今日中に投稿したかったのですが、これから所用で出掛けるので、未完成ですが取り合えず投稿します。
描写が足りなかったり、説明不足だったり、文法がおかしいことが多々あると思います。
明日、帰ってから完成させますので、ひとまずはこれで場を忍んで下さい。
高嶺君がRクラスに来てから早いもので、既に数日が経っていた。高嶺君は自分から人に関わろうとしないようで、僕が呼びにいかないと食事すらも一緒にとってくれない。いや、呼びに行くと言うよりは無理矢理連れてきている感じだが。だけど高嶺君は別に人見知りと言うわけではなく、むしろ人の性格を読み取り、その人物がどういう人間なのか見定めてから接している節がある。
人と関われるのに、関わらない高嶺君。人と関わりたいのに、関われない春咲さん。
二人は少なからず対照的な位置にいるのかもしれない。まぁとにかくRクラスが四人になってから、ガラリとその雰囲気が変わったと言うことだ。そう。今日も今日とてRクラスの日常が僕の目の前で繰り広げられていた。
お玉と鍋ぶたがぶつかり合うと言う日常が。
「てめぇ!ワーメルト!昼食を用意しろって言ったのに、なんでキャットフードが出てきやがった!そもそもなんでそんなもん持ってやがる!」
「はて、私は貴方のご要望にお応えしたまでですが?あっ、もしかしてそんな高価な物は口に合いませんでしたか。待っててください。今、グランドで雑草を拾ってきますから」
メルさんの罵倒が終わるや否や、鍋ぶたのブレードが彼女に飛んできた。
「ああ感謝するぞ、この雌豚野郎。だが別にそのまま帰ってこなくていいぞ。お前にはこの教室は狭いだろ。お外で駆け回る野良豚がお前にはお似合いだからな」
メルさんに飛んできた鍋ぶたブレードが受け止められ、そのままカウンターとばかりにお玉の剣線が高嶺君を襲った。
「ちょっと止めてください!二人とも朝から元気すぎますよ!」
そんな調理器具のハリケーンを止めるために春咲さんは小さい声を振り絞って叫んだ。その頑張りに成果あったようで、ピタリと二人の動きは止まった。
「……………二人が仲悪いのは分かりますが、なるべく喧嘩はしないようにしてください」
もはや喧嘩をするなとは言わない。いや、言っても無駄だと春咲さんは分かっているのだ。
「………………まぁとにかく二人とも、席に座ろうよ。こうして四人で集まって食事をするなんて初めてなんだから」
僕は二人にそう言と、今だにらみ合ってるものの、ゆっくりと席に座った。
「毎度の事だけど、どうにかならないのかな?」
僕はまだ話の分かりそうなメルさんにチラリと目を向けた。メルさんはそれに気づいたようで、澄まし顔のまま口を開いた。
「私としても、明久様にご迷惑をお掛けしたくないのですが私はメイドです。この教室の掃除すると言う義務が私にはあります。それがとんでもないクズだとしても」
だ、駄目だ。メルさんでさえ話にならない。僕は藁にもすがる思いで、今度は高嶺君に目を向けた。高嶺君もそれに気がついたようで、明らかに不機嫌になりながらもゆっくりと口を開いた。
「別に俺はこの
高嶺君がそう言い終わるやいなや、二人は再びがたりと立ち上がり、戦闘体制に入った。先程の春咲さんの説得はなんだったのか…………。
もうこのまま放っておこうかと考え始めた時に、アラームのような高めの警報音が教室に鳴り響いた。
「春咲さん、これは?」
こんなこと始めてだったので、僕は思わず春咲さんに説明を求めた。しかし春咲さんは手元にある端末機に目を落として何も言わなかった。しかし、しばらくしてふと春咲さんは呟いた。
「………………どうやら、教室の入り口が騒がしいようです」
春咲さんはあれから一旦部屋に戻っていき、少し大きめなノートパソコンを持って戻ってきた。
「あれは教室前の扉に、人間等の動物が五分以上いると鳴る防犯ベルのようなもの物なんです」
「と言うことは………。」
「はい。今現在、教室の入り口に誰かがいると言う事です」
教室に何か用事があるけど、扉が開かないから
「おいおい春咲。お前、そんなもんまで付けてるのか?用心深いとかそう言うレベルじゃねぇぞ」
確かに、もっともである。
「ですが、これなら安全でしょう?」
確かに、でもやりすぎである。
「それで、五分以上も教室の扉でうじうじしてるシャイ野郎は一体どんなやつなんだ?」
高嶺君は面白げに顔を歪ませてそう言った。正直、凄く怖い。
「少し待っててください。もうすぐ準備ができるので」
春咲さんは立ち上げたノートパソコンのキーを押しながら答える。恐らくあのパソコンで外の様子を探ったり、機械を通して会話したり出来るのだろう。僕が初めてこの教室に入った時のように。
「……準備が出来ました。扉の前の様子を映しますよ」
パチリとパソコンに大きな黒い画面が広がり、そこから見覚えのある景色が映った。
まぁ当然、Rクラスの扉の前なのだがそこには二人の男女が神妙な赴きで話し合っていた。
「何かを話し合ってるね」
「ですが明久様、これは話し合ってると言うよりは喧嘩をしていると言った方がいいのでは?」
「でも喧嘩っぽいですが、男の人が一方的に叱られてるようにも見えますよ」
確かに。春咲さんの言う通り、男の人がひたすら女の子に叱られてるように見える。
浮気がばれた夫のようだ。
それにしてもこの女の子、カメラの位置上仕方なく上から見てたからよく分からなかったけど、どっかで見たような…………。
「…………ちょっと待って、この女の子、小山さんじゃない?」
「小山さん……確かCクラスの代表でしたっけ?」
「そうだよ!それに多分、男の方は根本君だ!」
「彼は確か、Bクラス代表でしたね。なぜ両代表がこんなところで……。」
この二人がこんな所で言い合う理由……駄目だ思い付かない。
「……話しかけてみる他無いようですね」
春咲さんはそう言って、パソコンと一緒に持ってきた小型マイクを取りだした。
「今からこれを使って二人に喋り掛けます。私がエンタキーを押している間は、加工されたこちらの声が向こうに届きます」
なるほど、その間に話したい人は話せと言うことか。
「まずは私が話しますので、もし替わりたければ言ってください」
そうして春咲さんはキーを押しながら、話し始めた。
「そこの両代表方、私たちの教室の前での痴話喧嘩は止めてくれませんか?」
…………春咲さん、中々に言うね。まぁ、前からSっ気があるとは思っていたけど。
『なっ!どこから声が』
二人は驚くと同時に辺りを見回した。
こう見ると少し面白く感じでしまう。
「こちらです。扉からですよ」
春咲さんの言葉を受けて、二人はこちらの方へと目線を移した。
『まさか、教室内部からこっちに話しかけてるの?』
「正解です。流石はCクラス代表、小山友香
さんですね」
『何それ、馬鹿にしてるの?』
小山さんの目付きが鋭くなる。
「俺からすれば十分、馬鹿だっての」
「高嶺聖、貴方は黙ってて下さい」
後ろでまた喧嘩が始まりそうだったが、高嶺君は意外も意外、そのまま素直に押し黙った。
「いえ、馬鹿になどしていませんよ。素直に感心しただけです。それで、なぜお二人はこんな所で言い合いなどしていたので?私たちからすれば非常に迷惑なので、話を聞かせて貰えれば嬉しいのですが」
春咲さんがそう言うと、小山さんと根本君の二人はチラリと一瞬目を合わせた。
『…………いいだろう。僕たちからしてみれば、君が出てくれたことは好都合だからね』
『………………と言うことだ。それで、僕と友香はもめていたんだ』
なるほど。そう言う事情があったのか。
『…………根本君。その友香って呼ぶのは止めてって何回も言ってるでしょ』
『そ、そんな……。』
…………二人の間に何があるのかは分からないが、根本君の話をまとめると、どうやら二人は同時に試験召喚戦争を申し込もうとして鉢合わせ。それで、お互いに譲り合って喧嘩になったと言うことらしい。
「ん?譲り合ってって普通は皆、先に試召戦争したいんじゃないの?」
「馬鹿かおめぇは。逆だ。自分達が戦う前に戦ってくれりゃ、戦力の把握もできるし、場合によっちゃ相手の点数を減らしたままで試召戦争に挑めるだろ」
僕の疑問は高嶺君の説明で解消された。
「それにしても意外です。Cクラスはいずれ試験召喚戦争を仕掛けてくると思っていましたが、Bクラスはそんな動き全くありませんでしたから」
確かに、小山さんにはちょくちょくだけどそんな発言をしてた。でもBクラスはそんなこと全然無かったはずだ。何が目的なんだろうか?
「今、考えても情報が少なすぎて分かりません。とにかく、今は目の前の問題の解決を急ぎましょう。と言っても、もう考えてあるんですが……。」
恐ろしい頭の回転率だよ春咲さん。
でもどうするのだろうか?
春咲さんはくるりと後ろで立っているメルさんに向かい、とんでもないことを言った。
「メルさん。学園長に繋いで下さい。これから全校集会を開きます」
この大きな体育館に学年問わず文月学園の全生徒、が集められた。こうして上から見ると、とても盛大に見える。
「皆さん、静かにしてください!」
どこか聞いたことのある、男性の声がマイクを通して伝えられた。ざわめきだった体育館もだんだんと静かになっていく。どこかで聞いた声だったが、誰だったかな?
「こうして集められたのは、第二学年のRクラスが貴女方に纏めて聞いてもらいたい話があると言うことで集められました」
先程と同一の声でそう続けられた。
それと同時に体育館も再びざわめきだった。
「静かに!ではRクラス生徒の皆さん、どうぞ」
僕たち四人は、コートに仮面と言うお決まりな格好で、マイクを受け取った春咲さんを筆頭にそのまま前へと出た。と言っても、体育館に掲げられたモニターに僕たちの姿が映っているだけなので、決して生身で対面している訳ではない。
「突然、こんな呼び出しをしてすみません。ですが先程、私達で決めた新しい文月学園のルールを発表、ないし説明するたには必要だったのです」
またもや、ざわざわと話し声が聞こえ始めるが春咲さんはお構いなしに続けた。
「Rクラスは私達、第二学年にしか存在しません。さらに、Aクラスでさえ点数が雲泥の差と言うべきものです。これでは、元来この文月学園の特徴である試験召喚戦争による可能性と、価値を酷く損なわしていると私達は考えました。よってーー」
春咲さんは少し行きを吸って、大きめな声でこう高らかに宣言した。
「Rクラスにおける試験召喚戦争では学年を問わず、かつ連合での勝負を認めることとします!」
体育館がしんと静まり、春咲さんの声の残響が僕の耳に残った。
「簡単に言えば、第三学年にはRクラスが存在しないので、第三学年も私達Rクラスに勝負を仕掛けることができるようにしました。そして、私達と試験召喚戦争をする場合は、AクラスとBクラスを同じクラスと見なして戦える、つまりクラス同士のチーム戦でもいいと言うことです」
そのままの勢いで春咲さんは続けた。
「ルールはその場その場で考え、もし私達に勝った場合の戦後処理は、貴女方に任せます。じゃんけんなり、くじなりで決めてください」
そうすると、体育館には喜びの声をあげる者や、戸惑いを隠せない者、未だに状況を把握できていない者、様々な反応がこの広い体育館に拡がった。
「あ~あ~、ごちゃごちゃ煩せぇな……おい春咲、そのマイク貸せ!」
「えっ?はっはい!」
体育館の様子を見た高嶺君は、春咲さんからマイクを奪うようにして取ると、大きな声で怒鳴るようにして、声を出した。
「お前らの頭が足りねぇようだから俺が訳してやるよ!」
おいぃぃーーー!!高嶺君、いきなり喧嘩腰だけど大丈夫なの!?なんか嫌な予感しかしないんですけど!
「いくらてめぇら
案の定、駄目だったぁぁぁ!!もう完全に喧嘩売ってるよ!大丈夫なの、この状況?
………………いやダメっぽい。仮面の上からなのに春咲さんの目が死んでるのが分かる。
「おい、帰るぞ」
僕達は黙って高嶺君の後を付いていって、教室へと続く廊下へと戻って行った。
「…………高嶺聖、どういうつもりですか?」
メルさんが訝しげに質問した。
「あぁ?別に。こっちの方が面白いだろ?実験データも採集できるしな」
なんと言う理由。だが、面白そうだと言う点に少しでも共感を持っている僕は、既に高嶺君に毒されているのかもしれない。
「「「「Rクラスてめぇら絶対ぶちのめしてやる!!!」」」」
モニターから、そんな怒号が聞こえるまで僕はそう思っていた。