GATE クリティカルロマン砲に何故か転生した件 作:シアンコイン
ども、お久しぶりですシアンコインです。
えっと、その、まぁ、はい。
この作品を投稿して一年、経ってしまいました。
長らくお待たせしてしまいました。
久しぶりの投稿なのに話はあまり進みません、どちらかというとレオニダスさん要素強めなお話になりました。
それではどうぞ。
「………っ……はぁ…。あぁ……どうしてこうも問題ばかり起こるんだ…!!」
アルヌスの丘、自衛隊駐屯地の一角。一人の男性が鬱憤を吐き出すように溜息を零して自らの黒縁眼鏡を掛け直す。
忌々しげに見つめる先にあるのは自衛隊員達が訓練の合間を縫い、とある人物とちょっとした勝負を繰り広げる広場だった。
その勝負に挑む自衛隊員達曰く―――
『今までの自分が如何に力不足かを実感できた。』とか。
『あの勝負をした事で自らの欠点と足りないモノを見つける事が出来た。』とか。
『武器が無い極限の状態で如何に人を相手にするべきかを学ぶ事が出来た。』
等という訓練に支障もなく休憩時間内に終わるその小さな催し物が柳田二等陸尉の悩みの種だった。
『―――筋肉!!筋肉!!筋肉!!』
『―――筋肉サイコォォォォォォ!!』
あぁ………最後の言葉は忘れてしまおう。
ハッキリと言ってしまえばその催し物に関しては何ら問題はない、が。
自衛隊員が相手にするとある人物が問題だったのだ。
始まりは数日前。
伊丹二等陸尉含めた一個師団が銀座の一件で姿を現した名称『
その姿は現代人からすると宛ら野蛮人に見えなくもない出で立ち、傍らに抱えるのは巨大な鈍色の盾に鋭い槍。前時代的な鈍色の兜を被り自衛隊駐屯地に真正面から入ってきた時は本当に驚いたものだ。
警戒する自衛隊員に対し、その男は両腕の得物を通達があった弓兵と同じように光に溶かして消してしまうと徐に大柄な自衛隊員に『素手で相手しよう』と挑発して見せたと傍らに居た隊員は語る。
その挑発された自衛隊員はこの駐屯地に置いて一、二を争うほどの力自慢でもあった。故に詳細不明の男に挑発されプライドも相まってその誘いに乗ってしまった。
睨むようにしかして笑う様に表情を変えた隊員はその場で体を屈め全力のタックルを繰り出した、男との距離は十メートルにも満たない、数秒の後に薙ぎ倒される男の姿を想像した周りの自衛隊員は次の瞬間に言葉を失った。
『―――甘い!!』
タックルを真正面から受け止めた男はそのまま自衛隊員を両腕だけで間髪入れずに後方へ投げ飛ばしたのだ。
一瞬の攻防に唖然とした隊員達は我に返ると警告も無しに数を頼りに相手を拘束しようと詰めかかる、一対一で負けたのならば数で勝ればいい。確かにそれは理にかなっているし間違いではない。
『―――まだまだぁ!!』
相手が人間ならば、だが。
瞬く間に隊員数名を投げ飛ばし、地面に叩き付けた男は雄叫びの様に声を荒げ次はまだかと兜の中で瞳を闘争心に滾らせていた。
殺到する自衛隊員の波を薙ぎ倒しては投げ飛ばし、時には受け止め読んで文字の如く叩きのめすその姿は正に戦士と呼ぶに相応しい姿だったという。
その事の顛末が柳田の耳に届いたのは騒動の数分後であった。極端に言えば単純な己の力比べ、害を及ぼすような行動を見せずにいた男相手に次第に隊員らはこぞって一対一を挑むようになり。
この騒動を治める為、数日前にこの駐屯地に現れた名称『
そう、事なきを得た。確かに得たのだ。結果的にその力は未知数であるが銀座での一件から協力関係にある『
自衛隊上層部も『
奴等に対応できるのは『
その為、この駐屯地には詳細不明の『
何も事の経緯を知らない隊員からすれば不審に思うのも無理はないだろう。現にそんな目で彼らを見ている隊員が居るのも確かだ。
最近では夜な夜な魔術師らしき人影が駐屯地を飛び回り何やらやっている、との噂が出る始末。
頭を垂れて眉間を指で摘み、大きなため息を吐いた柳田は再び顔を上げ悩みの種であるその広場を見ると既に今日の勝負が始まろうとしていた。
「――あぁ、面倒事ばかりで本当に嫌になるよ!!」
吐き捨てるように語気を強くして柳田は事が大きくならない様に足を進め始める。
今日も彼の仕事は時間がかかりそうだった。
◇
「………………、元気ないねぇ……。」
場所を同じくして自衛隊駐屯地、名称『弓兵』ことビリーは駐屯地の高台から見下ろすようにただ一人の女性を見つめていた。
時折溜息を吐くような身振りで立ち止まった視線の先の気弱そうな女性、辺りを見回すように首を左右にゆっくりを振る彼女の姿に彼は心苦しそうに溜息を吐いていた。
そして同時に興ざめしたかのように顔を強張らせ左手をホルスターへと伸ばしていた。
「Hey girl。それ以上ボクに近寄らないでくれるかな?」
振り返りもせずに自らの背後に言葉を飛ばしたビリー、すると残念そうに笑い声が彼の耳に届きそこでやっとビリーは振り返った。
対面するは黒いドレスに特徴的な大きな黒いリボンを頭に着けたビリーよりも小柄な少女、その風貌に似つくわしくない巨大なハルバードを抱えて佇むその姿は現実味がまるでなかった。
「残念、ちょっと驚かせようと思っただけなのにぃ。フフフッ。」
「気にする事はないさ、君のその得物を見ただけで十分驚いたからね。」
「あら、本当に驚いてくれたのかしら?」
「勿論さ、あまりにも綺麗なお嬢さんが目の前に居るもんだからね。」
「うふふふふ、お嬢さんだなんてお上手ね。気づいているんでしょう? 僕ぅ?」
「ハハハ、何のことだかボクにはサッパリだなぁ。」
緩急もなく、まるで台本の様に言葉を交わす彼ら、片や乾いた笑い声でとぼけたビリー
そして彼を興味深そうに見つめる少女は笑みを崩さない。
「ふぅん。ならそういう事にしておきましょうか、それじゃあもう一つ聞かせてもらえる?」
「何だい? 答えられる範囲なら答えるよ。」
『どうやって、器と魂を入れ替えたのかしら?』
核心を突かれた一言、その静かながら脳内に響く言葉にビリーは一呼吸置いて口を開く。
「おっと、魂とか精霊とかの話ならジェロニモの得意分野だ。ボクには何の事だか分からないね。」
肩を竦めておどける彼は背中で冷や汗をかく、不審な素振りは見せる事無くこの場をやり過ごすつもりだろう。
突然のアクシデントに弱いビリー自身、黒服の彼女ことロゥリィ・エム・マーキュリーには警戒していた。
それもそのはず、彼女は『半神』という半分が人間であり半分が神という上位的存在。彼の脳裏にはこの物語の本筋で伊丹の魂を可視化している描写、加えて血の契約らしき物を交わしている事を理解していた。
故に彼女がいずれ自分というイレギュラーに接触してくることは目に見えており、自身の存在に気付くであろうと予測していたのだ。
彼の反応を見てロゥリィは満足のいく答えを得る事が出来たのだろうか、その場で怪しく微笑むと再度言葉を紡ぐ。
「それじゃあ、最後に――――お手合わせ願おうかしら!!」
「………警告した筈だけど?」
赤い瞳が嬉々として輝き数メートル離れていた二人の距離は瞬く間に詰められ巨大なハルバードがビリーの足元を抉り取る。
それよりも早くその場を飛びのき振り抜かれたハルバードの穂先にビリーは降り立ち、銃を構えて凄んだ。既にそこには人間である彼は存在せず、障害となる物を排除する英霊となっていた。
「いいじゃない、形は違えど貴方が強者なのは変わりないわ。闘争を求めて何が悪いのかしら?」
「これはイカれたバトルジャンキーだね、だけどボクにも建前があるからね。無闇にここで戦う訳にはいかないよ。」
だからサヨナラだ、と言葉を残し振り上げられたハルバードから飛び上がりビリーは彼女に背を向けるとそのまま体を光に溶かしやがて消えていく。
残された半神はその場に残された一瞬の濃厚な殺意の余韻に浸りながら静かに笑い声を漏らしていた。
◇
「………ジー…」
「オーケーオーケー、分かったからお嬢さん、そんなに熱い視線を向けないでおくれよ。ホラ、ボクの相棒だから大事に扱ってよ?」
ロゥリィから離れ駐屯地を当てもなく眺めるように歩いていた彼は、やることもなく人気の少ない隅のベンチに腰掛け黄昏ていた所を一人の少女に目をつけられていた。
観念したように苦笑いするビリーの傍らには杖を携えた青い髪の少女が彼の腰元を見つめている。
ゆっくりとした動作で腰のホルスターからコルトM1877を取り出し、隣の彼女に見える様に弾倉から6発の銃弾を取り除き銃を彼女に差し出す。
軽率な行動ともとれるビリーの判断だが、『本来』の彼女を知っている彼はそうしなければ終わらないと知り得ていた。
興味深そうに両手でコルトM1877を受け取り眺める少女、名をレレイ・ラ・レレーナ。
コダ村に住んでいた少女であり賢者カトーから魔法を学ぶ魔法使い見習いと言った所だろうか、そんな彼女は炎龍との戦いで果敢に戦うビリーそして自衛隊に深く興味を示したようで事あるごとに駐屯地を見て回っていたのだが、眠りから覚めたビリーを偶然見かけこうして彼に着いて回っている。
拳銃を見つめていたのは恐らく自衛隊の持つ突撃銃を見せてもらえなかった為、突撃銃とは別に炎龍にダメージを与えていたビリーの拳銃を拝見しようと考えたのだろう。
「……ん…?」
隣で興味深そうにコルトM1877を触る彼女から疑問の籠った反応を感じたビリーが横を向くと丁度レレイは視線を上げ彼を見ていた。
拳銃の撃鉄部分を指さし何かを伝えたいようだった。
「この部分は何を意味している?」
「あぁ、そこはガンズハンマッ………―――君は今日本語を喋ったのかい…?」
「ん?……ニホン…ゴ? それは緑の人が使用している言葉の事? 少なくとも今は貴方も、私も私たちの言葉を話している。」
ある程度は勘付いていたビリーは微笑みの裏で驚きの感情を隠し通す。
(……そういえば、ロゥリィの時も僕は彼女の言葉を理解していたし、返答も何の問題もなく通じていた……。やっぱりあの時にこちら側の知識が入ったのかなぁ……。)
やはりこの世界を超えた瞬間に意識を失った理由はコレだったのかと思案する彼を余所に、目の前の魔法使い見習いは再びコルトを触り始めた。
そんな時、ふとビリーの耳に複数の足音が届く。こちらに徐々に近づくそれに気づいたビリーはそちらへ顔を向けて硬直した。
「アーチャー………気が付いたのか!!」
「おぉ!! 貴公が弓兵、アーチャー殿であるか!!」
(レオニダスゥぅぅぅぅぅ!?!?!?!!?)
自らを見つけ驚きの表情を浮かべた伊丹の足取りは次第に早くなり彼に近寄っていく中、伊丹の隣を当たり前の様に歩いていた槍兵、レオニダスの存在に内心絶叫、絶句しているビリーの表情は固まり続けたままだ。
「とりあえず一発くらえ!!」
「あいたっ。」
流れる様に彼の額にデコピンを喰らわせた伊丹は満足気に彼の向かいに腰かけ、その隣にレオニダスは腰を下ろした。
そして注がれる並々ならぬ視線、視線、視線。一人は拳銃の説明がほしい少女、もう一人は何故か自分に熱烈な期待のような視線を向ける筋肉、もう一人はさぁ、言い訳を聞こうかと言わんばかりの大人だった。
◇
「とりあえず紹介と報告を兼ねて話をしておこう、お前と同じようにキャスターと協定を結んだランサーさんだ。んで、こっちが話していたアーチャー。」
先に一通りのレレイの質問に答えたビリーは長話になるだろうと、次があると彼女に言い聞かせその場を後にさせ本題に移っていた。
槍兵からの鋭い視線に内心震えあがりそうになっている自分を押さえつけて彼はその場にとどまり続ける。
「やぁ、紹介に預かったアーチャーさ。キャスターと協定を結んでいるならボクも仲間だ、よろしくねランサー。」
「これは丁寧に、感謝する。しかしながら真名を隠す必要はありません故名乗らせて頂こう。我が名はスパルタ王、レオニダス。この地に召喚され主人もなく彷徨っていた所この場に辿り着いた次第です。」
「おおっと、これはこれは。雰囲気というかオーラというか何となく察していたけれどまさかキング、王様とは驚いたね。ボクはウィリアム・ヘンリー・マッカーティ・ジュニア。人呼んでビリーザキッド、キャスターから話は聞いてると思うけれど周りに人目がある時はクラス名でよろしくね。」
兜を外し朗らかな笑みを浮かべた筋骨隆々の男に右手を差し出したビリーは微笑み握手を求めた。
それに快く応じたレオニダスのおかげで事は円滑に運び、待ちわびたと言わんばかりの彼からの質問が始まったのだ。
「所でアーチャー殿、傷の方は如何ほどに? 話に聞けば何者かの襲撃で傷を負い手負いのまま炎龍を相手にしたと聞きましたが……。」
「お陰様で、優しいマスターとキャスターが治療してくれたから時間が経てば元通りさ。因みに釘を刺しておくけどあと数日は安静にしてるつもりさ。」
「ハハハハハ。気づかれておりましたか。」
「そりゃあ当然さ、ボクらの時代はどちらが先に撃つか撃たれるかの世界。臆病にもなるよ。」
握手をした際に感じた一瞬のピリピリとした空気に加え、その視線に見え隠れする戦意に彼は内心冷や汗をかいてやり過ごす事を選ぶ。
穏やかに微笑むビリーは冗談交じりにレオニダスとは暫く手合わせをするつもりはないと伝え、徐に懐から一枚の銀貨を取り出して指先で弄び始めた。
「臆病者に炎龍は些か無理があるのでは? 見事返り討ちにしたそうではないですか。」
「男なら誰でも女性の前ならいい格好したいだろう、キングにだってそういう経験あるんじゃないかい。」
「これは参りましたな、口では勝ち目がないやもしれん。」
「まぁまぁ二人とも、互いに聞きたい事や話したい事はあるかもしれないけれど俺からも二人に、いや三人に伝えなきゃいけない事があるんだ。」
したり顔でニヤついたビリーは飄々と己の無茶を唯の意地だと偽って、指先でコインを弾き掴み取った。
対するレオニダスは思う所があるのか指先で頬を掻くと苦笑いを返し。隣で話を聞いていた伊丹が話を切り替え始めた。
気が付けば自分の影が一回り程大きくなり、帽子を被っている事に気づいた彼は諦めた様子で上を見上げ。
顔面に降り立ったオルコット人形を手にするのだった。
前回投稿から一月ごとのにあった事
7月
「アラフィフ欲しいなぁ……こないかなぁ……あっ、もう来ないわ」(ホームズ)
8月
「今年の夏イベはネロかぁ……まぁどうせ当たらないし。………うせやろ」(一発ツモ)
9月
「えっ、ロマン砲投稿一年…………?」
10月
「英霊剣豪7番勝負? 家のビリーの出番だ!!」(プ ル ガ ト リ オ)
とこんな感じでスランプ気味に過ごしてました。
後書きで言うのも場違いでしょうが………。
すいまっせんでしたぁぁぁぁぁぁ!!