バカとテストと最強の引きこもり   作:Gasshow

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いや、一年位待たせてしまってすみません。
もうそれしか言えないです。
というか皆さん優しいですね。
元々この二次小説、お試し感覚で適当に書いてたんですがここまで待ってくれる人がいるとは思いませんでした。本当にありがとうございます。
これからは遅いなりにボチボチ投稿していくので暇があったら適当に読むくらいでお願いします。
行き当たりばったりで投稿しているので、矛盾点や誤字などご指摘してくださったら直します。
では本編です。


Fクラス戦と決意

今、Rクラスの教室で僕と春咲さんは向かい合っている。Fクラス戦での作戦会議のようなものをするためだ。

 

「今回の試召戦争は私達で少し違った戦い方を決めました」

 

「違った戦い方?」

 

「そうです。戦略も何もない正面衝突です」

 

「本当の(いくさ)みたいだね」

 

思わず苦笑してしまった。

 

「その方が早く終わりますし、どっちのクラスもスカッと、禍根を残さないと思うんです」

 

「逆に深い因縁を刻み付ける結果にならないかな?」

 

僕はふと思い浮かんだ疑問をそのまま口にした。

 

「はい。そこでFクラスを吉井くんが説得して欲しいんです。それならば問題ありません」

 

「え、どういうこと?」

 

「今は頭が沸騰してFクラスの皆様は冷静になれていませんが、一回戦いが終わったら冷静になるはずです。そこで吉井くんがFクラスの方々を説得して欲しいんです」

 

「僕の言葉なんて耳を傾けると思わないけど……」

 

「大丈夫です。確かに吉井くんがやられてしまったら難しいかもしれません。ですが、吉井くんが勝てばきっと話を聞いてくれますよ」

 

「……信じていいんだね」

 

「はい、心理学的な推測から「違うよ」…え?」

 

「春咲さん自身を信じていいんだよね」

 

僕の言葉を聞いて一瞬ポカンとしていたが、それからどうしたらいいか分からないと言った様にうつ向いてオロオロしだした。少し手応えを確認してみたけど、まだそこまで信用されてないってことなのかな?

 

「ごめんごめん、なんか春咲さんに振り回されてばかりだったから仕返しがしたくてね。思ったより驚かせちゃったね」

 

またもやポカンとして、今度はホッとしたような感じで前を向いてくれた。春咲さんの狼狽する姿なんて初めて見たけど、なかなか面白いかもしれない。

 

「そうだったんですか。そういうのにはあまり慣れていないので止めてください」

 

「悪かったよ。でも後悔はしてない!」

 

「してくださいよ!」

 

そう言って春咲さんは、むぅと膨れた感じに怒ってしまった。それから、機嫌を直すのにかなり時間が掛かってしまったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕の今の状況を指し示す言葉があるなら前方に白ひげ、後方に赤髪、左にビッグマム、右にカイドウである。とにかく、いい感じにヤバイということだ。ほんの三十分前、指定された場所に(おもむ)くと、いきなりとんでもない殺気が僕を襲った。冷気……いやブリザードと言ってもいいくらいの殺気だ。それから教科を決めるために箱から紙を引いて、指定教科は日本史になった。春咲さんが手を回してくれたんだろう。

そしてついに、定位置について始まりの合図が鳴った瞬間、周りを囲まれて逃げ場を失った。それが今の状況だ。しかし誰も一言も話さないとは。なんと恐ろしい。さらに数と言うのは偉大なもので、この人数に囲まれて敵意を向けられるとある種の本能的な恐怖感を抱いてしまう。本当にこの人数、しかも学年トップクラスの姫路さんもいるのに勝てるのだろうか ?春咲さんが言うには、二年生になったばかりなのでまだ実戦慣れしていないから大丈夫だそうだが……。

チラッと周りを見た。後ろの方で雄二と秀吉が苦笑いをしている。二人だけはこの戦いが不本意なのがわかる。 さて、そろそろ来る頃だね。

 

 

 

始めに動いたのはFクラスのメンバーだった。前後左右から一人ずつ突っ込んで来たがこれを明久の召喚獣が太刀を一ふりだけして吹き飛ばした。それを見たFクラスの面々は驚いた様子でどよめいた。

 

 

「僕がRクラスの生徒だってこと忘れてない?」

 

 

 

 

 

 

日本史

 

 

Rクラス こま犬 731点

 

 

 

 

 

 

周りがAクラス戦の時と同じような反応をする。

 

「油断してるとすぐに全滅させちゃうよ?」

 

 

 

明久が言い終わるやいなやFクラス生徒が全員で突っ込んできた。そうして戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

囲まれないように大きく動きながら召喚獣を戦わせる。Aクラス戦の経験者としてはこの程度何の問題もない。Fクラスの召喚獣の攻撃を避けながら一発撃ち込むだけでライフは全損する。だがそこに無視できない人物が現れた。

 

「覚悟しなさい吉井!あんたを滅多刺しにしてあげるわ」

 

僕をサンドバッグかプロレス技の練習をするための人形のように扱う人物だ。そんな僕の天敵とも言えないでもない彼女をーー

 

 

 

 

日本史

 

 

Fクラス 島田美波 52点

 

 

 

 

 

 

「きゃーーーー!」

 

剣もろとも切った。現実なら身体中のありとあらゆる腱を切られていたが、十倍以上点数の差がある召喚獣同士の戦いでは流石に僕が勝った。始めの強敵(?)を倒したのもつかの間、次の瞬間には二つの人影が僕を襲ってきた。

 

「…………明久覚悟」

 

「すまんのう明久」

 

ムッツリーニと秀吉だ。二人とは一年の頃によく一緒にいた。

 

 

 

日本史

 

 

Fクラス 土屋康太 78点

 

Fクラス 木下秀吉 83点

 

 

 

 

 

 

 

ははっ。最近の会ってなかったけど二人とも相変わらずだね。僕は一気に距離を詰めて素早く二人を両断する。

 

「速い!」

 

「まぁ、こうなるじゃろうな」

 

二人を倒してもどんどん敵はやって来る。

 

「喰らえ吉井!」

「おとなしく殴られろ!」

「地獄に落としてやるぜ!」

 

僕は飛び出してきた須郷くん達を横一閃で切っていく。だがそこに熱線が飛んできた。これは、恐らく腕輪の効果だ。春咲さんが渡してくれた資料にあった攻撃。Fクラスでこの教科でも腕輪が使える人物は一人しかいない。

 

「吉井君、大人しく焼かれて下さい」

 

「それはちょっと勘弁してもらいたいな、姫路さん」

 

姫路さんは実質学年二番目の実力者だ。振り分け試験の時に熱によって途中退室したからFクラスになってしまったけど、本当はAクラストップレベルの学力を持っている。

 

 

日本史

 

 

Fクラス 姫路瑞季 389点

 

 

 

 

流石は姫路さん。他の人とは比べ物にならない点数だ。腕輪を使ったせいで三百点台になっているが使う前なら四百点を越えていただろう。そもそも腕輪は四百点を越えないと発動できない。これは早めに倒しておかないと後々厄介になる。いくらか攻撃は()らったが、それでも点数はさっきから殆ど減ってない。これなら勝てる。

 

均衡状態がしばらく続いた後、姫路さんが突っ込んで来たのでそれを正面から受け止める。剣が交差する。でも、こちらの方が点数が高いから力では負けないはずだ。押しきろうと力を入れたら、姫路さんは危機を察知して後ろに退いた。だけどそうはさせない。一気に距離を詰めて追い討ちをかける。最初の一撃は防がれたけど二回目を速く叩き込んで一撃喰らわす事が出来た。が、この点数では一撃で倒すのは無理だ。

 

 

 

日本史

 

 

 

Fクラス 姫路瑞季 237点

 

 

 

 

しばらくにらみ合いが続いたが、姫路さんが突進してきて剣と剣のぶつかり合いが始まった。隙を見せたら切られる。だから、そのまま姫路さんの剣を自分の剣と一緒に上に上げて蹴りを入れた。後ろに姫路さんの召喚獣が飛ばされて、それに合わせて僕は自分の剣を投げた。それは回転しながら姫路さんの召喚獣の眉間に刺さった。流石にこれには耐えられずに姫路さんの召喚獣が消え去る。強敵だったけど伊達に観察処分者やってる訳ではい。点数も姫路さんを上回っているぶん、負ける要素はなかった。姫路さんと言う一番の難関を突破したので、その先は楽に倒すことが出来た。

残るはーー

 

「まさかお前がここまで強くなってるとはな、ビックリだ」

 

「Rクラス生徒だからね。これぐらい強くないとダメなんだよ」

 

「はっ、言うようになったじゃねぇか」

 

Fクラス代表 坂本雄二

 

「いくよ」

 

「来やがれ」

 

すぅ、と息を吸い一拍おいて僕は叫んだ。

 

 

「くたばれ雄二ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、明久!」

 

 

二つの小さな影が交差して、一つになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

立っているのは一人で周りには何もない。その人物、この一人が勝者であることは誰の目から見ても明らかだった。

 

「僕の勝ちだよ。Rクラスの勝ちだ」

 

たった一人だけの勝者はこう言った。その勝者は誰でもない。吉井明久だ。

 

 

「そんな馬鹿な、この人数で負けたのか?」

 

Fクラス生徒の誰かがそう言った。

 

「僕はこれでもRクラスの一人だ。簡単には負けられないよ」

 

全員が唖然としている。未だにこの事実を受け入れられないのだろう。いくら点数が高いとは言っても合計点数では圧倒的に上回っていた。普通なら勝てた。だが、多対一での戦い方を明久はよく知っていた。人数を分離して最低三、四人単位で戦闘を繰り返していたのだ。大きな軍団から数人を引き離して倒していく。軍団のど真ん中で倒したとしてもすぐに次の敵がやって来るのを防いでいるのだ。召喚獣に慣れているからこそできる戦い方。それがこの状態を作り出した。

 

「ちょっと聞きたいんだけど……」

 

周りの様子を見て僕は切り出した。

 

「何でRクラスに試召戦争なんて仕掛けて来たの?」

 

分かってはいたがあえて聞いた。すると、またあの超高校級のブリザードが僕に襲いかかった。

 

「フッフッ、それはだな吉井。お前が……お前のクラスメイトの中にとんでもない美人がいると聞いたんだ!そんなこと許せると思うか!?なぁお前ら!」

 

答えるように肯定の声があがる。

 

「いや、そう言われても……なっちゃったものはなっちゃったんだし」

 

春咲さんと同じクラスになったのは僕がたまたま観察処分者だったからで…………ん?

いや、おかしくないか?春咲さんってここの生徒には、僕以外顔を見せたことないんじゃないかな?

情報漏れなんて春咲さんが許すはずないし。Rクラスにいるのって春咲さんと僕とあとは……。

 

思わず膝をついた。

 

そんな馬鹿な!もしかして彼らが言っている美人と言うのはーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麻名明葉じゃん!

 

 

嘘だろ!まさか自分自身が嫉妬の原因であり、その対象だとでも言うのか!そんなの意味が分からないよ!

 

もうこれは知っている人に聞くしかないと、僕はFクラスの方へと朦朧(もうろう)な面持ちで顔を向けた。

 

「えっと、その美人さんって誰か分かるかな?」

 

僕の言葉を聞いた、ある一人がガバッと立ち上がり宣言するように言った。

 

「それはこの文月学園のアイドル、麻名明葉!アキちゃんに決まっているだろが!」

 

「ガハッ!」

 

 

倒れた。倒れるしかなかった。予想はしていたとは言えこんなバカらしいことはない。それになんだ!文月学園のアイドルってのは!あとアキちゃんってなんだ!?本人の許可とってよ!

 

「…………なるほど。麻名さんのことね」

 

僕は産まれたばかりの小鹿のような足どりで立ち上がる。受け入れがたいこの事実を受け入れるしかないいや、むしろ利用すべきだ。そうだ!ふと、頭の中にある作戦が思い浮かんだ。もちろんこの試召戦争の原因を解消するための作戦だ。いけるかも、これなら!

 

「……ねぇ、麻名さんに会ってみたくない?」

 

「「「「「会いたいです!」」」」」

 

即答だ。

 

「連れてきてあげようか?」

 

その瞬間場の空気が変わった。

 

「流石は吉井先生、一生着いていきます」

「吉井、俺たち親友だよな」

「あとでジュース奢ってやるよ」

 

なんて現金な奴等なんだ。あからさまなポイント稼ぎ、分かり易すぎる。

 

「分かったよ。少しだけ待っててくれるかな」

 

呆れながらも、僕は計画を実行するため、そう言ってこの場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明久遅いのう」

 

秀吉は隣で難しい顔をした雄二に声をかけた。

 

「そうだな」

 

雄二はそれだけを素っ気なく返す。

 

「ふむ、どうしたのじゃ?何か気になることでもあるのか?」

 

しばらくの無言のあと秀吉の方をを向いてこんな質問をしてきた。

 

「明久のあの点数…。余りにも高すぎないか?」

 

「確かにそうじゃが」

 

「ほんの数ヵ月前までは筋金入りのバカだったのに今ではあの翔子より点数が上だ」

 

どうなってやがる……。

 

そう呟いた雄二に秀吉は何も言うことができなかった。手品のようないや、まるで魔法のような出来事だ。

 

「謎だらけで気味が悪いぜ、Rクラス」

 

これが無意識のうちに声に出した坂元雄二の本心だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明久がその場を去ってからどれくらいたっただろうか。少なくとも二十分以上はたっているだろう。Fクラスの何人かは明久が逃げたとまで言っている。そんだけ待たされれば無理もない話だが。

 

カッ。

 

靴音が響いた。全員がしゃべるのを止めて開かれるであろう扉を見た。ギィ、という音共に扉が開く。扉が開かれるとそこには白いフードコートに身を包んで猫の仮面を被っている人物が立っていた。その人物はそのまま部屋に入ってきてFクラスの少し離れた所で静止した。

 

「えっと、吉井明久の代理で来たのだけれど」

 

艶やかな声で言った。

 

「何をすればいいのかしら?」

 

皆が状況を読み込めない中、Fクラスの間を割って誰かが前に出て彼女の前に立った。

 

「Fクラス代表の坂元雄二だ。その格好をしてるって事はあんたもRクラスなんだろ?」

 

「そうよ。私はRクラス生徒の一人、麻名明葉。よろしくね、Fクラス代表さん」

 

その言葉に多くのどよめきが起こった。だが、雄二は動じなかった。半ば予想していたとおりだったからだ。

 

「明久があんたをここに呼んだんだよな?何の意図があるのかはわからないが」

 

「そうね、急用ができたから代わりに戦後処理をしておいてと言われたわ」

 

「なるほどな。あと、その仮面取ったらどうだ?窮屈そうだぞ。」

 

雄二が仮面を指差した。

 

「あら、そんなに私の顔が見たいの?」

 

「この戦いの火種だからな、そりゃ一回は拝んでおきたいな」

 

「でも、女性は秘密が多い方が魅力的というでしょ?」

 

「お前らの場合は秘密が多すぎんだよ」

 

「それもそうね。分かったわ、折角お知り合いになったんですものね」

 

明葉は仮面に手をかけた。しかし仮面を取ろうとした瞬間、坂元雄二は目の前から消えていた。そして、バタン!という音が後ろの扉から聞こえて、次の瞬間にそれは誰かの悲鳴に変わっていた。

 

「しょ………こ……?何で……が?ギャャャャャャャャャャャャ!」

 

なんか聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……坂元君はお取り込み中のようね」

 

麻名明葉は赤信号的な何かを察して雄二が消えた事を追及しなかった。

 

「さてと、気を取り直してこの戦いでのあなたたちの処遇を決めましょうか」

 

「待って!試召戦争の敗北者の取り決めは両クラスの交渉をもとにするんじゃないの?」

 

島田が割って言った。

 

「Rクラスは特別なのよ。Rクラスが他のクラスに試召戦争を仕掛けられて勝利した場合、一定の範囲内は一方的にあなたたちのペナルティを決めることができるの」

 

「そんなむちゃくちゃな」

 

「Rクラスには下手に手を出さない方がいいってことよ」

 

そうね……と頬に手を当てて言った。

 

「一週間、全教科の補修授業に出席するとかどうかしら?」

 

それを聞いてFクラスの面々は絶望の声をあげて提案者に慈悲を乞うた。

 

「あきちゃん、お願いします。それだけは止めてください」

「俺たちに慈悲を!」

「俺たちに愛をください!」

 

その言葉を待っていたと言わんばかりに明葉はすぐさまそれに返答した。

 

「仕方ないわね、一回だけチャンスをあげましょう」

 

「「「「「チャンス?」」」」」

 

Fクラス生徒全員の声が重なる。

 

「そうです。元々あななたちFクラスはAクラスに試召戦争するはずだったそうですね。でも、Rクラスに挑んで負けてしまいAクラスへの挑戦権が消えてしまいました。ですがーー」

 

「「「「「ですが?」」」」」

 

「私がAクラスへの挑戦権を今一度差し上げましょう。もしこれでAクラスに勝てたならFクラスのペナルティーは無しにしてあげます。負けた場合はーー」

 

「「「「「負けた場合は?」」」」」

 

ごくりとFクラス生徒が生唾を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鉄人先生とお勉強デートです♪」

 

 

「「「「「Aクラスをぶっ殺せ!」」」」」

 

Fクラスが団結した瞬間だった。

 

「あぁ、そうそう。坂本くんはいなくなってしまいましたが、折角こうして出会ったんですもの。顔くらいは見せてあげましょう」

 

そうして彼女はあっさりと仮面を外した。

 

「「「「「…………………。」」」」」

 

さっきまでの騒がしさはどこへ行ったのか。麻名明葉の素顔を見た者は皆静まりかえっていた。まるで火に水をかけたような静まり方だ。流石に予想外だったのか明葉自身、非常に困っている様子だ。

 

「えっと……感想は?」

 

テンパりながら彼女は言った、とっさに出た言葉なのだろう。そして返って来たのはーー

 

「「「「「結婚してください!」」」」」

 

男子勢全員のプロポーズだった。

 

「御免なさい」

 

それを打ち返す麻名明葉。崩れ落ちる男子勢。だがそこに女神の救いの手ーー

 

「あっ、でも上位クラスに挑んで倒しちゃう人って凄く格好いいわね」

 

に見せかけた小悪魔の罠が姿を現した。

 

「おらぁぁあぁ、何処だAクラスゥゥゥゥゥゥ!」

「俺が一人で倒してやらぁぁぁぁぁぁ!」

「Aクラスなんて余裕だおらぁぁぁぁぁ!」

 

この部屋の扉を吹き飛ばさん勢いで、殆どのFクラス生徒が出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ、やっと終わったかな。Fクラス生徒が出ていった扉を見てやっと安堵を覚えた。僕に向かう殺気を一時的とはいえ反らせたし、FクラスがAクラス戦にやる気を出すことも出来た。麻名明葉になるための時間と、Fクラスの他クラスへ挑戦権を回復させるす許可をババアからとるのに時間がかかったけど、まぁ結果オーライということで。やること全部終わったし僕も部屋を出ようと扉に向かって歩き始めると……。

 

「待ってください!」

 

後ろから声をかけられた。振り向くとそこには二人の女子生徒がいた。島田美波と姫路瑞季。Fクラスの中で二人だけの女子生徒だ。

 

「あんた、吉井のことどう思ってるの?」

 

うん、どうしようか。何でこんな質問するんだろ?

麻名明葉=吉井明久って事を知らないんだろうからこんな質問をするんだろうけど……。

というか自分自身のことどう思ってるかって感じで答えるしかないかな。そうだな……僕って何ができたっけ?う~ん、すぐに出てこない。すぐに出てこないってことはそこまで大したことはできないってことかな。あっ、でも料理は人並み以上に出来るかも。まぁ適当に答えようかな。多分自分のことをどう思ってるかなんて奥の部分では皆わからないんだよきっと。だから適当に麻名明葉っぽく答えよう。

 

「吉井君ね。さして何もできない普通の人。学園史上初の観察処分者という意味ではある意味特別かも知れないわね」

 

高慢が板についたような台詞だ。

客観的に判断して麻名明葉っぽく言ってみたけど……なんというか、自分で言ってみて悲しくなるね。自分で自分自身の悪口を他人になりきって言うというのはなかなかできるものではない。すると、ギリッと言った具合に二人は強気な表情になった。

 

「貴方はそんな風にしか吉井君を見れないんですか?」

 

なんだろ?二人がやけに怒ってる様に見える。いや、確実に怒ってる。それもかなり。あんな二人を見るのは初めてかもしれない。なんか後ろに阿修羅が見える勢いだ。

 

「私は事実を言っただけよ。何を怒る必要があるの?」

 

何とか二人を落ち着かせようとこれまた麻名明葉っぽく言った。が、それは火に油を注ぐ結果となったようだ。

 

「あんたは吉井の本当の姿を知らないのよ!あいつは誰よりも優しいわ!」

 

「それに、格好いいです!他人のために自分の全てをなげうってまで助けようとしてくれます!」

 

「他にも運動神経いいし、何だかんだで話聞いてくれるし!」

 

「確かにちょっとおバカでエッチかも知れませんが、それも吉井君の魅力です!」

 

あまりの予想外の返答に固まってしまった。僕自身よりも僕の長所を多く見つけてくれてるなんて思いもしなかった。その長所が合ってるかどうかは僕にはよくわからないけど、とても嬉しかった。僕は他の人の良いところをどれくらい見つけることができるんだろうか?いつだっけ、少し前にそんな話をした気がする。

 

確か雄二と下校してる最中に子供たちが喧嘩をしてて僕たちが止めに入った時だった。サッカーをするかドッジボールをするかで揉めてたんだけど雄二は二つ一遍にやればいいだろって言って二つを混ぜ合わせたゲームをすぐさま考えてやらせたんだっけ。よくできていて、サッカーの要素とドッジボールの要素をうまく組み合わせて作ってあった。結局僕たちも参加して砂埃だらけになって、帰る頃には夕方だった。

下校を再開して、その途中で僕は雄二にそんなにすぐ考えが回るなんてちょっと羨ましいなって言ったら雄二はお前の方が羨ましいなんて言われた。どこが羨ましいのか聞いたら自分で考えろとか言って全然言ってくれなかったけど。

 

とにかく、雄二には雄二のいいところがあるし、島田さんには島田さんのいいところがある。勿論姫路さんにもあるし、秀吉やムッツリーニにもある。確かに他人の良いところ、羨ましいところなんて結構あるのかもしれない。でも、堂々と公言できるほどの自分自身の長所を探すのは案外できないのかもしれない。

そこで僕の唯一のクラスメイトが頭に浮かんだ。春咲さん、君は僕をどう思ってるんだろうか?そしてふと僕は春咲さんの事をどう思っているのかと考えた。だがあることに気づいた。僕は春咲さんを知らなさすぎると。どんな人なのか、好物はなにか、何でこんな生活をしているのかそれがわからない。

……帰ったらもう少し春咲さんと喋ってみようかな。

春咲さんの事がもっと知りたい、そしてもっと世界を知ってもらいたい。

でも、僕は世界を教えられるほど世界を知らない。

世界を語るにはあまりにも幼いし、それはあまりにも滑稽だ。

でも、自分が気づかない何かに気づかせてくれる存在を春咲さんは知らないと思う。傷つけあって、馬鹿にしあって、一緒に笑う存在を春咲さんは知らないと思う。

だから、そのちっぽけな世界位は知ってほしい。未だ目の前で怒ってる二人に僕は問いた。

 

「吉井明久はあなたたちにとって何なの?」

 

しばらく拍子抜けした顔になったが二人は見つめ合い、真っ直ぐこっちをみて力強く言い切った。

 

「友達です!」

「友達よ!」

 

僕と姫路さん達の間に静寂が訪れた。

にらみ合うようにした後、島田さんがふん!といった具合にして僕の横を通り抜けて行った。

 

「行こう、瑞希!」

 

「あっ。はい!」

 

二人はそのまま部屋を出ていってしまった。

 

「………………………。」

 

しばらくボケッと彼女たちが出ていった扉を見ていた。そして島田さんが横に抜けた時、ふと無意識のうちに溢したであろう台詞を思い出す。

 

『今年もあんたとバカできると思ったのに。あのアホ……』

 

「…………僕もそう思ってたよ」

 

今年も雄二達とバカばっかりして過ごすのかと思ってだけど、僕は今回はパスさせてもらうよ。新たな決意を胸に僕は自分のクラスに戻るために歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局FクラスはAクラスに敗北し、設備降下+鉄人との勉強デートをするはめになったそうだ。




一巻分終了です。まず皆様言いたいことが何点かあると思います。
島田、姫路アンチじゃねーじゃんとか。
明久結局何が言いてえんだよとか。
まずアンチの件ですが、この話でアンチっぽく書いてみたら、なんかあまりにも殺伐としているというかドロドロしすぎていると言うかとにかくこの小説っぽくなかったのでここで入れるのはやめました。自分が目指しているのはなにかやっている合間の数分で適当に読める位なので、そんな雰囲気にはしたくはなかったんです。
まぁ、この先アンチを入れるにしても軽い感じでやると思います。自分的にライバルっぽい感じにしたいなと思っているところです。絶対また変えると思いますけど。
次に明久が何を言いたいのかというと、春咲にもっと人間関係をもってもらいたいと思ってるんですね。
そう、脱引きこもりです。Fクラスのメンバーと関わって、人との関わりの大切さを思い出しそれを春咲に知ってもらいたいと思う訳です。
まぁ大雑把に言えばこんな感じです。改めてアンチどこいったんだよって思いますね。笑
行き当たりばったりですみません。
個人的にこの二人は好きなのでアンチが書き辛いのかもしれませんね。あの性格含めて二人の魅力だと思っています。
取り合えず、色々すかすかで投稿したので質問や修正があったら感想やダイレクトメッセージで教えてくれると助かります。
とにかく待っててくれた皆さん、本当にありがとうございました。

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