バカとテストと最強の引きこもり   作:Gasshow

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今回かなりひどいです。



宣戦布告の準備、女神降臨?!

春咲さんと別れてから何を作ろうか考えた。いろいろ考えたが結局サンドウィッチという無難なものにすることにした。見た目も彩り豊かだし、何よりシンプルで失敗しにくい。僕は早速、工夫を凝らしながら作り始めた。具材の組み合わせや、分量のバランスなど。そんなことをしていたせいか、完成するころには一時間と言うサンドウィッチにしては掛かりすぎな時間が流れていた。しかしそのお陰が完成度はいい感じだ。少なくとも僕の中では最高傑作の朝食である。後は春咲さんを待つだけ。今は朝七時。さて、今度はどれくらい待てばいいのかな?とそう思っていたのだが、予想していたよりも圧倒的に早く扉がガチャリと音を立てて開いた。

 

 

こんな早くに来てくれると思ってなかった。と言うかそもそも来てくれると思ってなかった。気持ち的には週単位待ちだったのだが、僅か一時間後に姿を現してくれたのは嬉しい誤算だ。僕は春咲さんを迎え入れるため、扉まで急いで駆け寄ったのだが相変わらず、かなり不安そうだ。触ったら崩れ落ちそうなほど、絶妙なバランスを保ってる感じだ。

 

「どうぞ」

 

「……………………。」

 

僕が椅子の方まで誘導する。ちょこちょことついて来る。可愛らしい。綺麗でかわいいのは反則だと思う。

僕はそのまま春咲さんを椅子に座らせ自分も対するように席に座る。

 

「いただきます」

 

「…………いただきます」

 

春咲さんがゆっくりとサンドウィッチに手を伸ばす。それを掴んでじーっと見つめている。僕もそんな春咲さんをじーっと見つめる。自信がある朝食を作ったとはいえ緊張する。

 

それからして春咲さんはパクっとサンドウィッチを口にする。するとびっくりしたように目を見開き僕を見た。そこで彼女と目が合ったと思ったら、直ぐに視線を逸らされた。少し傷ついた。

 

「……このサンドウィッチあなたが作ったんですよね?」

 

春咲さんは視線を逸らしたまま僕にそう尋ねた。

 

「そうだよ。どうだった?」

 

これで不味いなんて言われたら今度は僕が引きこもりの道に走るだろう。そんな人生の分かれ道になるであろう彼女の言葉を待っていると。

 

「おいしいです。私も料理は得意な方なのですが、このサンドウィッチには勝てる気がしません」

 

「本当に!?嬉しいよ!」

 

実際かなり嬉しい。あまり料理など人に食べてもらった事がなかったので余計にそう感じるのだろう。僕もサンドウィッチを食べる。それが味見した時より何倍もおいしくなっていたのはきっと春咲さんのおかげだ。

 

「ありがとうございました。いい朝食でした」

 

「どういたしまして」

 

僕がお礼を言いたいくらいだ。とってもいい時間だった。だが安心してはいけないこれからが本当の戦いだここで春咲さんを帰すわけにはいかない。

 

「ねえ、また明日も顔を見せてくれないかな?」

 

ここでの返事は分かっている。だがあまりしつこくない程度には「いいですよ」…………え?

 

マジで!?想定外の言葉に僕の恐ろしい時間を費やした策略は一気に意味を無くした。

 

「なんで?」

 

思わず聞き返す。すると──

 

「理由は後で説明します。三十分後に私の部屋の前に来てください」

 

そう春咲さんは言い残し、この場を去って行く。僕はまだ状況を理解できないままで、一人この急な展開に取り残されていた。そして結局、そのまま頭が真っ白の状態のままで、約束の時間になる寸前まで立っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

なんとか焼け残りの灰のような、真っ白な状態を立ち直し春咲さんの部屋の前まで移動した。部屋の前に立つといきなり扉が開いたので、春咲さんが入れとそう促しているのだと解釈して奥に進む。それから少しばかり、金属で作られたトンネルのような通路を進み、そしてやがてその終着点にたどり着く。見えたそこには椅子に座った春咲さんが落ち着いた様子で(たたず)んでいた。

 

「ようこそ私の部屋へ。人を部屋に入れたのは吉井君、貴方が初めてなんですよ」

 

今の今まで人を入れた事がなかったのか。まあ人類最強レベルの引きこもりならば当たり前か。ん?じゃあ何で僕を部屋に入れたのだろう?

 

「それは今から説明します。こちらに付いて来てください」

 

なんと、心を読まれた。人の心を読むなんて引きこもりができる芸当じゃない。引きこもりらしかぬものといえばこの部屋もそうだ。一つ一つの物が綺麗に整理されていて引きこもりの住んでいる場所とは思えない。そんな身勝手な思考を頭に浮かべつつも、僕はこの部屋にあるもう一つの扉に向かっている春咲さんについて行く。ナンバーロックを外したようでガチャという音と共に扉が開いた。部屋に入ると扉が閉まり、辺りが真っ暗になる。だが、いきなり薄暗い明かりが着いたと思ったら機械だらけの部屋がそこに現れた。

 

「……凄い」

 

そう呟かずにはいられなかった。その部屋にはパソコンやら謎の機械やらが、妙に尊大な存在感を醸し出しながら居座っていた。視界に収まるだけでも液晶は軽く二十を超えるほどだ。そんな現実離れした光景に唖然としていると、ふと隣にいた春咲さんが声をかけてきた。

 

「私がこの文月学園に来た理由は知ってますか?」

 

「いや、まったく知らないよ」

 

そう、これは彼女のプロフィールを見たときから気になっていた事だ。春咲さんはこの年であらゆる分野に深く携わっている天才だ、そんな彼女が何故今更、文月学園の生徒をしているか理解できなかった。

 

「それはですね。『試験召喚システム』に興味を持ったからなんです」

 

「…………試験召喚システム」

 

この試験召喚システムとは一時間という時間の内に無制限の問題数が用意されていて、そのテストの点数により設定された強さの召喚獣を召喚できると言うものだ。いや、これは文月学園でのルール。正確には“召喚獣”を扱うことのできる技術と、そう簡潔に言った方が良いのかもしれない。

 

「だから私は試験召喚システム開発の中心人物である藤堂カヲル学園長と話し合った結果いくつかの条件と共に試験召喚システムの情報を渡してくれる事になりました。その中にここの生徒になるというもの含まれていました」

 

要は今、世界でも注目されているこのシステムに春咲さんが興味を持って学園長とコンタクトをとったらこうなったってことか。

 

「ですが私はこんな性格なので普通の教室は無理。そこでできたのがこのRクラスなのです」

 

これでRクラスの謎が一つ解けた。誰もRクラスに入った事がなかったのは、このクラスが春咲さんのためだけのクラスだったからだ。

 

「Rクラスのルールブックはあれから読みましたか?」

 

「うん」

 

「なら、このRクラスのルールは何を基準に出来ているか分かりますか」

 

「…………秘密かな?」

 

「まあ大体正解です」

 

そう、このクラスは特別で他のクラスには無い様々なルールや特権がある。だがその大半がこのクラスの情報が外に漏れないようにするため設定だった。その徹底っぷりは異常で、あまつさえ構成人数さえも他言してはならないのだ。と言うか、そもそも今年からRクラスがあること自体知ってる人がいるのかが怪しい。

 

「このルールや特権は私が大半作りました。ですがすぐにRクラスの存在が噂になるのは予想していました。というかそうなるように仕向けました。理由は省きますがこうする事によってこのクラスがいい噂が流れるようにしたかったのです。ですが効果をはっきしすぎて、このクラスに試験召喚戦争をしかけようという風潮が学校に出来てしまいました。噂どおりのいい設備があるRクラスを手に入れよう。理由はそんなところです」

 

そう言うと春咲さんはパソコンの液晶のスイッチを押した。そうすると、部屋のほとんど全ての液晶に明かりが(とも)る。そして、その画面に映し出されたのは学園のありとあらゆる場所だった。僕は眉を潜めながらも、目の前にある正面のモニターに目を向ける。そこにはCクラスの教室が映っていた。

 

 

 

 

『Rクラスにはいつ試験召喚戦争を挑むんだ?』

 

『しかたないでしょ、今はほとんどのクラスがRクラスを狙ってるんだから。今ここで私たちがいくわけにはいかない。実態の分からない相手に戦うわけにはいかないしそれにもし勝ったとして次は私たちが他のクラスから狙われえる。今は時期を待つべきよ』

 

『って言ってもよ。もうみんなやる気満々だぜ』

 

僕は疑問を浮かべつつもその光景を見続ける。成る程、これが先程、春咲さんが話していた問題と言うやつなのか。

 

 

「このように他多くのクラスが私たちのクラスを狙っているのです。ですがこのクラスの試験召喚戦争についての特権はご存知ですよね。その中に“拒否権”というものがあったはずです」

 

もちろん知ってる。普通は試召戦争を申し込まれたら絶対受けなければならないのだが、Rクラスだけは一方的に拒否できるというものだ。

 

「吉井君の考えている事は分かります。じゃあこの拒否権を使ったら別に問題ないんじゃね?ってところですね。ですがそれじゃあ駄目なんです」

 

なんでだろう?外のクラスにはRクラスに拒否権があることなんて知らないだろうが、もし試召戦争を申し込まれてもその場で断れば問題ないはずだ。というか無意識のうちに外のクラスなんて使ってしまっている。このままだと僕も引きこもりの仲間入りになるかもしれない。

 

「ええ、たしかにRクラスが試召戦争をする事はなく私が外に出る必要性は無くなります。ですが、それではRクラスの威厳が無くなってしまうのです。特にこの文月学園ではより賢いものが偉いといっても過言ではありません」

 

言いすぎな気もするが確かに文月学園でバカはひどい扱いを受ける。観察処分者の僕も例外ではなく、かなり苦労したものだ。

 

「Rクラスは一番上のクラスですが情報が遮断されています。よってRクラスがどのくらいのレベルか外の人たちは知る由もないのです。そんな中、拒否権ばかりを行使していては()められる可能性があります。一度くらい力の差を見せ付ける必要があるのです」

 

なるほど。まとめるとRクラスに興味を持った生徒たちが増え、二年生全体にRクラスに試召戦争を挑もうという風潮が出来た。できれば春咲さんは外に出ることなくこの問題を解決したいのだが、拒否権を使うとRクラスが嘗められ威厳を保てなくなる可能性が出てくる。と言ったところかな?僕は別にRクラスの威厳なんてどうでもいいんだけど春咲さんのことだ何か考えでもあるんだろう。たぶんこの問題の解決を手伝わされるために呼ばれたんだろうけど僕に出来る事なんてあるのだろうか?

 

「この風潮をなくすために考えた策が一つあります」

 

流石、春咲さんもう解決策を用意してるなんて天才の名は伊達ではない。

 

「Rクラスの一つ下のAクラスを叩き潰します。それも圧倒的な差で。RクラスとAクラスが天と地ほどの差があることを分からせるのです。それで他のクラスも戦意を喪失するでしょう。この方法なら私は一回しか外に出るだけですみますからね」

 

なるほど。これならRクラスの威厳が保たれるどころか上昇していくはずだ。けど……。

 

「そうだねこれなら全てがうまくいく。でもこっちは2人、相手はその数十倍の人数だよ勝てるとは思えない。それにもし勝てたとしてもぎりぎりの戦いになるはずだ。2人で勝ったから力の差は見せ付けられるけど実質クラスの自体の差はそこまでAクラスと変わらないってことになるよ」

 

「そうですね。私の点数は学園でかなり飛びぬけていますが確かに2人で勝つのはギリギリです。もし勝ってもクラス同士の差はないと判断されるかもしれません。ならわざとギリギリの戦いをしてあげたと相手に認識させればいいのです」

 

意味の分からない僕は少しだけ首を横に傾けた。

 

「どう言うこと?といった顔ですね。説明してあげましょう。まずこの作戦ではRクラスの情報非公開っぷりを利用します。今回は人数構成の非公開これを使います。試召戦争前にRクラスの人数構成が二人以上と相手に記憶させそこから、わざと私と吉井君だけで試召戦争に参加、そして勝利した。そう思いこませればRクラスが全力を出さないでAクラスに勝利したということになるでしょう?」

 

確かにそれなら全力を出さないで、それに二人でAクラスに勝ったということでかなりの差を見せ付ける事ができる。僕は無言で頷く。春咲さんはそれを確認すると言葉を続けた。

 

「Rクラスが二人以上と思わせる作戦はもう考えてあります。後は試召戦争に勝つことですが、それには吉井君の点数を上げる必要があるのです。もう少しあなたの点数が上がれば必ず勝つことを約束します。ですからこの作戦のために協力してくれませんか?」

 

クラスメイトが、春咲さんが僕の力を必要としてくれている。その事がどうしようもなく嬉しい。喜ばしく感じて仕方がない。

 

「当たり前だよ。その試召戦争、絶対勝とう!」

 

自分のクラスの事だ。僕が協力するのは当然のこと。それに一人っきりのクラスメイトの頼みを断れるはずが無い。

 

こうして僕と春咲さん、Rクラス二人の意志が初めて重なった瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、勉強は春咲さんが見てくれる事になった。毎日顔を見せてもいいと言っていたのは多分自分の授業を受けろって意味だと後から気がついた。早速この二時間後から春咲さんの授業が始まるようで、それまで解散となったのだが、そこで僕は自室に戻る際に部屋に入ってから昨日学園長にメールしていない事に気がついた。急いで机に駆け寄り、パソコンを起動させると案の定メールが来ていた。内容は──

 

『二日目で約束を破るとはいい度胸さね。それとも約束も守れないバカなのかい?いや、バカだったね。とにかく昨日の分もまとめて報告を寄越しな』

 

相変わらずむかつくババアだ。けど事実今回は僕が悪い。素直な謝罪の後、これまでの出来事を報告した。

 

『ほお、何やら面白い事になってきたね。そしてよくやった吉井。このままなるべくあいつとかかわりを持ちな。あとその試召戦争が終わったら報告は毎週金曜日で十分だ。このまま頑張りなクソジャリ』

 

学園長は人を褒めるような人じゃない。そうなると今回の出来事は結構嬉しかったのかもしれない。それに報告のペースも落としたという事はもうそこまで報告する必要も無いってことかな?とにかくかなり歩みを進めたってことだ。

 

学園長に報告し終わった後、Aクラス全員生徒全員の資料を春咲さんから貰ったので目を通すことにした。と言うかこんなものどこから出してくるんだろう?でも流石Aクラス。皆、点数がかなり高い。本当に僕たち二人だけで勝てるのだろうか?ふとそんな疑問が脳裏に浮かぶ。後で春咲さんの点数を聞いてみよう。

 

それから大雑把に資料を読んだ時にはもう約束の時間になっていたので教室に向かった。既にに春咲さんは教室にいた。

 

「では授業を始めましょう」

 

恐ろしく綺麗な笑顔で彼女はそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いきなりだが、僕と春咲さんが作戦を立ててから一週間たった。この一週間をまとめると勉強して食べて寝る事しかしてない。朝六時起床、朝食を食べて勉強、昼食を食べて勉強、夕食を食べて勉強そして十二時に寝る。これを七回繰り返した。いつもほとんど勉強していない僕にとってはかなりの苦痛だったが、ほんの少しだが春咲さんともコミュニケーションがとれて楽しい日々でもあったが、まぁすぐ自分の部屋に引きこもるのであくまでもほんの少しだ。そして今日も今日とて一日分の授業が終わるのであった。

 

 

「あ~疲れた」

 

背伸びをして体をほぐす。

 

「お疲れさまです。そして実は今日は試召戦争までの最後の授業だったのです」

 

「そうなの?」

 

「はい。これ以上待つとRクラスが立て続けに試召戦争を挑まれてもおかしくありません。明日、RクラスはAクラスに試験召喚戦争を申し込みます」

 

「いよいよだね。で、Rクラスが二人以上と思わせるのはどうするの?人に頼むとか?」

 

「いえ、頼むとしたらこの学校外の人に頼まなくてはいけません。そこまでして人数偽装するよりもっと簡単な方法があります」

 

「どんな方法?」

 

「吉井君に女装してもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………E(イー)?」

 

 

 

 

 

 

E(イー)?じゃないです。アルファベットになってますよ。あたりまえです。一人を二人に見せるには一人二役しかありません。ですが吉井君なら他の男の人に化けるより女装の方が似合いそうだし、

何より都合がいいのです」

 

「そんな!無理だよ僕が女装なんて!絶対ばれるよ!」

 

すると春咲さんはニヤリと珍しく笑みを浮かべてこう言った。

 

「安心してください。こう見えて私はメイク得意なんです。それに対話も相手の言葉をマイクで拾って私がイヤホンを通してしゃべります。それを吉井君は真似してじゃべれば言いだけです」

 

だめだ。言い逃れできない。僕は膝をがくりとついて崩れ落ちた。

 

「では明日がんばりましょう。おやすみなさい」

 

そう言い残し春咲さんは教室から住居に戻って行った。いやもう様々な感情と言うか、自分の中にあったはずの何かが今日でごっそりと持っていかれた気がする。そして試召戦争後の僕自身が心配だと、要らぬ不安を抱えながら僕は自室に戻り眠りについた。

 

 

 

 

 

 

朝起きて朝食を食べる。ちなみにだが朝、昼、晩全部僕が春咲さんの分も作っている。まぁ、お世話係なんだから当たり前か。そしてただいま絶賛メイク中である。春咲さん楽しんでないか?できれば僕だと一切ばれないような感じにしてほしい。と言っても、軽めにしかしないって言ってたから無理かもしれない。だが三十分ほどでメイクが終わり、茶色のロングウィッグを付けたら鏡の中に女神がいた。

 

 

「「……………………………。」」

 

 

え?これもしかしたら僕?面影が全然ないんだけど。もう別人って次元を超えてる。超絶美人お嬢様って感じだ。春咲さんメイク上手すぎるでしょ。

 

 

「…………綺麗ですね。私、自分の見た目に結構自信あったんですけど、あなたを見てその自信を無くしそうです」

 

いや、鏡の中の僕も恐ろしく綺麗だけど僕からしたら絶対春咲さんの方が綺麗だと思う。とまぁ僕のそんな心情を知らない春咲さんは、若干むくれながらも話を続けるために口を動かす。

 

「まぁいいです。とにかくこれならば貴方が吉井明久だと絶対ばれることはまずありません。ではAクラスに試召戦争を申し込みに行ってください。このマントを着てマイクとイヤホン、あとカメラも付けて」

 

説明しよう。今更だがRクラスだけ制服の色とデザインが違うのだ。他のクラスは基本、男子は白色と青色、女子は白色と赤色をベースとしてブレザーは黒で統一なのだが、Rクラスの制服は男女共に黒色と白色でブレザーは白色である。デザインもかなり違う。スカートに関してはなんかふわふわしている。少しだけゴスロリチックだ。そしてRクラスはフードつきのマントも着用する事が出来る。ちなみにこれも黒と白の二種類から選べる。何故マントを着用できるルールを加えたのかと聞いたら試召戦争の時、姿を隠せるためらしい。当日は二人とも仮面をつけて顔を隠すとか。もうここまでくると、(はた)から見たら完全に中二病である。

 

「あっ、待って下さい吉井くん。その前にこのお薬を飲んでください」

 

僕が教室から出るために、外の廊下へと通じる扉に向かったのだが、その時春咲さんから呼び止められカプセル状の薬を手渡された。

 

「なにこれ?」

 

「これは声を変える薬なんですよ。ここまでするんだったら徹底的にやるべきです。効力は約一時間しかないので、そこは注意してください」

 

僕は受け取った薬を口に放り込んで飲み込む。

 

「あ~。おっ、声が変わった」

 

薬を飲んでしばらくすると、僕の声は女の子らしい綺麗な声に変わった。不思議な薬もあるものだ。いや、これも恐らくは春咲さんの発明品なのだろう。ならば流石は春咲さんと言うべきか。

 

「では行ってらっしゃい」

 

「うん、行ってくるよ」

 

そう言って約十日ぶりに僕は教室から外に出る為の扉を開けた。

 

 

 

 

 

「ん~。ほんと久しぶりだな」

 

外に出てすぐ、僕は背伸びをして肺一杯に空気を取り込む。やっぱりと言うべきなのか、久しぶりの外は気持ちが良かった。

 

「もしもし、聞こえますか?」

 

宣戦布告の前に、そんなのんびりとしている僕を嗜めるように耳に着けているワイヤレスイヤホンから春咲さんの声が聞こえる。

 

「うん、聞こえるよ。カメラとマイクの調子はどう?」

 

「完璧です。そのままAクラスに向かってください。今は朝のショートホームルームの時間のはずです。いいですか?私がしゃべった事以外は話したら駄目ですよ。そして貴方は日本企業のお嬢様、麻名明葉(あさなあきは)、通称アキちゃんなんですから。それに似合う振る舞いをしてください」

 

「…………何?その通称アキちゃんって?」

 

なぜか打ち合わせで決めた設定に無かったものが追加されている。

 

「私が付けました。吉井君が女装してる時、私はアキ、かアキちゃんって呼びます。かわいいでしょ?」

 

「…………うん。そうだね」

 

なんか段々と僕が壊れていく気がする。そんなやり取りをしている内にAクラス教室に着いてしまった。さて、がんばりますか。ここから僕は……いや私は麻名明葉として周囲に認知されなければならない。これが成功しないと作戦は台無しだ。どうやらAクラスは今、今日の予定について担任の高橋洋子先生から説明を受けている所のようだ。ふぅ、緊張してきた。

 

「私はいつでもいいわ、春咲さん」

 

これは吉井明久が麻名明葉となってる時に春咲彩葉を呼ぶ名前だ。

 

「さっそくなりきってますね、アキちゃん。その調子ならきっと役者の才能もありますよ。私もOKです」

 

「行くわよ」

 

僕は大きく息を吸って、ゆっくりと吐いた。さて、行きますか。

 

「失礼します」

 

そう言って僕は目の前にある扉を開け放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんか今回、文章もひどいしオリ設定もひどいしやばいですね(笑)
いつか修正します。そんな駄文にもかかわらず読んでくださってありがとうございます。

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