バカとテストと最強の引きこもり   作:Gasshow

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早くこの小説終わらせたい。
次回作書きたい。



新しい繋がり

強化合宿全体の説明が終わり、色々準備やら話し合いをした後、僕は自分がしばらくお世話になるであろう部屋に入った。中は綺麗に整頓されていて、広さも充分だった。教師は一人一部屋なので僕はこの部屋を一人で使える事になる。なんて贅沢なんだ。思わずごろっと寝転がって体を伸ばした。しかし、その瞬間にガチャっと僕の部屋の扉が開く。

 

「吉井、先に着いてたか」

 

入ってきたのは筋肉達磨でお馴染みのあの教師だった。

 

「鉄人!何でここに!?」

 

「西村先生と呼べ!」

 

頭に衝撃が走った。

 

「代理教師としてここに来たとは言えお前は生徒だ。教師としての役割が分からないことも多いだろう。だから今回はお前の部屋に俺が泊まることにした。感謝しろ」

 

「…………感謝します、西村先生」

 

血の涙を流しながら僕はそう言った。

 

「今日はもう特にやることは何もない。この部屋で夕食をとって寝るだけだ。明日は朝早くから職員会議があるからな。しっかり食べてよく寝るんだぞ」

 

「なんかお母さんみたいですね」

 

「お前の親だけにはなりたくないな。絶対苦労する。特に一年の時のお前には苦労させられた」

 

「そうでしたっけ?」

 

「ああ、今は知らんが少し前までのお前は筋金入りのバカだったからな」

 

むぅ、そこまでバカだバカだと言われるのは不本意だ。僕としてはただ単純に良かれと思ってとった行動なんだけど。

 

「僕ってそこまでバカでしたっけ?僕は確かにバカだと思います。だけど他の皆よりはマシだったと思うんですけど」

 

これを聞いた西村先生は一瞬ポカンとして大声で笑いだした。鉄人てこんな豪快に笑うんだ。

 

「がっはっはっは。多少勉強はできるようになったようだが、お前はバカなままだったようだな。Rクラスに入って変わったと思っていたが、根本の部分では変わっていなかったようだ」

 

鉄人がまじまじと僕の顔を見てきた。

むっちゃくちゃ怖い。

 

「安心しろ、いい意味で変わってないと言ってるんだ。別に直す必要はない。いや、多少直した方がいいかもな」

 

「どっちなんですか!?」

 

さっきから西村先生は何を言っているんだ?

 

「Rクラスに入って周りはお前が変わったと思っている奴がほとんどだろうな。俺のように。まぁ、俺はこうやって直接二人きりで話したからすぐ分かったが」

 

うん、やっぱりよく分からない。昔も今も僕は変わったつもりなどないんだけどな。そんなやり取りの間をしながら僕が西村先生と喋っていると、ふとノック音と共に扉が開かれて先生が入ってきた。いつ見てもパッとしない先生だ。

 

「失礼します。西村先生、吉井君。女子更衣室にカメラが設置されていると報告がありました」

 

しかし、布施先生から発せられた言葉はそれとは真逆のものだった。

 

「カメラ!?それって盗撮じゃないですか!誰がそんな事を?」

 

思わず叫んでしまった。

 

「分かりません。ですが一応通路を監視しておきましょう。ないとは思いますが、もしかしたら覗き犯がやって来るかもしれません」

 

流石に犯人もそこまでバカじゃないと思うんたけどな。そんな堂々とした覗きなんて誰がするんだろう?

 

「なるほど。では私が行きましょう。吉井、お前は部屋にいろ。何もなければ早めに戻ってこれるだろう」

 

そう言って西村先生は布施先生と見回りに行った。

しかし結局、西村先生は僕が寝る直前になっても戻ってこなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

強化合宿二日目の朝。教員によるミーティングが行われていた。

 

「…………というのか昨日起こった出来事です」

 

言い終わって布施先生が席に座る。今日の話は昨日行われた覗き行為についてだった。布施先生がいわく、女子風呂の覗き犯だと思われる生徒達が現れたらしい。その生徒達は堂々と正面から女子風呂に近づいたとか。なんてバカな奴等なんだ。

 

「事を起こしたのは坂本雄二を中心とした数人のFクラス生徒でした」

 

お前か雄二!座りながらずっ転けそうになった。前からバカだとは思っていたけどそこまでバカだったなんて。

 

「あのFクラスのことです。今日も覗きにやって来る可能性は大いにあります。なので女子入浴時には先生方に通路を監視していただきたいのですが、どうでしょう?」

 

そこに船越先生が口を挟んだ。

 

「そこまでするのなら、もういっそ女子の入浴時間内だけFクラスを部屋に拘束すればいいのでは?」

 

確かにそれなら確実に事件は起ることはないだろう。と言うかこれがベストだと思う。しかしこの意見に異を表したのは、まさかまさかの学園長だった。

 

「それは駄目さね船越先生。教師側が『覗きを阻止で来ないかもしれないので、Fクラスは女子の入浴時間内、部屋から出ないでください』なんて格好つかないだろう」

 

それに対し船越先生は確かにそうですねと言って席に座った。なるほど、教師側にもプライドと言うのがあるのか。

 

「それに今回は学力強化合宿さね。この事態を逆に利用する方がいい良いってもんだよ」

 

利用するとはどういうことだ?

 

「わざと女子浴槽にあいつらを向かわせるんだよ。奴等が浴室にたどり着くには試験召喚システムを使う事が必須となる。目的が何であれ、召喚獣を使って戦闘行う以上は勉強せざるを得ない」

 

なるほど、ババアも学園長という名前に負ているわけではないらしい。

 

「あとはそうさね。女子側にも防衛させれば一石二鳥になる。どうだい先生方?女子生徒にも防衛にまわってもらうってのは?」

 

これには多くの先生が納得し賛同した。僕もいい案だと思う。

 

「決定さね。高橋先生、女子生徒をどうにかして動かせる事はできるかい?」

 

「はい、任せてください」

 

その言葉が決定の合図だった。こうして女子風呂防衛には女子生徒本人達が参加することとなった。もう夏合宿二日目でこんな事態になるとは。先生方にお疲れさまですと、そう言いたくなる。いや、今は僕も教師だったか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今は各クラス自習の時間となっている。この時間での僕の担当はFクラスとAクラスの合同教室だ。史学についての疑問があれば、僕に質問をするという形になっているのだが……。

 

「吉井くん、ここはどういう経緯でこうなったんですか?詳しく教えて下さい」

 

「吉井、ここがよく分からないんだけど」

 

何故か姫路さんと島田さんに挟まれて質問攻めを食らっていた。右側には柔らかいものが腕に当たって、左側には絶壁が腕を擦っていた。これが格差というものなのか………。

 

「えっと、あの……。取り合えずさ、二人とも離れない?」

 

僕は困ったように二人に提案したが……。

 

「くっつかないと教えてもらっている時に分かりにくいじゃないですか」

 

「そうよ。見えづらいじゃない」

 

実は二人がこうも積極的になっているのは理由があり、自分達が吉井と他クラスになってしまい、吉井に会える機会が殆どないからなのだ。しかも吉井の所属クラスはRクラス。殆ど彼が外へと出る事がない今、この合宿というチャンスを二人供ものにしたいのだ。

 

「瑞希は頭良いからあんまり質問することないんじゃないの?」

 

「そんなことありませんよ。吉井くんの方が頭が良いですから聞きたいことは山ほどあります」

 

うむ、これ以上は普通に不味い。僕の理性的な意味でも、何かこう周りに広がってきている冷たい空気的な意味でも。

 

「いい加減にしろ島田、姫路。これでも明久は今、教師としての仕事をしているんだ。お前たちばかり独占してたら他の生徒が質問できないだろう」

 

雄二が自分の膝の上に座ろうとして来る霧島さんと格闘しながらそう言った。

 

「…………それもそうですね。仕方ないですか」

 

「…………むぅ」

 

二人は渋々と言った感じでボクの拘束を解いてくれた。

 

「雄二、ありがとう」

 

何とか霧島さんから膝の上を防衛することに成功した雄二に向けて僕は言った。

 

「まぁ気にするな。あと明久、俺も質問あるんだがいいか?」

 

「もちろん」

 

雄二が質問したところを簡単に説明した。

でもおかしいな。

 

「このくらいならさすがのFクラスでも皆知ってると思うんだけど、どうしたの雄二?」

 

雄二は憂鬱そうにしながら僕を見た。

 

「ああ、昨日は何かと大変だったからな。少しボケてるんだ」

 

「それって女子風呂を覗こうとして鉄人に捕まったってやつ?」

 

「ああそうだ。何で知ってるんだ……と言いたいところだが、まぁ教師として合宿に参加してるんだから知ってるのは当然か。実は捕まった後、英語で反省文を書かされてな。しかも廊下で正座という苦行を強いられながら」

 

なんという拷問だ。僕はそんなの絶対やりたくない。

 

「だからそんなに疲れてるんだね。残りの日程は大丈夫なの?」

 

「まぁ何とか乗り切って見せるさ、体力には自信があるからな。それはそうと明久。その事について教師どもは何か言ってなかったか?」

 

それって朝の会議の内容を言えばいいのだろうか?

 

「えっと、確か「吉井、ダメ」……霧島さん?」

 

僕が会議の内容を言おうとすると、雄二の隣に座っている霧島さんが阻止してきた。

 

「…………雄二は昨日の出来事で監視の目が強くなったか吉井を通じて聞き出そうとしてる」

 

「それって…………。」

 

「また覗きをするつもり。浮気は許さない」

 

「翔子待て!落ち着ぎゃぁぁああっ!」

 

霧島さんのアイアンクローが雄二に決まった。バキバキと音がしているが大丈夫だろうか?

 

「明久よ。質問があるのじゃがこっちにきてくれぬか?」

 

少し離れた位置に座っている秀吉が僕を呼んだ。

 

「うん、分かったよ」

 

僕は了承して秀吉の隣に座る。しかしそこで秀吉の質問に答えている間、正面に座っているムッツリーニがこちらにカメラを向けていることに気がついた。

 

「秀吉を撮ってるの?」

 

「…………いや、明久を撮っていた」

 

「僕なんかを撮ってどうするのさ?」

 

「…………明久がRクラスに入ってからは、明久の顔写真はわりとレア」

 

まぁ確かに普段は教室から出ないし、出たとしても仮面を被っている事が多いからそうと言えばそうなのかもしれない。

 

「でも僕の写真なんて秀吉の写真なんかと違って売れるわけでもないし、そんなことする必要はないんじゃない?」

 

「ちょっと待て明久!おぬし今なんと言った!」

 

しまった!秀吉にこの事がばれたら、今後、秀吉がカメラに警戒してしまうかもしれない!

 

「大したことは言ってないよ!ただ秀吉の写真は文月学園中で買う人はたくさんいるけど、僕の写真は買う人なんていないんじゃないのかなって思っただけだよ!」

 

「ムッツリーニ、どういうことじゃ!」

 

「…………さらば」

 

「消えた!どこにおる、ムッツリーニ!」

 

秀吉が勢いよく立ち上がった瞬間、ムッツリーニが煙と共に消えた。それを探し回る秀吉。あれ、おかしいな。上手く誤魔化せたと思ったんだけど。

 

「…………何故かえらく騒がしくなったわね」

 

そんな一騒動が終わった瞬間、ふと唐突に後ろから声が聞こえてきた。とっさに振り向くと秀吉の双子の姉、木下優子さんがいた。

 

「木下さん?」

 

「ええ、実は私も吉井君に質問があったんだけど、あれだけうるさいと聞こえないなと思って呼びに来たのよ」

 

未だに聞こえる雄二の悲鳴と、何故か便乗して騒ぎだしたFクラスの面々の声を聞きながら僕は納得した。

 

「ごめんごめん。直ぐに行こうか」

 

僕は一言謝罪して。Aクラスの女子が集まる机に僕と木下さんは向かった。席につき、そのまま木下さんの質問に答えていく。

 

「ということで、こうなったのはこれが…………どうしたの?」

 

僕は木下さんの質問に答えていたのだが、しかし木下さんは机ではなく、僕をじっと見てきた。

 

「よくそんなことまで知ってるわね」

 

「Rクラスだからね」

 

最近この台詞をいう機会が多い気がする。

 

「やっぱりRクラスに勝つのは、並大抵のことでは無理そうね」

 

それって、もしかして僕の実力を測っていた?

 

「そりゃ僕たちも簡単に負ける訳にはいかないからね。でもそれはお互い様だよ。Aクラスに勝つには僕たちだって苦労させられる。それは前回身に染みたよ」

 

「………………手を抜いてたくせに。」

 

木下さんは拗ねたようにそう言った。実際はRクラスの全力だったのだが、それを言うと、いろいろ台無しなので、僕は苦笑いでそれに答えるしかなかった。

 

「あっ、あの!」

 

すると突然、木下さんの近くの女の子が僕に声をかけてきた。

 

「質問が…………あるんですけど」

 

弱々しく僕にそういいながら、その子は遠慮しがちに手をあげた。何故か少し緊張しているようだった。

 

「えっと……私もです」

 

「そ、それなら……私も」

 

Aクラスの女子たちが次々と手を挙げていく。

 

「…………なら順番にまわっていくよ」

 

それから僕は鉄人が怒鳴りこんで来るまで、うるさいこの部屋で皆に勉強を教えることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、鉄人はまた見回りのために部屋から出ていった。しかし臨時で入った僕はあまりやることがないので外へと散歩に出ていた。折角自然が豊かな土地に来ているのだ。ずっと部屋に籠っているのは勿体ないと思い、そうしたのだった。僕はある丘の上へ来て、そこにあるベンチに座った。しばらくなんともなしに向こうの風景を眺めていたのだが、ふと草を踏む音が聞こえてきた。音が聞こえる方へ顔を向けると、そこにはメルさんがいた。

 

「遅くなりました明久様。これからは私も明久様のお手伝いと言う形で、この学力強化合宿に参加いたします」

 

事前に言っておいてくれていたので、来てくれることは知っていた。わざわざ僕を探してここにたどり着いたようだ。

 

「ありがとうメルさん。でも僕は今回臨時で入ったから仕事自体が少ないんだ」

 

現に今こうしてだらだらと時間を過ごしているわけだ。

 

「そうですか。ですが私にできることがあれば何なりとおっしゃって下さい」

 

メルさんは僕にそう言って微笑みかけてくれた。何て働き者なんだ。これぞメイドの鏡と言えるだろう。でもそうなると、折角来てくれたメルさんに悪い。そうだと僕は一つの案を思い付いた。

 

「…………ならさ。今僕、暇なんだ。だから話し相手になってくれないかな?」

 

「話し相手ですか?なるほど、かしこまりました。では何について話しましょう?」

 

「うーん。そうだ!メルさんについて教えてよ。春咲さんのことは僕も少しずつだけど分かってきた気がするんだ。でもメルさんについては今のところ凄いメイドさんって言うことくらいしか知らないからね」

 

二人しかクラスメイトがいないんだ。だからそのクラスメイトについて僕はいろいろ知っておきたかった。

 

「私について………ですか。あまり面白い話とは言えませんよ」

 

「いいよ。僕が聞きたいんだ」

 

「分かりました。ではお隣、よろしいですか?」

 

僕の座っているベンチの隣を指しているのだろう。

 

「う、うん。いいよ」

 

少しどぎまぎしてしまったが、僕は少し横にずれてスペースを開ける。

 

「では失礼いたします」

 

そう言い、メルさんは僕の隣に座った。風に乗って彼女からミントのような香りが鼻に届く。

 

「ではまず何から話しましょうか」

 

それから僕とメルさんはそれぞれ自分の事について話し合った。好きな食べ物。好きな音楽。趣味。それ以外にもたくさん話した。今思えば、彼女がクラスメイトとなってから二人でゆっくりと話したのはこれが初めてだった。僕はメルさんの今まで知らなかったことも知ることができ、それはとても新鮮で有意義な時間だった。

 

ふと空を見る。

星空が浮かぶ。

虫の鳴き声が耳に潜り込む。

僕は何故か懐かしい気持ちになった。何が僕をそうさせているのかは分からないが、心の中にある何かが僕に訴えかけてきた。いつの間にか忘れてしまっていた何かを思い出させるように……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日結局、僕はいつも通り教室の見回りをして、質問があれば答えるという簡単な仕事をしただけだった。昨日と違うことと言えば、担当がBクラスとEクラスの教室になったことと、僕の後ろにメルさんが着いてくることになったくらいだ。今は全クラスの勉強が終わり、夕食前の自由時間だ。僕はトイレに行きその帰りに廊下を歩いていた。すると正面に木下さんが見えた。いつ見てもそのしっかりとした姿勢が崩れることはなかった。

 

「あら、吉井君じゃない。ちょうどよかったわ。ちょっと分からないところがあって、明日聞こうと思っていたんだけど……今時間、大丈夫かしら?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

僕たちは適当に空いている部屋に入って、用件を終わらせた。簡単な、それも思ったより単純な問題だったので、時間はそうかからなかった。

 

「うん、ありがとう。助かった。やっぱりあなたの教え方は分かりやすいわ。さすが吉井先生」

 

「からかわないでよ。でも木下さんも凄いよ。教えたことをすぐ理解してくれるからとっても教えやすい。頭良いんだね。秀吉からも聞いてるよ。趣味が読書なんだっけ?尊敬するよ」

 

僕がそう言うと、木下さんは眉をピクッと動かした。

何故か少し汗もかいている気がする。

 

「…………えっと、秀吉は私がどんな本を読んでるってあなたに言ってた?」

 

なんて言ってたかな?確か…………。

 

『姉上が読んでいる本じゃと!?えっと……色んなものを読んどるぞ。こう………なんと言うか、男児による友情物語というか。そうそれじゃ!美少年同士が友情(?)を育む物語が好きなのじゃ!』って言ってたかな。流石、木下さん。なかなか感動的な本を読むね。

 

「美少年が絡み合う物語が好きなんでしょ?」

 

「…………吉井くん。申し訳ないんだけど、少し用事が出来たわ」

 

「えっ?あっ、うん。いってらっしゃい」

 

木下さんはなにかこう禍々しい雰囲気を醸し出しながら部屋を出ていった。どうしたんだろうか?まぁ考えても分からないものは分からないだろう。とりあえず僕も後を追うように部屋を出た。しかし出た瞬間に鉄人と鉢合わせた。いきなり目の前に仰々(ぎょうぎょう)しい巨体が現れたので、少しビックリしてしまった。

 

「吉井、こんなところにいたのか。探したぞ」

 

どうやら鉄人は僕を探していたらしい。

 

「学園長が呼んでいる。直ぐに行ってこい」

 

それを聞いた僕はこれから起こるであろう面倒ごとに、少しだけ溜め息が漏れてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

坂本雄二は自分の未来のために戦っていた。何がどうあっても女子風呂に行かなくては行けない事情があった。昨日はFクラスだけというのと、女子達が参戦してくるという奇襲があったので失敗に終わったが、今回はFクラスだけでなく、EクラスとDクラスもこの戦争に参加することになった。それだけでも前回よりマシだと言えるだろう。だが厳しい状況にあるのは変わりない。女子たちには数でも質でも負けている上に、教師達も参加してきているのだ。しかも女子風呂へと続くのはたった一本の道だけ。作戦を練ろうにも地形的に大した打開策など打てるはずもなかった。

しかし、それよりも問題なのは鉄人と呼ばれる、あの筋肉ゴリラの存在だった。あれを生身の人間一人が突破するのに必要な犠牲は二十人ほど必要となる。つまり、自分一人が女子風呂にたどり着くには二十人の男子生徒をそこまで持っていかなくてはならないのだ。

 

(明久がいればそれも問題なかったんだがな)

 

物理的干渉ができる彼の召喚獣なら、あの鉄人を倒すことも可能だったかもしれないのだ。しかし無い物ねだりをしていても仕方がない。とにかく今は戦争中だと雄二は頭を切り替えた。

 

「全員聞け!これから一点集中でこの場を突っ切る!俺の後に続くんだ!」

 

激しい戦闘が繰り広げられられ味方が一人、また一人と散っていく。それでも雄二達は少しずつ、しっかりとゴールへと近づいて言った。だが、ふと雄二は異変に気がついた。

 

(何故か後半にいくにつれて女子たちの防衛戦が緩くなってやがる。…………まさか!)

 

気がついた時には遅かった。目の前の女子達の壁がパッカリと左右に割れた。

 

「雄二、これはどういうことじゃ!?」

 

「…………可能性としては考えていた。もしかしたら奴等が出てくるかもってな。秀吉、どうやら俺たちは、少しやり過ぎたようだぜ」

 

雄二が冷や汗を流しながらそう言った。目の前に視線を向ける。割れた女子達の壁から二人の人物が歩いて出てきた。二人とも全身を包む純白のマントをしており、一人は“犬”の、一人は“羊”の仮面を付けていた。

 

「…………出てきやがったな。Rクラス」

 

雄二は今回の戦争で最も困難となるであろう障害を見据えてそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーおまけーーーーーーーーーーーーーーーー

 

《自由時間に明久が優子と話していた時》

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………………………………。」

 

「………………………………………………。」

 

 

 

 

「………………………………………えっとだな。お前は誰だ?」

 

「申し遅れました。わたくし、明久様にお仕えしていますメイド。ワーメルト・フルーテルと申します。これでもRクラスに所属させていただいております。以後お見知り置きを」

 

「おっ、おう。 西村宗一だ。この学園で教師をやっている」

 

「あなた様があの鉄人様でしたか。明久様からよく話しを伺っております」

 

「…………吉井ぃぃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最近急に忙しくなってきて大変です。
まだ小説を書く時間はあるので投稿は普通にできますけどね。
予定としてはまだ結構続くので、このペースだと完結するのはいつになることやら。
どうでもいいことですが、最近また様々な二次小説を読むことをし始めました。分かったことは自分の二次小説がいかに酷いかということと、小説は人を元気付けることができるということですね。自分の小説もちょっとした現実逃避くらいになってくれたら嬉しいです。
あとハッピーエンドとバッドエンドをどちらにするかですが、次の話を投稿するまでを期限としたいと思います。
まだ受け付けているのでよければまた。
あっ、一応言っておきますが、アンケートだけにお答えする場合はお手数ですが活動報告の方へコメントしてください。
後書き長い!笑

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