読者達のアインクラッド   作:秋宮 のん

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『妖叨の叫び』さん提供。
グランドクエスト中に載せて欲しいとのお願いでしたので、辻褄合わせで色々付け足したり修正したりしています。
『妖叨の叫び』さんは、気に入らない修正をされているところがありましたら、すぐに御連絡下さい。


第五章:アレンサイドストーリー

 

―――僕は、所詮。一匹狼だ。

 

 これが、SAO(ソードアート・オンライン)に置いてアレンの口癖であった。

 

 

 

 

 

 

 第10層 迷宮区・・・

 

 冷たい風が吹く中、最前線付近の迷宮区を一人でモンスターを倒し続ける。

 正直、アレンも何故そうしたのか分からない。ただ、これだけは言える。

 

 僕には、一人がお似合い。か・・・

 

 ルナゼスの“ガス抜き”を終えたアレンは、≪デパチカ≫には戻らず、迷宮区に入ってレベル上げをしていた。今は、石を身体に纏っているような歪な形をしているモンスターを相手している。

 

(さすがは最前線のモンスター。前の層とは格段に強いな)

 

 カタナ(愛刀)の≪月露(つくゆ)≫を構え、ソードスキルのモーションに入る。

 だっ! と迷宮区の地面を蹴る。モンスターとの距離はおよそ3.5m。

 カタナの単発突進ソードスキル≪(くちなわ)≫を放つ。

 岩モンスターの反撃を受けながらも、しっかりとHPを0にする。

 そして、いつも通り岩のモンスターはポリゴンの欠片となって消える。

 元々は≪曲刀≫が主装備(メインウエイポン)だったアレンだが、8層辺りで≪カタナ≫スキルを獲得した。最初こそ戸惑っていたモノの「そう言えば、6層のボス戦の時にウィセさんがなんかかんか言ってたな?」っと思い出し、使ってみると案外馴染めて重宝している。

 

(とりあえず、《曲刀》が《刀》に変わっただけだ。何ら変化はない)

 

 まだ、愛着の出来た≪曲刀≫スキルの未練を、生きるためと自分に言い聞かせ、この下宿先に戻る。おそらく、今日中に攻略が再開される事はまずないはずだ。

 ルナゼスをたき付けたアレンだったが、それですぐに何かがどうこうなるとは思っていなかったのだ。

 最前線付近は殆どが攻略組とNPCしかいないモノだが、それでもいろんな人でごったがえっている。

 

「中心街は僕の性にに合わないな」

 

 独り言をつぶやき、裏口に回りいつもの下宿先に行く。

 

 

 

 

///

 

 

 

 戸を開け、電気代わりのランタンを点け、すぐさまベットにダイブ。

 そして、なんとも言えない睡魔が襲いかかる。

 そこでアレンの意識はどこかえ飛んでいった。

 

 

 

///

 

 

 

 ソードアート・オンラインを始める前だった。

 アレンこと秋元 鎌(あきもと れん)は物ごころついた時にはつでに父親から暴力を受けていた。

 その時から感情をできる限り抑えてきた。

 そして、鎌の人生の羅針盤が狂い始めた。

 鎌が学校から帰って来た時だった。

 家の方から母の悲鳴が聞こえ、急いで家に帰ると父が料理で使う刃渡りおよそ20センチほどの出刃包丁を母に向けていた。

 その光景に息をのんだ。

 もしかしたら、母が殺されるのかもしれない。

 いつも、父の暴力が終わると母がそっとそれでいて優しく抱きしめて「ごめんね、鎌」そう言って涙を流していた。

 その優しい母が殺されようとしている。

 一瞬、逃げそうになった。が、逃げたら母はどうなる? 逃げたら僕に愛情をくれるのは?

 そう思うとやることは一つだった。

 

「ああああああああああ!」

 

 絶叫しながらそして、目から涙を流しながらランドセルを振りかぶり父に向かう。

 母を死なせてたまるか。

 これ以上、母を悲しませるな!

 その思いをランドセルの金具が父の脛に当たり反射的に出刃包丁を落とす父。

 それをすかさず拾い、震える右手を左手で抑えるが左手にも震えが写る。

 

「ああ!? 餓鬼が! 死にたいんか!」

 

 びくっと体が震える。

 手の震えが大きくなる。

 ここで、逃げられない。逃げたくなかった。

 初めて、父に向かって反抗的な目と態度をとる。

 これは、殺意だろうか?

 そう思った瞬間、父が出刃包丁を奪うべく突進してくる。

 来るな!

 心の中で絶叫し目を瞑り出刃包丁を突き出す。

 

 ぐさっ。

 

 嫌な音が耳に届く。

 目を開けると、出刃包丁が父の胸の刺さっていた。

 

「あ、ああ・・・・」

 

 そこで、意識が途切れた。

 

 

///

 

 

 その後、鎌は警察で事情を聞かれ少年法で裁かれた。

 母は、病院に搬送され治療を行っていた。

 久しぶりに母と合うべく病室に行き、母の放った言葉に鎌は絶望した。

 

「この人殺し!」

 

 ぬるい涙が頬を這う。

 僕は今まで何をしてきたんだ?

 僕はなんでこんなこと言われないといけないんだ?

 僕はなんでここに居るんだ?

 僕なんで生まれてきたんだ?

 僕は・・・・・・・・

 

 

 

 

「あ、ああああああああああああああああああああああああ!」

 

 

 

 

 鎌の絶叫が病室にこだまする。

 今までの事を忘れ、母の愛を忘れ、涙を自分の喉で味わいながら母に殴りかかろうとしたとき、さっきの絶叫が聞こえたからか複数のナースや医者が止めに入る。

 なんで・・・!

 なんで・・・!

 大人に抗いながら母に殴りかかろうとしたとき、誰かに何かを注射され意識が飛んだ。

 

 

 

 

///

 

 

 

 病室での一件の後、鎌は母の実家に預けられた。

 そこでは、肩身の狭い思いをしながら過ごした。

 転校した学校では、なぜか鎌が父を殺した事が早くもいきわたっており、いじめの対象になっていた。

 いつものように下校していると、4人の同級生にからまれる。

 

「お前、自分の親を殺したんだってな。母ちゃんが言ってたぞ」

 

 そう言って鎌の事を嘲笑う。

 

「そうそう、それで母親にも失望されたんだって」

 

「そうなのか!?ははははっ!おもしろっ!」

 

「「「「ははははは」」」」

 

「・・・に・・・・か・・る」

 

 反抗的な目つきをする。

 

「お、なんだ? やるのか?」

 

 素人の構えを取る同級生。

 それにともない、あとの3人も構える。

 

「お前らに! 僕の何が分かる!」

 

 そう叫び、拳を振るう。

 これが、いつもの事になるようになった。

 

 

 

///

 

 

 

「ソードアート・オンライン・・・?」

 

 テレビのCMでそんな事を言っていた。

 仮想空間・・・これなら。

 一抹の希望を抱き、その日は学校を休み、SAOのソフトとナ―ヴギアを購入した。

 

///

 

 

 そして、その当日にはログインして仮想空間を楽しんだ。

 しかし長い間人と接する事をしていないためにどうすれば分からなかったと時に、システムアナウンスでこのゲームは100層まで行かないとクリアできない現実を思い知らされた。

 鎌は心の中で思った。

 

(人の為に生きるんじゃなくて。自分の為に生きないと・・・)

 

 心の中で決意を固めた。

 

 

 

///

 

 

 

「・・・・・? おっと・・・・寝てしまったようだ・・・?」

 

 重たい瞼を開けながら手の甲で目をこする。

 

「嫌な事を思い出してたな・・・」

 

 そんな事を思いながらも、≪月露≫を手に取る。

 そうだ。僕は人の為に生きるんじゃない。

 自分の為に生ないといけない。

 

「さて≪カタナ≫スキルの熟練度上げにでも行くか」

 

 誰もいない空間に一人つぶやきながら腰を上げる。外はまだ暗く、アレからそんなに時間も経っていない様子だ。

 練度上げも、もちろんソロで取りに行くつもりだ。

 パーティーはあまり組まない。

 だって・・・・

 

「僕は所詮、一匹狼だからな・・・・」

 

 天井を仰いで呟いた。

 そう。僕は一匹狼だからだ。

 扉を開け、再び迷宮区に行くアレン。

 ―――っと、そんな時、突然、メールアイコンが受信音と共に視界の隅に出現した。

 メールを開き、内容を確認して軽い驚きを得た。

 

  送信者:シン

 タイトル:緊急速報

   内容:緊急攻略会議と重要会議を行う事を、≪ケイリュケイオン≫リーダーから提案された。

      ボス攻略を求める者のは、至急集まるべし。

      詳しい内容は、第1層≪アンダーグラウンドデパート≫似て待つ、≪ケイリュケイオン≫のリーダーからお聞きください。

 

 新聞を作るため、情報屋としても有名シンとは、攻略の関係でフレンドを交換したのだが、まさかこんな速報が入ってくるとは思わなかった。

 時間を置いたとはいえ、殆どとんぼ返りのタイミング。このギルドリーダーは、一体何を考えているのだろう? っと、アレンは首を捻りながら内容に従う。なんとなく頭に浮かんだ、自分がたき付けた少年が、何かやらかしたのではないかと、不安になったと言う事もあったからだ。

 

「でも、決めたのは本人なわけだし・・・・・・僕には関係ないか」

 あっさり決めつけたアレンは、心持急ぎ、≪デパチカ≫へと向かうのだった。

 

 


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