読者達のアインクラッド   作:秋宮 のん

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最新遅くなって申し訳ありませんでした!
一応、見直しして出したので、誤字脱字はあっても少ない筈!
皆様の期待に添えれば幸いです。


番外クエスト01:一つの未来(後篇)

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 ウィセ達がパロクエストをクリアした翌日。なんと、また新しいパロクエストが発生していた。

「やり過ぎだと思います」

 それを聞いた、ケイリュケイオン参謀ウィセの右腕と密かに呼ばれる様になったクロンは、げんなりした表情で呟く。その胸の奥では、他人の心をグッサリ突き刺すツッコミが淡々と述べられている事だろう。

「まあまあ! SAOが普通のゲームとして進んでいたら、パロクエストをクリアできる人なんて本当に一握り過ぎるんだし~! このくらい多めでも良かったと思うよ~?」

 明るい表情でアイテム整理をしているフウリンは嬉しい悲鳴を上げていますと言わんがかりの笑顔を振りまいている。彼女のギルド、≪空気と星≫の仲間達は、その笑顔に癒される様に、皆表情をだらしなく崩している。元≪アインクラッド解放軍≫の面々は特にそういった傾向が強い。

 ここはケイリュケイオン傘下ギルド≪空気と星≫の本部だ。最初はケイリュケイオンと同盟関係にあった≪空気と星≫ギルドだったが、とあるレッドギルドとの戦争の切欠となった事件で、大量の被害を出してしまい、今では傘下ギルドとしてなんとか仕事に支障をきたさない形で繋いでいる。

 このギルドの目的は、アインクラッドの美しい景色を一般プレイヤーにも見てもらいたい。SAOは怖いだけのゲームではない。っと、皆に伝えるために発足された観光名所ツアーのギルドだ。最初こそ「真面目に攻略しているプレイヤーに対して何を考えているのか!?」などの声で反発されもしたが、始まってしまえば好評者が多く、SAOの憩いの場として成り立っていた。

 今でこそギルド本部に掲げられた星空の旗に『竪琴の杖』が小さく端に記され、ケイリュケイオン傘下ギルド、商業サイドの意味を伝えているが、当時はケイリュケイオンに逆に支援をする程のSAO最高の稼ぎ頭でもあった。

 現在、この≪空気と星≫ギルド店内受付で準備中のフウリンに、カウンター越しにクロンが話しかけている状況だ。周囲には彼女のギルドメンバー達が、フウリンの事をちらちらと盗み見ながら仕事に勤しんでいる。

 クロンは、フウリンに対する周囲の反応に呆れて溜息を吐く。その溜息の意味に目ざとく気付いた、彼女の付き添いで来ていたカノンが苦笑いを浮かべる。

「クロンちゃん、最近ウィセさんに似てきたよね?」

「そうですか?」

 怪訝な表情を作るクロンに、もう一人の付き添い人が渋面を作る。

「ああ、似てきた似てきた。………デパチカで住んでいた時のクロンちゃんの純粋さは何処に言ったのか………」

「未だに色々めんどくさがってる所為で、今やおリンさんの『腰巾着』扱いされてるヌエさんに言われたくないです」

「おリンが人使い粗いだけだっ!」

 フウリンの愛称を呼びながらクロンに言われたヌエが、反論の意を込めて叫ぶ。

「ヌエ~~! 今度階層が上がったら、さっそく観光地探しに行きたいから! 今のうちに準備よっろしくね~~っ!」

「うい~~………、やれやれメンドくせぇ………」

 フウリンに言われ、ヌエが渋りながらもしっかり了承する。

 そんな彼の姿に、クロンとカノンは同時に(やっぱりフウリンに使われてる………)と思いを過ぎらせるのだった。口にしない辺りは、二人の良心なのだろう。

 クロンは溜息を吐きたくなるのを堪え、話題を戻す。

「それで、パロクエストの事なんですが………?」

「ああそれ~? そう言えばなんでクロンちゃんが此処に言いに来てるの? こう言うのってケイリュケイオン本部でサーヤか、ウィセっち辺りに話す事じゃない~?」

 サヤとウィセの愛称を呼び、フウリンが疑問を述べる。

 ちなみにフウリンが他人を愛称で呼ぶようになったのは、最初からではなく、ライラと出会ってしばらくしてからなのだが………それは過去で知る話だ。

「ええ、はい。本来ならそうなる予定だったのですが………、なんか二人とも昨日から連絡付かないんですよね?」

「わおっ!? もしかして今頃二人でラヴラヴっ!?」

「………」

「おリン、カノンの顔が物凄く歪んでるから発言控えてやれ………」

「そ、そんな顔してるかな………?」

 ヌエに指摘され自分の顔に手を触れるカノン。カノンとサヤの間にある微妙な空気は、とうの昔に解決しているのだが………、自分はまだ引きずる物でも残しているのだろうかと首を傾げるカノン。

 クロンは、いつの間にか手に持っている袋から『サヤ特製:七色キャンディー』なる飴玉を取り出し、一口食べる。

「まあ、昨日の内に大きな仕事は片づけてもらっているので、とりあえず参謀お手伝い役の私に話が回ってきたんですよ。今日は迷宮区攻略に出る人も多かったので、一日くらいなら私一人で何とか回せます」

 っとは言うものの、実際にクロン一人で何とかするのは無理だったので、オタクさんのキャストに向かって、潤ませた瞳で見上げながら「お願いします………っ」と震え声で頼んだ(押し付けた)ので、動き回る必要のある仕事は彼がなんとかしてくれるだろう。更に細かい書類整理などはテイトクに頼み「アスナさんをケイリュケイオン本部に呼んでおいてくださいますか?」と伝え、………今頃は訳も解らず書類整理をさせられている事だろう。そして後に来るアスナの怒りは、全てテイトクに向かう。

 合掌。

「クロンちゃん何してるの?」

「冥福を祈っていました」

「?」

 カノンに答えて、クロンは話を続ける。

「さっき、≪琴の音≫にもいきましたが、ミスラさん以外は非戦闘組の皆さんばかりで、ちょっと心配だったんですよ」

「それで私の所にまで御鉢が回ってきたと~?」

「お願いします≪眠り姫≫さん」

「あぅ………っ! そ、そのあだ名は出来れば止めてね………?」

 システム外スキル≪タンブルマスター≫により、Mobをタンブルさせまくるフウリンには、『モンスターもイチコロぐ~すかぴ~!』と言う一面を飾られた経緯がある。それを両手棍スキルによる打撃技でやる機会が多いため、女の子のフウリンとしては『力自慢!』と言われているようで微妙な気分なのだ。

「ま、まあ、確かに~? ウチのギルドは年がら年中忙しいわけじゃないからね~? 新しい階層がアクティベートされないと、皆景色に見飽きて停滞する事だってあるし~? パロクエストで解禁された新しいエリアにも興味はあるかな~? ………うん、断る要素が全くないのも、なんか悔しいね? 別に断る気なんて全然ないのに………」

 なんとなく、小さい女の子に言いくるめられた様な気がして釈然としないのだが、別に断りたいわけでも、クロンに見栄を張りたいわけでもないので、フウリンは素直に頷く事にした。

 だが、子供と言えどクロンはウィセのお手伝いとして学んできた少女。ここでトドメのフォローを忘れるような愚は犯さない。

「このクエストに御協力して下さったら、≪記録結晶≫の支給額を5%カットしても構いませんよ?」

「よっしゃ任せなさい~!! お姉さん、腕まくりして頑張っちゃうよ~~~っ!!」

 やる気になってニッコニコに笑うフウリンに、ヌエとカノンは苦笑いを浮かべる。

「ケイリュケイオンの傘下になってから、商売事に現金になりましたね? フウリンさん………」

「お金は大切だよ~! 傘下に落ちてから私はそれをまざまざと痛感しました~!」

 元気に笑い、持っていく武器を選ぶフウリンを尻目に、ヌエは飴玉を食べるクロンに耳打ちする様に訪ねる。

「良かったのか? あんな交渉ウィセがいないところで勝手にしちまって? 後で問題になるんじゃないか?」

「大丈夫です。おリンさんのモチベーション上げておく事にはちゃんとメリットがありますから」

 そう言ってクロンは目を細め、視界の端で周囲を確認する。

 ≪空気と星≫のギルドメンバー達が、天真爛漫に輝く笑顔を振りまくフウリンを眺め、皆一様に破顔していた。

 SAOの女性人気率は、アスナを筆頭に、ヴィオやスニーなどの名前が上がり易い。だが、あまり知られていない事だが、アスナに次ぐSAO人気女性は、実はこのフウリンだったりするのだ。何故か話題に出ていないのは、『女性の人気率』と言う言葉上、『恋愛対象』『可愛い女の子』『好みの女性』『色っぽい子』などと言った俗的な内容に見られがちなのが原因だ。男子しかいないSAOでは特に顕著(けんちょ)だろう。

 しかし、フウリンはそう言うのとは無縁な、明るくて、一緒に居て楽しいと言う『友人的な人気』が特に高いのだ。中には彼女になって欲しいと望む男子も案外多い。

 『女性の人気』と言う言葉に惑わされ、話題的な投票は無いが、まず間違いなくフウリンをこよなく愛している男子は多い。

 アスナをアイドル的な人気女性とするなら、フウリンは学園で一番人気なバリアフリー少女と言ったところだろう。

(だから彼女が笑っててくれると、それだけで男子が釣れるんですよ。『将を射んとするなら、まず馬から』です。………私のIP(イノセントポイント)、二年でかなり減ったかも………?)

 内心、二年間と言う時の流れを感じながら、クロンはちょっとだけげんなりした。

 装備を選び終わったフウリンは、思い出したようにクロンに訪ねる。

「そう言えばさ~? 一応≪琴の音≫には行ったんでしょう~? 他に暇してる人いなかったの~?」

「いるにはいたんですが………」

 ≪琴の音≫を訪ねた時、ちょうど暇している人間は確かに数人ほどいたのだが………。

 話をした途端、彼等は口々に叫んだ。

 

「よぉし! おっさん、昨日に引き続き、大活躍してきちゃうぞ~~っ!!」

「戦いかっ!? 先日はクローバーの野郎に出し抜かれたが、今回は譲らねえぞっ!!」

「そうか、あの戦いはまだ終わっていなかったのか? ………どうやら俺も腰を上げる必要がある様だな」

(わたくし)、今日は用事が………」

 ピロリ~ンッ♪

「ん? 皆に付いて行けばいいのか?」

「うふふっ、よろしくしてくださいね、アマヤく~ん♪」

 

 っとまあ、色々フライングしまくったのだ。

 ちなみに、上から順にタドコロ、ナッツ、タケ、スニー、アマヤの発言だ。

 少人数である上に、向かった人間の質がどうも不安だ。レベルは高いのだが、どうしてか他人を不安にさせる様な人間ばかりなのが不思議でならない。特にアマヤは、内容自体解っていない可能性がある。むしろ不憫に過ぎる………。

「不安要素がやたらと多いので、別の所に頼りたくて………」

「ああ、うん………。なんとなく解るよ~………」

 クロノの相談に納得したフウリン達は、彼女達と共に最後のパロクエストに挑むのだった。

 まさかこの頃すでに、まず一つ目のパロクエストが始まっていたなど、彼女達の知るよしもない。

 

 

 

 16

 

 

「ふはははははっ!! 下賤な愚者風情が、このダークフレイムマスターに敵うと思っているのか~~~っ!?」

「おおお~~~~うっ!? おっさんが鷹の様に空を飛び回っておりますよ~~~~~~っ!?」

 よく解らない力で剣から衝撃波が放たれ、それに巻き込まれたタドコロが宙を舞う。

 タドコロが訪れたのは、このクエストで新たに解放されたダンジョンの荒野フィールドだ。一面が石と岩と砂地で出来た熱帯の荒野で、タドコロは遭遇した全身黒ずくめの片手剣を使う人型Mobに、意味も解らず飛び跳ねさせられまくっていた。

 地面に激突すると同時に立ち上がると、ダークフレイムマスターと名乗った少年が、もう一度剣を構える。

「ここまでよく俺の攻撃に耐えている物だ! さすがはアインクラッドを此処まで攻略してきた(つわもの)と言う事か? だが、今はまだ俺が手加減してやっているだけに過ぎない。もし俺が本気でお前を攻撃すれば、散りすら残る事はないだろう!」

「まあ、SAOで死んだらポリゴン片になって消えるからなぁ~~………」

 少年に言われてタドコロは渋面になって返す。別に呆れてるのではない。この男がそんな真面目な理由でツッコミを入れるわけがない。

「どうでも良いけどよう? ちょっと一つだけ良いか?」

「なんだ? この俺に質問とは、一体どれだけ大そうな内容を―――」

「さっきから同じような攻撃でそろそろ飽きた………」

「んなっ!?」

 片手で髪を掻きあげていたダークフレイムマスターは、ポーションを飲みながらつまらなさそうに言うタドコロの言葉に、ショックを受けた様子だ。

 タドコロはポーションを呑み終わった後も槍に凭れながら告げる。

「いやな? さっきから、物すげえ攻撃が出てくるのはすごいんだけどよ? なんて言うか………結局どれも似たような攻撃なんだよな?」

「な………っ!?」

「エンターテイナーってのは飽きさせちゃいけねえんだよ? すげえもん見せるなら、常に次から次へと新しい要素を入れつつ、相手を立てねえとダメだ。だがよ? お前さんの攻撃は自分よがりド派手攻撃ばっかりでよ? 試しに何発か喰らってみたが、コイツは面白みに欠けんだよな~~?」

 HPが回復するのを確認したタドコロは、槍を隙無く構え直す。

「おっさんが面白みって奴を教えてやるぜ」

 いつにない切れのある瞳で不敵な笑みを作るタドコロに、“フレイムマスター”も思わず身構える。

「貴様………! 一体何を―――っ!?」

「いっくぜぇ~~~~っ!!」

 取り合わず駆け出したタドコロが、≪ソニック・チャージ≫の要領で突っ込み―――途中で思いっきり足を滑らせ、顔面から地面に激突した。

「ぎゃふんっ!」

 そして槍は何処か天高くへと飛んで行った。

 巻き起こる静寂。

 顔を上げるタドコロ。

「へっ!」

 親指で鼻を擦り、ビシッ! っと謎のポーズを連続でかまし、更に降ってきた槍を華麗に受け止め、クルクルと回転させながら最後に孫悟空の様にポーズを決める。

「おっさんが面白みって奴を教えてやる」

「やり直してるつもりなのかそれっ!?」

「いっくぜぇ~~~っ!!」

 ツッコミに取り合わず、タドコロは駆け出し、上段に大きく振り被る。

 “フレマスター”も剣を構え、タドコロの一撃をパリィしようと振り払う。

 だが、剣の返しは空を切り、タドコロの腕は遮りなく振り降ろされた。

「なにぃっ!?」

 驚き空を眺める“フレマ”。

 再び流れる静寂の中、気がついたタドコロが起き上り、何もない自分の手を眺め、振り返る。タドコロの背後には、地面に突き刺さってすっぽ抜けた槍が、心無し哀愁を漂わせながら佇んでいた。

 タドコロ、再び謎のポーズを決め、水面蹴りで槍を払い、宙を回転させながらキャッチして再び決めポーズ―――しようとして勢い余った槍が彼の後頭部を強かに打ちつける。まるで、槍が主に対して仕返ししたかのようで実に哀愁が満ちている。

「おっさんが面白みって奴を―――」

「何回続けるつもりだっ!? しかも今度は失敗してるじゃねえかっ!?」

「隙あり喰らえ~~~~っ!!」

「ぎゃああぁぁぁ~~~~っ!?」

 ツッコミを入れている“フレマ”に対して、タドコロは槍を投擲した。槍の矛先は見事に“フレマ”の額に突き刺さり、赤いポリゴンが漫画の冗談シーンみたいにキラキラと噴き出す。

 実に見事な不意打ちである。

「き、貴様よくも~~~っ!!」

 額から槍を引き抜いた“フレマ”は、鋭い形相でタドコロを睨みつけ―――手を差し出すおっさんを目にした。

「な、なんだその手は………?」

「槍、返してください」

 徐に槍を構え直す“フレマ”。

「ほざけ~~~~っ!!」

「ぎゃぼぉぉ~~~~~んっ!」

 投げ返された槍をお腹で受け止めながらタドコロはオーバーアクションで地面を転がっていく。

 ゆっくり立ち上がったタドコロは、再び槍を構え直しドヤ顔で………、

「お前に面白みって奴を―――」

「そのネタはもう良いっ!!」

 剣から謎の衝撃波を放たれタドコロが宙を舞う。

 手足を投げ出した状態でクルクルと回転して飛んでいくタドコロは、地面に激突する瞬間、身体を捻り、見事に着地して見せ―――頭部に槍が突き刺さる。

「この程度じゃ、おっさんをやる事は出来ねえぜ?」

「全く決まっていないぞっ!?」

「隙あり! クイックからの投擲槍!」

「ぎゃああぁぁぁ~~~~~っ!?」

 一瞬で≪クイックチェンジ≫を果たしたタドコロは、間髪入れずに槍を投擲、再び“フマ”の額に槍が突き刺さる。

「更にすかさず、タドコロさんキ~~~~~ック!!」

「ぐほっ!?」

 そして飛び蹴りを放つのだが、≪体術≫スキルを持っていないので、この一撃には何のダメージもない。

「更にコブラツイスト~~~~!!」

「何故だっ!?」

 もちろんSAOで関節技など効果がある筈もなく、HPが減る気配はない。

「そしてトドメのジャイアントスイング~~~~~ッ!!!」

「ステータスのおかげで意外と回る~~~~っ!?」

 さすがに70層付近を攻略組として活躍するだけのレベルはあって、ジャイアントスイングも迫力ある回転を見せている。投げ飛ばされた“フマ”はオブジェクトの岩に激突し、そのまま地面に倒れる。

 もちろんHPの減りはない。

「そして男の決めポーズ! 男は背中で語りな! キュピーーンッ!!」

「自分で効果音を言うなっ!」

「そして隙あり!」

「また額~~~~~っ!?」

 そしてタドコロは肩を回しながら腕を振り被り、“マ”の首目がけて剛腕の鉄バットを喰らわせる。

「ラリアーーッ―――ぷぅ~~~っ!?」

「そう何度も食らうか戯けっ!!」

 カウンターの蹴りを額に受けたタドコロは地面を転がり手無し倒立状態でストップした。見事な顔面倒立だ。

「どんだけふざけた攻撃すれば気が済むんだっ!? って言うか!? いつの間にか俺の名前が“マ”にまで省略されているのはどう言う事だっ!?」

 こちらにツッコミを入れないでください。マナー違反です。

「どんなマナーだっ!? マナーと言うなら人の名前を略しすぎるなっ!?」

「まあ、さすがに“マ”じゃ、誰か全く解んねえよな?」

「貴様はいい加減顔面倒立を止めろっ!?」

「これ、案外良い感じなんだが?」

「どう言う理由でだっ!?」

 騒ぐばかりの“”に対してタドコロはやれやれと言った感じに飛び上がり、足から地面に着地する。

「おい待てっ!? ついに俺の名前が完全に消えているぞ!? この扱いはさすがに読者にも解り難いだろうが!?」

 ト書に話しかけるの止めて欲しいんですけど………?

「ト書じゃないだろう!? 真面目にやれっ!」

 

 ※読者皆様への御謝罪。見苦しい悶着申し訳ありませんでした。

 

 っで、

「おっさんが面白いって事を見せてやるぜ!」

「やり直すのかっ!? っと言うか貴様、本気でそのネタの繰り返しを止めろっ!?」

「いや、今度は繰り返してねえぞ? さっきと微妙に台詞が違う」

「細かいやつだなっ!?」

「そして隙ありっ!!」

「本日三度目―――っ!?」

 額に槍を受けたダークフレイムマスター、略して“フレマ”が転倒した。

「くそっ! その略語が最終形態かっ!?」

「誰と話してんだよ?」

「いや、別に何でも………なんだその手は?」

「槍を返しておくれ?」

「≪エターナル・ブリザード≫!!!」

 無防備なタドコロに向けて八連撃ソードスキルが炸裂した。意味はないが、剣から吹雪が起き、周囲一帯が凍り付く。SAO的な意味はない。タドコロも凍りついているが、動きが阻害される事も、追加ダメージが発生している訳でもない。

「無防備のおっさんを労わる気持ちは無いのか貴様っ!?」

「黙れッ! これ以上貴様に譲歩するのは無しだっ! 食らうが良い! 我が真なる黒炎の剣を………っ!!」

 “フレマ”は剣を天に掲げると、力強い言葉を紡ぎ、剣に黒炎を纏わせていく。

「我が力の源よ! 闇の力よ! 深淵より()で、今こそわが力となれ!! 爆ぜろリアル! 弾けろシナプス! バニッシメント! ディス………!」

「隙ありクイック投擲!」

「四回目~~~~~っ!?」

 呪文を唱えている内にタドコロの取り出した新しい槍が額を貫く。

「き、貴様! いい加減にしろ! これ以上俺を怒らせると、どうなっても知らんぞっ!?」

「ああ、ちょっと待ってくれ。オブジェクト化に時間がかかってる」

「悠長に画面操作なんてしてんじゃねえっ!!」

 “フレマ”は剣を掲げ、黒炎の纏った刀身の一撃を放つ。

「闇の炎に抱かれて消えろっ!!」

 放たれた炎は、ボスモンスターなどで見られるブレス系の攻撃と同じ物らしく、今度のはしっかりとダメージが発生し、タドコロを天高く吹き飛ばした。そして凍りついた世界が何故か元に戻った。焼き尽くされないのはSAOである事と、荒野化する予備データが用意されていないからだろう。(凍り付いたのは追加すればいいだけだから)

「いい加減に俺を舐めるなよ? 今の一撃で、お前のHPは限界に達したはずだ。この力は、相手がどんな防御をしようと、如何に体力を持っていようと、必ず瀕死に追いやる事が出来る力を持っている」

 つまりHPを必ず1状態にするという事です。

「散々俺を舐めてくれた礼だ。これでトドメを刺してくれる………。受けるが良い! 邪王真眼より授けられし新たなる技! その名も―――」

「おっしゃっ! また隙あり!!」

 煙の向こうから赤い閃光を放つ槍は、システムアシストの助力を借り、真直ぐ“フレマ”に迫る。

「ふんっ! 何度も同じ手に引っかかると―――」

 

 トスッ!

 

「つあああああぁぁぁぁぁぁっ!?」

 首の動き一つで槍を躱した“フレマ”だったが、躱した方に新たな槍が投擲され、彼の額を打ち抜く。

 煙が晴れた向こうで、不敵に笑うタドコロが、オブジェクト化を終了した大量の槍に囲まれていた。

「この手を使うのは50層のボス戦以来だな? 槍の出費がバカにならない上に、あまり強いわけじゃねえから滅多に使わないんだが、まあせっかくだ………存分に味わって行きやがれっ!!」

 タドコロが≪投剣≫スキルによる連続技、≪フェイタル・シュート≫によって、次々と槍を投擲していく。

「ちょっと待て!? お前、こんな技があるなら―――あ痛っ!? なんでもっと早く使わないっ!?」

「言っただろう? 見た目の派手さの割にあんまり効果ねえんだよ! 50層の時も足止めくらいに使った! だから、お前がこれできっちり倒れる程度のHPになるのを待ってたんだよ!!」

 そう、それ故にタドコロは執拗なまでに不意打ちしまくったのだ。その卑怯ぶりの甲斐があって、“フレマ”のHPは黄色になっていた。後は連続攻撃で槍を投擲し続け、刺さった槍を抜く暇を与えなければいいのだ。そうすれば、貫通ダメージが継続し、またたく間に“フレマ”のHPは減少していく。

 実にタドコロらしい卑怯な戦法だった。

「こ、こんな負け方は………っ!!」

 槍を全て投擲し終わったところで、“フレマ”のHPは数ドット残ったが、彼が自分に突き刺さった槍を全て抜き終わる前に、貫通効果によるダメージで、空っぽになった。

「納得いか~~~んっ!!」

 最後の叫びを残して、ダークフレイムマスターはポリゴンの欠片として消え去った。

 そしてタドコロは―――、

「さあ勝負は終わった! 急いで回復して―――! そして投げた槍の回収だ! ルーターモンスターがいねえとも限らねえしなっ!!」

 慌てて投げた槍の回収に勤しみ………案の定出てきたルーターモンスターと激闘を繰り広げた。

 そのため、彼はシステムメッセージが≪ダーク・オブ・ブラックマント≫なるアイテムをゲットした事を告げていた事に気付かなかった。

 ちなみにタドコロ、その黒いマントの装備があまりにも自分に似合わないので、後日別の誰かに献上して、別の物と交換したと言う………。

 

 

【タドコロ、クエストクリア。獲得アイテム:≪ダーク・オブ・ブラックマント≫】

 

 

 

 17

 

 

 

 クロン達がクエストダンジョンに到達して散らばった頃、先に来ていたナッツは木々が生い茂る森の中で、嘗てない強敵に好戦的な笑みで笑い声を上げていた。

「はっは………っ! なんだコイツ!? こんな狭い地形でもお構いなしかよっ!」

 林立する木々が所狭しと立ち並ぶフィールドは、プレイヤーの事をまったく気に掛けていないと思われるほどに鬱蒼としていて、とても長い剣を持って戦える様な空間ではない。

 だが、ナッツと、彼と戦う女性Modはそんな事お構いなしに長めの剣を振り合い、剣撃の音を鳴り響かせる。

「はっはっはっ! 私の方こそ驚いているぞ! 今初めて試みた戦い方で、ここまで私に食いついてくるなど、随分見込みのある男ではないか!」

 長い黒髪を後ろで束ねた白い軍服を纏った眼帯の少女は、ナッツに対して好戦的な笑いを上げる。彼女の頭上には猫の耳が生えている。スカートもズボンも穿いていないので、素足が太ももまで見え、お尻の方にはひょろりと尻尾まで伸びている。

 使っている武器は≪カタナ≫で、ナッツの使う両手剣≪ラクスヴォルケ≫程ではないにしろ、やはり森の中で振るうには長すぎる得物だ。にも拘らず、二人は殆ど障害物を気にせず剣を振るっている。

 それもそのはず、二人は地面に足を付いて戦っているのではなく、木の枝を足場に枝から枝へと飛び移りながら剣を交えている。いわば、SAO始まって以来の空中戦を演じているのだ。

 むしろ、このタイプの戦術を得意とするらしい女性Mod≪サカモト≫は、まるで足に羽が生えているかのように脚でバランスを取りながら空中を飛翔する。

 対するナッツは出たとこ勝負。サカモトを追いかけ、練習無しにいきなり空中戦にチャレンジ。危うく落っこちそうになりながらも、むしろ、その緊張感を楽しむかのように、好戦的な笑みを強める。

「食らいやがれっ! ≪アバランッシュ≫!!」

「何の! ≪飛燕≫!」

 両手剣突撃ソードスキルを空中で放ち合い、交差する。

 別にソードスキルの名前を口に出す必要はないし、普段のナッツにしてもわざわざやる必要は感じてないのだが、今回はなんとなく興が乗ったので気分で叫んだ。

 生足を惜しげもなく披露しているサカモトが叫んだ理由については考えない。そんな事より、彼女の態度や行動がナッツ的に場の乗りに沿った好感触である事が重要だ。

 ただ一つ、彼にはどうしても納得できない事があった。

 交差を終え、木の枝に着地したナッツは、振り向き様に怒りの声を露わにサカモトへと叫ぶ。

「おいっ! どう言う事だてめえっ! それだけ惜しげもなく下半身晒しといて、その中身がパンツじゃなくて水着とはどういう了見(りょうけん)だっ!?」

「何処に不満を持っているんだ貴様は………」

 同じく枝に着地したサカモトは呆れながらも服の端を摘まんで中を見せる。服の下から見えたのは、下着ではなく、紺色のスクール水着に似た衣服だった。光の照り返し具合から、材質も似たような物としか思えない。

「これは我が国に伝わるズボンだ。下着でもなければ水着でも無い」

「だったらせめて上着を脱ぎやがれっ! これだけ美味しいシーン晒しといてチラリズムとか流行んねえんだよ!」

「戦いの中、何に執着しているのだお前は………」

 彼の名誉のために一応のフォローを入れるなら………、ナッツと言う人物は重度のバトルジャンキーであり、戦闘をこよなく愛し、常に戦う事を求め続けている。

 しかし、かと言って他の事に興味がないわけでも無く、せっかくなら戦闘にも一つや二るの嗜好を混ぜたいと考えている。今回はたまたまエロ方面に傾いただけで、彼自身、実際にサカモトがスクール水着で戦ってくれる事自体はおまけ程度の考えでしかない。

 そんなナッツの考えを知る筈もないサカモトは、徐に自分の上着を掴むと、いっそ晴れやかな程豪快に上着を脱ぎ捨ててしまった。

「わおっ♪」

 スクール水着姿で刀を構えるサカモト。ナッツは嬉しいハプニングに喜声を発した。

「そんなにこの格好が好みなら、これで相手をしてやる! ただし! 私の防具は、この上着が殆どの割合を示している! つまり、ステータス上では、これ一枚を脱いだだけで、私は相当に早いぞっ!」

「おいおい! くだらねえ内容なんていらねえんだよ! そんなのよりバトルが楽しくなるだけだろうがっ!? 花も充分! 剣も充分! 言う事無しだぜっ!! 一応聞いておくが、その格好で恥ずかしくなったから動きがむしろ鈍った―――なんてオチはねえだろうなっ!?」

「無論だっ!! パンツじゃないから恥ずかしくなどないぞっ!!」

 叫んで枝を蹴ったサカモトに対抗して、ナッツも枝を蹴飛ばし迎え撃つ。

 互いに空中での戦闘なため体勢が悪い。そのため地に足を付いた体重移動による強力な攻撃はできない。SAOではステータスに設定された攻撃力がそのまま威力であり、ダメージなのだが、重心の移動による攻撃の基本は刃同士の激突の際、思いがけないほど効果的に発揮される物だ。それが出来ない以上、二人は枝を蹴飛ばす時につけられる勢い―――つまり速度による斬激を重視して戦うのが効率的となる。そして空中で身動きが出来ない以上、攻撃のチャンスは交差する一瞬しかない。必然的に二人は素早く枝を蹴り、交差する一瞬に素早く剣を交え、再び木の枝などの足場に着地して、瞬時に飛び出し斬り付ける。これを超高速で繰り返す事となった。

 ともかく速さを重視されるこの戦い。バランスを取るのも一苦労なので、ソードスキルのモーションに入る隙がない。だが、速度で対決している以上、何より二人の力が拮抗している以上、勝敗の行方はどちらが先にソードスキルを放てるかに掛っていた。

 この時ナッツは、それが頭の中に浮かびながらも、完全に選択肢から除外していた。頭の中で考える事は一つ。速く速く速く! 誰よりも速く! 何よりも速く! ただ神速の剣を走らせる事だけ!

 ナッツはケイリュケイオンではスニーと並び、数多くのデュエル経験者だ。その中には同じギルドのサヤやウィセ、マサ、ルナゼス、ケン、クローバー、ワスプ、スニーはもちろん、ヒースクリフやキリトまでバトル経験を持つ。残念ながら勝率は決して高いとは言い切れないが、それでも他に類を見ない経験値は、彼に異様なほどの直感を培わせていた。理屈を飛ばし答えに辿り着く、野生の勘は、ギリギリの勝負に置いてとてつもない驚異を発揮する。

 既に幾度無く交わされる剣の交わりは、いつしか木々の間で閃く光となって瞬き、まるで森の中で星が瞬いているかのように映る。

 キリトとの戦い以来、感じ取れる神速の域に入った時、不意にサカモトの刀が一瞬、間を遅らせてから斬り降ろされた。刀の刃は、ナッツの大剣を上から押さえ込まれるように弾かれ、大剣と言う重量感が災いして、彼の身体を斜め下方へと誘う。その先には巨木の幹が壁の様にあるだけで、先程の枝の様に足場にできるものは見当たらない。

 逆にサカモトは、ちょうど良い枝を足場に振り返ると、自身専用のソードスキルのモーションに入って飛び降りている。

「はっ! 面白ぇ小細工してくれんじゃねえかっ!!」

 素早く身体を捻り、ナッツは壁と見紛う木の幹に足を付くと、システムによる重力で地面に落下しない内に、ステータス全開で幹を蹴飛ばし、サカモトへと跳躍する。

「受けよ!! ≪烈風斬≫!!」

 カタナから膨大な青い光が迸り、大上段から振り降ろされる。単発系のソードスキルの様だが、その凄まじさはどう見ても一撃必殺レベル。連続技が基本のSAOでは規格外と言える必殺の一撃だ。如何な反撃が来ようと一刀に伏す。サカモトの隻眼が物語る様に戦意的な光を宿した。

 その眼光に貫かれたナッツは、逆に獰猛な笑みを称えると、感情のままに爆発させる。

「しゃらくせぇぇぇっ!!」

 大剣を振りまわし、無理矢理空中でバランスを操作すると、上下逆さ状態になり、振り降ろされようとしていたサカモトの刀を―――正しくはその柄部分に蹴りを入れ、無理矢理足で押し止めた。モーションが完全でないとシステムに判断され、ソードスキルがキャンセルされていく。驚愕に瞠目するサカモトに向け、ナッツは力任せに剣を引き寄せ、彼女の胸に刃を突き立てる。

 深く刃が突き立てられ、引っかかりを感じると、それを合図に振り回し、サカモトを地面目がけて薙ぎ払う。STAに極振りされたステータスが、抗う暇も与えずサカモトを地面に叩き付ける。必死に立ち上がり、回避行動をしようとするサカモトだったが、彼がそれを許すはずがなかった。

「逃がしゃしねえぇぇぇ~~~~~っ!!」

 獣の如く獰猛な笑みを称え、ナッツの巨剣がサカモトの身体を深く貫いた。

 結果、ナッツは勝利をおさめた。

 互いのHPバーは、交差の度に削られていたらしく、気付けばナッツのHPも赤色に変わっていた。

「はっ! この上なく楽しめたぜぇ!」

 満足そうに笑ったナッツは剣を引き抜くと、そのまま地面に大の字に寝転んでしまった。何だかんだで、彼も限界近い集中力を発揮して、完全にグロッキー状態だったのだ。

「ふ………っ、私も存分に楽しめた」

 そんなナッツを眩しそうに見つめたサカモトは仰向けになって空を見上げる。

 身体がポリゴンの破片となって散っていく中、彼女は嬉しそうに小さく呟いた。

「なるほど………、魔法が使えなくとも、存外やりようはあるではないか………」

 その呟きを最後に、猫耳隻眼スクール水着姿のカタナ使いは姿を消した。

 ナッツは色々満足いって最早言う事が見つからない。このまま寝てしまったら気持ちよさそうだと言う理由で、彼はさっそく睡眠に取りかかった。

 そんな彼の正面には、クエストクリアのシステムメッセージが送られていた。

 

【ナッツ、クエストクリア。獲得アイテム:≪サカモトの眼帯≫】

 

 

 

 

 18

 

 

 クロンに連れられ、やってきたフィールドで、フウリンはとてつもない危機感に陥っていた。

「うふふ………。皆消しちゃう。全部消せば、私はユッキーのところに帰れるんだから」

 ピンクの髪をした美少女が、とてつもなく狂った瞳でフウリンへと歩み寄ってくる。

(なんだろう………、私は会った事無いけど、ものすっごくアイリオンを思い出させられるんですけど~………?)

 にじり寄ってくる女性に多大な危機感を感じながら、フウリンは≪ブレイクハンマー≫を構え得る。かなり重量感のある槌タイプの武器だが、フウリンのスタイル的に、とてつもなく有効な効果を発揮してくれるので、愛用するようになったアスパラ渾身の一品だ。

 蛇足ではあるが、ついでに記しておくと、アスパラ、テイトク、リズベットの鍛冶スキル三大勢力(笑)は、普段は仲が良い癖に、作品の事になると、とてつもないライバル心を燃やす様になる。リズベットの作った≪ダークリパルサー≫を皮切りに、対抗したアスパラが≪ブレイクハンマー≫を、唯一生産系のユニークスキルをもつテイトクは二人に負けるわけにはいかないと≪蛇腹剣≫を制作して見せる。それを聞き付けたリズベットは、キリトとヴァジュロンを伴ない、レジェンドクラスのハイレア≪鉱石≫をゲットし槍カテゴライズの武器ではかなり珍しい≪サーベル・タイガー≫の製作に成功。これはまずいとアスパラがワスプとケンを連れ、とあるクエストを攻略し、特殊条件下でのみ製作可能武器≪鉞≫を完成―――してすぐ。出遅れまいとテイトクは今やアレンの愛刀となる≪一文字≫を瞬時に完成させる。そしてまたリズが、今度こそ遅れを取るまいとアスパラが、安心できないとテイトクが―――………。そんな感じで、この三人は何気に良い感じで切磋琢磨していたりする。同時にこの三人は、≪鍛冶≫スキル持ちとしてプライドも高まってしまったらしく、モンスタードロップやクエストドロップなどの強力な武器に対してはかなりの敵愾心を発揮するようにもなっていた。

 そのため、この三人、やはり普段は仲が良いのだが、武器の話題になると………とある亡霊武者退治のクエストで≪龍太彦≫と言う刀を手に入れたウィセ、そのウィセからとあるドラゴンを倒す事で手に入る深紅の双刃を持つ槍≪ロンギヌス≫を授かったサヤ、≪折れた○○○≫と言う名の剣を幾つも集め特殊なクエスト達成で手に入れた大剣≪マルミアドワーズ≫を持つスニー、アイリオンからの最後の贈り物なのか、やたらと赤い刀身の剣を手に入れるルナゼス、そもそもがユニーク武器であり、現在でもドロップ品しか確認されていない鎌≪ヴァイス≫を持つクロノなどに、険しい視線を向ける事が時たまある。

 これらには負けられないと言う理由で、巻き込まれるのは彼等の恩恵にあやかっている自分達………つまり彼等作の武器を持つフウリン達の様な人材だ。そのため彼等は自分達の武器を見る度に変な事を思い出してしまい苦笑したりげんなりしたりと、戦う前に色んなリアクションを起こしたりする。

 ちなみに例外としてキリトは、ドロップ品と製作品の両方を使っているため、例外的対象外の様だ。

(キリトめ………ッ!)

 例にもれず、自分の武器を見て“蛇足”を思い出したフウリンが、キリトに対する怒りに軽く口の端を歪めた時、目の前の少女が飛び出してきた。

 表記されている名前は≪ユノ≫。持っている武器は日本刀。どうやら≪カタナカテゴライズ≫の武器の様だ。ウィセ辺りなら、刃の輝きや形状から、名前と性質まで見抜いてしまうのだろうが、そう言う方向の戦闘能力は持たないフウリンにとって、武器の見極めはできそうにない。

 エフェクトライトが発光していない事を確認しながら、重い武器を下から叩き付けるように振り回す。見た目の鈍重さに反して、必要ステータスはフウリンのステータスに結構下回っている。その気になればタドコロ並みに振りまわして見せるのも難しくはない。

 パリィの一撃で、ユノが想像以上に弾かれ、二撃目を放てず後ずさる。どうやら武器の重量差がしっかり反映されているようだ。

(なら、ここで一気に押しまくってやる!)

 心の中で叫び、逆Uの字型のハンマーを巧みに振りかざし、ユノを叩き潰そうとする。傍から見ると、か弱い女の子を相手に撲殺しようとしている怪力少女がいるようだ………。そんな妄想―――否、“空想”をしてしまいそうになり、被りを振って追い払う。

 ―――が、そもそもそんな考え自体が杞憂だった。

 フウリンのハンマーが命中するかに見えた次の瞬間、素早く切り上げられたユノの刀が、見た目の重量差を無視して弾き返してしまったのだ。

「すごっ!?」

 フウリンが思わず口にすると、ユノが肩をピクリと反応させる。目が大きく見開かれ、心底うれしそうな表情で刀を乱舞させ始めた。

「敵さえも驚かせたんだもん! きっとユッキーも褒めてくれるよね!」

 一息に三発くらい放たれていそうな剣撃が、ソードスキル無しで放たれてくる。必死にそれらを回避するフウリンは、異常とも言える少女の姿を目の当たりにした。

 

「ユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれるユッキーが褒めてくれる」

 

 狂ったようにそれだけを呟きながら、嬉々として刀を振りまわす少女は、とても恋する少女で収まる領分には見えなかった。

(う~~ん! やっぱりこの娘誰かに恋してるのねっ! さすが愛のパワー! NPCすらここまで強くするなんて最強ねっ!)

 ―――見えなかったが………、それらを無視して普通に受け入れてしまえるフウリンは、案外懐が大きいのだろう。

「ユッキーーーーーーッ!!♡」

 

 バキンッ!

 

「………ふえっ?」

 ユノから最後の一撃を受け止めた瞬間、金属が砕ける独特な音がフウリンの耳に届く。手に伝わってきた感触から想像はしていたのだが、恐る恐る視線で確認してみる。

 フウリンの目の前には真っ二つに切り裂かれた≪ブレイクハンマー≫があった。

(やっべ………っ! アスパラに怒られるっ!?)

 修復不可能となりポリゴンの破片へと消えていく。無防備になったフウリン目がけ、ユノが突進してくる。

「わわ、わっ!? 待って! 待って~~ッ!?」

 繰り返し放たれる刃を躱しながら、フウリンは絶叫を上げつつ片手でメニュー操作を試みるが、さすがに見ないで動きながら操作できる程優れた技術は持っていない。さすがにこの階層まで登った一人ではあるので、≪クイック・チェンジ≫は有しているが、ユノの攻めが容易にそれをさせてくれない。

 操作よりも回避を優先するが、ユノの猛攻は容易に躱し切れる物ではない。刀の切っ先が僅かに掠め、次第にHPは赤へと近づいて行く。

「………っ! こんのっ!」

「………きゃっ!?」

 躱し切れないと悟り、フウリンは退がるのを止め、逆にユノに向かって飛びつく。抱き付く様な体勢になると、そのまま地面に数回転がり、素早く離れ互いに距離をとる。

 やっとクイックで新しい武器を手にしたフウリンだが、考えをまとめる前にユノが飛び掛かってくる。連続する攻撃の雨に曝され、フウリンも上手く戦況分析も、考えをまとめる暇もない。もちろん策の一つも思い浮かばない。

「ちょっとは………っ! 大人しくしなよっ!?」

 振り降ろされた一撃を最小の動きで躱し、軌道を変える前に片足で踏みつけ、一瞬動きが止まったところで側頭部目がけてソードスキルを一撃見舞う。

「あう………っ!?」

(あれ?)

 よろめくユノを見て、フウリンが何かに気付く。

 彼女だけがなんとなく感じ取れるスタンするまでの数値『気絶値』。ユノに対するそれが、今の一撃だけで急激に上昇した。

(いくら≪スタン≫し易い打撃系武装って言っても、こんなに上がるのは見た事ない? もしかしてこの子? ≪スタン≫し易いの? もしそうなら………っ!)

 立ち直って刀を振り被るユノに対し、ある種の確信を得たフウリンがソードスキルで迎え撃つ。

 ユノも合わせてソードスキルを発動し、互いの攻撃を相殺しようとする。

 次の瞬間、ソードスキル同士が衝突し合い、独特なエフェクトライトが瞬く。本来なら弾かれるはずの二人だが、互いに剣を合わせた状態で硬直している。すぐに動いたのはフウリンだ。未だ痺れたように動けないユノの背後に回りながらフウリンは余裕の笑みで告げる。

「打撃系ソードスキルには三種類の派生系ソードスキルを選べるようになっているの! 一つ目は『ふっ飛ばし』で敵を押しのける効果が強いタイプ。二つ目は『パワー』でガードの上からでもダメージを与えるタイプね。それで! 私が選んだのがこれ! ≪スタンコール≫。『スタン誘発』のソードスキル! これ、相手とソードスキル同士をぶつけないと発動しないんだけど、私は結構得意だったりね!」

 っとは言え、彼女もこのスキルで相手をスタンさせた事は数える程度しかない。それだけ『気絶値』は多くないらしく、状況を選ばされるソードスキルではあった。今回、相手がスタンし易いユノ相手だからこそ一発で通じたのだ。

 フウリンがユノの後ろに回ったところでユノがスタンから回復し、振り向き様に斬りかかろうとするが、フウリンは三連続ソードスキルで攻撃を跳ね返し、更に二発叩き込む。途端、ユノはスタン状態になり動きが止まる。

「アナタにとって私は相性悪いよ」

 新たに呼び出した両手棍カテゴライズ≪クラッシュメント・プレス≫のハンマーを振り被り、両手棍最強ソードスキル、十連撃技、≪ヴァリアブル・クラッシャー≫をユノに叩き込む。ソードスキルの効果で大きく吹き飛ばされるユノに、フウリンは片手でガッツポーズ。

「………っ!!」

 瞬間、空中で体勢を立て直したユノが、地面に着地し、バネ仕掛けの様に飛び帰ってくる。驚愕して彼女のヒットポイントに目をやると、そこには一ドットだけ赤い色が見て取れる。

「ユッキーに会うまで………っ! 負けないんだから~~~~っ!!」

「愛の力っぱねぇ―――っ!?」

 思わず普段使わない様な台詞が漏れながら、フウリンも渾身の力でハンマーを叩き降ろす。

 二人の武器がぶつかり合い、鍔迫り合う。

「ユッキー………っ! ユッキー………っ!! 絶対っ! 会いに行くんだから………っ!」

「ぐぬぬ………っ! どうして恋愛してる連中は皆強いのかねぇ………っ! スニーと言い! ウィセと言い! ウサちゃんと言い! 恋を知ると皆強いよねっ! 羨ましいなちくしょう~~~っ!!」

 力で押し合うあまり、言葉に無駄な力が入ってしまうフウリン。

 愛の力は強い。ラビットから散々相談を持ちかけられていたフウリンには、それを深く思い知らされたものだ。

 だからきっと………っと、彼女は思う。

 きっと自分は目の前の女の子より弱い。相性の差なんて関係なく、彼女の力は自分を叩き伏せる事が出来るだろう。

(でも………っ!)

 ズン………ッ! っと、足を一歩前に踏み出す。

(だとしてもさ………っ!)

 歯を食い縛り、顔を赤くする程力を込めて、ステータス筋力をフル活動させる。

「~~~~っ!! 根性~~~~~~ッッ!!!」

 

 ガツンッ!

 

 鈍い鉄の音が一発轟き、ユノが鍔迫り合いに負けて吹き飛ばされる。

 間を置かずに単発ソードスキルのモーションに入り飛び掛かるフウリン。

 ユノが対抗しようと刀を構える中、フウリンが心の声を張り上げる!

「恋愛だけが女の子じゃな~~~~~~~いっ!!」

 

 ドズンッ!!

 

 鈍い音が響き、ユノの懐にハンマーが叩き込まれる。

 今度こそHPバーを空にしたユノはポリゴンの破片となって消え去った。

 

【フウリン、クエストクリア。獲得アイテム:≪エウムス・オブ・ブラックドレス≫】

 

 

 

 

 19

 

 

「ふぅ~~………、やっと終わりですね………」

 探索に出ていたメンバーを掻き集めたクロンは、物凄く疲れた表情で溜息を吐いた。

 現在は≪琴の音≫へと戻る途中だ。実際は戦う事のなかったクロンだが、それよりも無計画に散らばったメンバーの回収に手間取らされてしまった。

 何はともあれ、彼等は一同揃って≪琴の音≫へと向かう。

「―――っで、この黒コートと眼帯、交換しねえか?」

「おいおい冗談だろタドコロ? この二つはセットにしてこそ笑いが取れるってもんだ! 交換なんてするわけねえだろ?」

「どうしよう………? どうしよう………? ≪ブレイクハンマー≫壊したなんてアスパラに知られたら………っ!? でも、今の装備じゃ心もとないし………!? やっぱり新しい装備を作ってもらわないとで………!? あうあう………っ!」

 タドコロとナッツが獲得したアイテムに関して交渉する横で、フウリンが頭を抱え震え上がっている。こんな光景を見て、クロンはまだまだトラブルは終わらなさそうだと溜息を吐いた。

 しかしクロンは甘かった。ケイリュケイオンに置いて目の前の出来事だけがトラブルの火種ではないと言う事を、彼女はこの二年の間でも、まだ解っていなかったのだ。

 彼等が≪琴の音≫に辿り着き、扉を潜ると、騒がしい声と沢山の客が目に映る。どうやら現在夕方の≪琴の音≫には、ほぼケイリュケイオン全員が揃っているようだ。その一角、そこには珍しい人物が、テーブルに三人で座っていた。

 その内二人はサヤとウィセ。今日は姿が見えなかった事を除けば珍しい組み合わせではない。だがもう一人、ここに来るのは珍しい人物が、“コーヒーの味を再現された謎液体”を呑みながら、優雅に談笑をしていた。

 その男に対し、ウィセは意外と親しみのある苦笑を浮かべながら話しかけている。

「アナタが此処に来るのは珍しいじゃないですか? どう言った風の吹きまわしですか? ヒースクリフ」

「そう邪見にしないでくれ。私とて、現実世界の味覚が楽しめる≪琴の音≫には一度来てみたいと日頃から思っていたのだよ? ここに来れば、君にも会えるだろうしね」

「まだ私を諦めてなかったんですか?」

「君ほどの逸材を≪血盟騎士団≫に置けないのは確かに不服ではあったが………、それ以前に、私は個人的に君に興味があるのだよ」

 

 カチャ~~ンッ!

 

 ヒースクリフの発言に、サヤが木製のマドラーを机に落とした。

 ウィセが、慣れた手付きでそれを拾い、自分の分をサヤに渡す。サヤは受け取りながらも、不安そうな瞳でウィセとヒースクリフを交互に見つめる。

「アナタがそんな事を言うなんて珍しい? 私の何処にそんな魅力があるのかしら?」

「それはサヤくんが一番解っている事だよ」

 ウィセの軽口にヒースクリフは意味ありげな視線をサヤへと向ける。その意味する所はサヤには解る筈もないのだが、危機感だけは感じ取ったのか、すごく不安そうな瞳で警戒した表情を作る。

 ウィセはそんなサヤの表情を横目にして、何故か黙ってしまう。

 ここは自分が何か言うべきなのかと気付いたサヤが、はっきりと告げる。

「もうヒースクリフにはウィセを上げないから! そもそもあの時だって上げたつもりなんて無いよ!」

「無論、私も諦めたつもりはない」

「え?」

 余裕の笑みで鮮やかに返され、サヤの方が動揺してしまう。

「私もこのまま、ってわけにはいかないと思うんですよね? ≪血盟騎士団≫には結局何もしないままだったわけですから………?」

「え? え………っ?」

 ウィセの悩んでいる様な発言に、更に動揺するサヤ。

 それを皮切りに、ヒースクリフは嬉しそうに言葉を重ねる。

「それならウィセくんを正式にレンタルさせてもらうと言うのはどうだろう? アスナくんの抜けた≪血盟騎士団≫としても、君の様な逸材を借りられるのはありがたい事だ。可能なら、プライベートでもレンタルさせてもらいたいほどだがね」

「な………っ!?」

 とんでもない申し出に、サヤが抗議を上げようとする。

「そのくらいしても問題無いかもですね………。むしろそのくらいした方が良いのかしら? 団長とプライベートなお付き合いは………まあ、悪くないかもしれないわね?」

「ふえぇっ!? えっ!? えっ!?」

 満更でも無いウィセの反応に立ち上がる程驚くサヤ。最早オロオロしている―――などという表現が優しく思えるほど、可愛そうなほどに混乱していた。今にも泣き出しそうなあわあわとした表情は、近年稀に見る慌てぶりだ。

「では早速私と出かけるのはどうかね?」

「さっそくですか? それも………まあ、悪くないのかしら?」

 意味あり気にウィセが笑った瞬間、サヤはかなりのショックを受けた様子で、ウィセの服の端を両手で掴んで引っ張る。

「ウィセ? ウィセ………ッ!? 違うよね? そう言う意味じゃないよね? さっきまでの事は幻じゃないよね? これだけが現実って事は無いよね? お昼の楽しかった思い出が遠い昔の事に思えてくるよ!?」

「………。うふふっ♪」

「なんで笑うだけなのっ!?」

 楽しそう………っと言うより嬉しそうな笑みを作るウィセ。逆にヒースクリフは軽く流す様な笑みを作って見ているだけだ。

 そんな光景を見て、クロンは状況を理解した。

(ああ………、珍しくサヤさんが嫉妬してくれてるからウィセさん、かなり嬉しいんでしょうね。あの人、普段はサヤさんの天然ぶりに振り回されてばかりですから、これは相当に珍しいシーンですね………)

「「「「………羨ましいな」」」」

 クロンが状況を理解したと同時、まったく質の違う同じ言葉が四つほど漏れた。

 背筋に悪寒の走ったクロンが素早く振り返り確認すると、何だか遠い所に視線を向けているタドコロと、純粋にイチャついてる姿を羨むフウリンを確認できた。他のメンバーは皆、いつの間にかそれぞれバラけたようだ。

 いや、この二人は良い。この二人には悪寒は感じない。クロンは視線をずらし、近くのテーブル席に座った二人の姿を確認した。悪寒の原因はこの二人だ!

「サヤさんを嫉妬させて………。サヤさんに嫉妬されて………。僕にはそんな経験ありませんでしたよ………」

「………僕にはそんな気配もなかったよ? ワスプ」

 ワスプとカノンが二人でお酒っぽい飲物を暗いムードで乾杯していた。

 正直、クロンは理屈を抜きにして怖いと感じた。

 場の空気に口直しは無いかと視線を逸らしてみたが、そんな行為自体が彼女の甘さに他ならないだろう。何故なら、ケイリュケイオンに於いて、安全圏など存在しないのだから。

 真っ先に見つけたテーブル席に歩み寄り、誰でも良いので何か会話しようと試みる。

 まず目についたテーブルにはシリカ、テイトク、アスナの三人がいた。

「テイトクく~~ん………? 人の事呼んでおいて、アレは一体どう言う事だったのかしら~~~?」

「ち、違うんだアスナッ! アレはクロンに頼まれてだなっ!?」

「テ、テイトクさん? アスナさんを呼び出したってどう言う事ですかっ!? 私に隠れて何してたんですかっ!?」

「ええっ!? 違うぞシリカっ!? 勘違いしているようだが、断じて俺が個人的にアスナを呼んだわけじゃ―――ッ!?」

「人にあんなこと押し付けといて! 彼女とイチャつくのは止めなさいっ!」

「いやっ! でもだな? 誤解はちゃんと―――」

「テイトクさん! ちゃんと私を見て話してくださいっ!」

「後で覚えてろクロン~~~~っ!!」

 クロンは素早く別のテーブルへと方向転換した。

 方向転換した先にはフウリンがいた。安心して近づくと………、アスパラに思いっきり絡まれていた。

「誰の武器を壊しただと?」

「す、すみません………!」

「俺の武器が弱かったと?」

「め、めっそうもないよ!」

「でも、壊したんだろう?」

「………(誰か助けて)」

 一瞬視線が交差したが、クロンは視線を逸らして逃げ出した。

 逃げ出した先には、タドコロとシナドが、何か深く話し合っていた。

「………あの人に、会いたいわ………」

「紗里奈さん………」

 もう、一言だけで暗いイメージが伝わってきた。しかもこの二人がカップリング成立しているメンバーを眺めながら呟くので無償に居た堪れなくなって泣けてくる。

 クロンはせめて年齢差を合わせようと、ミスラの元に向かう。

 いつもはステージで歌っているミスラも、今は休んでいる最中らしく、銀髪を揺らしながら誰かと談笑していた。その相手、ユイとセリアなのは良い。そこにライラが加わってる時点で危機感は感じた。

「それでライラさん? この本の内容なんですが………?」

「私達のデータベースには存在していない内容なんです」

「はいはい、ユイちゃんとミラミラはまだ知らない内容なのねぇ? どれどれ?」

「あ、あの………! それ………っ! ダメ………っ!」

「ああはいはい! これは“にゃんにゃん”と呼ばれるラブラブな二人がやるイチャつき行為ですよ! きっとキリトっちとアスナんも二人でね―――!」

「き、嬉々として………っ! 語っちゃ………っ! ダメェ………っ!!」

 クロンは行き場を失くして立ちつくした。

 その時、救いの人物はやってきた。『新たな騒動』と言う名の救いが………。

「お? なんだ今日は随分―――いや、ここはいつも賑やかか………」

 そんな声を漏らしながら入ってきたのは、キリトだった。現在、アスナと新婚生活満喫中の彼は、アスナもユイもいないので、ここまで迎えに来たようだ。

 そして、ケイリュケイオンの空気は一変した。

「キリトさん!」「あ、キリト!」「キリトくん!」「キリトさんっ!?」「うわ~~んっ! キリト~~!」「パパ~~っ!」「キリトさん………」「キ、リトさん………!」

 刹那、彼の元に、それぞれの思惑の元、女性陣の殆どが飛び付く様に群がった。

 最初に飛び出したのはいの一番に見つけたクロン。逃げ場所の無くなった状況に、現れた『憩いの場所』、勢いに任せて逸早く飛び付く。文字通り腰に飛びつかれたキリトが戸惑う暇もなく、彼の手をとって泣きそうな顔のサヤが引っ張る。

「キリト! キリト~~ッ!? ヒースクリフがウィセを取ろうとするのっ!! でも、ウィセがなんか乗り気で………っ!? 僕どうしたらいいの~~~~っ!?」

 答える暇もなく、先を越されて御冠のアスナが鋭い目で睨みつける。

「キリトく~~~ん? いきなりなんかモテ過ぎじゃな~~い?」

「あの、キリトさん! お久しぶりです!」

 アスナの声に続いてキリトの背後に回ったシリカが控え目に自己アピール。肩に乗った使い魔の≪ピナ≫も「きゅうっ!」と鳴いてアピールに協力。

 間髪置かずにフウリンがキリトの脚にしがみつき助けを請う様に泣き崩れる。

「キリト~~~………っ! アスパラがハンマー壊したからって怒るんだよ~~~! 助けてよ~~~~っ!」

「パパ~~~! 私の話も聞いてくださ~~いっ!」

「あの………お話………、いえ、ユイの話を聞いてあげてください」

「あ、あの………っ! その前に………ライラさん、止め、て………っ!!」

 ユイ、ミスラ、セリアが加わってくるので、キリトは既に誰から手を付けて良いのか解らない。

 しかも、手を拱いている内に、状況は更に悪化して行った。

「久しぶりじゃないキリト! 元気にしてた?」

 っと、親しげに手を振ってくるリズベットが………。

「あ、キリト………。えっと、皆? キリトが大変だから、その………」

 キリトの惨状に助け船を出そうとするサチが………。

「キリト………! アナタはまたサヤを………っ!!」

 怒り怒髪天状態でゆっくり歩み寄ってくるウィセが………。

「あ、キリトさん………! えっと、また何か困ってないですか? いつでも言ってください」

 少し浮足立った様子のラビットが………。

「にゅふっ♪ 楽しそうだから私も―――キリトっち~~~~っ!!」

 ただ面白そうと言う理由だけでライラが………。

「………。キリトくん? ちょっと私とくっつきましょうか?」

 ロアを一度横目で見た後、悪戯を思い付いた様子のスニーが………。

「あ、あの………っ! そんなに皆で集まったらキリトさんが―――きゃああぁぁ~~~っ!」

 最後には、キリトを助けようとして、誤ってこけて、皆を巻き込んで倒れるヴィオが………。

 

 まあ、端的に言って。

 ハーレム完成。

 

(ヤ・バ・イ………ッ!!)

 さすがにケイリュケイオンの美少女が殺到した事もあって、既婚者状態のキリトと言えども、この状況に幸福感を感じたりもしたのだが………。そんな思考は光並みの速さで過ぎ去った。

 なにしろ現在、ケイリュケイオンを除いても、人気を誇る美少女メンバーを、上に下に右に左に前に後ろに斜めに………、全部女の子が群がってる状態で倒れているのだ。何処がどうなってるか解らないが、この状況がとてつもない危険な状況だと言う事は―――説明するまでもない。

 慌てて抜けだそうともがくキリトだが、少し身じろぎしただけで身体中が柔らかい物に触れまくってしまうのだ。状況はまだまだ悪化する。

「ふひゃあっ!? ちょ、ちょちょちょっ!? ちょっと待ってキリトっ!? 触っちゃダメだよ! そこ触っちゃダメッ!?」

「す、すまんサヤっ!? 触るつもりは―――っ!?」

「キリトッ!! どさくさまぎれにサヤを触るとは何事―――ひゃっ!? 私まで触りましたね変態ッ!!」

「そ、そうなのか!? ごめんっ! 何処がどうなってるか解らなくてっ!?」

「キ、キリトさん………、たぶんそれ、私の胸です………」

「ごめんミスラッ!?」

「パパ~~ッ! 浮気はいけません~~っ!」

「キリトくんっ!!」

「ち、違うんだ! 不可抗力で―――っ!」

「んあぁ~~♡ キリトさん………♡ い、息が、首筋に………♡」

「これはヴィオだったのか!?」

「キリト………ッ!? 顔、こっちにやったら………近い………」

「サ、サチ………ッ!?」

「あ、あぁんっ♡ キリトっちったら大胆~~♡」

「うふふっ、キリトくんったら、そんなエッチな所触っちゃダメですわよ~~~?」

「ライラとスニーは嘘だろっ!? お前ら明らかに俺の身体が届く範囲の外にいるだろうっ!?」

「ひゃあぁんっ!? キ、キリトさん! 脚動かさないでくださいっ! わ、私、たぶんその辺です!」

「今の声はシリカか!? どう言う状況になってるんだっ!?」

「だ、だから………っ! キリト、顔近い………っ!」

「あぐ………っ!?」

「パパ~~~っ?」

「キリトく~~~んっ?」

「う、うわあああああああああああ~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」

 訳も解らずもがきながら、最早どうして良いのか解らないキリトは、ともかく抜け出す事を最優先した。

 その間に、少女達の艶めかしい声や、ドキドキ柔らかな感触を身体全体で堪能する事になってしまい、やっとのことで抜けだした時には………。

「ようっ、キリの字? お楽しみは終わったかい?」

「く、クライン………?」

 クラインを筆頭に、男子メンバー達の狂気の眼が彼を包囲していた。

「お前さ………」

「何勝手に………」

「人の彼女に手ェ出してんの?」

 テイトク、ヴァジュロン、ロアが、それぞれ武器を構えながら瞳孔の開き切った瞳で見降ろす。そんな彼らの反応に、キリトが恐れる傍ら、シリカ、リズベット、スニーの三人は、彼氏の反応に嬉しそうに照れ笑いを浮かべていた。それがキリトには恨めしく思えるのが不思議だ。

(少なくともスニーは彼氏に嫉妬してもらいたくてわざと俺に絡んだなっ!?)

 キリトが睨むと、スニーは意図に気付いた様に真っ黒な笑みを朗らかに浮かべて見せる。

「何処を見てるんです?」

「そんな暇があるのかい? キリトくん?」

 ストレージから大量の武器を取り出し、どれで料理しようか選び始めるワスプと、楽しそうに立ち上がるヒースクリフ。さすがのキリトも、この二人相手には本気で危機感を感じた。

「って言うか、ヒースクリフっ!? お前もかよっ!?」

「なに、私の場合はケイリュケイオンに世話になっている事もあるのでね。彼等に無礼を働く者は私にとっても敵と言うだけだよ。それがキリトくん。君であってもね」

 そう言って≪神聖剣≫のヒースクリフが盾から剣を抜き取る。

 彼を筆頭に、ケイリュケイオンのユニークスキルメンバーもまた、それぞれの武器に手を掛け始めた。

(ダメだ………っ! これはもうっ、本気で死んだ………!?)

 そう感じながらもキリトは二刀抜き、素早く空いている窓目がけて飛び退る。

 タイミングが良かったのか、難なく外に逃れられたが、追いかけてくるメンバーの質が尋常じゃない。あっと言う間に追いつかれ、圏内戦争(、、)が勃発してしまう。

「ぐおわあああぁぁぁ~~~~~~~っっ!!?」

「死ね~~~~~っ!! 本気で死ねキリト~~~~~っ!!」

「てめえ! 一人で一体何人抱えるつもりだっ!? 仮想世界だけどリア充野郎ッ!?」

「女相手にも≪ビーター≫かテメェッ!?」

「結婚してるくせにふざけんなぁ~~~~っ!!」

「人の女にも手を出すとかどんな頭してんだよ!?」

「年齢も考えろよっ!? クロンちゃん何歳だと思ってんだっ!? 手当たりしだいか貴様~~~~っ!!」

「くっそ~~~っ! なんで毎回こんな目に………っ! こうなりゃ! ただでやられてやるかぁ~~~~~~~~っ!!!」

「ぐおわっ!? ≪ビーター≫が本気出しやがったぞぉ~~~っ!?」

「ええいっ!? 怯むな! こっちにはSAO最強のプレイヤーがいるんだ~~~~っ!!」

 

『ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!』

 

 もう何が何だかわからない状況に、女性陣も苦笑を浮かべるしかない。

 何があっても全ては騒動で終わってしまう。それがケイリュケイオンの日常だった。

 

 

 

 

 そして、彼等は後に知る事となる。

 全SAOプレイヤーにパロクエストクリアにより解禁されたクエストが、システムメッセージで届けられた事を。

 

『限定クエスト:カムイクルヒを討て』

 

 

 この物語を語るのは、またいずれ………。

 




・舞台裏劇場

サヤ「舞台裏劇場。監督部屋」

のん「どうも秋宮のんです。まず最初に皆様に謝罪申し上げます。
   この度は、一時期サイトが確認できない状況になりました。
   理由はアンケート行為による不正で“本部”に警告されました。
   忠告された内容を修正し、これを機会にキャラ募集も終了し、こうして復活しました。
   しかし、読者皆様への連絡が遅れた事、真に申し訳ありません。
   ペースは落ちますが、また書いて行こうと思っていますので、よろしくお願いします。
   キャラ投票は終わりましたが、人気投票などは続けるつもりです。
   今度はルールを守って実行します。詳しくは舞台裏劇場にて。
                 作者でした」







タドコロ「舞台裏劇場~~~~~~~~っ!!!!!」

クローバー「ひやっほぉぉぉ~~~~~~うっ!!!!」

タドコロ「いきなり作者の根暗メッセージから始まり申し訳ありませんでした! 舞台裏劇場進行役! エンターテイナータドコロですっ!!」

スニー「今回の解説役に選ばれてしまいました。スニーです。よろしくお願いしますね?」

キリト「ゲストのキリトです。こんな所まで出してもらえて恐縮ですね」

タドコロ「キリトコロス………ッ!!」

男子勢『キリトコロス………ッ!!』

キリト「ネタがまだ続いてるっ!? こんな所まで勃発させるの止めろよっ!」

スニー「急に立ち眩みが~~~♪」(ぴとっ)

タドコロ「キリトコロス………ッ!!!!」

男子勢『キリトコロス………ッ!!!!』

キリト「スニー~~~~~~ッ!! お前、どんだけ俺を追い詰めたら気が済むんだっ!? 放送事故になったらシャレにならないだろうっ!?」

スニー「うふふっ、申し訳ありません。キリトくんが不幸になると楽しくて♪」

キリト「なんて迷惑なツボだ!」

タドコロ「え~~~、今回は未来編と言う事でしたが、読者の皆様はどうだったでしょうか? おっさんは出番が多くて大満足でした!」

マサ「殆ど出番がなかった………」

ケン「本物の標本並みでシタヨ?」

エンド「名前すら出ませんでしたね………」

シヨウ「俺も………」

レン「未来編なのに影すら無しか………」

アルク「なんで俺様だけキリトのシーンで参加しなかったんだろうな………」

クド「どうせ俺らは影存在………」

ウィセ「出番は多かったんですが、恥シーンばかりです………ッ!」

ヴィオ「脱げました………」

アマヤ「最後のシーンで、俺だけ回収されてなかったって、誰も気づいてくれてないだろうな………」

ルナゼス「早く忘れたい………」

サヤ「楽しかっただろうなぁ………パロ………」

キリト「そろそろ誰か止めてやれよ! 暗いムードばかり湧き起こってるぞ!?」

スニー「出番はありませんでしたが、充実した日々を送れました♪」

不運メンバー『うぅ………、ぐっすん………』

キリト「追い打ち掛けてどうするんだよっ!?」

タドコロ「おっさんのブロマイド渡せば一発で元気になると思うぜ? ほら」

全員『ぎゃ~~~~~~~~~~~っっっ!!!?』

タドコロ「な?」

キリト「皆気絶したよ!」

スニー「まあ、静かになったところで話を進めましょう。どうせ皆さん、要所要所で都合良く復活しますわ」

キリト「ケイリュケイオン、恐るべし………」

タドコロ「そんな訳で、若干不服が残るメンバーもいるようだが………おっさんが楽しかったのでそれで良しっ!」

キリト「なんて開き直りだ………」

スニー「あまり多くは参加しませんでしたが、私の未来の可能性に、男性の影があるなんて………、ちょっと不思議な気分ですわね」

キリト「俺も、サチが生きてくれていて嬉しいよ。………まあ、この世界ルートでは、サチは一回死なせてしまっているんだが………」

サヤ「落ち込まなくてもいいと思うよ? キリトは本当に頑張ってさっちゃん助けたんだから」

キリト「サヤ、ありがとうな」

サヤ「えへへっ、キリトには甘えてばかりだからお礼を言われると嬉しいな!」

タドコロ「姫嬢ちゃんの変わりようは今から楽しみだぜぇ! まさかあんな風になるなんてなぁ?」

ウィセ「止めて恥ずかしい………! まあ、私、ルートによっては団長やキリトのフラグもあったらしいけどね? あとスニーも居たみたい?」

サヤ「にゃうっ!?」

キリト「な、なに………っ!?」

スニー「え? (わたくし)も居たんですか?」

ウィセ「まあ、驚く事無いですよ。キリトには女性陣のほぼ全員の予定フラグが存在しますから?」

男性陣『キリト………! マジコロス………ッ!』

キリト「結局このパターンかっ!?」

マサ「俺達って、二年後は結局どうなってたんだろう? 殆ど出番なかったからな?」

サヤ「ああ、マサって結構落ちついたお兄さんになってたよ? タドコロのギャグとか笑顔でスルーしてた」

カノン「僕達はあまり変わった事はなさそうですね………」

タカシ「まあ、この時代設定上、死んでる奴もいるらしいから、登場しなかったと言うのもあるらしいがな」

未登場キャラ『え?』

ワスプ「レッドギルドは皆死亡してるでしょうからね………」

タドコロ「ああ、このルートな? お前さん、一度サヤと付き合ってたらしいぞ?」

ワスプ&サヤ「「え? そうなの………?」」

ウィセ「………(死んだ魚の目」

ジャス「まあ、とある事件が発端で別れてしもうたのだがね」

ワスプ「何故頑張らなかったんだその時の僕っ!!」

ウィセ「………(時系列は………、私より先ですか!? ワスプと結ばれたままだったら、私とサヤの関係は無かった事になっていた!? ………これは、手放さないように気を付けないと………!)」

サヤ「ウィセ? そんなに握ると手が少し痛い?」

ヌエ「そう言えば、ユニークスキルで、俺とアレンだけが被ってたんだが、アレはどうなったんだ?」

スニー「………このルートでは、あくまで早い順の設定だったみたいなので、一応はヌエくんみたいですわね?」

アレン「く………っ! まあ、スキルが無くても抜刀術は使える………」

ルナゼス「アイリオン生存ルートとかないのか?」

サヤ「無いよ」(スパッ!)

スニー「ありませんね」(ニッコリ♪)

テイトク「アイリオンの存在知らなかったし?」(グサリッ!)

クロン「生存しようがありません」(キッパリ!)

のん「二キャラ目だし」(トドメ!)

ルナゼス「もう、やめてくれ………っ!」

キリト「コレ、このまま進んだら最後はどうなるんだ? “原作を崩さない程度に進める”っとは言ってたが、二次創作だし、やっぱりラストとか関わったりするのか?」

サヤ「えっとね? ………ああ、なんか最後は75層ボス、ボス戦レイドメンバーを完全募集するみたい? 選んだキャラの組み合わせによってラストシーンが変わるんだって?」

スニー「今のところ用意されているラストはキリトくんは当然として………、マサくん、ナッツくん、テイトクくん、ロアくん、ウィセさん………あら、私もいますのね? ………これだけみたいですわね。あら? サヤさんがいないとはちょっと意外ですわね?」

サヤ「ああ、その時は僕たぶん………あははっ」

ウィセ「なんですか!? その虚ろな瞳はっ!? なんだか無性に不安になってきました!?」

スニー「(あ、なんか今更になって、私初登場の時のフラグが回収された様な気がします………)」

アルカナ「俺達はさすがに無いか………」

サスケ「拙者は影故。これでも満足でござる」

サカキ「おやおや? そろそろ時間が無いようですね?」

タドコロ「みたいだな? 雑談はここまでだ! 最後に、投票は既にもらっているので、この先の投票方法について教えておくぜ!」

スニー「人気投票は、これまで通り、『一人、三票、二キャラまで』とさせてもらっています」

タドコロ「ただしっ! これからは感想欄にではなく、メッセージか活動報告の方で“変身”してくれデュワッ!」

マサ「“返信”ね」

スニー「新しい“クエスト”及び“イベント”も、報告の方で募集を掛けますので、そちらにご返信ください」

サヤ「『ハーメルン』に登録されていない方には不便かも知れませんが、ここはどうかご了承ください」

タドコロ「つうわけで! 今回から始まった“次回予告”にて! 最後を締めさせてもらうぜ!」



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・次回予告
読み手:サヤ
 第4層で、ギルドを立ち上げた僕達は、本格的に活動を開始するための下準備に入ったんだ。
 ウィセ、タドコロ、マサ、スニー達が攻略に参加する中、他メンバーは攻略組をサポートするために必要な活動は何かを考えてくれてる。そこで商業的な物に手を出す事を考え、アレよこれよと手を尽くしている内に攻略は進み6層地点!
 ギルドの活動準備が整った僕は、初期メンバーとの記念を求め、とあるクエストで≪記録結晶≫が手に入れられると知り、クエストに向かった。そこで僕達は、とある少女と出会う事になるんだ。

 第四章イベント01 『絶景の一枚』
 皆よろしくね!





読み手:ウィセ
 ケイリュケイオン攻略メンバーの名前も売れ始め、リンド・キバオウから正式な誘いが送られた。
 手間取っているサヤを置いて、攻略メンバーを考えていたところ、私達の元にクロノと言う少年が現れ、突然自分もボス戦に参加させろと言ってきた。
 紆余曲折の末、メンバーの一人が席を譲り、彼をパーティーに入れたボス戦が開始される。しかし、クロノは私達の指示を無視して、ボスに向けて無茶なアタックを続ける。何故そんな迷惑な無謀を? その理由は―――。

 第四章イベント02 『純白の罪』
 ご期待ください。

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