「ムッツリーニ。遅くなったけど、これが約束の物だよ」
「…………ご苦労」
「これで、島田さんの清涼祭限定チャイナ服姿の写真取引は、成立したことになるよね」
「………………ああ。いい取引だった。もしよければこれからも頼む」
「僕としてはちょっとかべんしたいかな」
「………………残念だ」
「…………そんなにアキちゃんの写真ってレアなの?」
「………………そんなにレア。言うならばウルトラレア。俺の手元でさえ、顔が写っているものは五枚程しかない」
「顔が写っていないのは?」
「………………100枚程」
「大分差があるね」
「………………仮面を被っているものが殆ど。」
「いつも被ってるからね」
「………………なかなか隙がない。どうも写真を撮られたくないように見える。何故だ……」
「それはえっと、あれだよ。そんな人っているじゃない?カメラを向けられるのが嫌いな人とか」
「………………確かにいるにはいる。だがそれにしてもガードが固い」
「ほら、お嬢様だから。何か事情があるんでしょ」
「………………そう言うものか」
「そう言うものだよ。それよりさ、最近の売上はどうなの?」
「………………中々儲かっている。勿論、一番は麻名明葉」
「顔が写っているのは五枚しかないのに?」
「………………正確に言うと違う。売に出しているのは四枚」
「一枚だけ残してるのか。」
「………………全部売るのは勿体ない」
「成る程。でも尚更その四枚だけでそこまで稼げないと思うけど」
「………………その四枚のレートがとんでもない跳ね上がりを見せている」
「そうなの?じゃあさ、例えば今、僕が渡した写真ならどのくらいになるの?」
「………………封筒の中身を確認していないから分からないが、顔が写っているのなら恐らく二~四万円」
「………………聞き間違いかな?今、万と言う単語が出てきた気がするんだけど」
「………………間違ってない」
「………………本当に数万円もするの?」
「………………予想では。現に今まで売ってきたものはその位した」
「…………驚きを通り越して、呆れちゃうよ」
「………………それだけこの写真が凄いと言う事だ」
「でもそんだけ高く売れるなら、焼き増ししたら大金持ちじゃない?」
「………………そんなことをしたら写真自体の価値が下がる。少ないからこそ希少価値がある」
「あっ、そっか。同じ写真が増えたら皆買っちゃうもんね」
「………………(コクン)」
「じゃあ数の少ないアキちゃんはともかくとして、他はどうなの?」
「………………二位は明久」
「僕が?」
「………………そう。合宿の時に言ったが、明久がRクラスとになってから、写真はよく売れるようになった」
「僕の写真なんて誰が買うのさ?」
「………………それは内緒。ムッツリ商会はプライバシーを厳守する」
「そう言えばそうだったね。なんか色々と腑に落ちないけど、まぁいいか」
「………………一つ言えることがあるとすれば、Rクラス生徒の写真は高値で売れると言うこと」
「でもRクラスで顔を知ってるのって、僕と麻名さんだけだよね」
「………………(コクン)。だから俺は他の生徒の正体を暴こうとしている。だが、全くと言っていいほど失敗に終わる。教室にすら入れない」
「あれだけセキュリティーが高かったら無理だよ」
「………………残念だ」
「僕も初め教室に入るときは苦労したよ」
「………………なぜだ?」
「えっとね、教室に入る前質問されたんだよ…………二百個くらい」
「………………災難だったな」
「まぁ、今では笑い話にできるからいいけどね」
「………………明久は口を開けばそれが笑い話になる」
「ちょっと、それってどういうこと!?僕の話が笑い話になってしまうほど下らないってこと!?」
「………………何故、分かった?」
「…………Rクラスになっても僕はそんななのか」
「………………気を落とすな。そこら辺は変わってないが、頼りになるようになった。見ていて安心できる」
「僕はFクラスを見ていて全く安心できないけどね」
「………………だが、それが俺達の良いところ」
「ははっ、そうだね。そうじゃなきゃ困るかも」
「………………ところで明久。この封筒の中身を確認させてもらう。明久の事は信用しているが、一応商売だ。」
「…………うん、まぁいいけど」
「………………では、拝ませてもらブハッ!」
「ムッツリーニ!」
「………………なぜ、こんなに露出が多い?」
「…………えっと、それはまぁ思い出したくもない恐ろしい事が……ってそんなことはどうでもいいんよ!早く輸血しないとムッツリーニが!」
「………………我が人生に、一片の悔い無し」
「………………ムッツリーニ?そんな、ムッツリーニィィィィィィィーーーーー!」