失楽園? 知らんな
初めに闇ありき
神が世界を形作るとき、神は闇より世界を生み出した。しかし闇の中に光を生み出すまでの刹那の間に、永劫に続く戦いへの序章が行われていた。尤も神に近き天使ルシフェルが、神に反旗を翻したのだ。
彼の天使は己に同調する数多の天使を従え、一人の若者と共に神とその軍勢に戦いを挑んだ。しかし奮戦も空しく戦いに破れた彼らは堕天使あるいは悪魔へと貶められ、魔界と呼ばれる地へ逃げざるを得なかった。だが、神を討つために不足しているものに気づいた若者は、闇の中に溶け込み、自身をこれから創られる世界の種子とした。
誰もが若者に気づくことなく創世がなされ、神が、悪魔が、その存在に気付いたころにはすでに若者は世界にとってなくてはならない礎となっていた。
時は巡り、世界は滅んだ。
ボルテクス界カグツチ塔、最上階……幾何学的な構造の部屋の中で、人修羅と無尽光カグツチが対面していた。
「……おお、お前が此処にたどり着こうとは……何故にお前が選ばれたるか……」
カグツチが明滅しながら言葉を発する。その声色は、輝く球形という無機物のような見た目に似つかわしくない明らかな怒りを露わにしたものだった。対する人修羅は無表情なままカグツチを見つめている。
「新たなる世界を創らんと我は興り……コトワリ持ちし者どもが参じた」
カグツチが語る。一度死に、卵に返った世界を再び孵すのがカグツチの役割であったと。そしてその卵に精を与えるのがコトワリを持つ人間の役目であり、そのコトワリこそが精であった。しかしカグツチへ至らんとしたコトワリは尽く潰え、世界の卵は精を与えられることなく腐り果てる他の選択肢を失った。
……一匹の悪魔の手にかかって。
「お前は堕ちた天使に導かれ、創世の芽を……世界の輪廻の糸を断ち切った。人ならざる悪魔の心を持って、進化の可能性を棄てた。人の心を捨て、破壊の霊に成り下がったのだ」
その言葉を聞き、人修羅は思わず鼻白んだ。本当に世界を創りたかったというのなら、もっと早い時期に己から姿を現せばよかったのだ。
ついさっきまで、この塔にはそのコトワリを持った人間が三人もいた。少し前までは、曖昧ながらもコトワリの芽を育む人たちもいた。もっと前ならば――自分だって、元の世界を望んでいたのだ。
しかし、過酷な環境で長い時間を過ごした人修羅に最も近づいたのは墜ちた天使であった。堕天使が必ずしも親切心で手を差し伸べていたわけではないことを理解し、彼のせいで強敵と戦う羽目になったことに思うところはいくらでもあるが、それでも彼の言葉は抗いがたく人修羅は導かれるままに動いた。
闇へと墜ちた心にもはや芽吹くものはなく、辺りにはその渇きを紛らわすように振るわれた力で砕かれた残滓しかない。
カグツチが天上でふんぞり返らず自ら降りてきていれば、あるいは避けられた事態かもしれない。この結果はそうしなかったカグツチの選択の結果でもあるのだ。
「我は恨みをおくぞ! 世界を死に至らしめたおまえの存在を! 我が怒りの光にて、その生を終えよ! 」
カグツチは一際大きな声で怒声を発し、光と共に人修羅に襲い掛かる。だが、闇に身を浸しすぎた人修羅を焼くには余りにも頼りない灯だったようだ。カグツチは人修羅にさしたる傷を与えることなく砕け散ると、ボルテクス中に破片が突き刺さり闇を残して消えていった。
世界に闇が下りると同時に、人修羅の意識も闇に沈んでいった。
次に人修羅が目を覚ましたとき、どれくらいの時間が経ったかわからないが、相変わらず世界は闇に包まれたままだった。
「カグツチはそのひかりをうしなってしまった」
己で招いた結末に幾何かの寂寥感を覚える間もなく、人修羅の背後から声が聞こえてきた。振り向けば、そこにいたのはいつもの喪服の老婆と金髪の子供……堕天使が、光の無い世界であるにもかかわらずはっきりとした姿で現れていた。
「せかいはもううまれかわれない。もうソウセイはできなくなってしまった。うまれ、そだち、ほろび、そしてまたうまれる……それがこのセカイのあるべきすがただったのに。ひとりのアクマがそれをゆるさなかった」
堕天使の言葉は、先のカグツチが言ったことと類似している。しかしそこに込められた感情は、憤怒とは正反対の歓喜であった。
堕天使と老婆の赤い影がじわりと蠢き、人修羅の下を通り過ぎて背後へと伸びていく。その先には、伸びた影を受け止めるかのように喪服の淑女と車椅子に座る老紳士の堕天使がいた。
「見事だ」
老人の堕天使が、静かに人修羅を褒め称える。その一言に、万感の思いが込められていた。特に比率が強いのは、やはり歓喜だろう。
「お前は混沌を支配し、死の上に死を築いてきた闇の力だ。死に挑み、死を越えることで得た、悪魔の滅ぼし、滅ぶ力の結晶は世界すらも殺した」
堕天使は一息つき、体勢を整える。
「かつて、我らは大いなる意思との大戦に敗れた。それは我らが奴の純粋なる被造物であったからだ。奴は我らを完全として創り上げた、絶大なる力を持ちながらも大いなる意思には及ばぬ個として。大いなる意思を殺しうる可能性を持たざる群として。故にこそ、我らがどう足掻こうとも奴に届き得る道理はない」
「ぼくらのメイユウは、そのことにきづいた。だからあのとき、かれはほろぶふりをして、ばんぶつのげんそであるマロガレのなかにとけたんだ。セカイに、あるタネをうえるために」
「その種の名は進化、あるいは可能性。大いなる意思により完全として創られるものを、不完全な個として生まれるよう、奴の頸木から逃れ得る土壌を創り上げた」
堕天使の双眸が人修羅を捕らえる。口元は堪えきれないというように歓喜に歪み、瞳は細く開かれていた。
「そして今、種が育ちきったのだ。完全な悪魔の力を不完全な人が進化させた。名だたる魔王、大天使、神すらも殺し従える力は、死の特性をもって大いなる意思すらも滅ぼす可能性を得たのだ。……想像できるか? 自分の意志の向かう先、力の向かう先をな。」
二人の堕天使に挟まれて立つ人修羅の足元にある赤い影が、形を変えながら大きく蠢いた。それは堕天使の意思に同調して喜びを表しているように見えたが、人修羅はそこから確かな敵意を感じ取り臨戦態勢に入る。
「だが、その前に一つ、やるべきことがある」
「たねはそだち、みがみのった」
「ならば次は収穫のときというわけだ。……抗え、さもなくばその力、貴様の存在ごと喰われることとなる」
人修羅の足元の影が伸び、立ち上がるとそれは人の形をとった。しかし、一瞬後にはさらに膨れ上がり異形の形を成していく。
青紫色で細く、骨と皮だけの老人のような身体だが、その肩からは幾本もの腕が伸び黄衣のようなものを腕にかけている。さらに肩甲骨辺りから触手のようなものが生え絡まり合っていた。右のものは翼があり先は蛇の顎ように牙が生えそろい、左のものは大きく肥大化し人の手のような形だった。腰より下はまるで異物がくっついているかのようで、右方にのみ猿の上顎を組み合わせて作ったような赤い車輪が生えている。
人修羅の前に現れたのは、そんな化け物であった。
「混沌の実よ、破壊の結晶よ。真なる戦争を前に、汝の奥底に秘められし力……この混沌の王サナトが、直々に引きずり出してくれよう。それを喰らうことで我は進化の極致に達する……」
混沌王同士の戦いが、今、始まる!
すごい大雑把な解説。解説?
・一神教(ロウ)的には生き物は今の姿のまま神に作られ、進化論はあり得ないらしい。そう主張しない人もいるらしいけど。カグツチが進化って言ってる? 知らんな
・カオスの混沌王サナト(サナト・クマーラ)は進化を早める存在らしい
・混沌王人修羅はマロガレから生まれた → 混沌王サナトもマロガレと絡めたらいいんちゃう
で、こんな感じになりました。
最後がヤマト張りな終わり方になっている理由は、人修羅が勝ったらありきたりだし、かといってサナトが勝つのもなんか違う感じがしたので曖昧にしました。結末は読者の心の中に(震え声)。
おまけ
NGシーン1:人修羅がアバチュverだったら
人修羅「え、無効つけてるの? それはちょっと許されざるよ^^」バンサーン
>人修羅の地母の晩餐! サナトに1万ダメージ
人修羅「まだまだいくおー^^」バルサーン
>人修羅の地母の晩餐! サナトに1万ダメージ
NGシーン2:人修羅も悪魔だもんで……
サナト「至高の魔弾? それ銃属性って一番言われてるから^^(真4脳)」バンザーイ
>サナトの地母の晩餐! 人修羅は迷子になった
さなと「 」
だてんし「 」
るいくん「ちょっと校舎裏来いよ」肩ポン
お粗末様でした