はりまり   作:なんなんな

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ハリポタ二次を読んでたら自分もやってみたくなったのですがうろ覚えだったのでとりあえず1~7巻を買いました。高かったのでちゃんと書き上げたいです。
あとそれなりにオリジナルマジックアイテムとか設定の補完とかするので色々とアレかもしれません。


一話 手紙がきた

 アイルランドのとある片田舎。多少近代化の様子は見られるものの、どこか懐かしい雰囲気を持つ穏やかな村があった。畑ばかりで家の隣に『お隣さん』が無いような低い人口密度だったが、意外に電気も水道も平気で通っていてあまり不自由はしない。

 まぁそれは本題ではないが。問題は、そういう"整った"農村にしては近場の森の木々が鬱蒼と茂り放題で人の出入りが殆ど無いこと。木材が他所から入ってくるから、暖炉から電気式ヒーターへ需要が移ったから、田舎村でもこういうところで機械化グローバル化の暗い部分が見える……という話ではない。この森は、気付いたら同じところをぐるぐる回っているだの奇妙な咆哮が聞こえるだのという不吉な言い伝えのおかげでそれこそ何百年も前から放りっぱなしで人の手は全く入らずにある。村の住人たちは反対方向の少し遠くの森から生活に必要な薪や木材を手に入れていた。森に入るのは昔から度胸試しの悪ガキ(とその腰巾着)ばかりであった。

 ……というのは村人たちの認識。この物語の主人公はまさにこの森のド真ん中に家を構えて暮らしている少女だ。名をメリッサ・ミストウッド。と言ってもこれは偽名だ。元の名は霧雨魔理沙という。

 この胡散臭い森で少女が一人暮らす。一見すればおかしなことだ。例えこれが町中であっても幼い女の子の一人暮らしなんていうのはおかしなことだが。しかし、これにはもっともな理由が有る。魔理沙は『魔法使い』だ。魔法使いなんて胡散臭い存在なのだから、胡散臭い森に居てもなんら問題は無い。少なくとも魔理沙はそう思っている。

 今日だって彼女はその小さい体とはちみつ色の髪をふわふわと揺らしながら大鍋をかき回し、深緑をしたアヤシイ薬と格闘していた。断じてごっこ遊びではない。完成したコレを飲めば小一時間は再生能力がヒトデ並みになって体が三分の二ほど無くなっても完全復活できるのだ。理論上。この前森の近くから攫ってきた男の子で試したときは三分の一しか回復しなかったけれども。付け足しておくが、その男の子の残り三分の一は魔理沙の"手動の"回復魔法で補われ、元の村に記憶を消されて戻され元気にしている。不具合と言えば、せいぜい記憶消去が不完全で『森で女の子に会った』とかなんとか口走ってしまったことか。親は『それは昔森に入って帰ってこられなくなった子の幽霊だ』なんて、昔から伝わる怪談でもう森に入らないようにおどかす。

 そう――その帰らなかった少女こそ魔理沙……ではない。子供のしつけのための適当なデタラメだ。魔理沙はこの村の出身ではない。その名前から分かるように日本出身だ。まぁ、その日本で家を出て森に入ったっきり帰っていないのだが。

 ともかく、魔理沙はそんな風にして森で魔法使いをやっている。

 

「ふう。これで上手く行っただろ」

 

 大鍋からヘラを引き上げると同時に液の色が透明な黄金色……魔理沙の思ったように形容すれば、調子が悪いときの小便のような色に変わる。ちなみにこの薬、調合に大失敗すると本当に小便とほぼ同じ成分になる。今回はアンモニア臭はしていないし、ひとまず『再生薬』にはなったはずだ。

 

「さーて、あとは適当な範囲に遊びに来てくれれば良いんだが……」

 

 そして出来た魔法薬を試す実験台が森に近づいて来るのを待つ。今回は特に自信が有る。早く出来栄えを確認したいもんだ。

 光による素材の変質を避けるため閉め切っていた完全遮光カーテンを開き、窓の外を眺める。窓を開けたって日光の一筋も見えないほど鬱陶しく瘴気渦巻く暗い森しか見えないし、熱心に眺めたって来るワケでも……いや、魔力を込めて念じれば多少は意味が有ったりするけども。

 しかし今回はその効果は無かったようで。森に接近したのはどうやら人間ではない。

 

「人間のための薬だから、このお客さんは不合格だな」

 

どうやら大型の鳥。森の主人たる魔理沙が導かなければ、このまま森の上空を通り過ぎるか、林冠より低い位置を飛んでいたならば、振り返っても森の外が見えなくなった辺りでループに入るだろう。魔理沙の師匠が残した術だ。

 師匠というのは魅魔という悪(?)霊だ。日本の故郷……『幻想郷』の『魔法の森』でふらついていた魔理沙を拾い、育て、数年前に放り出した人物。曰く『このままアンタが私のマネで埋まっちゃったら面白くないわ』とのこと。『なかなかやるようになったわね』なんて、それまで厳しかった評価がプラスの方に変わった数日後には数冊の魔導書とこの森、そしてメリッサという偽名(呪いなどを避けるため)を与えてどこかへ消えた。魔理沙の勘では、たぶん幻想郷に居る。しかし、今の魔理沙では幻想郷に行くことはできない。幻想郷は一応日本に所在しているのだが、特殊な結界によって隔離されているのだ。それを独りで越えられるようになったとき、本当の一人前の魔法使いとして文句でも言ってやろう。そういう『試練』なのだと思っている。そうでないと、魅魔との別れはちょっと厳しすぎる。

 そんな風に感傷に浸っていた魔理沙だが、ふと違和感に気付く。

 あの鳥、ここに向かってきている。

「不合格どころかとんだ上級者だぜ」

 

 引き攣った笑みをうかべつつ、家の中を上から下まで駆け回り、思いつく限りの防衛魔法と装備を整える。実の親からの唯一の贈り物(と言っても事情を話して最後の親心で製作を頼み込んだだけで、実際に作ったのも魔理沙に手渡したのも知り合いの半妖だが)である八卦炉も、普段使いと予備、合わせて二つに自作の模倣品を加えて合計三つ全て装備した。マッチ程度のちょろ火から森を丸焼きにするような大火力まで出せる、こと出力においては魔理沙が全幅の信頼を置いているアイテムだ。師匠もしきりに良いものだと言っていた。先ほど作った再生薬も早速使用し、身を固くして"敵"の接近に神経を集中する。

 なにしろ、この森への侵入阻害は師匠の魔法。魔理沙はまだこの魔法を理解しきれておらず、師匠が残したシステムそのままを利用している状態。それを、相手は破った。単純に考えて、一部または全部の分野で自分より高レベルにあることは確かだ。

 遠見の魔法が侵入者の姿を捉え、居間(侵入者対策本部)の真ん中に置かれた水晶玉に映し出す。

 

「梟……?」

 

なんということは無い。一般的な梟。フクロウ目フクロウ亜目フクロウ小目メンフクロウ科メンフクロウだ。一つ違うとすれば、その嘴に封筒を咥えていることくらいか。

 手紙。友好的な連絡手段か、見たら死ぬ系の呪いをダイレクトに届ける手段か。もし前者だったらこのまま家の周囲の結界で焼き潰されるのは惜しい。或いは師匠からの手紙かもしれない。となれば、森に侵入できたのも頷けるというものだ。

 まぁ、違う可能性も十分に有る。油断はできない。魔理沙は部屋の隅に積まれたガラクタの中から出来の悪い案山子のような人形を取り出した。その顔に手をあて、ムニャムニャと指令を呟く。いわゆるゴーレムだ。見た目はお世辞にもかわいらしいとは言えないが、魔理沙本人は『それっぽい』と言って気に入っている。

 指令を受けたゴーレムが家の外に出てから梟が到着し、その枯れ枝のような腕にとまるまでそう時間はかからなかった。梟の口から黄色味がかった封筒を受け取る様が、ゴーレムの子機である水面鏡に映る。この水面鏡は呪い除けであり、何らかの強い魔力をもつものが映り込むと水面が波立ちマトモに見えなくなる。これによって視覚から作用する呪いを回避できるのだ。

 封筒の開け口には『H』という文字と獅子,蛇,穴熊に鷲の模様で装飾された紫色の蝋で封がしてある。なんの紋章か知らないが、それなりに『いいとこ』からきた手紙のようだ。表を向け、宛名を見る。

 

《  メイヨー州  隠し森

  中央の民家

   メリッサ・ミストウッド様 》

 

 魔理沙は落胆した。『メリッサ』と呼ぶということは、魅魔ではない。しかし同時に安心もした。魅魔ではないが、相手は偽名を破ってもいない。強力な呪いの類は無効になるだろう。

 

「いや、中に本名が書いてあるかもな」

 

封筒で油断させて中身にしかけてあるかも、と思い直し、一瞬気を抜いた自分を戒める。

 ゴーレムが封を開ける。力加減を間違って封筒が破れた。

 

「ちぇっ、まだまだ精度が甘いな」

 

 中には二枚の紙。とりあえず、順当に上にある方から広げた。水面は揺れない。

 

《ホグワーツ魔法魔術学校

  校長 アルバス・ダンブルドア

   マーリン勲章、勲一等―――

 

つらつらと肩書きが。マーリンなんて知らないな。読み飛ばす。

 

《 親愛なるミストウッド殿

  このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

  新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

                                    敬具

                        副校長 ミネルバ・マクゴナガル 》

 

 なるほど。いかに尊敬する師匠であろうとも、さすがに相手が学校で大々的に魔法を教えようという先生方なら術を破られてもおかしくはない。たぶん。師匠(と自分)は魔界神と戦ったことも有るのだが……いくつかあるうちの"しょぼい"魔界だったのかもしれない。いやぁ、世界は広いな。

 ……釈然としないが、とりあえずこれは入学案内で、もう一枚の紙が教材リストと。

 

「うん、入学案内な」

 

 全く案内できてないが。ホグワーツがどこにあるのかも分からないし、新学期が九月一日に始まるとして、いつからいつまでのうちに学校入りしてればいいのか。まさかここから毎日通えるとも思わない。

 入学すると返事をすれば詳細が送られてくるのだろうか。しかし、そこでどういう種類のどの程度の魔法が学べるのかも不透明な内から入学を決める気にはなれない。その辺も含めて、質問の手紙を返そう。とりあえず書き終わるまで梟を家に入れてやる。森の瘴気にあてられて少し弱っていた。

 解毒兼栄養ドリンクを用意しながら、ついでに硯と墨を引き出す。精神圧縮墨。書いた文章に文章以上の"思い"を詰め込むことができる。

 梟の回復を待つ意味もあって、たっぷり時間をかけて墨を擦る。調子が戻ってバサバサと準備運動のように羽ばたくのを横目で見ると、さらりと書き上げた。

 

《 親愛なるダンブルドア殿

  なんのこったよ。

           かしこ

      魔法使い メリッサ・ミストウッド 》




魔理沙だと紺魔理が一番好きです。

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