GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件   作:シアンコイン

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………ども、シアンコインです。


………年末ですね………。


最近毎日、日がすぎるのが早いです。日は早く沈みますし………。

とりあえず…………。

遅くなってすいませんでしたぁぁぁぁぁ!!!





「……ごめん、イタミ」(ホントにごめんなさい……)

 

 

 

 

 

「………アーチャーのお知り合い、ですか……?」

 

おずおずと尾賀万理は疑問を口にして目線の先の人影、小柄な体型の少女に問いかける。見ればその傍らには軍服らしき服装の小さな人形が浮遊している。

容姿とその手に携えた分厚い本、言葉に万理は警戒心を強めていたがそれと同時にアーチャー、ビリーの知り合いだという言葉と口ぶりからして彼女が何か知っていると確信を得ていた。

 

「直接的な対面はなかったけれど、共通の敵を打倒する為に共に戦った事に違いはないわ。」

 

まぁ、彼の方が先に倒れたけどね、と付け加えて遠い日の事を思い出すように目を細める少女。その姿と言葉に万理は相手は敵対する存在ではないと思ったのか強張った身体の力を解いていく。

 

「けれど驚いたわ。時代も文明も何もかもが違う異世界に召喚されて、あの時代でのお仲間がまた召喚されているんですもの。」

 

「あの……先に倒れたって……ビリー…アーチャーが負けたんですか…?」

 

「英霊にも格があるわ、彼はその中でもトップクラスの英霊と戦って敗れた。何を思ったのかは知らないけれど彼にその事を言うのはやめておきなさいな。男性は変な所でいがみ合ったり気にしたりするものよ。」

 

同情と優しさは違う、例えそれが中身がまるで別でも真実に変わりはない。その言葉でビリーがどう感じるのかは二人には分かりはしないが万理は言葉を呑み込んだ。

一方、その小柄な女性の脳裏には白いネコ科とバチバチ系紳士がいがみ合っている様子が浮かんでいた。

 

「自己紹介がまだだったわね、私の名は……まぁ彼が知っているでしょうけど『キャスター』を名乗らせてもらうわ。アーチャーのマスターさん。」

 

仕切り直すように遠くを見つめていた瞳を瞬かせ女性はニッコリ微笑みそう告げた、彼女の隣を浮遊していた人形はゆっくりとその肩に乗っかり敬礼のポーズをとっている。

その光景にやや気持ちを絆されかけた万理の思考に『キャスター』という言葉が駆け抜け、身体を強張らせた。

 

彼女の叔父、伊丹からの教えによれば使い魔。サーヴァントであるビリーは本来は聖杯戦争と呼ばれるもので願いを叶える聖杯というものを賭け争うという話を聞いていた。

聖杯戦争には7つ、それぞれのクラスを持った英霊が召喚される。そして最後の一人になるまで戦い続けるサバイバル。それはつまりサーヴァント同士が出会えば開戦という事になる。

 

即座に回転しだした万理の思考は、自身の前に現れた自称『キャスター』がどんな人物で、自身の置かれている状況の把握に努め始めていた。現状はあまり良いとは言えずむしろ悪いと言えるだろう。

本来の聖杯戦争がこの特地で行われているのならばこの場で『アーチャー』のマスターである自分が狙われてもおかしくない事は彼女自身も理解している。

 

既に邪魔が入らないように付近の自衛隊員は眠らされてしまい、魔術的なモノで人払いをされているのか彼女等の周りには人の気配がまるでない。

頼みの綱であるビリーも未だ現れてくれない。やや慌て気味の中で一つの案が思い浮かんだ。それはあまりに運任せな判断ではあるが目前のような英霊には対抗するすべがない彼女にとって出来る最善策でもあった。

 

なにより―――

 

(この前は……私が助けて貰った……。だから次は私がビリーさんの助けになる…!!)

 

自分が死ぬ又は魔術的な何かでビリーに何らかの危害が加わる事を良しとしない、万理の本音が彼女を突き動かした。

 

「私は…尾賀万理と言います……。一応アーチャーのマスターです。それで、何が目的ですか?」

 

「………立ち話も良くないわ。それに貴女も彼が居なくて不安でしょう? 彼の元まで行きましょう?」

 

「え? でも……」

 

「『なら何で彼と一緒の時に現れなかったの?』とでも思った? もう既にね、私は目的を達している。だから何も問題ないのよ。」

 

それとは別にキャスタ―と名乗る女性は万理の表情を見るなり、辺りを見渡して口角を上げる。

その表情は何処となく感心したような、何か面白い物を見つけたと言わんばかりに生き生きとし、万理に淡々を言葉を返した後。彼女の横を通りぬけて笑みを浮かべた。

 

悠々と足を進め万理はキャスターの後をついていく。

 

 

――――その場に寝転がっている自衛隊員達を置いて。

 

 

後日、彼らにキツイ説教と訓練があった事を万理は知らない。

 

 

 

 

       ◇

 

 

 

 

 

「…………………」

 

「なぁ……アーチャー…」

 

「何だい、イタミ。」

 

「……聖杯戦争ってさ、殺伐としてるイメージが俺はあったんだよ。」

 

「うん。」

 

「英霊たちが凌ぎを削って争う、気高きイメージ。」

 

「うん。」

 

「その中でのマスター達の成長と戦いも大事な物だと思ってるんだ。」

 

「そうだねぇ……」

 

「でもさ、俺の目の前では―――」

 

「マスターが、キャスターに魔術の手解きを受けてるねぇ………。」

 

正確には簡易魔術の手解きである、数十分ほど前。何者かの気配を感じたビリーは即座にその場を後に万理を探して飛び出し、丁度歩き出した彼女らを見つけ拳銃を構えたのだが……。

時すでに遅し、万理には気取られぬようにキャスターは彼女の肩に自然と小さな人形を座らせていた。万理自身警戒しているのだろうがそれが意味をなしていなかった。

 

無駄な行動は万理(マスター)に危害を及ぼす可能性がある、今更彼は万理から離れていた事を悔やんだがそれも遅すぎた。

内心で自分に対し舌打ちをしたビリーは、余裕の表情でこちらを見据えていたキャスターに薄っぺらい微笑みを向け出迎えた。

 

結果、キャスターが万理の素質に気づき興味があれば簡単な魔術を教えると申し出た。訝し気なビリーと伊丹を置いて意外と乗り気な万理はその誘いに乗ってしまい現状に至る。

 

(キャスター………。てかどう考えてもエレナ・ブラヴァツキ―だよね。こうして本物の英霊を見るのは初めてだけど何となく……気配が違うな。)

 

キャスター、エレナ・ブラヴァツキ―。ビリーと同じくFGOにて登場した魔術師のクラスを持つ英霊。

自身とは違い、本物と相対するとは思いもしなかったビリーの内心は落ち着きがないがどこかでホッとしていた。これがもし目玉が凄い青いひげの人だったり、小柄なハンサムボイス、または鋏を持った悪魔だったらビリーの胃に穴が開いていた事だろう。

 

(で、どうなんだ? 怪しい素振りとか見せてないか?)

 

(うーん、ボクは英霊だけど……あくまでガンマンだからねぇ……)

 

そんな中で隣の伊丹に耳打ちされたビリーはそことなく辺りを伺い彼女らを見据えるが、特にこれと言って変な所は無いように見えた。

というより―――

 

(ボクにそんな魔術とか高等技術を理解する知識も技術もないからぁぁぁぁぁ!!)

 

中身が人間の彼にそれを理解する術を持っていないのが本音でそれっぽい言葉で伊丹を誤魔化していた。

幸いな事に瞳が泳ぎまくっているのに誰も気づかなかった。

 

「――――よし、後は貴女の努力次第ね。気になる事があればまた聞いて頂戴。」

 

「あ、ありがとうございます…キャスターさん。」

 

「よくってよ、この位どうってことはないわ。自己防衛が出来るようになれば彼も喜ぶでしょ?」

 

やや焦り気味のビリーを置いて、どうやら魔術の手解きは終わりを迎えたらしくキャスターはニッコリ微笑むと開いていた本を閉じ。

万理は立ち上がって礼を言っていた。意味ありげに横目でビリーを一瞬見据えたキャスターにビリーは頭を抱えた。

 

「何をマスターに教えてくれたんだい? あまりボクは魔術に詳しくなくてね。」

 

「比較的簡単な物よ、アクセサリを介して行う魔力を収束して放つ魔術と障壁を形成する魔術、あとはオマケ程度だけど治癒魔術。後者二つは練習が必要でしょうけど貴方が居るならさほど気にすることはないわ。」

 

これよ、と万理の腕に巻かれた紫色のブレスレットと文様が刻まれた白い手袋を指さしたキャスター。それを見て納得したようにビリーは頷くと立ち上がる。

 

「どうだいキャスター、ちょっとその辺を見て回らないかい?」

 

徐に取り出した帽子を被りビリーはテントの出口を指さしてそう伝える。その表情はニコやかだが何処か真剣な雰囲気が垣間見えた。

 

「あら? 貴方からそんなお誘いが来るとは思わなかったわ。」

 

「こんな綺麗なお嬢さんを見たら誘わない方が失礼だとボクは思うな。」

 

そんな彼の言葉にキャスターはキョトンとすると、疑問を彼に投げかけるが彼の軽口に乗せられて歩き出す。

 

「ふふ……よくってよ。行きましょうか。」

 

「お、おい。ビリー。」

 

「任せてイタミ、マスターを頼んだよ。」

 

「アーチャー……。」

 

引き留めた伊丹にビリーは微笑むとそのまま足を進める。彼の耳に届いた小さな声にビリーは振り返り声の主である主人を見つけると片手を上げ微笑んでその場を後にした。

互いに何も発さず、ビリーは拠点を抜け、自身が主人の元まで最短で辿り着けて近くの警備の者や自衛隊が近づかない小さな丘で足を止めた。

 

「さて、改めましてかな。キャスター。」

 

「そうね、アーチャー。ごきげんよう。」

 

社交辞令としてお互いに頭を下げるが互いに警戒は解かない、彼にも聖杯戦争が絡んで召喚されたであろう者同士、無駄な戦闘を避けるための判断であった。

時折吹き付ける爽やかな風に両者の髪は揺れ、木の葉が舞う。見定めるように交差する視線、数秒の後にビリーが口を開く。

 

「あまりまどろっこしいのは好きじゃないから、単刀直入に聞かせてもらうけど。キャスター、君は何が目的だい? ボクの命か、それとも――」

 

「命のやり取りをしに来たわけじゃないわ。どちらかというと仲間を探していたのよ。何にも染まっていない純粋な仲間を。」

 

「その言い方だと、()()もそういう事になってる訳かい?」

 

「察しが良くて助かるわ。そう、今回もこの聖杯戦争は異例(イレギュラー)が多発してるわ。まず貴方も遭遇したでしょうけど英霊ならざる者、そして――――正体不明(unknown)。姿形が把握できない存在がこの世界で無造作に暴れまわっているわ。しかも汚染された聖杯を持ってね。」

 

背中に冷たい何かを感じたビリーは眉を顰め視線を丘の向こうの大地に向け、思考を始める。キャスターの口ぶりからして彼女はもう既にこの世界の全貌を掴みかけている。そうしても尚、他の使い魔(サーヴァント)に協力を求めている。

それだけで事の重大さが目に見えてしまい彼は理解してしまった。

 

(こりゃ……本当にボクも覚悟を決めないといけないみたいだね……。)

 

薄々と自分が大きな壁の前に立っている事に気づき始めていたビリーは諦めたように薄く笑い、納得してしまった。そんな彼の横顔を見てエレナは仕切り直すように咳払いをして話し始める。

 

「私が呼び出された大前提として、勿論この世界には魔術基盤が存在するわ。けれど人類の歴史上、エルフやオークの様な空想上の存在は明らかになっていないしこの国を総べる王族の名も記録にはない。あまり認めたくはないのだけれどこの世界は異世界か、または汚染された聖杯が作り上げた幻か、貴方なら答えを知っているんじゃなくて?」

 

「前者、異世界だよ。ボクとボクの主人が保証する。」

 

「やっぱりそうなのね………。となると、差し詰め貴方達はこの世界と繋がった私達の知る世界から来たのかしら。」

 

「凄いね、その通りさ。」

 

「驚く事かしら、この世界に現代技術がある時点で答えを言っているようなものよ。」

 

ま、勘でもあったけれど。と慎ましく笑いキャスターは近場の木の幹に寄りかかり空を見上げている。

 

「どうかしら、アーチャー。貴方が良ければ手を組まない?」

 

木漏れ日に照らされながらも、キャスターは視線の先で背を向け何処かを見ているビリーへと申し出をした。この場でビリーには彼女の提案を断る理由は何処にもない。

寧ろ良い機会だ。主人である万理を護らなければならないビリーは、既に行動を制限され手詰まりに近い、誰かの助力を何処かで求めていた。故に答えは一つ。

 

「レディの頼みとあれば、断わるわけにはいかないね。なんて、こちらこそよろしくお願いするよ。主人に色々と教えて貰っちゃったしね。」

 

「えぇ、よろしくアーチャー。もう知っているでしょうけど改めて名乗らせてもらうわ。私はエレナ・ブラヴァツキ―、クラスはキャスター。」

 

「ボクはウィリアム・ヘンリー・マッカ―ティー・ジュニア。人呼んでビリー・ザ・キッド、クラスはアーチャーさ。」

 

了承の意を込めてビリーは振り返り、手を差し出しキャスターはそれを掴み立ち上がった。お互いにこやかに自己紹介を済ませビリーは一度戻ろうと提案し二人は歩き出した。

 

「でさ、キャスターはどうしたいんだい? ボクは一応、彼ら自衛隊の警護と門の先にある世界の防衛を任されていてね。今、彼らの意向でこの世界の調査を行おうとしているんだ。」

 

「私は他に私のように汚染されずに召喚された英霊を探して、飛び回っていたのだけれど…貴方に会う事が出来たし、今の所は無いわね。強いて言えば正体不明への抵抗として他の英霊を探したいのだけれど………そうね…。ちょっと私にいい考えがあるわ。」

 

(あ………これ、不味い奴だ。)

 

足を進めながら会話をしていると、徐に彼女は辺りのテントやこちらに視線を向けている自衛隊員を見てニヤリと笑みを浮かべた。

同時にビリーは内心でキャスターの言葉に、一種のテンプレと不安を覚えていた。

 

 

 

 

 

      ◇

 

 

 

 

 

「……………ごめん、イタミ。」

 

「いや……良いんだ、死人が出ないなら……それで……」

 

自衛隊仮拠点、離れのテントにて二人の男が項垂れ夜空を見上げている。その表情は暗く、虚ろとも言えた。

 

Xa-xa-xa-xa-xa-xa-xa-xa(アッハッハッハッハッハッハッハッ)!!」

 

背後には机の上に並べられた自衛隊の装備一式を取り囲むように魔法陣が形成され、その手前で本を片手に高笑いするキャスター。

そして――――

 

(………これが……魔術……!!)

 

瞳を輝かせてその光景を見つめる、一人の主人(マスター)の姿があったとか……。

 

 

 

 

 

 

 






え? エレナさんの口調変? 気のせいじゃないですかね(すっとぼけ)

七章も来まして、遂にソロモンですが皆さんはどこまで進んでますか?
自分はメドゥーサ(ランサー)狙ったらエルキドゥ来て色々折れました………。

今年中にはあと一回は更新すると思います、では。

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