GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件 作:シアンコイン
相談した結果。
「明日投稿してくれるんでしょ?(脅迫)」
と、言い渡されたので頑張って今週中に投稿……。
え、日曜?
書き終えたの土曜だからセーフでしょ……(逃げ腰)
誤字報告に感想、評価、本当にありがとうございます。
励みになります!!
「―――当たれッ!!」
正午、銀座にて無数の爆音が木霊し斬撃が飛び刃がその場を飛び交う。
その中で避難を終えた民間人を誘導する自衛隊、警備に当たっていた警察官等は横目に固唾を呑み込んだ。
先には噂されていた帽子の人物が現実に現れ、自分達をまた守るように立ち回り、今度は異形の存在と戦いを繰り広げている。
銃弾は効かない。それは知っている、なんせ自らが撃った弾丸はあの黒い影のような存在には当たる事はあっても通り抜けてしまうのだから。
それなのにあの男が手にした旧型の銃で撃たれた影は瞬く間に、霧になって消えていく。
それよりも彼らが目を引いたのは相手の移動速度と、行動だ。
「チッ……!!」
帽子の男、ビリーはその身体から鮮血を滴らせながらその場を飛び回り、四方八方から迫る刃を紙一重で避け目にも止まらぬ早打ちで撃ち落していく。
地に降り立った瞬間にはその大柄な体を物ともせず俊敏にかける剣を持った影が襲い掛かる。
大雑把に振り下ろされた剣の腹をビリーは蹴り飛ばし標的をずらし、その場を飛びのく。飛び退いた瞬間にはその場に再度黒い刃が降り注ぎ地に突き刺さる。
飛び散る鮮血を気にもせずビリーは立ち回り、道脇に止められた車を背にし攻撃を避けてはその隙に数人の影を撃ち抜き消していく。
その間は数分にも満たない、まるでテレビの中の映画を見ているかと錯覚してしまうほどにその状況は異常であった。
最早、人間とは思えないほどの速さで行動し、飛び壁に張り付き。攻防を繰り返している。
その一撃一撃が必殺と言っても過言ではなかった。
実際、彼らは英霊の成り損ねた存在であり基礎能力は英霊と遜色ない。それぞれが一級品かそれ以上の能力を備えその身体から繰り出される攻撃は一般人が当たれば一溜りもない。
ハサン、その場に無数に存在する影の正体の一人はそう呼ばれた暗殺者であり。その能力は本体が持ちえた複数の性格が分裂し実態を持ったモノ。
それぞれが本体と同じ暗殺者でありその身体から放たれた刃は、標的の急所を正確に狙い。直撃を喰らえば致命傷は避けられないだろう。
持ちえる武器も様々で大鎌を携える者、短刀を身体中に隠し持つもの、武器を持たずにその屈強な体を思うがままに振るう者も居る。
そして、もう一つの影。それは大柄な体ながら俊敏な動きで立ち回り。ビリーから放たれた弾丸を最低限の動きで避け剣で切り払っていく。
かの有名な古代ローマにて皇帝の称号の語源ともなった人物であるガイウス・ユリウス・カエサル。
その紛い物であるがその剣の威力は甚大、振り抜かれ標的を見失った剣は地を砕き風を起こしてしまう。
化け物と言えるそんな存在を相手に未だに奮戦しているあの帽子の男は、と考える自衛隊員も中にいた。
見れば彼の周りはその影で囲まれ、帽子の男は息も絶え絶えに銃を構えている。
門が開かれあの影が飛び出してきて自衛隊員が攻撃され倒れ押され始めたその時に現れた彼は、その存在を少なからず知っていた一部の隊員は歓喜にも似た表情を見せた。
助かった、そんな気持ちが彼らの中には生まれていたが今のビリーの姿は傷だらけで、身体の至る所に切り傷や刃物が突き刺さった跡が見えた。
現在も複数の縄が四方から伸びて彼を拘束し、剣を持った大柄な影が彼に歩みを進めている。どう考えても劣勢であり、必死の形相で縄を振り解こうと、もがいて見えた。
あの時の銀座でも、今この時も帽子の男は素性は不明でも一般市民を助ける為に戦っている。
それは明らかだった。その事に気づいた自衛隊の一人が拳を握り痺れを切らして拳ほどの大きさの何かを取り出すと、仲間の制止も聞かずにピンを引き抜いてビリーに向かって思い切り投げた。
「――――フラッシュ!!」
「ッ!?」
その自衛隊員がワザと叫んだ言葉を聞いたビリーは即座に目を閉じる。
刹那、ビリーを中心に取り囲んでいた影、シャドウサーヴァント達は武器を掲げるがそれよりも先に閃光がその場を包み込んだ。
――――パンッ!!
瞬間、閃光が完全に消え去っていない時に乾いた爆音が一発響いたのを皮切りに連続してその爆音が響き続ける。
一人の自衛隊員が恐る恐る瞳を開ければ、そこに居たはずの無数の影は綺麗サッパリ消え失せ視線の先には帽子の男が大柄な影の後頭部に銃を突きつけていた。
「………ンド……だ…。」
閃光弾のせいで耳がまだよく聞こえない彼には何を呟いたか、分からなったがその瞬間に銃の引き金は引かれ、最後の影は離散する。
最後にはその血で汚れた身体をこちらに向け、汚れた顔で男は微笑んだ。
「…ありがとう。」
そう、確かに聞こえた時には男は瞳を閉じると光に溶けるように消えて行った。
場に残されたのはその状況に取り残された自衛隊員と、民間人だった。
◇
ビリーが門の前でたった一人の攻防を繰り返している最中、ホテルの一室から飛び出した万理と伊丹は車を走らせていた。
運転席には真剣な面持ちで伊丹がハンドルを握り、助手席で万理が不安そうに携帯を目にしている。
「何で急にシャドウサーヴァントが現れたんだ!! あれじゃ自衛隊の警備も意味ないぞ!!」
「……英霊、ビリーさんやあの影には近代兵器は通用しないんだよね?」
「あぁそうだ、結局、極端に言えば彼らは幽霊。実体が無い存在に武器は意味を成さない。方法は魔術を帯びた武器か魔術何だけどそんなもの用意できるわけもない!!」
珍しく動揺した面持ちで彼がハンドルを切る中で万理は今一度、携帯に映った生中継を見る。
遠目にチラチラと見える人影と黒い影が飛び回り、攻撃をお互いに仕掛けているのは分かるがカメラが彼らの動きについていけてない。
残像しか映らないその光景にニュースキャスターの興奮した声が続くだけで、そこから得られるのものは何もなかった。
「…おじさん。」
「どうした?」
「ビリーさん、大丈夫かな………。」
「……見た感じ、数で負けているし。多分ビリーは周りを気にして戦っている、優勢に持ちこむのはキツイと思う……。」
苦い顔で万理にそう伝える伊丹はハンドルを強く握りしめる。伊丹からすれば予想外の連続の中で更に脅威としか言えない存在が再び姿を現してしまっている。
あの場ですぐにビリーが飛びこまなければ自衛隊員にも死者が出かねなかったが、多勢に無勢である。いくらビリーが理性のある英霊だとしても数の暴力には抵抗するのが精いっぱいだろう。
実際、ニュースの中継に耳を傾ければビリーが押されているという発言しか聞こえてこない。
「それって……。」
「……。ビリーは”あの時”と同じように一般人を守るために行動している。」
「……………おじさん、急いで…。」
「言われなくても!!」
伊丹の言葉に手元の携帯を強く握りしめた万理は俯いていた顔を上げて、凛とした表情で彼にそう告げた、が。
「―――――って言っても渋滞なんだよね…」
「だったらカッコつけないでよ!!」
困ったように顔を下げる伊丹に万理は顔を真っ赤にして怒鳴りつけた。そんな時だ。
――――ピピピピ
「ん、俺の携帯か?」
ふと伊丹の携帯に誰かから着信が入り渋滞で進まない事を確認してから、電話に出た。
「はい、伊丹ですが…。」
『―――おう、伊丹。突然でワリィが今どうなってんだ? 例の嬢ちゃんは?』
聞こえてきたのは低いながらもしっかりと通る男の声で伊丹は驚いたように声を大きくした。
「嘉納さん………。テレビは見ていますか?」
『こんな大騒ぎになりゃ誰でも見るだろ、今戦ってんのがお前が言ってた英霊か?』
「えぇ…そうです。聴取を受けていた際に帽子の男、ビリーが門の異変に気付いたようで俺達に何も言わずにあの場に飛び込んだようです。」
真剣に誰かと話をしている伊丹の姿に万理は隣で、しみじみとその横顔を見つめていた。無理もないだろう。
普段からの彼を知っている彼女からすれば彼が真剣な顔を見せるのは中々無い事で、少なからず彼女は驚いているのだ。
『話に聞いた通りならその男は今……。』
「えぇ……。ですから自分は今彼のマスターと一緒に門に向かっています。」
『無理な事はすんなよ。銀座の二人の英雄が死んだなんて笑い話にもならねぇ。』
「…大丈夫ですよ閣下、こんな所で死んだら今度の祭りに参加できないですから。」
そんな真剣な表情も束の間で、次の瞬間には伊丹は二ヘラと笑みを浮かべると携帯からは馬鹿でかい声が響いた。
思わず身体が竦んだ万理に伊丹は苦笑しながら挨拶を終えて通話を切った。
「知り合いの人?」
「まぁね、俺の趣味仲間。それより万理ちゃん中継はどうなってる?」
「え、えっと『たった今、思わず目を閉じてしまうほどの光が辺りに立ち込め、一瞬の内に帽子の男を取り囲んでいた影が姿を消してしまいました!! そして今、あっ!!』あっ。」
伊丹に言葉を投げかけられ万理は手元の携帯の音量を上げていく、すると興奮気味のニュースキャスターの声がノイズ混じりに聞こえてきたのだが。
ニュースキャスターの驚きの声と一緒に万理も声を漏らす。
「え、え、どうしたの!?」
そんな様子に慌てて伊丹は身を乗り出して携帯画面を覗いた。
そこには最後の一体の影に銃口を突きつけ、その場で発砲したビリーの姿だった。
「倒しきったのか………よかった……。」
「………ない。」
「へ?」
「全然よくない!! おじさん急いで、ビリーさん傷だらけだよ!!」
映像の先で離散していく黒い人影を見た伊丹は大きく息を吐いて運転席に座り直し、安心したようにそう呟いた。
だが、対照的に万理は肩を震わせて何かを呟く。伊丹がそれに気づき声をかけるが感情が爆発したように声を上げて万理は伊丹をまくし立てた。
「え!? いや渋滞だから進めないって!!」
「だったら横の脇道に逸れて車停めて歩いて行こうよ!!」
「この車借り物だし、無理矢理言って出て来たから持っていかれたら大変だよ。」
「―――――そうだねぇ。よく分かんないけど危ないんじゃない?」
「でもビリーさん血だらけみたいだったし、早く迎えにいかないと!!」
「―――――大丈夫、もう血は止まったよ。まぁ少し頭がクラクラするけど。」
「焦る気持ちは分かるけど、万理ちゃん。落ち着こう、中継が止められたってことは警察や自衛隊が動けるようになったって事だからビリーも大丈夫だ。」
「―――――いやぁ、あの自衛隊? の人が投げた光るヤツで助かったよ。危うく消滅するところだった。」
「「……………………」」
「や、マスターにイタミ。ドライブってやつ?」
―――――スパァン!!!!!!!!!!!!
「いったぁぁぁぁぁ!!!!」
そこは例え過去に何かを成した英雄であれ関係ない、突然姿を消した人物が危険な状況に飛び込み二人を心配させたのは確かな事で。
安心したとはいえ本気で彼の身の心配をしていた二人の前に平然とした表情で、本人が後部座席から顔を出して笑っているのだ。怒らない人間の方が少ないだろう。
何も言わず、無表情な二人はゆっくりと横を向いて手を振りかぶる。
間髪入れずに容赦なく二人はビリーの頭をぶっ叩き。油断していたビリーは苦悶の表情で声を上げた。
◇
「さぁてビリー。話を聞かせてくれるか?」
「…う…うん。分かったからイタミ。マスターを何とかしてくれない?」
「動かないでビリーさん。」
ホテルの一室、血だらけの状態で車の中に姿を現したビリーはそのままこの場まで連行され椅子に座らせられていた。
現状、伊丹は彼の目の前に座り隣で万理がビリーの傷の手当てをしており彼の顔面は包帯だらけである。
「無理だな。そうなったら万理ちゃんは梃子でも動かないよ。」
「ボクは英霊だから、魔力さえあれば直に回復するんだけど……。」
「…………………………。」
「あー分かった。分かったからマスター!! そんな顔しないでボクが悪かったから!!」
苦笑する伊丹を前にビリーそれとなく手当てがいらない事を万理に伝えると、万理は何も言わなくなり頬を膨らませて瞳が潤ませてしまう。
それに慌ててビリーは撤回すると万理はまた手を動かし始めた。
「まず最初に聞きたいのは何でシャドウサーヴァントが門から現れたか、だ。」
「……その事だけど、門の向こうが別の世界に繋がっている可能性があるのはイタミも気づいているよね。」
「あぁ、もちろんだ。」
「言っていなかったけど、本来英霊が召喚されるにあたって必要な聖杯の存在がこの世界では感じられないんだ。」
その言葉に伊丹は薄々気づいていたのか手を顎に当て思案顔になった。
「多分、門の向こうからアイツ等が出て来たのも。ボクがこの世界に召喚されたのも。」
「門の向こうに聖杯が存在するからか……!?」
驚き交じりに声を大きくする伊丹にビリーはゆっくりと頷き、隣の万理を見る。
(あくまでボクの推測にすぎないけど、それなら門の向こうからシャドウサーヴァントが出て来たのも理解できる。)
(そして転生したボクがこの世界にはめ込まれ抑止力として呼ばれたなら、何もかもが説明がついてしまう………。)
本来存在しないはずのマスターと自分自身、歪んだ物語の行く先に不安を覚えながらビリーはボンヤリと万理を見つめていた。
「………ッ!!」
「あいたたたたた!!!」
見つめられていた事に気づいた万理に結んでいた包帯をきつく締められたビリーが声を上げ、伊丹は何かに気づいたようで溜息をついた。
「何てこった……それじゃあ門の向こうには…。」
「聖杯と他のサーヴァントが居るだろうね。」
どうしたことか、と頭を抱えた伊丹はビリーを見てまた溜息を漏らしビリーも苦笑いを浮かべている。
どうやらお互いに置かれている立場を理解したようで、ビリーである少年も内心で大きなため息を吐いた。
(シャドウサーヴァントが相手だったとはいえやっぱり強かった……。もしあの場で自衛隊の人が閃光手榴弾を投げてくれなかったら……本物の英霊がいたら…。)
あの場で自分は消滅していたかもしれないと思い。次、何かあれば自分に勝機があるのだろうか、巻き込んでしまった伊丹と万理を守りきる事が出来るのだろうかと彼の中に不安が募る。
力量が追いついていない事を感じてしまった少年、それは無理もない事で経験があろうと、英霊の身体があろうと中身は別人。
本物に近づくにはまだ時間が足りていない。一度、死を経験している少年は現状、死を恐れてはいない。
一番に恐れているのは自分が消滅してしまい、再び現れる可能性があるシャドウサーヴァントと存在するかもしれない本物のサーヴァントによりこの世界が最悪の結末を迎える事だった。
「終わったよ、ビリーさん。」
「え……あぁ、ありがとうマスター。」
そう考えている内に万理の手当てが終わったらしくビリーの腕や足には真新しい包帯と、消毒液の匂いが僅かにした。
隣で鬼気迫るような表情からホッとした様子に変わった万理、それを見てビリーもにこやかに笑みを浮かべる。
「……うん…。ねぇ、ビリーさん。」
「ん? どうかした? マスター?」
「怖く……なかったの? もしかしたら死んじゃうかも…しれなかったんだよね…?」
そんな彼女からゆっくりとそう告げられたビリーは口を噤んで、言葉を選んだ。
「怖くないって言ったら、嘘になるなぁ。でもねアイツ等を放っておいたらマスターもイタミも困るかなーって思ったから倒したんだ。」
だから大丈夫だと、また微笑むビリーに万理は不安そうな顔を綻ばせて頷いた。
「でも……次は何かあったら一言欲しいな。」
「…うん、分かった。これからはマスターにちゃんと約束するよ。だから笑って。笑顔のマスターの方がボクは好きだなぁ。」
自分の両頬を指で押しあげて万理にそう告げるビリー。彼につられて万理も戸惑いながら笑顔を作った。
その様子を見て伊丹もやれやれといった感じで微笑む。
「ん? 電話か?……はい、もしもし………はい…はい……え”!?」
そんな中で伊丹の携帯に着信が入り数秒の後に伊丹はとんでもない声を上げて、テレビの電源を着けた。そこに映っていたのは―――
『―――数時間前に封鎖されていた銀座の門が突然開かれ、正体不明の影らしきものが銀座を襲った事件で現在、政府より会見が開かれようとしています。』
『そしてご覧いただけておりますでしょうか。銀座にて門の前で戦ったとされる帽子の男が再び門の前に現れ正体不明の影と交戦を繰り広げていたのです!!』
ビリーがシャドウサーヴァントと戦闘をしている場面が合間合間と映されていたのだ。
(………まずい……)
ビリーがそう感じたのも束の間で彼の後ろでその映像を見ている万理、二人に通話を切ったらしい伊丹が半ば諦め気味に声をかけた。
「お偉いさんと………お話しないといけないかも……」
最早、逃れる事は出来ない状況に彼らはズルズルと落ちていった。
何故か予約投稿が働かなかったので、こんな時間になってしまいました。
すみません、次回はキッチリ朝七時に投稿します。
さて、そろそろ読者さんも気づくはず、作者に文才がないことを(本心)
さて、失s………旅行の準備を……(色々準備)