バカとテストと最強の引きこもり   作:Gasshow

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このssの唯一の見所は、他のssには無い展開だと思っています。それ以外は特に何もない普通の二次作品。


初体験

人生とは様々な経験をするものだ。長く生きれば生きるほど珍しい出来事に出合い、それは自分の糧になる。一番最近あった大きな出来事と言えば、僕がRクラスに入ったことだ。本来Fクラスに入る予定だった僕は春咲さんのお陰でここにいる。僕の周りにいる人達も一つはあるはずだ。自分の人生を変えた出来事や、自分しか体験してないと思えるような経験を。まぁそんな面白味もない話を長々と語っているが、現在進行形で僕は今そんな出来事に立ち会っている。まさか自分がこちらの視点でこの行事に参加することになるとは思わなかった。切っ掛けはそう、僕の携帯電話にかけられた一本の電話から始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、僕は朝から春咲さんと向かい合い座っていた。教室の机ではなんてことのない、いつもの日常がくり広げられていた。

 

 

 

 

 

 

「王手です」

 

「…………また負けた」

 

僕は今、春咲さんと将棋をして遊んでいる。この勝負で僕の十連敗目が決定したのだ。

 

「飛車に角、金銀までぬいてるのに勝てる気が全くしない」

 

「将棋は私の得意分野ですから」

 

「そりゃ勝てないわけだ」

 

あの春咲さんの領分で勝負するなんて無謀にもほどがある。

 

「少し休憩にしましょう」

 

春咲さんがそう言うと、待っていたかのようにメルさんがお辞儀をして冷たいレモンティーを置いてくれた。

 

「それにしても、春咲さんにもメルさんにも十連敗するとはね」

 

「明久様が全力で勝負して欲しいとおっしゃったので自分なりに全力を出させていただきました。ですがその私も彩葉様に十連敗していますので」

 

「結局春咲さんの一人勝ちか。いつか一勝はしてみたいな」

 

「ふふっ、そう簡単には勝たせませんよ」

 

普通でしかし暖かな、そんなゆっくりとした時間を三人で過ごしているとーー

 

「ん、誰からだろう?」

 

僕のポケットから着信音が鳴った。僕は二人に一言いってから離れて電話にでる。

 

「もしもし、どちら様ですか?」

 

『私だよクソジャリ』

 

僕の精神力が一気に持っていかれた。

 

「…………何の用ですか、学園長。」

 

僕はあからさまに嫌そうな声で言った。なんでクソババアが僕のケータイの番号を知ってるんだよ。

 

『あんたに頼みがあってね』

 

「学園長の頼みなんてろくなものじゃないと思うんですけど」

 

『否定はしないさね。まぁ取り合えず聞きな』

 

そう言って学園長は僕のことを無視して喋り始めた。

 

『あと一週間後に学力強化合宿ってのが二年生の間で行われるだろう』

 

「確かにありますが、Rクラスは参加しないって言ったと思うんですけど」

 

『確かに聞いたさ。だが今回の合宿にどうしても来れない教員が出てしまってね。その教員は史学の担当教師なんだよ。だから吉井、お前がこの教師の代わりとして合宿に来な。』

 

「……………………は?」

 

『お前が代理教師として合宿に参加しろって言ってるんだよこのクソバ。』

 

「はぁぁあぁーーーーーーー!?」

 

僕が代理教師だって!?あり得ないだろ!そもそも生徒が代理教師なんてどうかしてる!

 

『不思議なことに、今現在あんたの日本史と世界史の点数は教員達と同等かそれ以上の成績を納めてるからね。今回の合宿はギリギリの教員人数だから、一人でも欠けると他の教師たちの負担が大きくなってしまうってことだよ。だからあんたに行ってもらいたいってわけさ』

 

先生達も大変なんだなと他人事に思った。

 

「いいんですか?僕はこの学園の生徒ですよ」

 

『このクラスは生徒側と言うよりは学園側。特殊な位置付けだから、さして問題はないさね』

 

だとしても僕は嫌だ。なんでわざわざ泊まり込みで勉強をしなくちゃならないんだ。ここは面倒だし断ろう。

 

「そうですか、でも僕は断わりま…『犬小屋』ありがたく受けさせていただきます」

 

権力とはなんて恐ろしいものなんだ。これは明らかに職権乱用だ。

 

『そうかいそうかい。なら詳細はまたメールで送るから、つもりだけはしておきな』

 

そう言って学園長からの電話が切れた。

 

「………………………………。」

 

何も聞こえない、何も考えなかった。

取り合えず叫んでおこう、心の赴くままに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソババアァァァーーーーーーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学力強化合宿一日目が始まった。僕は春咲さんとメルさんに別れを言って教室を出る。二人とも快く了承してくれて準備まで手伝ってくれた。メルさんも後から来てくれるようで、春咲さんがそうするように言ってくれた。まぁそれで、何だかんだ職員室の前に来ているのだが…………。

この職員室の扉から発せられる圧力が凄い。僕が問題児だからと言うのもあるだろうが、大半の学生にとって職員室と言うものは大体そうだ。このアウェー感が半端ではない。一旦落ち着いて深呼吸をしよう。ゆっくりと深く息を吸ってーー

 

 

 

 

 

「吉井、こんなところで何を立ち止まっているんだ」

 

「ブフッ!」

 

思いっきり吐いた。

 

「鉄人!」

 

「西村先生と呼べ!」

 

ゴン!と頭に軽い拳骨が落ちる。いててと僕は頭をさすった。

 

「こうして話すのは久しぶりだな」

 

相変わらず体に響く低い声だ。

 

「そうですね。試験召喚大会の時に顔は何回か見ましたけど、こうして話すのは僕がRクラスの生徒になる時以来ですね」

 

「お前が問題を起こさなくなったからと言うのもあるだろうがな。俺としては嬉しい限りだ」

 

僕はこれに、ハハッと苦笑いで返す。

 

「話は学園長から聞いている。早く中に入れ。もうすぐ会議が始まるぞ」

 

「はい」

 

僕は鉄人に背中を押される形で中に入る。しかしこれは、この学園に来て一年は経つが未だに慣れない風景だ。しかし、中には見慣れた二年生の授業を受け持っている先生たちが勢揃している。この違いがなんとも僕を支配する不安にさせる。僕はふと辺りを見回しても、朝早くに集まっているので他の学年の先生たちは見当たらない。

 

「遅かったじゃないかいクソジャリ。さっさと席に着きな」

 

学園長が入ってきた僕を見て言った。僕は適当に空いている先生の机に座った。今までに感じたことのない雰囲気に落ち着かずそわそわしてしまう。

 

「ではこれから学力強化合宿についてのミィーティングを行います」

 

前に立っている高橋先生の声で先生たちが立ち上がって礼をする。僕も真似をして同じようにした。

 

「進行は学年主任の高橋洋子で勤めさせていただきます。さて早速始めたいところですが、その前に一つ報告があります。皆さんも知っていると思いますが、今回の合宿で佐藤裕先生が諸事情により欠席なさるので、代わりにRクラスの吉井明久君が代理教師を勤めてくれることになりました。吉井くん一言お願いします」

 

高橋先生に紹介されたので立ち上がって、一つ礼をする。

 

「今回、佐藤先生の代わりに代理教師を勤めさせていただく吉井明久です。いろいろ至らないところはあると思いますがよろしくお願いします。」

 

テンプレ的な挨拶をして席に座る。

多くの拍手が送られて少し照れてしまった。

 

「吉井くんよろしくお願いします。

では、今回の合宿での日程を一通りまとめてーー。」

 

それからはずっと話を聞いているだけだった。僕の役目は至ってシンプルで、自習時間での質問の回答や、見回り、教室の監督などで複雑なものはほとんどなかった。先生たちが配慮してくれたんだろう。終わってからは色々な先生が声をかけてくれて、なんだか変な気分だった。その時の船越先生の目が血走っていたのは見間違いだと思いたい…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミィーティングが終わってから、宿泊先に早めに行き合宿の準備をする先行組と、学校に集合した生徒を誘導する後行組に別れて行動した。僕は先行組に配属されていたのだが、今現在おかしな状態になっているのだ。僕は教員専用のバスに乗って移動しているのだが、なぜか隣に学園長がいた。僕が後ろの窓側に座っていたら学園長が隣に座ってきたのだ。えっ?なにそのホラー。他にも席は空いているのになんで僕の隣に座るんだよ!と学園長の意図を考えていたのだが全くわからない。しばらく考えていたところで急に学園長が口を開いた。

 

「…………春咲は最近どうなんだい?」

 

「春咲さん……ですか?」

 

学園長からのその質問に少し驚いてしまった。

 

「別にいつもと同じように普通ですよ」

 

「その普通が分からないから聞いてんのさこのクソジャリ」

 

いちいちイラつかせるのが上手なババアだ。でも日常の様子なら週一のメールで学園長に教えているはずなんだけどなぁ。

 

「メールで送った内容のとおりですよ。勉強をしたり、お茶を飲みながらしゃべったり。でも、さすがに部屋に入ってからは把握できないのでこれくらいしか伝えられませんけどね」

 

「………………そうかい」

 

二人の間の会話が消えた。僕は学園長をチラリと見た。いつもの飄々(ひょうひょう)とした雰囲気は無く、ただどこか一点を凝視したようなむすっとした表情だ。

 

…………もしかして学園長は、春咲さんの事が聞きたくて僕の隣に座ったんじゃないのだろうか。こんな機会はほとんどないから、わざわざ僕を先行組に回してでも。春先さんと学園長の関係は僕も聞かされていないからよくわからないけど、春咲さんは母親のような人と言っていた。Rクラスを作ったことから、学園長も春咲さんのことを少なからず気にかけているはずだ。これなら全ての辻褄が合うし、これが最も自然な流れだ。なら僕はーー。

 

「学園長」

 

「…………なんだい?」

 

「バスに乗ってる時って暇じゃないですか。着くまでずっと退屈なのは嫌なので、僕の話を聞いてくれせんか?と言っても僕が毎日過ごしている何の変哲もない出来事を出任せに言うだけなんですけど…………いいですかね?」

 

僕がこう言うと、学園長は目だけを一瞬動かして僕の方を見て言った。

 

「好きにしな。あんたがそうしたいならね」

 

「ではそうさせてもらいます」

 

それから僕は目的地に着くまで春先さんの事や、Rクラスの様子について話し続けた。学園長、途中でずっと微笑みっぱなしだったのに気付いているのかな。全く素直ではないと、その時僕は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、僕の回想みたいなものは終わり。ここに至る経緯はこんな感じだ。今は全生徒が大広間に一ヶ所に集められて合宿全体の説明がされているのだが………。

目の前の生徒達からの視線が凄い。マントを着て仮面をしているからまだましだが、それでもこれほど多くの生徒達に注目されたら流石の僕でも少し怖く感じてしまう。まぁRクラス生徒が先生側に立っているんだから仕方ないか。

 

「それと報告が一つ、欠席された佐藤裕先生の代わりにRクラスの吉井明久君が代理教師として合宿に参加してくれました」

 

高橋先生が、今日二度目にの紹介をしてくれた。一歩前に出てペコリとお辞儀をし、元の位置に戻った。

 

「日本史と世界史を担当してくれますので皆さんも質問があれば吉井君に聞いてください」

 

高橋先生が言い終わると皆が拍手をしてくれた。歓迎されていないと言うことは無さそうだともう一度生徒全体を見回す。僕をじっと見ている秀吉と雄二。周りのことなどお構いなしにカメラを弄っているムッツリーニ。何故か嬉しそうな表情を見せる姫路さんと島田さん。Aクラスでは、雄二と同じように僕を見る霧島さんに、挑戦的な視線を向ける木下さん。他にも何か神妙な面持ちで僕を見る久保君に、ニコニコとした笑顔を僕に振り撒く工藤さん。B、C、Dクラスからも各々興味をもった目で見られている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………本当に大丈夫なんだろうかこの合宿。

 

 

 

 

 

 

 

 




しばらく更新ペース遅くなります。すみません。
あと今のうち決めておこうと思って聞きますが、ハッピーエンドと軽いバッドエンドのどちらがいいですかね?終わりかたを二つ考えてあるんですけど、どっちでもいいなと思って聞くことにしました。
ちなみにIFは絶対に書きませんのでそこを考えて意見してくれると嬉しいです。
今年中には決めてしまおうかなと思っています。

ーー追記ーー

感想文にどっちかを選ぶコメントを書くとコメ稼ぎだと思われると指摘してくださった方がいました。活動報告に終わりかたの説明も少ししているので、お手数ですが活動報告の方にコメントしてください(^人^)。
お願いします。



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