ブルー・プラネットは、リザードマンとハムスケをしげしげと眺める。
この者達は
ならば、今は色々と話を聞くしかない。
「お前たちはここに来てもう数か月になるのだな?」
「はい、左様でございます」
「ほう……それで、リザードマン達はこの階層で何をしているんだ?」
「はっ! コキュートス様に剣術を教えていただいています」
リザードマンの1人が答える。周囲のリザードマンを見ると、どうやら彼が代表らしい。
「ええ、モモンガ様が外の世界でも戦力を充実させるようにとご計画されたんです」
横からアウラが補足した。
「そうか……分かった。それで、リザードマン達に聞きたいのだが、トイレはどうしている?」
「といれ……ですか?」
リザードマンは不思議そうに尋ねる。どうやら「トイレ」という概念が通じないようだ。
「ああ……魚を食って、出すものはどうしてるんだ?」
「はっ……その……糞は森の奥に行ってしておりますが……」
リザードマンが躊躇いがちに言い、ハムスケも横でふんふんと鼻を鳴らして頷く。
「そうか……案内してくれるか?」
「いけません! そんな……あ、あの……ご、ごめんなさい……で、でも……」
ブルー・プラネットの言葉に大声を出したのはマーレだった。
驚いて目を向けると、マーレはもじもじとしながら非礼を詫びる。
「マーレッ! ……でも、あたしも……そんな不浄の場に至高の御方が行くのはちょっと……」
アウラが弟の非礼を窘め、それでも同じように至高者の言動にもじもじと反対の意を唱える。
「そうか、お前たちが反対するのであれば行くのは止めよう」
ブルー・プラネットも敢えてシモベたちの心情を――至高者から不浄を遠ざけようとする気持ちを汲んで、リザードマンの生態調査を諦める。
「あ、ありがとうございます。そ、それと……ごめんなさい」
「申し訳ございません。あとできつく叱っておきますから」
ブルー・プラネットの溜息を耳にして、アウラとマーレが跪き口々に不敬を詫びる。
「気にするな。お前達が私を思う気持ちは十分に分かる。ただ、私はこの世界の者達の生態を知りたくてな――」
つまらないことで委縮させてしまったか――そう考えてブルー・プラネットは弁解をする。
「――それで、リザードマンよ。お前たちの糞はどうなっているのだ?」
ここでリザードマンは気が付く。
この聖域を自分達が汚してしまったことを、この至高者は咎めているのだと。
「申し訳ございません。我々は他にやり方を知らないもので……最近はしておりませんし……その……」
「構わん。生物であれば当然のことだ。それより現状を知りたいのだが」
「はっ! その……一か所でするようにしておりますが、定期的に糞が消えています」
平伏したまま答えるリザードマンを見て、ブルー・プラネットは首を傾げる。
そして、何故そんなことが起きるのか答えを求めてアウラ達を見回す。
「あ、あの……そ、それは僕の魔法で定期的に大地を浄化しているから……だと……」
答はマーレが持っていた。
ブルー・プラネットは、ああ、と枝を打ち鳴らし、頷く。
「そうか、第六階層の調整はマーレの魔法でやってくれているのだな」
跪いて不敬を詫びたままのマーレの頭を枝で撫でる。
マーレは枝の感触に驚いてブルー・プラネットを見上げ、は、はい、と上ずった声で答える。
「よし……お前達、立って良い。お前たちの制止は不敬ではない。全て許そう」
アウラとマーレが、そしてリザードマン達もホッとしたように立ち上がる。
「それでは、マーレよ。今後、お前が調整せずとも済むよう、私が第六階層の設定を変えよう」
かつてのギルド武器<星の王笏>を取り出して意識をそれにつなぐ――第六階層の設定を示すマスターソースが空間に浮かび上がる。
思い起こせば、引退したときに第六階層は常に晴天にしておいたのだ。ゲームの世界ではそれで十分だった――しかし、今やこの世界は生きており、外からの生物も入ってきている。固定された環境が好ましいはずがない。
ブルー・プラネットはマスターソースの設定をなぞりながら変更を説明する。
「毎日0時に大地の状態を<浄化>するようにしよう。そして1日おきに1時間、17時から18時まで10ミリの雨が降るようにする。毎日、朝と晩にランダムに3分の1の確率で曇りになる。それで問題はないか?」
マーレが何度も頷くのを確認し、そしてアウラを見る。
「はい、問題ありません」
笑顔と共に元気の良い声が返ってくる。
アウラとしては、至高の御方が何をしようと問題はないのかも知れないが。
「よし」
ブルー・プラネットが地面に王笏を突き立てる。設定変更を適用するために必要な操作だ。
ちょうど『曇り』の確率に当たったのだろう。王笏が大地に刺さるとともに第六階層の青空にポツリと灰色の雲が現れ、それは見る間に全天を覆いつくす。
「おお……」
空を仰いだリザードマン達が感嘆の声を上げる。
「質問をお許しください……先ほど夜が昼に変わったのも、ブルー・プラネット様のお力なのですか?」
リザードマンの代表が恐る恐る声を上げる。
「ああ、そうだ。お前達には迷惑をかけたな」
ブルー・プラネットの返答に、リザードマンの代表は口をカパッと開けたまま絶句する。
彼の妻となったクルシュから天候を操作する魔法があることは聞いており、先日の戦いではアインズと名乗る神が一瞬で湖を凍らせる奇跡を示した。
しかし、この新たに現れた樹の神は夜と昼を入れ替えることが出来るという。それも気安く。
もはやリザードマンの脳では理解することはできなかった。いや、この世界で理解できる者がいるとは思えない――たとえ伝説に聞くドラゴン達であっても。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ブルー・プラネットはアウラとマーレを交え、第六階層の住人たちから更に話を聞く。
目の前に広がる果樹園や畑の世話をしているのはリザードマン達ではなく、ドライアードやトレントといった植物系モンスターが中心だという。
そして、肥料はリザードマンの糞ではなく、マーレが魔法で大地に活力を与えているらしい。
(栄養はどうなってるんだ? 窒素・リン酸・カリ……って)
星の王笏によって自動的に大地を肥沃化する設定を弄りながら、ブルー・プラネットは考える。
この第六階層に元々ある樹々については納得できる。それらはそのように創られたものだ。
だが、この世界から移植された樹々はどうなっているのだろうか――それが疑問だ。
ユグドラシルにおいて「肥沃な土地」とは単なるデータ、ここにある植物はこの速度で成長する……それだけの取り決めであり、今弄っている設定もそれだけのものだ。
だが、現実の土壌はそんなに単純なものではない。栄養素、水分量・酸性度など様々なパラメーターが複雑に影響する。各成分はミミズなどの小さな土壌生物、バクテリアなどによって化学変化を受け、一時として同じ状態に止まらない。土はそれ自身が生きているのだ。例え土壌に浸み込んだ毒物を除去しても、死に絶えた土壌生物は帰ってこない。だからこそ元の世界では「死んだ土」を蘇らせるために苦労し――諦めたのだ。
それがどうだ。ユグドラシルの仮想現実が実体化したとして、その土壌成分がこの世界の生物が要求するものと一致するなど、天文学的に低い確率だ。
「ドライアードたちは、土の状態について何と言っている?」
アウラとマーレに質問する。
トレントとなった自分で味見をしてもよいのだが、すでに<維持の指輪>によって水分補給の必要はなく、なにより自分はこの世界の生物ではない。この世界の生物の意見が必要だ。
「あ、あの、とても美味しくて、最近太ったとか言ってました」
マーレが答え、なるほど、とブルー・プラネットは考える。
自分も、そして外界から入植したというドライアードも、現実の世界ではありえない「魔法生物」である。ならば、魔法で調整された養分と相性が良いのかもしれない、と。
ブルー・プラネットは手元の土を掬った。
ミミズを探す――見当たらない。ダニやトビムシなど肥沃な土壌には多い生物が一匹もいない。
この世界の森で初めて土を手に取ったとき、そこには無数の生命が感じられたのとは対照的だ。あの時観察できた蟲達もいない。
「ふむ……」
土の匂いを嗅ぐ。菌類などの微生物による「生きている土」特有の匂いが無い。
すでに数か月が経つというのに菌類すらいないとは、<浄化>で消滅したか、あるいは――
ブルー・プラネットはユグドラシルのシステムを考えて仮説を立てる。
――微小な生物は魔法との相性が悪い、ということなのだろう。
ユグドラシルでは目視可能なサイズのキャラクターしか存在しなかった。地面があり水があり空気もあるが、そこには微生物はいない。サーバーの演算能力の限界から当然のことだ。
(では、外界の蟲や微生物は、この世界本来の成分で生きているのだろうか)
それならば、第六階層で見当たらないのも納得できる。ユグドラシルの土は蟲達の栄養にならない可能性がある。寂しい気はするが、<浄化>の魔法で外来の蟲達や病原菌を消せる、あるいはそもそも生育しないのならば、第六階層の生態系を守るうえで便利だ。
あらためて赤い実をつけた果樹を見て、ブルー・プラネットはアウラとマーレに質問する。
「この実は、何か魔法の効果はあるのか?」
「いえ、特に効果はありませんでした。モモンガ様の御鑑定でもレア度が低い果物のようですけど……」
アウラとマーレは顔を見合わせ、アウラがおずおずと答える。
ブルー・プラネットは手を伸ばし、果実を一つ取ってしげしげと見る。そして齧る。
甘酸っぱい味が広がる。薄味だ。そしてザリザリと砂っぽい。何の効果もないようだ。
(美味くは無いな)
残りは土に還すことにした。そしてこれまでのことを思い返す。
ヘッケラン達はナザリックの食事を食べていた。
ブルー・プラネットのポーションや魔法は人間達に効いた。
そして、この世界の普通の樹が第六階層で育っている。
(ある程度大きな生き物たちはユグドラシルの魔法的性質を帯びているとしか考えられないな)
生物だけではない。物質そのものも――ミスリルやオリハルコン、アダマンタイトなどユグドラシルの中でしか存在しなかった魔法金属が存在する。そして、自分はこの世界の水を飲んで渇きを癒したのだ。
(いや、ナザリックの階層間の移動は魔法による転移が必要なことと関係する可能性もあるか)
ブルー・プラネットは仮説をまとめる。
まず、人間やモンスターにはユグドラシルの魔法との親和性があり、蟲や微生物にはそれがない――これは、シャルティアやデス・ナイト達のようなアンデッドの屍肉がいつまでも腐りきらないことの説明の1つにもなるかもしれない。外界でモノが腐敗するのは、そのものの魔法的性質が失われた――例えば死によって――ときだ。
全く逆の可能性として、微生物は魔法に対して過敏ということも考えられる。<浄化>などの魔法によって消滅している可能性だ。ユグドラシルのポーションで病気が治ることはこの考えを裏付ける。
最期に、魔法による転移で外界の微生物がついてこれない可能性だ。この場合、転移によって付いてくるモノ――例えば体内の糞――は無菌状態なはずだ。
「ふむふむ……面白いな」
ブルー・プラネットは唸り、検証実験を計画する。
まず、第六階層の土を外部に持っていき、そこで菌類や土壌生物が繁殖できるかを調べる。
そして、外界で<浄化>を掛け、そこの土の微生物が消えるかを調べる。
さらに、外の土を転移によって持ってきて、菌類や土壌生物が移動するかを調べる。
微生物と一口に言っても様々な種類のものが存在する。1回の実験で結論は出ない。多種多様なサンプルが必要だ。
(これは忙しいぞ)
ブルー・プラネットは元研究者として血が騒ぐのを感じた。
だが、どこで実験をするか――外部での実験室が必要だ。
デミウルゴスが外部で動物を飼育しているとも聞く。モモンガさんは羊だとかキメラだとか言っていた。
(デミウルゴスの牧場で羊を貰い、解剖や腸内微生物の採集をさせてもらおう)
そう考えて、心のスケジュール帖に書き込む。リザードマン達――第六階層の者も湖の近くにいるという者もナザリックの庇護下にある知的生物だから解剖実験には使えないと考えて。
「なあ、アウラ、マーレ……明日は外の世界で動植物を採集してみたい。また、ここの土を少しばかり外の世界に持っていって実験したいのだが、そういうことが出来る場所に心当たりはあるか?」
ブルー・プラネットの質問に、アウラとマーレは再び顔を見合わす。
そして、アウラが首を傾げながら口を開く。
「申し訳ございません、ブルー・プラネット様がどのような実験をお考えなのか分かりませんが、トブの森の中にあたしが造った施設がありますから、そこに行ってみましょうか?」
「……本当に、お前達には世話をかけるな。よし、それではこの後でモモンガさんに予定を話してみよう」
ブルー・プラネットが喜んで双子の頭を撫でると、アウラとマーレは首をすくめて嬉しそうに顔を蕩かした。
そんな双子を見て、ブルー・プラネットはもう一つ、重要な問題を思い出す。
どちらに聞くべきか――ブルー・プラネットは悩んだ末に、両方に問いかける。
「あの……つかぬことを聞くが、お前たちはトイレに行くのか?」
顔を蕩かしていたアウラとマーレは、えっ? というような顔でブルー・プラネットを見上げた。顔を赤らめて視線を左右に動かしていることから「トイレ」という概念はあるようだ。
「あ、あたしたちはトイレに行ったことはありませんよ?」
「ぼ、ぼくも……です。あ、あの、それが普通なのかなっ……て思ってました」
双子の言葉に嘘はない――ブルー・プラネットはホッと息を吐き、独り頷く。
トイレが必要なのは、ヘッケランたちやリザードマンたち外界からの者だけだ。
それが当然だ。ナザリックにはトイレはない。メイドたちも守護者達も「トイレに行く」ようには創られてはいない。
そして自分も――ブルー・プラネットはこの世界の「水」を自然に受け入れ、空腹感を感じないことを思い出す。意思と知識をもったNPC達、ユグドラシルの設定に上書きされたようなこの世界――作られたキャラクターとしての力をもつ自分は何なのだろうかと。
(人間の魂……か)
姿も能力も仮想のものであるユグドラシルにおいて、自分の心だけは現実世界に由来した。
元の世界の記憶――それこそが自分とNPCを区別するもの、生きた人間であったことの証だとブルー・プラネットは枝となった自分の手を握りしめる。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「あっ、そろそろ来ましたね」
アウラが顔を上げ、森の方を見る。
ブルー・プラネットも足音を察知して森を見る。
まだ樹の陰に隠れて視認はできないが、その足音から小柄な人間――いや、やや硬い皮膚をもつ――動く樹が1体。そして、それに遅れて同じような小柄な樹が幾つかと、大きな樹もゆっくりと歩いてくる。
やがて、先頭の足音の主が森を抜け、姿を現す。
「やっほー、ピニスン! 今日は大事なお客様がいらっしゃるから急いで!」
アウラが口に手を当て、その者――ドライアードを呼ぶ。
呼ばれたドライアードは急いで駆けてくる。
(へぇ、かわいい子だな)
ブルー・プラネットは一瞬そう思い、その直後、ドライアードを「かわいい少女」と認識してしまった自分に気づいてショックを受けた。そして、この世界に来たばかりの頃、誤って大木を殴り倒して樹に「同胞」のような感覚を確かに感じたことを思い出す。
「俺は人間であると同時にトレントなのか」――能力だけでなく感性まで。
人間としての自覚が早速揺らぎ、困惑しているブルー・プラネットをよそに、誇らしげにアウラが紹介する。
「この方が、第六階層を管理されるブルー・プラネット様なの! どう? 素敵でしょ!」
「ブルー・プラネット様……ですか! はじめましてピニスン・ポール・ペルリアです」
ドライアードは驚いたようにブルー・プラネットを見上げ、周囲の神妙な面持ちをしたリザードマン達を見回す。
「ピニスン……か。よろしくな」
ブルー・プラネットは、あらためてドライアードを観察する。
その姿はまるで抽象化された人間の少女の裸像だ。艶やかな木の肌は健康的な日焼けを思い起こさせ、新緑に彩られた蔦が流れる髪となってその身に絡みつき、幅広い葉が胸や下腹部を覆っている。まさに「森の生命」を少女の形に託した――そんな姿だ。ユグドラシルにもいたモンスターだが、この世界で具現化した姿は当時よりも遥かにリアルで艶めかしい。
(セーフ! 見た目、人間っぽいからセーフ!)
ぷにっと萌え、スーラータン――何人かの友人は合成樹脂で作られた精巧な少女の人形をコレクションしていた。特に漫画家を目指していたホワイトブリムは自らのスケッチを元に大量に人形を製作しており、デジタルデータとして持ち込まれたそれがメイドたちのデザインの基礎となった。 そのような人形は多くが非現実的にデフォルメされた顔貌をしており、ユグドラシルのモンスター少女をデフォルメしたシリーズ「ユグドラシル・コレクション」も一時期大いに話題になったものだ。
(これを「かわいい少女」と感じるのは正常な範囲!)
ブルー・プラネットは必死で納得しようとする。人間としての誇りを守るために。
そして、もう一つの疑問が生じる。
では、この植物系モンスター――シモベとして創造された者ではない――から見て、今の自分は何に見えるのか、だ。
「お前から見て、私はどう見える?」
ブルー・プラネットは、目の前の「少女」に問いかける。
「えっと、うん、とっても素敵な方だと思います。御側にいると……なんて言うんだろ? 幸せな気持ちになって、すごく勇気が湧いてきます」
ピニスンの返答は、ユグドラシルのキャラクターとしては正しい。ブルー・プラネットは、トレント種として周囲の植物系モンスターをコントロールする能力があり、コントロールされたモンスターは自動的に能力が向上する。さらに、今の装備はその効果を拡張・強化するものだ。
――納得してブルー・プラネットは頷く。
「でも、ブルー・プラネット様は……あの、トレントですよね?」
「ん、分かるか? 一応はトレントだが、外装はかなり弄っているからな」
種族についてのピニスンの見立ては、ブルー・プラネットの外見からすれば当然のものだ。今の姿を見て「人間ですね」と言われたら、その方がおかしいだろう。
「はい、でも、ボクが知ってるトレントって、もっと大きい……」
ブルー・プラネットの背後から危険な空気が広がり、ピニスンの言葉が突然途切れる。
振り返ると、アウラとマーレが「文句があるのか」という顔をして、武器を――アウラは鞭に手を掛け、マーレは杖を振りかざしていた。
「はは、いや、いいよ。うん、実はね。私はトレントだが、仲間たちと合わせるために体を小さくしたんだ」
「あ、あの! そうですか! そんなことが出来るんですか! やっぱり凄いですね! 流石は至高の御方です! 至高の御方バンザイ!」
ブルー・プラネットとピニスンは慌てて取り繕い、闇妖精の双子は黙ったまま武器を収める。
だが、ピニスンの言葉は半分は本心である。自分で自分の姿を変えることが出来るトレントなど聞いたことが無い。
「はぇー、すごいですね。やっぱり至高の御方って僕らとは全然違うんだ」
ピニスンの言葉に、アウラとマーレは「当たり前でしょ、何をいまさら」と言いたげな顔をする。呆れてはいるようだが、一応怒りは収まったらしい。
ブルー・プラネットは、枝を振って双子を少し下がらせ、ピニスンとの会話を続ける。
「お前は、えっと、ピニスンはドライアードだな」
「はい」
「外の世界から来たらしいな。この森に他に仲間はいるのか?」
「えっと、仲間っていうか、何人かドライアードはいます。トレントも何人かいます」
「そうか……あっちの奥に動いているのがそれだな?」
「は、はい! あの、急いで呼んできます」
まだ森の奥にいる同類たちの存在を言い当てられたピニスンは目を丸くして叫ぶ。
「いや、それには及ばない。お前ひとりで十分だ。ちょっと実験に付き合ってほしいのだが」
「うぇ、いえ、はい、なんでもなさってください」
ピニスンは諦めきった顔で答える。世界を滅ぼす化け物を簡単に滅ぼす化け物たちが犇めくこの場所ではどうせ拒否権はないのだ、と。
「そうか、それでは――『行進』」
ブルー・プラネットは植物系モンスターをコントロールするスキルを発動させる。
何か見えない糸が噴き出る感覚があり、それがピニスンに繋がる。
「え? あれ? あれぇぇぇ! うわぁぁ! なんだなんだ!」
ピニスンの手足が勝手に動き出し、歩き始める。ピニスンは困惑の叫び声を上げる。
「ちょっとピニスン!少しは静かにできないの!?」
相変わらず騒がしい奴だ、と呆れてアウラが叫び、慌ててピニスンは口をつぐむ。
「あの、えと、ごめんなさい、あの子はいつもこうなんです」
マーレが困った笑顔で後ろから説明する。
「ああ、いいよ。次は『ジャンプ』」
ブルー・プラネットが別のスキルに切り替えると、糸が外れた感覚があり、再び別な感覚がピニスンと繋がる。
ピニスンは両足を揃えてその場でピョンピョンと飛び跳ねる。口を閉じて手で押さえ、必死に叫ぶのを我慢しているが、それでもムームーという声が漏れる。
「ありがとう。驚かせてしまってすまないな」
ブルー・プラネットは感覚の糸を引っ込め、ぐったりとして膝を折るピニスンに実験終了を告げる。
「いえ……でも、これは一体……?」
「いや、ちょっとした実験だ。どんな感じがした?」
「えっ、あのっ、最初は勝手に体が動いてビックリしたけど、次は、なにか動かなきゃって感じて飛び跳ねたんです」
ドライアードは本来それほど活発に動くモンスターではない。それが強制的に動かされたためか、少し疲れた口調でピニスンは答える。
「ふむ、最初が体が勝手に動いて、次に動かなきゃならないと感じた、と」
なるほど、とブルプラも頷く。
ドルイドのスキルで「行進」させたとき、トレントのスキルで「ジャンプ」させたとき――どちらのスキルでも、ピニスンの視界はブルー・プラネットに共有された。しかし、スキルによって、体を支配するものと意思を支配するものの違いがあるらしい。
ブルプラ達シモベを動かしたときはどう感じていたのだろうか、とブルー・プラネットは帝国の森に残してきたシモベたちを思い遣る。
彼らであれば「創造主のご意思に従うのは当然です」などの答が返ってきたことだろう。しかし、この世界に元々自分の意思をもって存在していた者はスキルの支配下においてもそこまでの忠誠心は無いようだ。
今後の実験計画を考えるブルー・プラネットは、ピニスンが自分に向ける視線に気が付く。
それは畏敬の念と、それに勝る恐怖を秘めていた。
(こんな小さな子を怯えさせて申し訳なかったな……)
ブルー・プラネットは罪悪感に襲われる――それは植物系モンスターとしての同朋意識から来るものだろうか? それとも人間の意思の残滓が訴えるものだろうか?
ブルー・プラネットにはその区別がつかなかった。
「驚かせてすまなかった。これは実験に付き合ってもらったお礼だ」
蔦を伸ばし、それに花を咲かせ、クルリと輪にして切り離したものをピニスンの頭に被せる。それはユグドラシル時代に編み出したスキル――「花まつり」で配った、先着百名様への花の冠だ。
「あ、はい? うぎゃ、うわー! ブルー・プラネット様、いけません! ボクはそんな!」
ピニスンは何かを頭の上に乗せられた感触に一瞬戸惑い、それを手に取って見ると発狂したように騒ぎ立てる。
「あんたね、『騒ぐな』って何度言っても分からない? そんなに燃やされたいの?」
「あ、あの、ブルー・プラネット様からのプレゼントに、し、失礼だと思います」
アウラが腰に手を当て、顔を顰める。
おどおどとした口調ながら、杖を両手で構えて、マーレの目が座る。
この階層の守護者2人に詰め寄られ、ピニスンは泣きそうな顔で縮こまる。周囲のリザードマン達は怒りをあらわにした闇妖精たちに恐れをなし、自分の存在をこの場から隠すように平伏している。
ブルー・プラネットは、なぜそんなにピニスンが騒いだのか分からず、困惑していた。
しかし、この状態をなんとかせねばならないことは確かだ。
「おほん……アウラ、今言った言葉を私に向かって言ってみなさい」
「え、あ、あの……?」
ピニスンを睨み付けていたアウラが、ブルー・プラネットの言葉に振り返り、自分を睨むその視線にたじろぐ。
「私に向かって『燃やされたいの』って言ってみなさい」
「あ、あの……申し訳ありません!」
至高の御方に対する暴言を命じられ、アウラは泣きそうな顔になり深々と頭を下げる。
姉が叱られているのを見たマーレも焦った顔でアウラとブルー・プラネットを交互に見つめる。
「私の前で樹に対して気安く『燃やす』など、それは私に対する暴言であると知れ!」
「はっ! も、申し訳ございません!」
語気を強めたブルー・プラネットに、アウラがぶるぶると震え、頭を下げて不敬を詫びる。
ブルー・プラネットは本気で怒ったわけではない。とりあえずこの状況を収めようとしただけのことだ。
だが――ナザリックの者たちが外界の者を軽視し、徒に命を奪うこと、あるいはそのように脅迫することは将来に禍根を残すことになりかねない。ナザリックで生まれた者と外の世界の者では忠誠心が違うのだから同じ行動基準を求めても仕方がない――そういった後付けの理屈が心に浮かぶ。
「ナザリックの外であればともかく、中で庇護すべき立場の者にあまりに威圧的に振る舞うことは感心せんな」
「はいっ! 申し訳ございませんでしたっ!」
アウラが頭を下げたまま謝罪する。
「マーレも、分かったな?」
「は、はい! わ、分かりました!」
不安げに姉に視線を送っていたマーレも、自分の名を呼ばれて飛び上がって答える。
「よろしい。――で、ピニスン?」
「はい、叫んだりしてごめんなさい。いえ、嬉しいんですけど、ボクにはちょっと早すぎると」
(早い?)
ブルー・プラネットは一瞬戸惑い、そしてその意を悟る。
そして、この場を収める方便を必死に考える。
「どういう意味よ?」
困ったやつだ……そんな顔をしてアウラは呟く。先ほどの叱責が堪えたのか、それほど高圧的ではない。
「アウラ、気にするな……ピニスン、すまなかったな。いきなりで驚かせてしまった」
「ほ、ほんと、ビックリしました。でも、嬉しいです、本当に」
ブルー・プラネットの謝罪に、ピニスンは花輪を胸に抱えて笑顔で答える。
「で、でも、そんなに素敵なプレゼントを頂いて失礼なんじゃないかと……」
マーレは、なおも納得がいかない様子だが、いつものように自信無げに呟くだけだ。
「いや、マーレよ、急なプレゼントに驚いたらそうなることもあるのだ」
重々しく告げるブルー・プラネットの言葉に、マーレは自分の左薬指にはめられた至高のアイテムに目を遣る。そして、指輪を授けられた時の自分の態度を思い出して顔を赤らめて頷いた。
「ともかく、このことは忘れろ。他言は無用だ」
「はいっ! 忘れます!」
「は、はい。わ、忘れます」
闇妖精の双子は笑みを浮かべて至高者への恭順を示す。
この事件を忘れることは、自身の不敬も不問に処すということであると理解したのだ。
「それでは、ピニスン、その花輪は……私から貰ったことは、仲間には秘密にしておいた方が良いだろう」
「そ、そうですね、そうします。ボクだけの宝物です。きっと実をつけてみせます」
そう言ってピニスンは嬉しそうに花輪を頭に被りなおし、輝くような笑みを振りまく。
そうしているうちに、森の奥から他のドライアードやトレント達も現れる。
畑仕事に出てきたそれらは、平伏するリザードマンと早起きな仲間、そしてそれらの中に立つ3人の高位者――その1人は小柄なトレントだ――を見て当惑を隠せない。
「あんた達、遅いじゃない」
アウラが叱責し、遅れてきた者達は「今まで夜だった」と弁解をする。
そして、再びブルー・プラネットはアウラとマーレの紹介を受け、その力を示す。
ドライアードたちはその力に驚きながら、新たなる至高の主人に寄り添うように立つピニスンと彼女が被る花輪を見て何かを悟ったようだった。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ブルー・プラネットは、この件は不問にせよとアウラとマーレに再度念を押し、自分の居室前へと転移した。そして部屋に入るとベッドに潜り込み、布団に包まってゴロゴロとその巨体を転がす――さながら巨大な干瓢巻の様に。
先ほどの失態がフラッシュバックしてブルー・プラネットを悶えさせていた。
(そうだよ、花って植物の生殖器官じゃないか。それをあんな小さい子の頭に被せて「はい、プレゼント」って!)
変態バードマンが腹を抱えて笑い転げる姿が脳裏に浮かぶ。
『ちょ、ちょっと、ブルーさん、それって犯罪っすよ! 流石に俺でも引きますって!』
「やーめーてー!」
振り回した無数の蔦で布団が千々に引き裂かれ、中の羽毛が飛び散る。
やがて、自走式竹箒ゴーレムがウワァァと音を立てて床を掃除しにやってくる。その音を聞きながら、ブルー・プラネットはベッドの上で枕を頭に被っていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
ブルー・プラネットがモモンガの居室を訪ねたのは晩になってからだ。
「ブルー・プラネットさん、第六階層の様子、どうでした?」
「ええ、まあ……色々と分かったことがありますんで、後で報告書にまとめますね」
「ありがとうございます。それで、修復のコストは掛かりますか?」
「いえ、今のところは大丈夫です。問題はありませんでした」
モモンガは何やら疲れた様子のブルー・プラネットをみて心配したが、その言葉を聞いて胸をなでおろした。
「明日は外の世界で実験をしたいんですけど、良いですか? アウラが造った建屋があるそうですが……」
「ああ、あの建物ですか……良いですよ。アウラに訊いて、自由に使ってください。ただし、外に行くときは十分に気を付けてくださいね」
外の世界に出かける元気があるのなら大丈夫だろう……そう判断し、モモンガは許可を出す。
ただし、例のワールドアイテムへの注意を喚起し、明日の朝、対抗するために適切なワールドアイテムを選んで渡すことを約束する。
「えー、モモンガさんが選んでくれるんですか? 悪いですよ。私も取りに行きますから」
「いえ、ちょっと管理上面倒でして……」
モモンガは冷静さを装いながら必死で頭を働かせる。
ワールドアイテムを保管している宝物殿には転移の指輪を持つ者が2人以上で入ることになっている。そして今の管理者はモモンガの黒歴史、パンドラズ・アクターであり、彼は今“漆黒”のモモンとして帝都に戻る途上にある。
パンドラズ・アクターに黙って持ち出すのは組織の運営上、示しがつかない。夜のうちにモモンガと入れ違いにパンドラズ・アクターを呼び戻し、ブルー・プラネットと2人でワールドアイテムを選別させるべきだが――それは危険すぎる、というか、恥ずかしすぎる。加えて、アヴァターラもまだ片付けていないのだ。
(夜のうちにアルベドとパンドラズ・アクターにワールドアイテムを取らせ、パンドラズ・アクターを帰す。それで翌朝、俺がアイテムを渡す……か)
モモンガはブルー・プラネットに
そして、もう一つの現在進行形の黒歴史への対処も行う。
「ところでブルー・プラネットさん、今の装備、カッコいいですよね。記念に写真撮りません?」
「はい? ええ……でも記念って? ……別にいいですけど」
「はーい、じゃあ、王笏を構えてください。勇ましい格好で……そうそう、いいですね!」
「なんだか照れますねー」
「恥ずかしいと思ったら負けです! はい、もう一枚!」
いきなり記念写真と言われてブルー・プラネットは戸惑うが、そのうち調子に乗って色々なポーズをとって写真に撮られる――王笏を振りかざして天を見つめるポーズ。何かに挑みかかるようなポーズ。弓を引くように枝を水平に伸ばし、何かを指さすポーズ。腰に手を当てて身体を反らし、斜め45度の角度で叫ぶポーズ……。
モモンガはその姿を見て内心ほくそ笑む。
(これなら、花を飾られて恥ずかしいのは……ブルー・プラネットさん、死なば諸共ですよ)
撮影会が終わり、モモンガとブルー・プラネットは笑いあう。
そして、ブルー・プラネットはやや真顔になり、撮影の間拍手をしていた天井の
「ところで、モモンガさん……モモンガさんはスケルトンの性別って判断できます?」
「え? なんですか? いえ、考えたこともなかったな……」
モモンガはいきなりの質問に、顎に手を当てて考える。
「普通のスケルトンに性別ってあるんですかね? 運営が用意したモデルだと思いますけど」
ユグドラシルのモンスターにおいて明確に性別が規定されたものは存在した。サキュバスやバンパイア・ブライド、そしてドライアードなどが典型例だ。しかし、それらは「女性である」ことに意味があるモンスターであり、スケルトンには性別を持たせる意味がない。特に規定されていなければ、暗黙の了解でモンスターは雄として扱われていた。ただ、それも明確ではない。ストーリーが用意されているボスキャラやプレイヤーの嗜好でもなければモンスターの性別など考えるメリットはなく、ユグドラシルが18禁行為に異常に厳しかったこともあわせて性別を強調することは避けられた。
「確かにナザリック内のポップする奴らはそうでしょうけど。でも、この世界の人間から作ったスケルトンには元男・元女ってのがあるわけで」
「どうなんでしょ? 確かにこの世界の人間を媒介にしてますけど、モンスターになったら外装はユグドラシルと同じじゃないのかなあ?」
ほら、デス・ナイトのような体格の人間っていないでしょ? とモモンガは尖った顎を扱きながら付け加える。
「あ、でもゾンビとかは生前の特徴を残してますねえ……すると、ゾンビの骨格には特徴が残るか」
モモンガは、短い期間だったが共に依頼をこなした冒険者のなれの果てを思い出す。あれは、この世界の人間を材料にして、この世界の術者によって作り出されたものだ、と。
「ふむ……スケルトン……ゾンビ……じゃあ、レイスのような死霊系は……?」
死霊系モンスターについて造詣が深いモモンガは、様々な可能性に思いを巡らす。
「ということは、モモンガさんはスケルトンの性別は気にしてなかったわけですね?」
「ええ……でも、なんでそんなこと聞くんですか?」
ブルー・プラネットは話を元に戻し、モモンガはそれを不思議そうに見上げる。
「いえね、モモンガさんって、女のスケルトンみて『かわいいな』とか思うのかなって」
「はぃぃ?」
何かとんでもないこと言いだしたぞ、この男は。
――仰け反ったモモンガからそんな視線を感じ、あわててブルプラは枝を振る。
「いやいや、そんなに引かないで下さいよ。実は今日、第六階層でドライアードと会ってですね……」
植物系モンスターを「かわいい」と思ってしまったことを説明をする。花輪の件はさすがに隠したが。ブルー・プラネットは数時間の葛藤の末、あれは「自分が植物の感性を知らない」証拠であり、すなわち「自分が人間である」ことの証拠だと決めていた。
「ああ、そういうことですか。いきなり何言いだすのかと思いましたよ」
「ごめんなさい。でもね、私、最近『俺って本当に人間なのか?』って自信なくすんですよ」
「……んん、そうですね。確かに。俺も自分の考えがかなりアンデッド寄りになってますし」
モモンガは、王国での殺戮を思い出す。人間であったときならば卒倒していたであろう悪魔の所業を。
ブルー・プラネットも小さな町で全滅させたワーカー達を思い出す。人を殺すことに何の躊躇いも、罪悪感もなかった。そして、思い出している今も何も感じない。
「人の命奪うことに……躊躇しなくなってますもんね」
「ブルー・プラネットさんも、ですか」
モモンガの言葉に、ブルー・プラネットは小さく頷いた。
「私の場合だと、樹が倒れたり燃やされたりしてるのを見ると、むしろ人間が殺されてるより辛いですよ」
「俺は……そうですね。さすがにアンデッドに好意はもたないですけど、死体には恐怖も不快感も感じないですね……」
しばらく、沈黙がその場を支配する。
「異形種の設定が影響してるんでしょうね」
「そうですね……まあ、この体になったことを後悔はしてませんけど」
モモンガは以前から感じていたことを述べ、ブルー・プラネットも同意する。
「骨じゃあ食事ができないのは残念ですけど」
「便利ですし、強いですしね」
「この世界に来て、この体のおかげで随分と助かってますよ」
「ほんとそうですよね。元の人間の体だったら何回死んでることやら」
モモンガは努めて明るく笑い、ブルー・プラネットも明るい声で答える。
「モモンガさんがいてくれて良かったです。もし1人でこの世界を彷徨ってたら……」
「俺もですよ。ブルー・プラネットさんが居てくれるおかげで『俺は人間だ』って思い出せますから」
そうとも、俺たちは人間だ――骸骨と怪奇植物の2人はお互いを見つめ、握手をかわす。
ブルー・プラネットはモモンガの部屋を出て、溜息をつくと自分の部屋に向かって歩く。
残されたモモンガも溜息をつき、首を振って、再び仕事の続きを始める。
モモンガの手が止まる。
「今夜は、ちょっと寝てみようかな?」
目を閉じることはできない。ベッドに入っても眠れるわけではない。
しかし、今夜は人間として振る舞ってみたくなったのだ。
「ペロさん、落ち込んでるけどどうしたんだろ?」
「茶釜さんに『ユグドラッ娘』フィギュアのコレクション、燃やされたらしいよ」
「あー……それで」
※2017.9.4 一部修正