須賀京太郎の麻雀日記   作:ACS

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女子副将戦・6

??日目 反撃

 

休憩時間が終わって、南場が始まる。

 

結局私は自分の椅子からは離れなかった、集中力が切れる事を嫌ったのもあるっすけど、卓の前から離れると余計な事を考えてしまいそうだったのが大きい。

 

モニター越しの情報は非常に魅力的っすけど、全員分の牌譜を覗くほどの時間は無かったし、それを見てしまうとその情報に気を取られる、だから私は敢えて椅子を離れなかった。

 

前髪をかき上げながら後半戦への気力を充填しつつ南一局、ドラは一筒。

 

配牌は一・一・一・八・八筒、一・五・七萬、三・七・九索、南、西。

 

ドラ三だけど早いとは言えない手、第一ツモは一萬だったので手の内の一萬の方を空切って引っ掛けを意識して行く。

 

二巡目に一索ツモ、下の三色に決め打ちすることに決めて打五萬、三巡目に二筒をツモって打七萬、四巡目に一筒ツモの一筒空切り。

 

少しずつ、少しずつ形になって行く私の手、流れと言う物があるなら、何もなければこの手はきっと和了できる。

 

誰も鳴きを入れないで、そんな思いを抱きながらの五巡目に八筒ツモ、一筒を頭に出来るから暗刻として抱える事に決めて打西。

 

六巡目に三筒ツモ、筒子の123が揃ったので打南。

 

七巡目に二索ツモ、索子の123が揃ったので打九索。

 

八巡目に三萬ツモで聴牌、打七索待ちは二萬。

 

三色ドラ三の満貫、立直すれば跳ねるっすけど……ダマっすね。

 

そう決めた瞬間に龍門渕さんが六筒を切って立直、彼女の河には五・八萬が切れてるので筋頼りの二萬が出やすくなる、万一同聴だとしても頭ハネっす。

 

問題はこの立直後の一巡、深堀さんは八萬、おっぱいさんは五萬を切った、この次の私のツモで何を引くかで命運を分ける。

 

緊張の九巡目、ツモったのは八筒、私の手に既に暗刻が出来てるのでシャボ待ちは無いっすけど、六筒対子から七筒引きの五−八筒待ちも充分考えられるっす。

 

彼女の河には筒子が切れていない、なら放銃の危険のあるツモ切りよりはリーチ者にドラを乗せる覚悟で暗槓っすね。

 

この八筒暗槓の瞬間、龍門渕さんの目が一瞬ドラ表示牌へと移り、表情が若干険しくなる。新ドラは一索。

 

やはり待ち牌の一つだったすね? しかも焦りも含んだ表情だったっすから五−八筒の両面じゃない、新ドラを見る振りでドラ表の九筒を確認したって事は八−九筒の変則待ち、多分おっぱいさんが一巡目に切っている九筒を引っ掛ける気だったんすね、河も筒子が安いっすし。

 

ここまで読んでおいて嶺上牌で九筒を引いたら流石に降りっすけど、引いたのは三索だったので空切りと同時にリーチ宣言。

私の河にも五萬が切れてるし、序盤で萬子連打も後を押して引っ掛けになる。

 

私のリーチ直後に龍門渕さんは引いた牌を横に置いて考え始めた、リーチをかけた以上和了牌以外は切るしかないんすけど、暗槓をするか考えてるっぽいすね。

 

私の河を見て龍門渕さんはそのまま槓せずにツモ切った、河に切れた牌は二萬、私の引っ掛けが上手く刺さったっすね。

 

『その二萬ロンっす。立直・一発・三色・ドラ四の16000っす』

 

裏は乗らなかったっすけど、倍満直取りで東四局の満貫が帳消になったっすね。

龍門渕さんが唖然としてたっすけど、洗牌の穴へ牌を落とす際にチラッと見えた次の嶺上牌が九筒だったから間一髪って感じだった。

 

––––正直引っ掛けで和了れたのは点棒的な意味以外でも大きい。

 

前半戦のオーラス、私は国士のブラフとしてノーテンリーチを使った。

 

それ自体は既にネタが割れてしまったっすけど、このノーテンリーチで私がその手の小技を使う真っ直ぐな打ち手じゃないと印象付けられた筈、おっぱいさんは中学の時に何度か対局してるから余計に確信している筈っす。

 

そこへ来てのこの引っ掛け、これで少なくとも私のリーチに対しては全員回すはず、回さなかったとして手を読ませる事で相手の打牌をある程度予測できる。

 

麻雀は心理戦だ、ツモの流れやツキも重要な事は分かるっすけど、持ってる相手から安牌だと思わせてから吐き出させれば確実に和了れるし、何よりその思考を鈍らせられる。

 

特にデジタル打ちをする人達は直感や牌の流れなんかはオカルト呼ばわりしてるっすからね、思考能力を削ればミスを誘発出来る。

 

これから南二に入るっすけど、動揺させた龍門渕さんに追撃をしに行くか、大将戦の事を視野に入れておっぱいさん狙いで清澄の点棒を削るかってところっすね。

 

此処でただ勝つだけなら簡単だ、こう言ってしまっては悪いっすけど腕の劣る深掘さんを狙えば直ぐに点棒は稼げるっすからね。

 

けど私が彼女をトバすよりも、おっぱいさん達が差し込みをする方が早いと思う、そうなったら中途半端に点棒を残した状態で咲ちゃんに回ってしまう。

 

槓ドラ乗せてのインスタント役満で風越を狙い撃ちされたらそれで終わってしまうっす、照さんといい……咲ちゃんといい……あの姉妹はほんと規格外っすからね……。

 

といってもきょーさん並みの洞察力持ったおっぱいさんから直撃取るとか無理ゲーに近いんすよね……。

 

下手に突っかかると返り討ちにしかならないっすからね、勝つには彼女の心を揺らすしかないんすけど、どーするっすかね。


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