この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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一番常識外れな代行者

洗面器で顔を洗い鏡を見ると、切れ長の細い目と目が合った、まあ、自分の顔なんだが、この世界に来る前と全く変わってない。癖の付いた髪に伸びてきた髯を見ながらそう思う。最近、特に物入りなので、稼ごうと思うが、狩場の情報がない、代行者曰く、この辺りは平原のど真中らしく、千里眼で見てみたが魔物らしきものは確認出来なかった、結構遠くにある山岳には居るようだが遠い、それに平原では、誰に見られるかわからない、悪魔系のスキルを使って見るつもりでもいるので特に人目は避けたい。効果の方はまだわかっていない。まあ、長距離を歩くことにげんなりしている。

「おはようございまーす、………エヘヘ」

向日葵も起きてきたようだ、勿論満面の笑みだ、戦闘用に作ってはいるが戦闘の知識や経験がある訳ではないし、その辺りの確認もするため連れていく。

 

移動中だが、説明しよう。魔法を使った攻撃だが、目の材料に使った風の魔石と火の魔石を媒介にする。目にしたのは宝石のように綺麗だったためだ、右は赤く、左が黄色のオッドアイ、今使えるのはウインド、ライトニング、ブレイズ、バーストの四つ、近接戦闘を想定して、アダマンタイトを表面と内部に使われている。内部のアダマンタイトは、体の数ヵ所に空いた穴(普段は膜に覆われ見えない)からだし、体を覆い防具にする他、武器にして攻撃する事がてきる。まあ、そろそろいい距離だろう。代行者、誰かに見つからないように周囲の警戒を頼むな、後悪魔系のスキルについてわかったらおしえてくれ、

 

《了解しました》

と、戦う前に出来る事の確認、

 

「まず、ブレイズを使って欲しい、できるか?」

「わかりました!ブレイズ!」

笑顔のまま唱えた、目の前で火柱が上がった。これでバーストも問題ないだろう。………加減について後で話をする必要がありそうだ。次はアダマンタイトで武器作成、

たがここで問題が発生、量が少ないためか、大きな物や長い武器が作れなかった。なので、ナックルのように拳や足を覆う籠手やブーツのようなものを作り、それで戦う事にした。代行者ー、山にはどんな魔物がいるんだ?

《動物系の魔物が80種類います、大きいものから順に………》

ストップ!ストップ!種類はいいから取り合えず弱そうなのを、向日葵用に一体隔離してくれ、

《了解しました。こちらはどうでしょう?》

早いね、どれどれ………汚な!………ねぇ、なんか汚ないのばっかり選んでない?頭を見る限りオークって奴ですか?

《正解です》

当たっても嬉しくない、大丈夫か、これ、オーガ程じゃないが、二メートルはあるぞ、まあ、遅そうだから逃げる分にはいいだろうけど、

「よし、これからオークを一体呼び出す。それを倒せ、危なかったり、無理そうなら助けるぞ、」

「頑張ります!」

元気よく返し構える。完全に素手だ、本当に大丈夫だろうか?刀に手を掛けてもしもに備える。ある程度距離の離れた場所に呼び出す。

「行きます!」

真正面から突っ込む、

 

パァァン!

 

最早破裂音、向日葵がしたのは相手の懐に飛び込んでからの正拳突き、が音が異様な用に威力も異様、オークの肥太った腹に風穴を開けた、殴っただけでこれだ、しかも今のところ戦い方を教えていない、加減も覚えるだろうが、パフォーマンスを上げたらどんな威力になるか、まあ、空手を少し教えてみるか

 

パァァン!バァァン!スパァン!

 

………呼び出したオークに次々と風穴を開けていく、笑顔で、一帯は血の池地獄だが、返り血を浴びていない。俺だって何かを斬れば少しは自分の方に飛んでくる。というか、始めに斬ったゴブリンの返り血はいやと言うほど浴びた。まあ、結界があるから服は汚れなかったが、刀を当てる角度を注意すれば自分の方に飛んでこないようにすることも出来るが、向日葵に俺の技術に匹敵する戦闘センスがあれば可能だが、そういったものは無い、結論は馬鹿力だ、並々ならぬ力で打ち抜かれている。オークが水風船を割るかのように次々爆ている。

《解析終了しました》

ん?ああ、冒涜と強欲の効果がわかったか、説明頼む。

 

冒涜 内訳

生命の冒涜 触れた物の存在値を操作したり、奪ったり出来る。

魂の再分配 存在値を他者に振り分けたり、貸したり出来る。

 

………存在値って何?

《この世界に存在する者が持つ、スキル等を全て統合したものが存在値になります。》

わかりません。ちなみに存在値を奪うってあったけど奪われるとどうなるの?

《消失します》

消失とは?

《文字通り、消えて失われます》

こういうのは実際に見てみた方がわかりやすいな、オークの死体に触れるが何も起きない。代わりに手に黒い炎が纏わり付いてきた。そして狼煙のように空に黒い柱が伸びている、見た目だけでもヤバそう。

《存在値を吸収する場合生きている者からでないと奪えません》

成る程、オークを呼び出し、結界で押さえ付ける。そして、背中に触れる。暴れるが、その程度では、結界は動かない。現在結界で地面に押さえ付けているのだが、この結界、本当に万能である。耐性付与以外にも、指定した物の通過、遮断を設定できる。今のようにオークを遮断で地面に押さえ、俺の手を通過させているように、そうこうしているうちにオークは動かなくなっていた。

《オークの魂を入手しました。存在値に変換します。………存在値10になりました。》

いや、お前が消すんかい、消失というよりは消費?変換?

《オークの存在が変換により消失します、隔離すれば消失しません。》

まあいい、相手の魂を奪い、自分の力に的なことか?

《違います》

えー………、どういう事?小難しい話はパスしたいんですけど、

《では、オークの持っていた剣や槍、どちらでも良いので触れてください》

槍は持ち手が汚ないので剣にするわ、剣の平に手を当てる。すると直ぐに霧散して消えた。

《防具、盾、弓矢、薬品、食品等にも使用可能です。》

薬品と食品に使う利点は?

《薬効、栄養を即座に体に反映します。食事の時間を取らずに済みます》

時間がない時は嬉しいが、微妙だな、薬品に関してはこの世界の薬を知らないのでなんとも言えない。強欲の方の確認をしたい。

《了解しました》

 

強欲 内訳

亡者の渇望 実体の有るもの無いものに触れたり、動かしたり、自分の物に出来る。

罪源 美徳系、天使系スキル保有者に攻撃が当たるようになる。

 

最初のはいいが、罪源、これはなんだ、美徳系?天使系ってなんだ、代行者、

《美徳系は、大罪系スキルと対をなすものです。天使系は美徳系のスキルを中心に分岐、類似するものの総称です。ちなみに、冒涜は傲慢の類似スキルです。》

罪源を見た感じ美徳系は攻撃が効かないみたいな感じだけどこれは?

《美徳系は防御に特化しているため、普通の攻撃では、破れません。大罪系は攻撃出来ますが、代わりに攻撃したものに毒や呪いをかけます。美徳系にはそれらを防ぐスキルが入っています》

成る程ね、対を成すもの以外には無敵みたいなものか、エグいな、

《例外もあります。聖職者、眷族、神の使いは無効とはいきませんが、ある程度の耐性を持ちます》

 

神の使い………俺も該当する?

 

《はい》

 

あれの使いかー、シンプルに嫌だな、まあいいかこれだけである程度の耐性を得られるなら、後は強欲を実際に見ておかないとな、

「向日葵、強欲ってスキル使えるか?」

「えっ、はい、…………対象は何でしょう?」

「んー、何がいいかな?………魔石とか、どうだ?」

回収出来れば一石二鳥くらいの感じで頼んだがグロかった、向日葵の細い両手から青っぽく暗い色の炎が生じると、同じように黒い狼煙を上げる。そして、炎が枝分かれして、一つ一つが生き物のようにオークの死体を貪っていく。肉食動物はまず、草食動物などの内臓を食らう、この光景はそれによく似ていた、獲物の腹に頭を突っ込み血に汚れながら貪り食う。が、こっちの目的は食うことではない。何体かが爆ぜた、腹ではなく、胸部が、それに続くように次々と死体が爆ぜた、その後、炎は向日葵の元に戻っていき、その手からは、魔石が溢れていた。手に収まらなかったものは、次々と地面に落ちる。

「こ、これでいいで………ああ!」

これ心臓を潰すとか出来る奴だな、何より直接触れると言う制限もない伸ばせる距離、分岐出来る数の限界は今見た感じではわからないが、

《演算・制御系のスキルを付与すれば高い制御が出来るようになります》

ふーん、まっ、今んとこ無理だし、手に入ったときでいいか、

《私なら可能です》

えっ、マジで、…………あー、なんかあったような、

《付与できるスキルは以下の通りです》

 

ウリエル

正義ノ使徒

ラファエル

奇跡ノ使徒

ガブリエル

啓示ノ使徒

ミカエル

審判ノ使徒

カマエル

破壊ノ使徒

バラキエル

雷光ノ使徒

サンダルフォン

支配ノ使徒

アリエル

調和ノ使徒 

 

なんじゃこりゃー!多いわ!

《現在付与が行えるのは、この八つです》

しかも現在つったぞ、こいつ、

《希望等あればそれに沿って作る事も可能です》

何でもありか?あり得ねえー、

《与える場合存在値ごと与えます。作る場合その内容に応じて存在値を消費します。なお、同じスキルを複数の対象に付与、一人の対象に複数のスキルを付与する事は出来ません》

これ結構難しいね、俺は冒涜があるから、他から存在値を持ってこられるけど、無かったら減る一方じゃん、何を与えるかも重要だし、

「う~ん、」

向日葵の戦闘スタイルを考えるとバランスのとれたものが望ましい。

《演算と戦闘力を丁度半分にした。正義ノ使徒が条件に該当します》

それでいっか、どうやって付与するんだ?

《付与する対象に触れ、『汝、我主トスルナラバ、汝、正義ノ使徒ニ任ズル』と念じる。または、言ってください》

「向日葵、こっち、」

手招きすると、こっちに、パタパタと走ってきた。普段も笑顔だが、今の笑顔は一段と明るいが、周囲の死体を量産した張本人である。

「何ですか?ご主人様、」

「今更だが様付けは止めてくれないか、柄じゃないし」

「そんな、………わかりました。ご主人、殿」

あんま変わって無くない?様以外も変えてほしかったが、悲しそう顔をしているのでこれで納得するしかない。この件は、置いといて向日葵の頭に手をのせる。

 

『汝、我主トスルナラバ、汝、正義ノ使徒ニ任ズル』っと、これでいいのか、確認のために向日葵のステータスを見る。

 

No name オートマタ

機構精霊 笑顔の向日葵

制作者 北川 龍登

パーソナルスキル 強欲 正義ノ使徒

スキル 火魔法7 風魔法7 自動修復5 格闘術2 体術1

耐性 毒・酸無効

称号 生きた人形

 

近接格闘のスキルがついてる。ついでに正義ノ使徒の効力も確認。

 

正義ノ使徒 内訳

律スル者 自らを戒める事で制御能力を上昇させる。

 

裁ク者 罪を裁く事で力を上昇させる。

 

通ス者 自らの主張・主義を通す事で防御、精神防御が上昇する。

 

どのくらい上昇するか知らんが、上がり方によっては完全チート………概要は大分フワッとしているが、まあいい、街に戻ろう。


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