノンだったが、どんよりした空気のまま料理を続けるサヤを見ていて、覚悟が決まった。決まってしまった。

「さ、サヤさん………っ!」

「ん? なに………?」

 涙目のサヤがこちらを向く。

 カノンは冷や汗が流れ出す気持ちで、恥ずかしさを我慢して―――敬礼してみた。

「コ、コンドルワッ!」

「………」

 やっちまった~~~っ! っと言う空気が一瞬にして場を満たす。これは想像以上に恥ずかしい。やった事をかなり後悔してしまう。場の空気はやっぱり読むべきだ。このネタは自分がやっても面白くは無い! こんなモノはタドコロの分野なのだ!

 物凄い後悔の渦に呑み込まれながら、カノンは顔を真っ赤にして敬礼ポーズのまま固まってしまう。

「…………ぷっ」

「え?」

「あはははははははっ!」

 一瞬の静寂の後、サヤは可笑しそうに声を上げて笑いだした。

 目に溜まっていた涙が、ぽろぽろと落ちて、目元を指で拭う。

「な、なんで今、それ言うの………っ! あははははっ! い、いきなりだったから、不意打ちで………っ! あははははははっ!」

「は、はは………っ」

 ここに『箸が転んでも面白い』タイプの人間がいる事を、少年は目撃する事になった。

(幸せな人だ………本気で………)

「あ、今度は上手くいった?」

(そしてなんてタイミングのミラクルッ!?)

 ここに、笑いの神に愛されているのではないかと言う人物がいる事を、少年は知る事になった。

 こうして少年と少女は一歩ずつ大人になって行くのである。

 

 

 4

 

 

 サヤがまともに卵焼き(の様な物)を作れるようになった頃には、外も暗くなり、一旦集合場所の宿に戻ろうと言う時間帯になっていた。

「今日はありがとうねカノン。おかげで美味しい料理が作れるようになりました」

「ううん、僕もサヤさんの卵焼きが食べられて嬉しかったよ。アインクラッドじゃ、卵焼き一つでも中々あり付けない味だからね」

 サヤの作った卵焼きの味を思い出しながら、カノンは嬉しそうに語った。

 彼女の作った卵焼きは、本当に普通の卵焼きで、何か特別な味付けがされていたわけでもないのだが、このSAOでは中々あり付けない馴染みのある味だったので、大変満足している。

「そう言ってもらえたなら嬉しいよ。僕も作った甲斐が………あ」

 ずっと笑っていたはずのサヤが、唐突に、何かに気付いた様に黙り込むと、恥ずかしそうに頬を染めて、指同士を絡めてもじもじし始めた。

 彼女にしては珍しい反応に、カノンは首を傾げてしまう。

「どうかしたの?」

「あ、えっとね………? その………」

 迷った様子で恥ずかしそうに視線を彷徨わせていたサヤは、最後に俯いてしまいながらも、カノンを上目使いで見やりながら呟く。

「男の子に手料理を食べてもらうなんて………初めてだなって………」

「――――っ!!?」

「じゃ、じゃあね! 今日はありがとうカノン! バイバイ~~~ッ!」

 恥ずかしそうに頬を染めたサヤは、逃げるように手を振って走り去る。

 一人残されたカノンは、サヤが居なくなったのを確認してから大きく息を吐いた。

「ふ、不意打ちだ~~~~~~~………」

 へなへなと地面に座り込むカノンは、射抜かれた様にキュンッとした胸を押さえ、顔を真っ赤にしていた。

「あ、あんなに女の子っぽい事………サヤさんも言うんだな………」

 当然と言えば当然なのだろうが、子供っぽいのが普通だと思っていたカノンにとって、これは正に不意打ちと言う他に無い物であった。

(まずい………っ、危うく落ちかけた………)

 子供っぽい女の子の、本当に女の子っぽい姿を見て惚れてしまったら、自分が惚れ易い男みたいで情けない気もする。っというか、今ので落ちたら「コイツ俺に惚れてね?」みたいな考え方と同じようで恥ずかしい。カノンは自重しながら立ち上がる。

「アツアツでござったな」

「サスケさ~~~~~んっ!?」

 起き上がってすぐ目の前に、≪シミター≫を背負った忍び風がおわすった。

「い、いつから見てたんですかっ!?」

「『コンドルワッ!』」←(ビシッ! っと敬礼)

「一番恥ずかしい所から見られてた~~~~~っ!?」

 カノンはこの日の事を、色々な意味で忘れられなくなってしまった。

 

 

 5

 

 

 宿に戻ったサヤは、さっそく皆に覚えたての卵焼きを振舞っていた。

「オオッ、意外に上手い。ただの卵焼きがコンナに上手く感じるとは………!?」

「おいしいよサヤちゃん。何か久しぶりにまともな食事にありつけた気がするよ」

「おおっ! 美味えぇ………! SAOでこんなモノにありつけるとは………!」

「はい。これに関してはサヤもお手柄だと思います」

 ケン、マサ、ルナゼス、ウィセは、それぞれ絶賛の声を上げて少ない卵焼きを味わっている。皆の意見に満足そうな笑みを浮かべるサヤ。

「おお、おお、皆顔が弛んでるねぇ~~? それでお嬢ちゃん? おっさんの分は何処かな?」

「え? た、タドコロの、分………?」

「まさかいつも通りスルーされてたりしないよな………?」

「そ、その………、ちゃんと忘れずに作ってたんだけど………」

「大マジかっ!? 実は、何気に覚悟してたけど嬉しい御報告だぜ! それでおっさんの分は!?」

 サヤ微妙な視線を逸らしつつ、反対方向を指さす。指された先には消し済みの山が転がっていた。

「………なにこれ?」

「タドコロの分も忘れずに作っていたんだけど………、何故かタドコロの分だけ連続で失敗が続いて………、気付いたら材料無くなっちゃってました………」

「うっそ~~~~んっ!?」

 絶叫するタドコロ。

 その事実を知った全員がすぐさま行動に移す。

 ケンは急いで残りを平らげ、口の中でじっくり味わう。

 マサは皿を持ち上げると、そのまま別室に向けて移動を開始。

 ルナゼスはタドコロとの距離を図りながら、食べるペースを上げる。

 ウィセは普通に背に隠した。

「お前ら少しは年長者に分けようって気はないのか!?」

「モフ、もフモフもっふ、ふも………っ」

「呑み込んでから喋れケンッ!」

「……………ッ」

「警戒し過ぎだナスッ(ルナゼスの事)!」

「一人分は一人分にしか分けられません」

「尤もらしい事言って背中に隠してんじゃねえよ姫さんよ~~~っ!?」

 マサは既にいない。

 サヤは手を合わせて、騒ぐタドコロの背に謝った。

「ごめんタドコロ………、今度はタドコロの分を先に作っておくね………」

 




現在、フラグが付いているのはサヤだけなので、ちょっとまとめてみました。
現状、サヤとの関係性。

マサ:守らなければならない女の子

ケン:妹みたいな子

カノン:女の子として意識し始めた。

ウィセ:「私にはよく解りません」

次回、イベントでは他のメンバーでフラグを立ててみたいですね。同性というのも面白そうです………(ニヤリ)

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