学戦都市アスタリスク【六花に浮かぶ月と幻想】   作:観月(旧はくろ〜)

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ども、ハクロウです。

今回はずっと書きたかったアスタリスクの二次創作に挑戦してみました! モンハンと東方とアスタリスクが混ざるとどうなるか…どうなるんでしょうねこれ。

あと、私の執筆しているもう一つの物語(東方二次創作)のネタバレを含みます。気合でなんとかして下さい。ごめんなさいそちらも読んでくれているという数少ない読者の方々にはご迷惑をかけます。


三度迷い込んだ狩人の物語、これにて始まり。




迷い人編
〜プロローグ〜再び迷い込んだ狩人〜


――いやいや、この状況は何だよマジで。

 

目の前には近未来的なデカい都市。ここはどう見たって俺の住んでいる世界でも……ましてや、幻想郷やハンターの世界でもない。

 

 

 

そう、ここは―――学戦都市アスタリスク。

 

 

 

何故そう言い切れるか? 俺が元の世界で読んでいたラノベであって――いや、それ以前に、何故か頭の中に情報が流れ込んでくるからだ。それによると、どうやら俺は星導館学園に特待生として呼ばれ、今日が転入初日らしい。

 

 

だが……おかしいな。そういう情報は入ってくるし、ラノベの内容も覚えているはずなのに……どういう訳か、ストーリーをまったく思い出せない。勿論、登場人物が誰なのかも。

 

 

――まあいい。それより、異世界に迷い込んだのはもう三度目。だから、あえて言わせてもらおう。

 

 

 

「どうしてこうなった……」

 

 

そう呟いて、俺━━月影聖夜(つきかげせいや)は静かに頭を抱えた。

 

 

 

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

事の発端はつい先程の出来事……だと思われる。

 

白玉楼に遊びに行った帰り、いつぞやのように紫のスキマを使って帰ろうとしたのだが……ちょっと気を抜いていたからか、一旦消してあった自分の能力を戻してしまったのだ。『属性を司る程度の能力』で使える属性の一つである龍属性によって他者の能力の影響を受けなくなった俺はスキマの中にいられなくなり、様々な境界から境界へと飛ばされまくって……で、気付いたらこれだ。

 

「ったく……どうすっかなあ」

 

とりあえず自分の状態を確認。最初に気付いたのは、今までのように体に霊力らしきものが通っている事。……なるほど、これが星辰力(プラーナ)か。星脈世代(ジェネステラ)だけが持っている力、これを一箇所に集中させる事で攻撃力や防御力を底上げすることが可能らしい……が、そのあたりはおいおい分かってくるだろう。

 

そして、どうやら魔術師(ダンテ)では無いらしい。いつものようにイメージしても、何も起こらない。

 

 

あとは武器……確か、アスタリスクでは煌式武装(ルークス)純星煌式武装(オーガルクス)と呼ばれる物を使われているはず。なら、初期装備として何か無いものだろうか。

 

そう思いつつ腰のホルダーに手を突っ込み中にあった物を取り出すと、何やら青白く輝く宝石のような物が出てきた。これは……煌式武装のコアか。でも、煌式武装のコアには色が着いてないんじゃ無かったっけ。――色の着いたコア、ということは、これさ純星煌式武装なのか。冷静に考えてみれば、初期装備が純星煌式武装というのは……私有の純星煌式武装とは原作にあっただろうか。

 

まあ、考えるのは後で良いだろう。とりあえず発動体にしてみることにする。一応、周囲に人がいないことを確認してから、恐らくのしかかってくる重さに心の準備をして、起動。

 

「よっ、と………ああ、やっぱりな」

 

そう呟いた俺の手元に現れたのは、やはりと言うべきか何と言うべきか、幾度となく戦闘を共にした『王牙大剣(おうがたいけん)黒雷(くろいかづち)】』だった。

 

 

――良かった、使い慣れた武器で。それに、こいつなら純星煌式武装特有の特殊能力もなんとなく分かる。多分こいつは雷を、それに雷極龍の素材も組み込んであるから磁力だって操るだろう。能力を使う時にどれだけ星辰力を消費するかまでは分からないが、頼もしいことに変わりはない。

 

しかし、今までの能力は使えないのか……となれば、久し振りに初心に戻らなければ。ここには強い奴がわんさか居るだろうし、鍛錬にはもってこいだと前向きに考えるべきか。

 

 

 

 

と、そんな事を何となく考えつつ、街を抜け正門をくぐり、星導館の敷地を散策していると、不意に突風が吹き、目の前に帽子が飛んできた。白っぽい、可愛らしい帽子だ。

 

「む、どこからだ?」

 

飛んできた方向を見ると、すぐ近くの建物の一階の部屋の窓が開いている。その側に帽子立てが置いてあるのを見るに、どうやらこれはその部屋の住人のものらしい。

 

「うーん……届けた方が良いかな」

 

デザインを見た感じ女子の物っぽいが……渡しに行くか。困ってたりでもしたらそれこそアレだ。多少のリスクは仕方ないと割り切ろう。

 

そう意を決して、俺は開いた窓まで歩いて行く。外から軽く声をかければ気付いてもらえるだろう。なんてことはない、それで終わるはず。

 

 

――しかし、それがいけなかった。せめてここがどんな所なのか確認してからとか、素直に入り口から行くとかすればよかったのだ。少なくとも、帽子立てが置いてある時点で、そこが誰かの私室であるという考えに至るべきだった。

 

「すみませーん、この帽子が飛んできたんですが……」

「っ、覗き!?」

「あっぶねえ!」

 

幻想郷でそういった部分の意識がおろそかになっていたのであろう自分が完全に悪いのだが、中に居た少女と目が合った瞬間、なにか誤解を受けたようで雷撃が飛んできた。俺はそれを背中を反らし間一髪で回避、そのままバク転して距離を取る。

 

「……見ない顔ね。覗きに来るなんて良い度胸してるじゃない」

 

開いた窓から、金髪の美少女が顔を覗かせた。何やらとんでもない勘違いをされているらしく、慌てて弁解する。

 

「いや違う違う、この帽子が飛んできたから返しに来ただけだって!」

「本当かしら?」

 

そう言って、少女はこちらを睨みつけながら窓を乗り越えてきた。

 

……さて、この状況どうするべきか。大きな誤解を受けているので、まずはそれを解かなければならないわけだが。

 

「まあ、帽子が飛んで行ったのは事実みたいだし、届けようとしてくれたのには感謝しないこともないけど……ここは女子寮よ? 男が近付いて良い場所じゃないわ」

「そうだったのか……」

 

おうふ、さっきの案内板をしっかり読んでおけば良かった話じゃないですか……。しかし、後悔先に立たずである。

 

「それに、覗かれたのも事実だし。アンタを叩き潰さないと気が済まないわ」

 

物騒だなおい。っていうか目がマジだ。

 

「……もし断ったら?」

「それなら別の奴に引き渡すだけね。女子寮に入った男子生徒には、それはもうキツいお仕置きがあるらしいし」

 

彼女の放った「お仕置き」という言葉に戦慄する。

 

 

……絶対ヤバいやつだろ。そんな感じの事が原作にも書かれていた気がする。

 

「で、どうするの? お仕置きを受けるか、それとも序列六位の私と決闘するか。私としては決闘を受けて欲しいのだけど」

 

あ、詰みましたわ。相手はまさかの序列入り生徒、しかも『冒頭の十二人(ページ・ワン)』の一人だ。決闘を受けたって入学したての俺が敵うわけないだろうし、受けなければ拷問である。

 

仕方ない、こうなれば腹を括るまでだ。

 

「――分かったよ。どれだけ保つか分からないが、その決闘、受けて立つ」

「そう。――私はセレナ・リースフェルトよ。後悔しないようにね?」

 

そう言い残し、彼女は俺を連れて広い場所を目指して移動する。しばしそれに着いていき、到着した中庭で彼女が高らかに決闘申請の宣言をすると、周りにいた生徒達が一斉に俺らを取り囲んだ。

 

――無理もない。序列六位の決闘なんてそうそう見れるものじゃ無いんだろう。俺だって、観衆の立場であったなら恐らく野次馬に回っている。

 

 

そんな事より決闘のルールを思いだせ。確か意識消失か校章破損で負け。……よし、大丈夫。単純なルールだから忘れる訳ない。校章は、左胸の位置。ここは絶対に守らなければならないということだ。

 

手持ち無沙汰に待つ彼女を視界に入れつつ、俺も決闘を受諾する宣言をする。そうして、晴れて初めての決闘が幕を開けた。

 

 

――といっても、最初はお互いに動かない。様子見といったところだ。

 

「あら、もしかして武器は持ってないの?」

「まさか。……ただ、最初は素手でいこうかと思ってるだけさ」

「ふーん……まあいいわ。ただ、そんなので『魔女(ストレガ)』に敵うと思わない事ね!」

 

細剣型の煌式武装を持ったセレナは、そう言うやいなや結構な量の雷撃を放ってきた。雷鳴と共にそれらが迫る。

 

だが、思っていたよりも緩い。幻想郷の方々に比べたら特に。……まあ、あれと比べちゃダメか、と俺は飛んで来た雷撃をしっかりと見切り、ステップを踏んで回避した。

 

星辰力の使い方も意外と上手くいっている。左腕に集めて雷撃を弾いたり、足に集めて一時的に身体能力を上げたり……霊力と同じ様に使えるからだろうか。

 

 

ともかく全部捌き切った俺は、驚いた様子のセレナに向けて一言。

 

「改めて言うが、俺は月影聖夜。星導館学園に転入してきた特待生だ。……そう簡単にはくたばらないつもりだよ」

 

そう言った瞬間に少し沸き立つギャラリー。驚嘆や呆れ……様々な感情が含まれているが、そんなの気にしない。虚勢でも何でもいい、余裕を見せつける。

 

 

へえ、と勝ち気な笑みを向けられた。

 

「――なるほど、特待生だったのね」

「ああ、そうだ」

「なら……もう少し本気でいかせて貰うわ!」

 

その言葉通り、先程よりも星辰力を高めた彼女は雷撃と共に突撃してくる。序列六位の名に違わず、近接と雷撃を上手く組み合わせてきた攻撃に俺は舌を巻いた。とりあえず近接は余裕を持って捌けるものの、その間にも絶え間ない雷撃が俺を襲い続ける。近接戦闘の技術においては俺の方が圧倒的に勝っているのだが、如何せん少しでも隙を見せてはならないのだ。……こりゃ、本格的にキツくなってきたな。

 

 

堪らず、距離を取るべくバックジャンプをして着地した俺の足下に、今度は巨大な魔法陣が展開された。そうして気付く、彼女の誘導に嵌った事に。

 

これは―――設置型の能力。

 

 

「かかったわね……そのまま焦げなさい!」

 

 

魔法陣に降り注ぐ雷撃。地面が砕け、煙が舞い上がる。ギャラリーが歓声を上げた。

 

恐らく、彼女はそれで仕留めたと思ったのだろう。その証拠に、爆煙が晴れて俺が彼女の姿を捉えた時、その表情が不敵な笑みから驚嘆の色に変わるのを見た。

 

 

「――ま、流石に手を抜いてちゃ負けるわな」

 

俺は青白くスパークする大剣を盾に、先程の攻撃を防いでいた。それを見てなのか、ギャラリーが一気にどよめく。きっと、編入したばかりの特待生がどうして純星煌式武装を持っているのかという驚きが大半だろう。出来ればもう少し隠しておきたかったのだが……出し惜しみをして負けたのでは話にならない。これは、勝てない勝負じゃない。

 

「えっ、まさか純星煌式武装!?」

「まあな。さて……こちらも全力で足掻かせて貰うとするか」

 

言い切るのと同時に、星辰力をブーストにして一気に距離を詰め、全身を使って三連撃。セレナは最初の二発を辛うじて避け、最後の一閃を煌式武装で受け止めようとしたが、打ち合っただけで刀身にヒビが入った。……まあ、圧倒的物量の大剣をレイピアで受け止めればそうなるな。寧ろ壊れなかった事に驚きだ。

 

「くっ、これじゃ避けるしかないわね……」

 

苦々しくそう言ったセレナは大きく後ろに跳んで距離を取り、雷撃メインの遠距離戦を仕掛けてきた。

 

 

うん、これ結構厄介。ある程度距離を置いていれば避ける事は造作もない事なのだが、迂闊に前に出ようとすれば即座に高密度の雷撃に撃ち抜かれそうになる。今度ばかりは彼女も本気なようで、普通に弾幕ごっこクラスだ。魅せる、という要素が無い分、下手すればあっちより厄介かもしれない。

 

攻めの糸口を掴めず、俺はじりじりと押されていった。能力が使えないだけでこんなに辛くなるとは、少し予想外だった。

 

 

と、そこでふと思い出す。

 

(そういや、初めて弾幕ごっこをした時もこんな感じだったっけ……)

 

そう。パチュリーと戦ったあの時も、同じ様に大剣を持って遠距離相手に挑んだ。

 

 

――でも、あの時とは根本的に違う事。それは、校章を破壊されたら負けるという事だ。あの時みたいに多少のダメージを覚悟で突撃しようものなら、即座に校章を撃ち抜かれて終わりだ。

 

そしてもう一つ、迂闊に全力を出せないということも、簡単に攻められない原因である。これは言い訳でも何でもなく、いくら星辰力で防御出来る星脈世代といえど、こちらの全力を彼女が防ぎ切れなかった場合は殺してしまう可能性もあるのだ。自分で言うのもあれだが、こちらはハンターとして鍛えられている身だ。星脈世代の身体は常人よりも頑丈だとはいえ、星辰力による防御が間に合わなければ妖怪のそれには及ばないだろう。危険時には星辰力は無意識的に身体を守るように作用することを考えても、だ。

 

しかも自分で電力を生み出す事が出来ないから、王牙大剣の超帯電状態での自己強化も難しい。彼女の雷撃をガードしつつ吸収しているが、それでも超帯電するには足りない。それさえできれば、彼女が捉えきれないほどのスピードで翻弄しつつ、素早く校章を狩り取れるはずなのだが。

 

 

そんな事を考えていた俺の足下に再び魔法陣が展開されたが、その程度は織り込み済みだ。彼女の星辰力を媒介にして万応素が雷撃に変わった瞬間、俺はその魔法陣に大剣を突き刺し電力を余すことなくチャージしていく。

 

でもまあこのままいけば、いずれ帯電は出来そうだ。そうすれば、そこからは短期決戦で勝負出来る。相手に何をさせる間もなく終わらせられるはず。

 

 

だが、彼女は予想外の隠し玉を持っていた。

 

「埒が明かないわね……これで決めてあげる!」

 

そう言って彼女は両手を前に構える。そこに電力が集中していくのを見て、嫌な予感が全身を駆け巡った。これ、メタルギアとかで見た事あるぞ……!

 

(……レールガン!!)

 

正確に言えばレールガンに似た何かである。本物は金属製の何かを放つものだし。……合ってるよな? どこぞの学園都市の御方はコインぶっ飛ばしてたはず。

 

……じゃなくて。これはヤバい、色々とヤバい。ランスならともかく大剣のガードじゃ受け切れずに吹っ飛ばされて終了、だからといって避けられる気もまるでしない。仮に直撃だけは免れたとしても、余波だけでそれなりのダメージは確定だ。流石に死ぬことはないだろうが、意識が飛ぶ可能性も高い。そうなれば負けだ。

 

まったく、もう少しで超帯電出来たんだが、悠長な事は言っていられないようだ。星辰力と、そして溜めた電力を大量に消費するだろうが、こちらも内に秘めし雷極龍の磁力を利用して電磁ビームを放ち、彼女のレールガンを相殺する。恐らく、最善手はそれだ。

 

 

俺は半身になって剣を真っ直ぐ前に構え、高速で電力を収束させていく。それは、俺の方が少しだけ速い。

 

果たして、俺と彼女のチャージが完了したのはほぼ同時だった。放たれる碧と金の光筋。

 

 

「なっ……!?」

「っ……!」

 

 

超高速の雷撃がお互いの間でぶつかり合い、途方もない衝撃波が広がる。セレナは自分の技が相殺された事に唖然としていたが、俺は予想以上の星辰力の消費にふらついてしまった。そこに少し、隙が出来てしまう。

 

流石に、いくら驚いていたとはいえそんな隙を序列六位である彼女が見逃すわけも無い。すぐに体制を整えた彼女が放った雷撃が、寸分の狂いも無く俺の校章を貫く……。

 

「はあっ!」

「……っ!」

 

直前、突如として俺の前を通った黒い一閃が雷撃を弾く。そのまま俺の前に着地した()()()を持った少女は、星導館の制服を着ていたものの俺のよく知った人物で……。

 

「聖夜、大丈夫?」

「……時雨?」

 

風に艷やかな黒髪をなびかせ立っていたのは、先の異変の元凶であり、今は仲の良い同じ幻想郷の住人『風鳴時雨(かざなりしぐれ)』だった。

 

 




はい、いかがでしたか?

プロローグから完全にネタバレ入りましたね…。仕方無いね。

あと、この物語にはしっかり綾斗達も出てきます。アスタリスクにもう一人主人公がいたらどうなるか、それをこの物語で書けたらなと思います。
今更ですけど、初期装備が純星煌式武装とかチート過ぎましたね。

それと、オリキャラを出すに当たって序列がおかしい事になっています。原作の設定だと序列六位は別の人なのに、この物語ではセレナというオリキャラが入っている…とまあ、こんな感じの事がこれからも起きます、というか起こしますがご了承下さい。

それでは、また次回。及び、影月夜で。

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