自然愛好家は巡る   作:コロガス・フンコロガシ

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ようやく原作の時代に。


第4話 研究者達の憂鬱

 西暦2138年、日本の古都にそびえるアーコロジーの一角にある植物工場、清潔さを強調する真っ白な建物の片隅に付属研究所がある。

 その研究所――生態系研究所――の中、組織培養された植物のサンプルの並ぶ棚の間で、顔の一部を除いて全身を防塵服で覆った研究者たちが今日も忙しく働いている。ドームの外の薄暗さとは対照的に、この窓のない室内では眩しいほどの光が溢れている。ただし、白い光ではない。植物の生育に適した青と赤が入り混じった、不安を感じさせる紫色がこの部屋を巨大な生物の体内のように染め上げている。そして、そこで培養される植物たちは光を効率的に吸収してどす黒い影を成し、その下に更に黒い陰を落とす。

 そんなサンプルが何十も置かれた棚がこの部屋に所狭しと並べられている。

 

 研究者たちの身を包む防塵服も紫の光を反射し、その色に染まっている。棚をのぞき込み、手にした端末にデータを記録している研究者たちは誰も口を開かない。部屋の中には微かな足音と、栄養液の循環する音しか聞こえない。室内が紫色一色に染め上げられ、壁と研究者との境界が曖昧なまま無表情な目だけが彷徨うさまは、冥界を彷徨う幽鬼を思い起こさせる。ただ、壁や床には研究者の影がくっきりと浮かび、この世界が幻影ではないことを示している。

 

 やがて、誰かが作業の終わりを告げ、研究者たちは部屋を出る。

 

「ロック確認、よし!」

 

 最後の者がエアシャワーを抜け、二重ドアを閉じ、ようやく研究者たちは人間に戻る。

 

「うぉー、腰がいてぇ」

「あー、涼しい」

 

 伸びをする者、胸元をパタパタと煽る者、紫色の光に疲れた目を押さえる者、様々である。実験室の中の環境は植物のために調整されており、人間が長居する所ではない。その外の廊下は反対に人間に適した構造に設計されており、過剰な清潔感を強調する壁や天井には細菌ですら生存しない。

 他の部屋からも研究者が出てくる。

 

「じゃ、ミーティングを始めましょうか」

 

 研究者たちは別な部屋に向かう。データを共有して議論するために。

 

 この研究所は旧・国立大学の一部門に由来する。元は数十年前まで自由な校風を旨としていた日本有数の大学だったが、今は企業複合体からの共同出費で維持されている研究所だ。

 国立大学などという悠長なものが消えてから数十年、「大学」の名を遺す研究所も社員の高度教育と基礎研究部門の統廃合による効率化を目的として改編されてきた。

 そこで研究者に与えられるテーマは企業からの指示で定められ、短期の結果を求めるスポンサーから課せられた研究者たちのノルマは厳しい。自由な発想は抑えられ、どこからか送られてきた指示に従い、サンプルを解析するだけの「研究」とは言えない作業をこなすだけで精いっぱいだ。

 当然、研究のレベルは下がり、作業量が増え続ける一方で、新しい発見は難しくなっている。

 

 もちろん、大学由来の研究所が全てそのような窮屈なものになったわけではない。現代の貴族たちの余暇を充実させるために文学など趣味的なものに特化した研究所もある。その類の研究所は前世紀から縮小傾向にあるが、貴族らが無意味な修辞学や学歴を彼らの武器として重宝する限りは教育機関として存続が許されるだろう。

 

 研究者たちはそんな「大学」の現状を憂う。企業複合体がそれほど力をもっていなかった前世紀から残る研究者たちはプライドをもって「教授」を名乗り、「学問の自由」を主張している。しかし、若手研究者は自分がその地位に就くことはないことを知っており、彼らの熱意は乏しい。

 企業複合体にとって教授たちは疎ましい存在であり、その地位が許されるのは旧・国立大学からその地位を引き継ぐ者に限られているからだ。今の世代で教授の後に続く者は「上級研究者」と呼ばれ、雇用は保証されるが、研究テーマの自由はない。さらに若手の「下級研究員」は、プロジェクトの終了が近づくとともに次のプロジェクトを探す不安定な生活に追われている。彼らの夢は、雇用が保証される上級研究員となって生活を安定させることで精一杯だ。

 

 そんな研究者たちは今日も研究を続ける。

 

「アマゾン乾燥帯のサンプル、生育状況をどう見る?」

 

 部下たちが記録したここ数日のサンプルの映像を直接脳内に結像しながらチームリーダーが質問する。画像は回線を通じて共有できるが、思考はそうはいかない。

 

「おおむね良好じゃないかと。逆に、育ちすぎてエキスが薄くなってる可能性もありますが」

「もう少しイジメないと、薬を作らないかもね。で、赤松さん、エキスの効果は出たの?」

「マウスでは、直接脳に投与した場合にはそれなりの効果は見られましたね。しかし、かなり苦いので量を与えるのに苦労します。吐いちゃいますんで」

「ん、それで十分。とりあえず月末の会議には報告できる。味はカプセル化すればなんとでもなるから製剤部に回そう」

 

 部下たちが淡々と画像やグラフのデータを送り、チームリーダーの広川は頷く。

 

「効くと言ってもオマジナイ程度ですけどね。BBB壊せば別ですが、レセプター経由では既存薬に対抗するのにバケツで飲まないといけないってレベルですよ」

「はは、まあ、その辺は濃縮とか改良とか、今後の課題ってことで次に回そう」

 

 部下の確認に、リーダーは苦笑いしてヒラヒラと手を振る。

 

「5年越しのプロジェクトだからね。なんとか結果をひねり出さないと」

「培養条件みつけるのに時間かかったからなあ」

「ですよねぇ……それにしても、ほんと、よく打ち切られなかったですね」

「そりゃ、お偉いさんも必死よ。最近じゃ第七世代にも耐性ついて効き目が落ちてるらしいで」

「飲みすぎっすよね」

「せやな。上の連中が一日どんだけ薬飲んどるか、それこそバケツじゃないか?」

「ハハハ……上は上で大変っすねぇ」

 

 とりあえずの報告内容が決まり、チームは回線を外して世間話に移る。

 一般企業なら警備員が飛んできて私語を咎めていただろう。だが、研究所では咎める者はいない。「脳を刺激するためには適度なおしゃべりが必要」という研究結果を盾にして、昔からの教授陣が頑張ってくれているおかげだ。与えられたノルマさえこなせば問題はない。

 

 そして、研究所で何度となく繰り返された会話が今日も繰り返される。

 

 この時代、人間の寿命は二極化している。

 環境が完全に管理されたアーコロジー内に住む富裕層は総じて長寿であり、進歩した医療技術の助けも借りて100歳を超える者も珍しくはない。21世紀後半からは富裕層の世代交代の速度が落ち、この数十年は世代交代というものはほとんど見られない。ごくまれに事故で企業経営者が死亡すれば――ほとんどは趣味で旧式の飛行機を飛ばし、墜落したとか――大ニュースになる。

 しかし、外の庶民たちは大気汚染により健康を損ない、この数十年で平均寿命の低下は歯止めがかからない。いや、短命化は加速していると言ってもいい。これも21世紀後半から顕著になった傾向だが、いまやマスメディアによる警告は見られない。常識となってしまったことをいまさら報道する者はいない。

 

 ますます酷くなる汚染物質により、ガンをはじめとして様々な疾患が激増している。

 それを抑えるためのナノ医薬は普及しているが、絶え間ない汚染に対抗するためには薬を飲み続けなければならない。その結果、体内に残留するナノ物質は凝集して毒性をもち、ついには体組織が急激に老化して死が訪れる。昔であれば働き盛りの年齢で血管や内臓がボロボロになり突然倒れるのだ。

 その残留物を吸着して排出する、更なるナノ医薬も開発されているが、それは結局のところ別な残留物を作り出すだけだろう。わずかな延命にはなるが、余計に酷い副作用が待っている。さらに、医薬だけでなく食品にも衣類にも娯楽にも――至る所で使われているナノデバイス同士の相互作用は着手すらされていない。毎日新たに登場するナノデバイスを一々確認していられないのだ。

 

「貧乏人をダラダラ生かしたくないんだよ」

 

 そんな陰謀論を吐き捨てるように呟く者も多い。

 より効果のある薬、例えば絶滅に瀕している希少な植物から抽出される成分などは高価すぎ、庶民には手が出ない。富裕層から惜しみなく注ぎ込まれる長寿のための研究予算は、庶民のためには使われない。

 研究者として選抜され高等教育を受けた者たちは、一般サラリーマンに比べて遥かに恵まれた立場にある。しかし、彼らも「庶民」であることに違いはない。事実、彼らの多くは自分の親が十分な医療を――自分達が開発した技術の恩恵を受けられず早死にするのを目にしている。

 何のために、誰のために、自分たちは研究を続けているのか。

 

「それにしても……バカバカしい話だ」――研究者の一人が呟く。

 

 金持ちが長生きするのは仕方がない。それが世の中だ。だが、その先に何がある?

 ここに興味深いデータがある。富裕層と庶民、その対照的な2つの階層に共通する特徴――出生率の劇的な低下だ。

 富裕層は死を拒絶し、自分の生が永遠であるかのように「子を成す」ことを避ける。

 庶民は家族を養うことなど考えられず、目の前の生活に追われて「子を成す」ことを避ける。

 

 その結論は分かりきっている。やがて庶民は死に絶え、彼らの犠牲の上に成り立っているアーコロジーの生活も崩壊する。老いた孤独な金持ち様はそこで初めて気が付くだろう。その楽園を維持できなくなることに。彼らは必死に生に縋りつき、急速に崩壊する肉体に怯え、結局は惨めな死を迎えるのだ。そのとき、長寿の技術は苦しみを長引かせるだけだろう。

 苦しんで死んだ親たちと何も変わらない。いや、贅沢に慣れた彼らはそれ以上の恐怖を、引き伸ばされた苦悩を味わうだろう。彼らの贅沢は、最後に訪れる闇から目を逸らすための誤魔化しに過ぎない。

 研究者たちは、それを知っている。だから、富裕層に対する妬みも恨みもない。ただ虚しさがある。

 何のために、誰のために、自分たちは研究を続けているのか――彼らは悩み続けている。

 

「ああ、くだらないな」――別の研究者も頷く。

 

 このアーコロジーは無数の技術で支えられている。その一つでも止まれば、それは連鎖し、やがて全体のシステムに破綻をきたす。そうなれば、このアーコロジーの住民は皆、死ぬことになる。

 例えば電力網が途切れれば、例えば水道が止まれば……

 それらのシステムは小さな部品の寄せ集めからなる複雑な仕組みから成り立っている。小さな歯車の一つが狂うことで致命的な結果をもたらすこともあるのだ。そして今、システムを支える庶民たちは早死にし、その結果、まだ未熟な若者たちがシステムを担う。その結果、ミスが増え、システムは劣化し、それを支えるためのしわ寄せで庶民の寿命は縮む。

 

 悪循環だ。金持ちが偏重される社会は歪み、そしてシステムを不安定にする。

 

 事実、トラブルの件数は年々増えている。過去に蓄積された安全管理システムにより、まだ致命的な事故につながっていないだけだ。しかし、やがては破綻する日が来るだろう。それは遠い日のことではない。

 

「本当に、くだらない」――隣の研究者も、伸びをしながら言葉を漏らす。

 

 このアーコロジーだけではない。かつてこの惑星にあった「自然」、それは小さな無数の命が織りなす途方もなく複雑な仕組み――それ全体が一つの命だった。その歯車がどこかで狂い、自然は失われた。森が切り開かれ、その跡は牧草地や畑となった。家畜の餌として植えられた弱い草は容易に汚染され、枯れた後には砂漠が残る。失われた牧草地を補うために更に森が切り開かれる……

 

 どこで人類は道を誤ったのだろう?

 森を出た弱いサルは生きるために知恵を付け、必死に繁栄を追い求めた。その結果、多くの種が永久に失われ、ついには自らも滅びようとしている。

 人類はこの惑星を汚し尽し、そして今、この惑星の命そのものが尽きようとしている。

 金持ちだけが悪いのではない。あえて言うならば、自分を含めた人類が選んだ歴史の結果だ。

 人々はそれを知っていながら目を逸らし、ただ一時の快楽に酔いしれている。

 

 今では完全に形式化したある宗教の逸話に、奈落に掛かる木の根にぶら下がった男の話がある。ネズミに齧られて今にも切れそうなその根を命綱としながら、上から垂れる蜜の甘さに酔う愚か者の話だ。

 この研究所の生態学者たちは未来を知っている。まもなくこの惑星の命を支える根は切れる。

 知っていながら何も出来ず、今日も金持ちのための蜜を作り続ける。

 

「くだらない」――吐き捨てるようにそう言って、研究者たちは今日も笑いあう。それは自嘲でもあった。先が無いことを知りながら何も出来ない自分たちに対して。世界を滅ぼす共犯者、共依存にある者としての後ろめたさを感じながら。

 

 そんな研究者の一人、広川毅志も黙って頷く。

 20世紀の末、まだ豊かな自然が残っていた時代、彼の一族に環境保護を訴えて市長となった男がいたらしい。その男は環境過激派と手を組み、テロを計画中に突入した警察に射殺されたということだ。

 長らく「一族の恥」として忌み嫌われていたその男――その先見の明を、広川は誇りに思う。

 長らく避けられていたその名を選んでくれた両親を、広川は尊敬する。

 そして、何もできない不甲斐無い自分に溜息をつく――くだらない人生だ、と

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 休憩時間が始まり、皆で食堂に移動しても、広川は再び溜息をついていた。だが、今度は自嘲とは異なる溜息だ。この数日間、広川はずっとこうだ。今日はこれで何度目だろうか?

 

「どしたん? 報告会が心配か?」

 

 見かねて、室長が声を掛ける。

 

「いえ、すんません。仕事のことじゃなくて、昔の友達からのお誘いメールが来てまして」

「え? なにかの同窓会?」

「いやぁ、ゲームの仲間ですよ。ユグドラシルの」

「えぇ? ユグドラシルって、あの?」

 

 食堂の空気が変わった。周囲の研究者たちも手を止めて会話に参加する。一時の憂さ晴らしだ。研究所を覆う沈んだ雰囲気に暖かみが戻る。

 

「へぇ、まだあれ残ってたんだ?」

「懐かしいなぁ! つか、広川さん、まだ続けてたんすか?」

 

 後輩が両手を挙げて大げさに驚いたというポーズを作る。ユグドラシルで知り合った恋人と数年前にゴールインしたその後輩の左手に指輪が光っている。

 勝ち組め――その指輪をちらりと見て、広川は苦笑いして答える。

 

「いやぁ、あの後、しばらく続けてたんだけど……ここ数年は行ってないよ」

「なら、なんで今になって?」

 

 別な同僚が尋ねる。

 

「今日がユグドラシルのサービス最終日らしいんですわ。それで、移籍したところのギルドを保守してた友人がいまして、今夜、皆で集まろうと」

「ああ、あのギルド!? 今日に至るまで保守って、すごいなそれ! 俺なんかこの数年、『ユグドラシル』の名前も出てこんかったわ」

「うわー、俺も久しぶりに行ってみようかな? あ、でも俺、キャラ消しちまってたわ! 今日を限りの新アカ作るかな!?」

 

 広川の気も知らず、周囲は呑気に思い出話をしている。

 

「行ったり! 行ったり! そんな律儀な人、ほっといたらあかんわ」

「……そっすね」

 

 周囲の熱気に押されて、広川は力なく笑う。

 

「うん、ぜひ頼むわ。元ギルド長として、うちらの分もよろしく言っといてや! うちらのアレ、そのギルドに引き取られてたんやろ?」

 

 威勢の良い声が後ろから聞こえ、いつの間にか来ていた所長にバシンと背中を叩かれる。

 

「あ、多賀さん……ええ、そうなんです……」

 

 広川は頷く。この人はすぐ叩くんだから、とゲーム時代を思い出しながら。

 

「君が回復してくれたあの森、まだ消されずに残ってるかなあ?」

「ええ、残してくれていたらしいですよ」

「そっか、ほんと、あのギルドには頭が上がらんなあ……なんてったっけ、あのギルド?」

「『アインズ・ウール・ゴウン』です」

 

 ここまで言われたら行かざるを得ないな――そう思いながら、広川は懐かしいギルドの名を口に出す。

 

「えー、超有名ギルドじゃないっすか! 広川さん、あそこのメンバーだったんだ」

 

 配属されたばかりの新人が興奮して話に参加する。若い彼は知らない。この研究所のメンバーもごく短期間「超有名ギルド」であったことを。

 

「おうよ、俺らは昔、トレントでギルド作っていてなあ。色々世話になったんよ」

 

 広川が答えるより先に、当時を知る同僚が教える。新人は目を丸くして聞き入り、再び話が盛り上がる。それを横目で見ながら、広川毅志――ユグドラシルではブルー・プラネットと名乗っていた男は再び溜息をつく。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 夕刻、広川のチームは仕事内容を再確認し、各々の仕事に戻る。一般企業であれば残業というところだが、研究者には定まった勤務時間というものはなく、ゆえに残業という概念も無い。研究成果だけが全てだ。報告会が近づいている今は、皆、夜遅くまで作業を続ける。退社は日付が変わってからということも珍しくない。

 

 しかし、この日の広川は、所長と室長の勧めもあって、いつもより早めに帰宅した。

 

「積もる話もあるやろ?」

 

 室長は笑顔で送り出してくれた。同僚たちは万歳三唱で広川の背中を押す。元・ギルド長、頑張れと。

 

 ぎこちない笑顔で彼らに別れを告げた広川は、アーコロジーの地下に移動し、再び溜息をつくと、自分の移動装置「繭」(コクーン)に乗り込む。

 車輪がついた白い繭――棺桶と表現した同僚もいたが――の中で椅子に座り、個人用情報端末を目の前のコンソールパネルに置くと、システムが起動して人工音声が優しげな女性の声で語りかけてくる。

 

『ご帰宅ですか?』

 

 広川が黙って軽く頷くと、車内カメラでそれを感知した人工知能がモニターにルートを表示し、帰宅時間を計算する。そして、ゆっくりと滑るように動き出す。極限まで簡素化された電気自動車であるそれは個人用情報端末と連携して自動的に最適ルートを探し出し、目的地まで移動する。

 

 研究者たち――広川の住居は通常のサラリーマンとは違い、アーコロジー近くの集合住宅に用意されている。駐車場から自宅までは30分間程度かかるだけだ。もっと上級職であればアーコロジーと連結した集合住宅に、さらにはアーコロジー内にも居住できるのだが――そこまで出世するには、よほどの発見あるいは研究所への貢献が無ければ無理だろう。

 

 良く整備された高架道路を進む「繭」は振動も動作音も微かであり、移動は実に快適だ。この中では誰にも邪魔されず、思索にふけることが出来る。

 「繭」に窓は無い。望めば車外の状況をモニタに映し出すことも出来るが、灰色の空を眺めてもしょうがないからだ。地上の風景も……灰色の町の地上道路を一般のサラリーマンが人工呼吸器をつけて帰宅する様子を見ても気が滅入るばかりだ。汚染された大気の中を徒歩で、あるいは過密な列車で運搬されていく彼らに比べれば、研究所から通勤のために個人用の移動手段が支給されている広川たちは破格の待遇を受けているといってよい。その後ろめたさも車外を見ない理由の一つである。

 

 だが、この日の広川は珍しく車外カメラを起動させ、空を眺めた。

 外の風景は大気中に漂う有毒性の微粒子で霞み、空は汚染物質に散乱された沈みゆく太陽からの光で茶色に染まっている。

 自分が知らない遥か昔、夕日は鮮やかなオレンジ色で、地上を同じ色に輝かせていたという。

――腐ったオレンジを連想して広川は顔をしかめ、再びカメラを切ってモニターを眺める。

 

 今は18:30。あと10分で自宅に着く。

 

 広川は目を閉じてユグドラシルに残してきたギルドのことを思い出す。

 あのギルドでは研究所の仲間と一緒に作り上げた森が、新しい仲間のために作り上げた空が待っている。

――そう思うと、目を閉じた顔に笑みが広がる。

 

 しかし、その仲間が問題だ――広川の笑みが消え、額にシワがよる。

 

 もう何年も前に別れを告げた仲間たち……何人続けているだろうか? 俺より先に引退した人もいたが、今日は皆、集まるだろう。

 

「積もる話、か」

 

 皆、どんな話をするのだろう? 

 俺はどんな顔をして行けばいいのだろう?

 

『やあ、たっちさん。ご無沙汰してます』

『やあ、ウルベルトさん。お変わりありませんか?』

 

 広川は心の中で挨拶を練習する。

 

『おや、ブルー・プラネットさん、よく来てくれました。もう来ないといったはずでは?』

『あぁ? 誰よ、お前? って、ブルーじゃねーか、よく戻ってくれたなあ』

 

 上げて落とす、落として上げる、あの二人のコンボは地味に辛い。何かと仲が悪い二人だったが、今日くらいは笑って最後を迎えて欲しい。

 ぶくぶく茶釜さん、やまいこさん、あんころ……なんていったかな? あの女性陣からのツッコミには慣れていない。

 ベルリバー……先に引退して悪いことしたなあ。最近ご無沙汰だが、今は何をしてるのか……楽しくやっていてくれればいいが。

 メールはモモンガさんからだった。文面から見ても、モモンガさんがギルド長を続けていたのだろう。彼ならブランクも関係なく受け入れてくれるだろうが……

 

 広川は、ふぅ……と、溜息をつく。

 敷居が高い。でも、やはり、会わなければいけないのだろうなあ、と考えて。

 

 やがて、「繭」は広川の住む集合住宅に到着する。音も無くゲートが開き、「繭」は滑るように建造物の中に入る。そして、ゲートは閉まり、洗浄剤を含んだシャワーで汚染物質が洗い流され、外部環境の安全性を確認したサインが「繭」の中で光る。

 広川が個人用情報端末を手に取ると「繭」の扉が静かに開き、広川は駐車場に降りる。

 そこから少し歩いてエレベーターに乗り、自室の前まで移動する。

 ドアの前で情報端末をかざせばロックが解除されてドアが開く。

 無言で自室に入った広川の背後で再びドアが閉まり、人工音声がロックを告げる。

 

 さて、と。

 

 広川は室内を見渡す。時計は18:45を示している。

 皆がログインしてくるまでには、まだ時間がある。20:00ごろにログインしよう。

 それまでに洗濯をして、食事をとろう。研究所から何か連絡は来ていないだろうか? ニュースも確認して……時間を潰す。

 

 20:00になった。しかし、まだ雑用がある……広川は雑用を考える。

 ああ、俺ってどんなキャラクターだったかな? 確認しなければ。

 情報端末を接続し、アプリケーションを起動する。まだログインはしない。

 オフラインで過去の情報を見直して、ああ、そうだったな、と記憶を掘り起こす。

 

 21:00になった。

 広川は椅子の背もたれをギシギシと鳴らしながら、頭の後ろで手を組んでいる。

 考え付く雑用はすべて終えてしまった。再びため息をつき、空中に漂う埃を目で追う。

 そして、明日の仕事のためと言い訳をしながら、幾つかの文献を確認する。

 

 22:00だ……。

 そうだな。最後にちょっとだけ挨拶して……最後のカウントダウンに付き合う程度でいいんだ。

 戸棚からケーブルやヘッドセットを取り出し、机の上に乗せた軽い夜食を摘みながら、接続の準備を始めて思い出す。

 しまった、週末のアニメを録画していたの、見ていなかったな……よし、見なくちゃ。

 

 23:00。

 そろそろ行くか。ヘッドセットを被り、再び逡巡する。我ながら往生際が悪い……自嘲して、ついにスイッチを入れ……ようとして躊躇する。

 

 結局、広川がユグドラシルに接続したときには23:30を過ぎていた。

 息を止めて白昼夢の世界に身を投じる。まるで水の中に潜るように。

 世界が白い靄に包まれる感覚の後、広川の視覚に懐かしいギルドの円卓が映し出される。

 眩い灯りに照らされた石造りの豪奢な円卓を囲む、貴金属と宝石で彩られた椅子――

 だが、そこには誰も座っていなかった。

 

「あ、皆さん、ごぶさた……」

 

 広川――いまはブルー・プラネット――は挨拶の途中で固まる。

 そして、周囲を見回す。

 やはり誰もいない。招待してくれたモモンガの姿も見えない。

 再度、周囲を見回す。

 壁に飾られているはずのギルド武器「スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン」も消えている。この最重要アイテムが勝手に持ち出されることはあり得ない……すると、皆でどこかに出かけた後か。

 

「やっちまった」

 

 ブループラネットはそう呟いて右手で円卓を、そして顔をぴしゃりと叩く。その勢いで手に生えた木の葉が揺れ、カサカサと音を立てる。

 円卓に肘をつき、項垂れる。ハロウィンのカボチャお化けを模した、炎を宿す虚ろな空洞の目と口からなる表情は動かないが、口からは後悔の呻きが漏れる。3メートル近いその姿は、冠とローブで覆われた印度菩提樹が円卓に倒れ掛かったようだ。

 

 ブルー・プラネットはその姿勢でしばらく動かない。遅すぎた、という思いが脳裏を駆け巡る。

 おそらく皆はもう、思い出話を済ませてユグドラシルの最後を見物にでも行っているのだろう。

 <伝言>(メッセージ)で仲間に呼びかけることも思いついた。

 恰好悪いが最後の機会だ――そんな思いがコンソールを開かせる。

 しかし、やはり――ブループラネットはコンソールを閉じる。

 

 あと30分足らずで全てが終わる。

 もういいじゃないか、という気持ちが浮かんでくる。

 どうせメールアドレスは知っているのだ。今夜、皆に返信しよう。

 『すみません、残業でどうしても手が離せなくて……』と。

 そして、どんな話をしたか聞かせてもらおう。写真を送ってもらおう。また別なゲームで会えればいいさ――そう考えると、少しばかり気が楽になる。

 

 ブルー・プラネットは円卓の間を出て廊下を眺める。やはり誰もいない。静寂がこの荘厳な空間を支配している。

 静けさに居たたまれなくなり、指に嵌めたままにしていた転移の指輪を使い、第九階層の自室の前に転移する。そしてドアに右手をかざし、本人認証を行う。

 

 カチャリ、と軽い音が響き、ドアのロックが外れる。

 音も無く開きかけるドアを手で押し開け、プループラネットは自室に入る。

 

「ああ、そのままにしておいてくれたんだな……」

 

 何年も留守にしていた部屋だが、その中は<永続光>によって円卓の間と変わらない明るさを保っている。ギルドメンバーがその気になれば、この部屋を開けて中のアイテムを売り払ってしまうことも出来たはずだが、何も変わっていない。仲間たちは俺を裏切らなかったんだ……と、涙が込み上げてくる。

 

 部屋の中は、ドアから続く応接間とその奥の本棚までの空間を取り囲むように無数の宝物が並べられている。現実世界ではすでに入手が不可能な、貴重な木で作られた調度品が黄金や銀、紫、そして緑といった様々な色彩の輝きを放っている。この部屋の内装には金属や宝石による装飾は一切なされていない。あくまで自然の、生物由来の、そして仮想現実とはいえ動物を避けて植物からの、厳選された素材を使って創造された物だけがある。

 

 ギルド<アインズ・ウール・ゴウン>においてメンバーに割り振られた居室は基本的に皆同じデザインであるが、内装は各々の好みに応じて異なっている。そして、この部屋はブルー・プラネットが簡単なイラストを描き、美術的な才能にあふれる友人に頼んで作ってもらった部屋だ。細かい注文を出し、友人からもアイディアを貰って何度も作り直し、自分でも魔法やスキルで修正を繰り返して最終的に完成されたこの空間こそ、彼の内面を具現化したものだ。

 

 後ろ手でドアを閉めたブルー・プラネットは深呼吸をする。

 この部屋を最後に出たのはつい昨日のことであったような、自分の半身を取り返したような――奇妙な懐かしさと安らぎを覚える。

 そして歩を進め、ドアに近い場所にある大きな書棚の前に立った。並べられている本のタイトルを眺め、その一冊を取り出してパラパラとめくる。本のタイトルは「写真で見る世界の植物」――現実世界の古い本をデータ化して持ち込んだものだ。

 

 ブルー・プラネットは天井を仰ぎ見て、本を閉じ、元の場所に戻す。現実世界で失われた自然を記録したこの本も、もうすぐこの世界ごと消えてしまうのだろう。

 この美しい、自身の理想を体現した部屋も、あとわずかな時間を残して消え去ってしまう。映像記録ならば幾らでも残してあるが、こうして実際に触れることが出来る存在は――

 何か一つでも現実世界に持ち出すことが出来れば……そんな叶わぬ思いを振り払い、ブルー・プラネットは本棚の奥の机に向かう。

 

 机の前には愛用の椅子がある。現実の広川の部屋にある合成樹脂製の簡素な椅子とは違い、余計な装飾は無いが優美な曲線で形作られた、それでいて頑丈な木製の椅子だ。トレントの巨体を受けて軋んだ音を立て、それでいて決して壊れることのない、お気に入りの椅子。座面には織り込まれた金や銀色の繊維が幾何学模様を描き、肘掛けは紫を帯びた静かな黒が鈍く光る。

 

 ブルー・プラネットはその椅子に座る前にコンソールを開き、「装備解除」のコマンドを選択する。ブループラネットの体を覆っていた冠やローブ、指輪やアミュレット、そして自身の武器である「星の王笏(アースセプター):バージョン5」――魔法石を眼に嵌めた黒・紫・白の三匹の蛇が宝珠を銜えて絡み合い、その頭上に複雑な輪が幾つも組み合わされ浮かぶ神器級アイテム、昔のギルドとの義理から決して他のメンバーに使わせなかった専用装備――前回のログアウト時に装備していたものが身体から一旦消え、壁や箱の中のしかるべき場所に収まった形で再び現れる。

 ブルー・プラネットは、その箱に再度しっかり鍵をかけて仕舞い込む。

 

 そして、ブルー・プラネットは椅子に座り、肘掛を撫で、伸びをする。壁際に置いた大きな時計に目をやると、時計の針は43分を示している。

 

――もう少しこの部屋にいてもいいだろう。

 

 目の前に手を伸ばし、今の自分の姿に思いを馳せる。

 今の姿は印度菩提樹をモチーフとしたトレント。ギルド<シャーウッズ>の黄金期には高さ100メートル近い巨大な姿をとっていたが、戦いが始まると魔法で隠れやすい小さな姿をとるようになった。<シャーウッズ>の末期、ログインする仲間が減るとともに更に小さな――それでも全長3メートル近い――外装に切り替えたものだ。護衛もおらず一人で拠点を守るには、目立つ的では不利なのだ。何体もの巨木を影武者として用意し、本体は魔法で偽装した陰に潜む。これが一人でギルドを守ることを決意したブルー・プラネットの戦術であり、それを可能にしたのも<シャーウッズ>の中間報告書だ。

 

『トレント種はその巨体ゆえに他種族キャラクターとの共同作業に著しい困難を有する』

 

 様々なメディアに発表された過去のフィクションにおける樹人たちの例も示し、必ずしも巨大なモンスターがウケるわけではないことを説明した。そして、レベルの上昇とともに強制的に成長するシステムを改め、巨大化の代わりに多彩な植物系モンスタースキルの習得も選択可能にすべし、という提案が通ったのだ。これには、折角のトレント種を不人気なまま埋もれさせたくないという運営側の事情もあったようだが。

 

 ブルー・プラネットがクラン<ナインズ・オウン・ゴール>に加入し、それが拠点を得て<アインズ・ウール・ゴウン>になった後も――護衛となる仲間が出来た後も、彼はこの外装を変えなかった。

 かつての孤独を救ってくれた新しい仲間たち(アインズ・ウール・ゴウン)昔の仲間たち(シャーウッズ)ほど巨大ではなく、その彼らと同じ目線でユグドラシルを楽しみたかったのだ。

 

 壁に掛けられた大きな鏡に姿を映し、改めて自分の姿を見直す。体を覆う装備が外された今の姿は異形種として設定されたそのまま――何年もの間、「もう一人の自分」として慣れ親しんだ姿だ。

 切り株状の頭の上には細かな枝が何本も芽吹いて王冠のようになっている。これは、切り倒されてもなお新しい命を芽吹かせる植物に敬意を示した、ブルー・プラネット自身のアイディアだ。

 顔は、怒りの炎を宿す黒い穴で構築された大きな目と口で出来ている。そして、申し訳程度に開けられた小さな2つの穴が鼻の代わりだ。ネタをばらせば「カボチャお化け」の口を上下反転させて「への字口」にしただけのコピーだが、イビルツリーとも共通したデザインでもある。移籍後は友人となったデザイナーの力で修正を施し、より迫力のある姿になった――と友人は言ってくれた。

 胴体は、大人の腕ほどもある灰褐色の太い蔓が何本も束ねられ、血管のように幾つにも枝分かれしたものが融合して形成されている。全体としては人間の大人の胴体とほぼ同じ太さだが、身長との比率から細長い印象がある。

「融けかけたロウソク」――そんな表現をした仲間もいる。そう言った仲間はジョークのつもりかも知れなかったが、ブルー・プラネット自身はその表現が気に入った。

 そして、その胴体は二股に別れて末広がりの脚となり、さらに地を這って多数の根をもつ足となる。腕も同じように何本もの蔓が束ねられ、枝分かれし、指となって、緑のハート形をした葉を茂らせている。

 

 植物としても異形――日本人であるブルー・プラネットはそう感じる。

 

 異形種が集う<アインズ・ウール・ゴウン>には「これが木です」と澄ました外装より――初めてキャラクターを作ったときのモミの木より、今のこの姿が似合っていると、ブルー・プラネットは信じていた。

 あらためて、仲間の姿を思い浮かべる。肉塊や骸骨や沸き返る粘液、歪んだ巨人や悪魔など、悪夢から抜け出してきたような仲間たちを。

 彼らはその醜い姿をとった理由をもっていた。それは概して「理不尽に対する怒り」だった。

 ブルー・プラネットが印度菩提樹の姿をとったのも同じような理由だ。痛みを感じれば痛いと叫ぶように、苦しみはあえて醜悪な姿をとることで昇華されるものだ。

 

 <アインズ・ウール・ゴウン>は醜悪なメンバーたちにとって安らげる場所でもあった。

 青空の下で美しい森妖精となって音楽を奏でる毎日を過ごすより、この冥界に置かれた地下墳墓の中の日々が、よほど静かに魂を癒してくれた。現実世界で世界の終わりを予感しながら、金持ちのための薬を作る欺瞞に疲れた魂を。

 研究所では出来ないようなバカ話で仲間たちと盛り上がり、襲い掛かる敵を共に撃退した日々は本当に楽しかった。

 

――だが、その仲間を見捨てて去ってしまったのは自分だ。

 

 ブルー・プラネットは机の上に突っ伏す。

 今日は仲間から捨てられて一人で部屋にいる。因果応報というものだろうか。

 

「重すぎたんだ……」

 

 もし仲間がいれば聞いて欲しかった。自分は決して飽きてゲームを去ったのではないことを。

 アインズ・ウール・ゴウンを去ったときに言った「もう来ないと思います」という言葉は、この世界に半身を置き去る辛さを振り切るためのものだった。

 

 机の上に突っ伏したままのブルー・プラネットの耳に「ヮヮヮヮヮヮ……」という耳障りな音が届く。顔を傾け、その音源――仲間の一人がプレゼントしてくれた自走型掃除機ゴーレム――をみて苦笑する。仮想現実の世界に埃がたまるわけもなく、ジョークでしかないものだ。

 

「あの野郎……」

 

 枝のついた冠、緑の地に金の筋が走るローブを纏った姿を「メロンみてえだな」と笑った男。

 そして、スキルの関係で鎧を装備しない姿を「メロンって、芯、あったの?」と笑った男。

 あいつも今日、来ているのだろうか? イヤミの一つも言ってやりたいところだが。

 ブルー・プラネットは体を起こし、時計を見る。

 

 23:48。急がなくては。

 

 ブルー・プラネットは立ち上がり、アイテムを並べていた棚から「転移の指輪」と時間を示す鉄製のバンドを取り出し、装備する。

 そして、居室から出て再びドアにカギをかける。

 

「ロック確認、よし!」

 

 もう誰も来ない、まもなく消え去る世界で鍵をかける必要もないのに、と心の中で笑うが、クリーンルームで働いている癖だ。

 さようなら、と心の中で呟いて転移の指輪を起動し、第六階層に向かう。かつて自分が最も心血を注いで作り上げ、そしてその重さに耐えかねて友人たちに別れを告げる原因となったもの――あの夜空と一緒に最後を迎えるために。

 




捏造設定その1
ブルー・プラネットの本名「広川毅志」…「寄生獣」の市長、広川剛志から。
旧ギルドでの頑張りを認められ、チームリーダー(名ばかり上級職)に昇格してはや数年。

捏造設定その2
円卓の間を離れた時間…モモンガさんはすでに円卓の間を離れ、第十階層に向かいました。

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