「色違いの童話種、姥捨山とぶんぶく茶釜、北風と太陽を魔法を使わず完全討伐と書いてある訳だが………」
まず、童話種について説明すると異界には魔物が居ない。代わりにこの童話種がいる訳だが、これらは自然発生するので無い。魔物は生物と魔物の違いは、魔物が魔石を持つが動物は持たないと言うものだが、それ以外の臓器等に着目すれば、異形と言える程形が違う物を除けば消化器と言った、臓器の類はそんなに変わらない。
まあ、魔物でもその辺りを見ればどういう進化を辿ったのか、ある程度大雑把な足跡を辿るくらいなら出来なくもないが、この童話種という奴は生物をベースにする。そこにダンジョンの血肉もとい、土塊を混ぜて捏ねてで出来た物がこれだ。………と言っても俺がの目に写る異界は人と違う訳だが、その辺りはまあ、今聞いた話で違和感というかそれでいくつもの種類が作れるのかとか、思っただろうが、その辺りは形だけと言う奴だ。見えるものが違う理由は異界全体に幻覚魔法が使われているからだ。俺が持つ真理のせいで効果は無いが、まあ、土塊でかさ増しして形を作って上から幻覚をかけた訳だが………
「………こんなの作って何になるのかねぇ？醜悪だ、センスを疑う」
取り敢えず、一番近くに居た童話種のぶんぶく茶釜の元に来たのだが、まあ、他も似た物と言えばそうだが、腹や口に岩を詰め込まれた老人、もっとも、シルエットは原型を留めておらず、馬鹿デカイ亀といった感じだ。しかし、この老人は生きている。内包する魔力量を一定に減らすと助ける事ができるとかで、部位を切り落とすとその箇所は欠損したままになるとの事だ。ただ………
「完全討伐ってのがどう言う状態を指すのかわからんが………」
「………珍しい、パターン？」
その辺りは色々試すつもりだが、まずは俺からだ。背中に素早く移動して冒涜で魔力を吸い上げる。………駄目だ、ダンジョンとのリンクが切れた。土塊が泥のように溶け出し、衰弱した老人が残る。腹等は裂けていたがその辺りは元に戻っている。その辺りは回復するようだ。
「………次はどうしましょう？」
「月夜、次は頼めるか、説明は移動しながらする」
「分かりました」
月夜は刀を持って対峙する。月夜に与えた武器は
「………では、小生は真理を借りますね」
「ああ」
まあ、貸すと言っても一部模倣の能力なので異界の幻覚を無効化できれば何でもいいのだが、月夜は素早く近付き、固まった土塊に向けて刀を振うと、土塊は瞬き一つする間もなく、消える。同じ容量で攻撃を躱しながら刀を振って行き、すぐに全てを取り除く。
「終わりましたよ。ご主人様」
「………駄目っぽいかぁ」
鍵刀・一式の能力は界断失墜、これを使って土塊のみを消したのだが、こうでもないらしい。因みにこの界断という能力は空間切断に近いが、一振りした箇所は二次元に、重なる箇所は一次元になり、近くの物を引き寄せる仕様にしてある。………簡単に言うと三次元から落とす能力でもある。
「じゃあ次だ」
「ご主人殿！出番ですね！」
バァァン！
途轍もない轟音にしばらく遅れ、土がパラパラと落ちてくる。やった事は単純、向日葵が強欲で作り出した巨大な腕で上から叩き潰した。
「お………クリアか？」
いまいち条件は分からないままだけど、出来たらしい。再出現しなかったし、
「………取り敢えず次に行ってみるか」
「はい！」
ボンッ！
北風と太陽、風船が破裂した様な音（規模は数万倍）片方ずつに握り潰した。が、この手の二対一体の奴は同時に潰して見た方がいいかも知れない。
「違うみたいだな………今度は同時に潰して見てくれ」
パンッ！
今度は両手で掴んで挟んで潰した。まともに受けたら鼓膜が敗れるであろう破裂音を結界で無効化したが、両手を合わせた際に出る風圧だけでも吹き飛ばされそうになった。
「………これで良いみたいだな、後はぶんぶく茶釜か」
ボンッ！
砂煙が舞い上がり、広域に広がっていく。結界を使って防いだが、かなりの速度で広がるのが、その凄まじい威力を物語る。それこそ火山が噴火したかのようだ。たた、これは………
「駄目みたいだな」
まあ、イマイチ条件も掴みかねてるし、一旦見つめ直すとするか、………と言っても前例や情報等の判断材料が無い。ここは敵と方法、倒した向日葵と月夜の能力を比較して決めるとしよう。北風と太陽は同時に倒すでいいとしても、姥捨山だな、
《データの比較……終了しました》
No name オートマタ
機構精霊 笑顔の向日葵
パーソナルスキル 強欲
スキル 燃焼魔法6 風魔法8 完全再生ー 格闘術7 体術4 目利き4 水魔法2 土魔法3 追跡6 疾駆2 採掘2 短剣術7 料理2
耐性 毒・酸無効
称号 生きた人形
月夜 オートマタ
機構精霊 純白の月長石
パーソナルスキル 忍耐 狡猾
スキル 完全再生ー 読心10 空間魔法3 催淫10 魅了10
耐性 毒・酸無効 不壊
称号 生きた人形
向日葵 月夜
str 48263 str 3211
vit 13623 vit 6203
int 3204 int 23216
men 11361 nen 10082
dex 12331 dex 6311
agl 6382 agl 7109
一応不壊はあるが、数値としては出る。………訳だが、何だこれ、
《称号、生きた人形や
向日葵と月夜では作られた時期も大分違う、生きた人形の効果は通常成長しない自動人形等能力を成長させるというものだが、スキル以外でも出ているんだなと、改めて認識した。ただ、他の子も向日葵ほどステータスが全体的、且つ大幅的に伸びている者はいない。強欲の影響で素のstrは高いが他に影響を与えている要素があるとすれば、間違いなく
「取り敢えず、次はクロシェット、駄目だったら、アリス、月夜、クロエの順でそれでも駄目なら、月夜が朝日と代わってくれ、………それとこのメモをレアに渡して、アリスと代わって戻って、ルシアと代わってから、クロエと代わって戻ってきてくれ」
「わ、わたくし頑張ります」
「私も、がんばります！」
「………そんなに必死にならなくてもいいぞ、それに二人には別のことをやってもらうし」
「特訓の相手ですか？」
「ああ、あれですか？」
「他に任せられる奴もいないしな、もしもに備えてクロシェットも審判員につけてな」
手加減もそうだが、実力が足りないとあの四人の特訓は無理、それと、かなりやり取りも苛烈になっていっているのもあって止めるにも速度か技量のどちらがかけていても安全に止められないのでクロシェットも常駐しなければならない。
結論だけ言うとぶんぶく茶釜は朝日が倒しまた。こっちに居るメンバーは向日葵、ルシア、朝日、月夜の四人だ。
「時間もいい頃だし、引き返すか」
異界は広い、その上、ここは外敵も出づらいため、ダンジョン内には街がある。………まあショボい仮設住居みたいなので料金だけ高い宿、低品質高価格の道具類を取り扱っている店、辛うじて小屋の体裁を保っている素人建設の住居などがひしめき合っている場所なのだが、どんな場所でも人が集まるからには価値のある物はある。はっきり言って情報以外は要らんが、ただ、こんな場所だからこそ需要のあるものもある。集合している場所の外れにささっと代行者に家を建てさせた訳だが、………まあ、ここに来た理由付けは必要なのだ。安全な拠点も、
「おお、やっと戻ってきたか！早くこれを見てくれ！」
「今度は何拾ったんだ？」
この異界には童話種以外にも敵がいる。こっちは概ね土の塊と言ったところだが、罪欲種と呼ばれているこれらは、七つの大罪に擬えたもので、高価な物や希少な物を落とす。ただ殆ど土塊で、幻覚も掛けられているわぁで、土の中から宝を探すのは一苦労。で見極める方法は2つ、一つはダンジョンの外に出す。すると、幻覚などが解け土に戻るのでそこから探す。もう一つは鑑定等で見極める。ただ外まで持っていくより鑑定を依頼する者が殆ど、その理由は積み上げられた土砂の山にある。
「多いな………」
異界は広い、入り口まで運べないからこそ普及しているのだ。千里眼で必要なものだけさっさと見つけて終わらせるとするか、
土の山から掘り起こした金品を渡し、料金を受け取る。………掘り起こすのが面倒だ。隔離で多少はラクをしているが、人が見てる前だと使い辛い。特に収納とかの能力の関係上、盗んでると思われる様なことは避けるべきだ。まあ、レアの作った薬や爆弾から見ればここでは小銭みたいなものか、………ただ儲けが出てもこの金が出ていかないのもなかなか問題だ。この街で流通している通貨が減るからな、明日、ダンジョンの奥についたらここに来る気もないし、罪欲種にでも幾らかぶち込んどくか、
狭い通路の奥には凄まじい力が宿った珠が見える。その手前にある紋章を真理を使って読む。
『光たる力は意思を形作り、闇たる力は身体を形作る。その力、相反する力なれど互い無くして生命は宿らず、また、どちらかが廃れ、栄えれば奇跡は失われるであろう。』
『業深き者よ、この核に宿りたるは闇の力、汝、望むならば肉体を超越する力を授けよう。新たなる支配者として再誕せよ』
《種族を超えたスキルを習得可能な模様、受け取ったエネルギーに冒涜を行使し、習得可能なスキルを選択可能です。検索……………該当数362502、表示しますか》
やめろ！目の前にそんなに出されても分からんわ！そこから俺の言う条件で検索をかけろや！
どんな能力もスキルでも手に入るが、既存の物に限定されるらしい。表示された物は4つだ。なになに………
神祖 超越せし存在
生命蒐集家 命を集める
偽りの生命 魔力による代用
偽りの死 死を回避する
それぞれ細かく見ていくか、
《神祖に真理を発動させた結果#%3*t¥Γの解析が進捗し、#00000………》
謎の部分も進捗か、………報告受けたのはなんやかんや初めてじゃないか？
《そんなことはありません》
はいはい、それより結果は？ステータスは後回しだ。
神祖 ジョブ聖職者、勇者の最上位職の一種、精神力による体力の代用が可能。
神祖以外はパーソナルスキルだな。神祖は精神力を代用するとあるが、即死を防ぐようなものか分からないし、求めている効果じゃない。偽りの命は自動人形を作ろうと思った時聞いた事があるな、無いからランタン作った訳だし、今更要らないな。そして、偽りの死、これは待機時間がネックだな。最後に生命蒐集家なのだが、多分これが一番目的に違い、近いのだが………これ元々の持ち主って
《約5000年前の吸血鬼です》
ですよねぇー
人間用じゃない気がするが、血を吸う以外だと効率悪いとかもありそうでも、その辺冒涜で上手い具合にできるか？………他にマシな選択肢も無いし、
「………仕方無いか」
生命蒐集家を選ぶと力が流れ込んでくるのが分かった。
《もう少し力が余っているようです。習得可能スキル検索………該当数302050》
差は………60452だ、多分、表に軽く目を通すと普通のスキルが多く、パーソナルスキルはあまり見られない。さっきみたいな強いスキルはそれだけあると言うことか、ただそもそも集まっているエネルギーが足りず、習得できないほど強大なスキルもあるかもしれないし、断定はできない。………面倒だし、スキル適当に見繕ってくれ、
《では偽りの死を習得しますか？》
あっ、それも行けるんだ………ああ、そっちはそっちでメリットありそうだから貰うか、終わったのでそそくさと出て行くとその後から通路が閉じていく。