この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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長い。多い時の二話分の量。

そして、今年最初の投稿。



戦車(勝利)審判(罪と罰)

………さて、っと、ここではざっくりと状況とこれから起きる事を混ぜて説明しよう。積荷の護衛は俺達だけではない。他にも4両目の座席もない所で各々固まっていたのだが、5チーム中、3チームが盗賊と内通しています。んで、この時間の運転担当者の補助は盗賊と冒険者(チンピラ)を利用する事を事前に知っている。こいつがこの機関車の動力炉に異物を放り込んだ。でチンピラ(冒険者)は3両目に行き、研究者達を制圧して、輸送機で2両目を丸々占領しているミサイルを持ってくというプラン、それと入れ替わる様に来る爆撃機で協力者も口封じ、研究者達は無力化させた後、全員で見張れって言われてるから車両ごと粉々になる。

「んじゃあ、まあ………輸送機からバラすか、クロエ」

「はいっ」

 

パァァン!

 

しばらく間があって左エンジンが火を吹くと機体が傾き、崖の上に消えていった。………あんまり損傷してないがすぐに脱出しないとエンジンが爆発する。

 

《爆発まで1分6秒です》

 

………だ、そうだ、と言っても途中で飛び降りたのもいるので、そっちを対処しないといけないが、

 

ドン!

 

崖の方から飛んできた影が隣の車両の屋根に着地する。背丈の高い男の肩には二人の男女が乗せられているが、男の方は透明になるスキル、女の方は紙に物を収納するスキルを、担いできた背丈の高い男は攻撃対象を脆くするスキルをそれぞれ持っている。

「………で、三人の目的はアレか?」

後ろのミサイルを指差す。見えてますと言う警告も出しとく、

「ちょ………バレてる、不味くないですか?」

「見破られるのは初めてだな………」

「気にしたって仕方ないだろ。………打ち合ってから決めればいいだろ!」

一人が突っ込んできた。見切って回し蹴りをくれてやる。

「………もしかして俺の能力も知ってるのか?」

「だとしたら読心系か、解析系になる」

「なら………」

「何とかなると思うか?………お前は紙に物を収納出来るが紙の大きさによって仕舞える物の大きさが決まってる。それと生物は仕舞えない。そっちのは自分含めて三つの物を透明に出来る。ただし触った事のある物でないと透明には出来ない。物体脆弱化は武器に付与出来ないから直接殴った時以外は効果を発揮しない、行けそうか?」

「………全員で畳み掛けるぞ!」

「ちょっと遅いがその判断は正解だ、ただ戦力比較は基本中の基本だぞ?」

飛びついて首を捻って気絶させる。まず一人、横から繰り出された拳を躱し、背負い投げから背中と車両の屋根を魔法で凍らせる。ついでに残ってた女の足も凍らせておいたので額にデコピン、

「痛っ、……うわっ!足が!」

倒れた所を追加で肩の辺りも凍らせる。凍結魔法便利だな、遠くで爆発音がする。代行者よ、脱出した奴はいるか?

 

《いません》

 

爆撃機は?

 

《止まる様子はありません》

 

あっ、そう。予定通りか、

 

「お前らは爆撃機の事は知ってるよな?」

「……………どこまで知ってるんですか?」

「この計画が立案された時から全部、依頼主も利用目的も強奪後の運搬ルートも………ついでに君らの知らないプランBもCも」

「………………」

「んで、物は相談何だけどアスメシアにちょっとした団体を作ってるんだ。そこに来てくれないかな?」

「………断ったらどうなります?」

「ロケットの届け先で引き渡すよ?」

「………ですよねぇー」

「なあ、………背中痛ぇんだけど、暴れねえから解いてくれ」

「ああ、じゃ、送るわ」

「「は?」」

隔離を介して予め決めておいた部屋に出す。さて、車内はどうだ?………てか一両減ってね?

 

一太刀で4両目と敵冒険者とそれ以外の冒険者を分けてバラバラにした月夜、その手には絶剣・六式が握られている。その大きな刀身はこの狭い車内でどうやって振るったとか、どこから出した疑問が絶えないが、争いを始めていた彼等には彼女が味方で良かったと言う思いだ。

「ご主人様のご所望に沿う事ができました。小生は嬉しく思います」

爆発霧散した肉片や血溜まりを放置してそのまま3両目に戻ろうとした時だ。

「動くんじゃねぇ!」

「?」

普通に振り返る月夜、ただそれだけでも先程の戦闘とは言えない程の虐殺を見ていた男を逆上させるには十分だった。

「あぁぁぁ!!動くなっつてんだろうがぁ!」

「落ち着いて下さい。大丈夫ですから」

 

サクッ

 

僅かな音の後、短剣を手にしていた男が後ろに倒れる。その眉間には短剣が突き刺さっていた。

「申し訳ありませんでした。小生はご主人様に敵を全て倒せたか確認してきますので警戒を怠らない様にして頂けますか?」

「あ、ああ」

まばらな返事を聴いた後、彼女は再び3両目に戻るべく足を進めていく。暫くしてゆっくりする為に死体を処理を始めた彼等は簡単に死体を一箇所にまとめた。ただ、上の空だった彼らは気付かない、その短剣にはガード(刀で言う(つば))があった筈だが、それが目で見える範囲では確認できない事を、

 

「申し訳ありませんが、この車内に斬撃耐性 絶をお持ちの方はいらっしゃいませんか?」

「居たとしても答えるか?普通」

「う、こういう頭を使う事はワタクシ得意ではありませんのに………と言ってもワタクシにしか倒せないですから、仕方の無いことですわ」

「………って事は他の人じゃ勝てない。ってことですか?」

「ご主人様なら、そんな事は無いと思いますが、他の方だと………」

考える仕草だけでも絵になるアリス、周りの反応には気付いていないが、

「あっ!思い出しましたわ、確か顔にホクロがある人を探せと言われていましたわ!」

「いや俺あるけど、違うよ」

「俺もあるよ」

「私も」「俺も」「儂も」「………あれ?お前そんなところにホクロあったけ?」

「………あれ?でも違った様な?えーと………いえ、あー、そうでしたわ!顔にホクロがある人を探せと言って嘘をついてる人を見つければ………誰が嘘をついているのでしょう?」

暫くの沈黙と共に彼等の視線は一人に集まる。

「仕方ないか………こうなっては」

「何がでしょう?」

今度はアリスに視線が集まる。さっきとは違う意味でだが、

「ご主人様なら嘘をついた瞬間に首を飛ばせると思うのですが、ワタクシでは無理ですわね………どうかしましたか?」

「いや………」

「僕だ。もういい、こいつが見えるか?」

「………球?」

「術式砲弾?!何処にそんなものを!」

「僕は石化の耐性もあるからね。この中には石化させる魔力を込めた粉塵が詰まってる。この車内くらいならみんな効果範囲内だ」

「石化が効かないのは聞いていますわ………開け!」

砲弾を持っている方の手を黒ノ時で砲弾ごと消し飛ばす。黒ノ時には距離的制約が無い。一回しか使えないと言う所は変わらないが、球体の大きさを小さくする事は出来る。その分、一瞬より長持ちする。ただそこに存在するだけでも破壊を巻き起こす、空気さえも破壊するのでブラックホールの様に周囲の物を引きずり込む。今は拳まで吸い込んでいるが肘辺りまでその中に吸い込まれると球体は唐突に消える。それと同時に僅かに血が天井に飛び散る。

「う、腕がぁぁぁ!」

床でのたうち回りながら辺りに血を撒き散らす。傷口は鋭利な刃物で斬られた用にもなっているが球状の断面の中心辺りから絶え間なく流血する。このままの状態が続けば二分と待たずに意識を失い死に至るだろう。

「いや………だ、ぐうぅー!」

震える左手でポケットの中身を床に撒き散らすと目当て小瓶を掴み、歯で栓を抜いて腕の傷口にかける。すると出血が止まり、剥き出しだった傷口が塞がり皮膚に覆われる。

「回復薬ですか?」

「上級だ、これなら傷は一発で塞がる。………再生はあんまりしないけど」

「あんまり治りませんね………」

「けど、奥の手は使った、だろ?」

「そうですわね」

黒ノ時はスキルの力である為、魔力を消費しない。その為魔力の少ないアリスには奥の手であるが、使いどころの難しさ故に本人は扱いかねている。森での狩りに使うと獲物も消し飛ばすので毛皮も肉も残らない。こういう敵の排除や後始末が面倒な害虫、害獣駆除ぐらいしか使う時がないと言う現状だ。

「………では、失礼しますわ」

アリスは一瞬で距離を詰めて一発殴った。彼は様々耐性を有している。低い麻痺耐性でも4、衝撃耐性は7もある。クロエや向日葵なら無効にでもしない限り首がもげる事になるだが、アリスの悪魔系嫉妬では腕力は強化されない。しかし、それ等を計算から外し、人形の基礎的な能力で見た場合、アリスは平均的に高い水準の能力を持つ。普通の人が殴られたなら総入れ歯が必要になる位には、

 

ベキッ!

 

「ゔぇ!あ、おぅ………」

「魔装グレイプニル、この機能は他の子、ワタクシ以外にもあと三人は同じ事が出来ますわ」

アリスの手には黒い蔦の刺青が絡みついている。所々小さな花を付けている様に見えるのは魔法陣、今見える範囲でも七つあるがどれも肉眼では小さ過ぎて読めない。全身になればもっとその数は多い。

「効果は主に耐性の無効化、魔法一部スキルの封印と無効化、おわかりいただけましたか?」

耐性を無効化した一撃、床に血と唾液に白い物混ぜて吐き出しながらアリスを見上げる。先程と変わらぬ様子で気負いも無く、さも当然の様にこちらを見ている。

「終わりですわ」

そうあっさりと告げるアリスの脚に黒い蔦が絡み付き花を付ける。次の瞬間力なく前のめりに倒れた彼が最後に見たのは僅かに血で汚れた天井と彼を見下ろすアリスだった。

 

ジュワァァァ!

 

「ああぁぁぁ!」

「ふぅー、後はご主人殿に報告すれば終わり、だったかな?」

「ひぃぃ〜」

列車を停めた犯人は向日葵の手によって動力炉に焼べられた。無関係な乗組員は自分も焼べられるのではないかと気が気でない様子だが、そんな事はどうでもいいと言わんばかりに彼の横をすり抜けていくと、ミサイルの上を両手を水平に伸ばしてバランスを取りながら歩き、3両目の車両の屋根に飛び乗る。

「ご主人〜殿、終わりましたぁ!」

「ああ、………クロエ!そろそろ見えてくると思うからやってくれ!外しても俺がやるから外しても気にするな!」

「は、はいっ!」

 

………自分で言っといてなんだかフラグな気がする。

 

三機中ニ機来たよ。爆撃機、一機を土魔法を強化して手に入れた物理魔法で重力を増やして叩き落とす。もう一機は万能結界を足場に移動し、最後の一つに乗った時に斥力を使って体を爆撃機に飛ばす。終わったら結界に着地、

 

カチン、

 

戦闘機が斬った通りに空中分解する。残骸は機関車を飛び越えていく計算を代行者に任せたので問題ない。そのまま結界に乗ったまま向日葵の所に戻る。みんな集合してるな、

 

ピシッ、

 

結界を止め、構える。周りからは手を掛けただけに見えるかもしれないが、

 

《未来視の結果が変わりました》

 

「お兄ちゃんの目が………開いてるにゃ」

「あのあの〜気を抜かない様にしましょうー」

「うん」「「「はいっ!」」」「分かりましたわ!」

 

………お前らなぁ、人のどこ見て状況判断してるんだ、まあ、すぐに伝わるという点ではいい事か?

 

《上です》

 

名前 瀬戸原 來莉朱

 

種族 人

 

パーソナルスキル 血の排水溝(ブラッドホール) ()温もり() 解れる血肉(蛋白質) (退屈)(絶頂) 背教

 

スキル 不死ー 危機感知10

 

耐性 風圧無効 衰弱耐性8 痛覚倍加 痛覚変換・快楽

 

称号 絞死 被虐嗜好 ドS ドM

 

 

………マジか!よりにもよって!

「レア!それとクロエとアリス、ノルンと朝日はそれぞれで距離を取れ!半円に囲む形ですぐにカバーしあえる距離だ」

 

なんだこの統一感の無いバタバタ、距離バラバラなんだけど?ちょっと心配になってきたな、

「あはははは!」

遥か上空から落ちてくる彼女は狂ったように狂喜していた。

 

ドチャッ!

 

鈍い音と僅かな砂煙を巻き上げ、地面に叩きつけられる。彼女はこういう子だ、砂煙が晴れたあとには破れた水風船の様に血を撒き散らして地面にへばりついている。左足や指の数本は本来曲がらない方向に曲がっている。しかし、

「………ははは」

乾いたような微かな声、うめき声にも聴こえるこの声は彼女が体を起こす事で否定される。笑っているのだ、顔は潰れていても口元だけでわかる。そこからは一瞬だった。辺りに飛び散った血が彼女に集まっていき、血が徐々に集まり体が再生して行く。頬を紅潮させ恍惚とした表情で熱にうかされた様に天を仰ぐ、

「あはっ、少々はしたない姿をお見せしてしまい申し訳ありません。北川先生」

「ああ、お世辞はいいぞ瀬戸原、どうせ気にもしてないだろ?すぐに襲い掛かって来なかったあたりは、お前にしては大分我慢強くなったな」

「お褒め頂き光栄ですわ、………では」

するりと距離を詰めると自然な動作で鋏を突き立てようと迫ってくる。それを刀で掬い上げるように弾く。上体がここまで反っていれば普通立て直しのために間合いを取り直す。まして様子見程度の攻撃なら尚更、しかしこいつは無理やりでも追撃する。左手に持っていた剃刀を倒れる様に振りかざして来た。横に躱して腹に膝を叩き込むと追撃に後頭部にもエルボー、加減したとしても危険極まりないコンボなので殺す場合しか使わない。

「らあぁ!」

足の下に結界を作り出し、それを上に動かすのを利用して、不足を物理魔法で補填、無理やり打ち上げ、手から着地、空かさず地面を凍らせて氷の槍を魔法で作り出して貫く。

「………ふふ、いいです!最高です!この快感!この死がすぐ側にある焦燥感と恐怖………愛おしくて堪らない。この感覚がずっと続くなんて可笑しくなってしまいそうですわぁ〜」

血は地面に落ちるより早くビデオの逆再生の様に彼女の体に戻っていく。その他の液体は足を伝ってボトボト、口からはポタポタと地面に落ちる。

 

………厄介さに磨きがかかったな、不死や複数のパーソナルスキル、真正面から戦うメリットが無いと言える。

 

鮮血の排水溝(ブラッディーホール) 内約

三十メール内の血を集め、操る。

 

血の温もり(鉄の雨) 内約

浴びた血の量に応じて身体能力を向上させ、スキル保有者の体液を浴びた者は能力が下がる。

 

解れる血肉(蛋白質) 内約

血や肉を体内に入れる事で体の欠損や体力を回復する。

 

(退屈)(絶頂) 内約

生命の危機に瀕する事で身体能力を向上させ、快楽に応じて魔力を回復させる。

 

背教 内約

破戒 スキルの制約を取り払ったり、反転させる等の変化を及ぼすが、本来のスキルからかけ離れる程使用者に負担がかかる。

 

地獄の楔 指定した対象一人に楔を刺し、存在値を吸収するが、五十メートル以上互いに離れられなくなる。ただし、存在値がスキル保有者より多い場合は吸収は出来ない。(この権能は上記の権能の対象外)

 

………覚える事も何気に多いな、背教があるせいでどういうふうに使ってくるか絞りにくい。それにこの辺り一面には死体は処理した後だが血は残ってる。実際引き寄せられてるようだ。じりじりと俺の足元にも、

 

ゴォゥ!パチパチ………

 

先手を打って足ごと魔法で燃やす。

「先生のそういうト・コ・ロ、結構好きですよ♡」

クスクス笑いながら、されど油断なくこちらを見据える目は獲物を逃がすまいと狩りに集中する獣のそれだ。

「………はぁ」

頭が痛いなぁ。こいつの性格を勘案するなら確実な勝利条件は一つに絞られる。地面を蹴る動作と共に魔法を発動し、地面を動かす。

「おまえらは距離を取れ!………六十メートルだ、ミストルテインは使うな!」

最低限の言葉で伝えるべき事を伝えるとエスカレーターに乗るように動く地面に乗る。

「あはっ、先生が一対一で見てくれるなんて、これ以上の贅沢はありませんわねぇ………欠伸が出る様な円舞曲(ワルツ)幕引き(終わり)にして、楽しいクイックステップで私を退屈しない場所にいーっぱいエスコート(連れて)行ってくれませんこと?」

手を差し伸べる彼女の所作はそれこそ何処かのお姫様といった感じだが、反対の手に錆びた鋏を持っている。そんなお姫様いねえわ、十中八九刺す気だろ、それで、

グラン・ギニョル(荒唐無稽で血なまぐさい)劇に出て来そうなお前をエスコートするのは荷が重いし、俺はダンス得意じゃないしな」

そう言いながらもその手を上から取り、引き寄せる。とそれに合わせる様に突き出された鋏を避けて、肘で叩き落とすと、勢いのままこっちに来ている彼女の喉に一撃入れて、ブレーンバスター、スカートだとかピンクのが見えたとかそんなもん関係ない。距離を取って刀に手を掛ける。

「あはは、楽しいよ先生、でも当たらなかったのは少し残念〜」

茂みの方から血が集まり、彼女の体に纏わりついて消えていく。………どうやら打撲等も回復できるらしい。集めた血はどっかに隠してるみたいで、チラッと見ただけでは見つかりそうにない。見つけたとしてもそこから遠ざける他は燃やすしかないし、間違いなく妨害してくるだろうが、千里眼で探しながら片手間で相手してたらこっちがやられる。

「ふぅ………」

型には攻撃の型と防御の型、それと攻防一体の型がある。型とは技に繋ぐための準備、より速く効果的に正確に動作を行う為の一種のルーティーンだ。俺が得意な技は主に攻防一体、攻撃が苦手と言う訳では無いが割と偏りがあると思っている。防御に関しては弾いたり牽制、受け流しが基本で、力で押し合う状況にはならないようにしている。

 

んで、彼女は戦闘素人だ。間合いもクソへったくれもないし、どれだけ攻撃されても避けないし距離をとったりもしない。こっちの間合いとか無視、攻撃一辺倒で攻撃を防がないし、受け身も取らない。でかいガラス片が刺さった時でも平気で抜いて、辺りを血の海にしたことがあった、………こいつ普段から手負いの獣や狂戦士みたいなところがある。嫌いな事は退屈と同じ行動を繰り返す事、好きな物は血と快楽、そして死に至る苦痛、あとグレープフルーツのジュースとラズベリーの入ったクレープ、………っとそれどころじゃないな、相変わらずどこに持ってたんだその鋏、次々出してくるな、

「先生って、よく考え事してて隙だらけに見えますけど、一回しか攻撃当たった所見たことないですよね、どうなってるんですか?」

「お前は殺気が強過ぎるんだよ。あと欲望に忠実過ぎ………る!」

咄嗟に投げつけられた鋏を首を横に逸らして回避、危ねぇー、その隙に鋏と剃刀を持って距離を詰め、連続で振り回してくる。もちろん回避、回転しながら鋏の間を滑らせながら打ち上げると、間髪入れずに向きを変えて下に押さえつけ、回転の勢いをそのまま利用した後ろ回し蹴りを放つ、

「がっ、はふぁ………」

首の骨を砕かれ、絞り出した様な空気が微かに漏れたような声を出し、そのまま後ろに倒れる。

 

ボキボキ、パキッ!

 

「最っ高………!」

フラフラと立ち上がると首の骨を元の位置に戻す。血は集まっていき、表向きは治ったように見えるが骨の再生はうまくいってない。治っていない訳ではないが、今までの外傷に比べるとかなり遅い。

 

《不死には肉体を正常な状態の維持、戻そうとする作用があります。その影響です》

 

そっちか、出血を強要する逆手の居合では相性が悪いが、防御や間合いの維持が不安だな………なら、

「銃刀法違反だぁ〜、銃の方の♡」

「………なんで嬉しそうなんだよ」

どうせ新しい痛み(快楽)が楽しみなんだろう。今回はリボルバー、二丁は振り出し式(スイングアウト)だが、一丁は固定式(ソリッドフレーム)、それをお手玉の様にジャグリングする。

「やっぱり器用ですね」

と言いながらじりじり近寄ってくる。………ジャグリングの合間に撃つ。

「………避けろよ」

寸分違わず眉間に命中、赤い花が咲いた。が構わず迫ってくる。………某ゾンビゲームでもここまで怖くないぞ、ゲームならヘッドショットすれば大概死ぬし、近距離戦を想定したスタイルに自動拳銃(オートマチック)は使えない。結構荒い扱いをするし、回転を付けて投げているため、動作不良(ジャム)を起しやすくなる。その点リボルバーは丈夫さや発砲の確実さは申し分ない。ただ、弾数とリロードの手間は致命的なので、いかにリロードを素早くスタイリッシュにこなすかが鍵となる。鋏を躱して横から肋骨の隙間を縫い、1発、背後に回って蹴り、残り11発を適当に撃ち、薬莢を排出、隔離から位置を調整して出した弾をスピードローダーの様にそのまま装填する。

「………先生、まだ銃隠し持ってますよね?」

「どうだろな?」

「何が狙いなのかは分かりませんが、先生の事ですから、まず安全策ですよね、それとスキル見えてますよね?私の」

「………お前らしくないな、俺の知ってるお前なら死んでも獲物に喰らいついて離さないよな?」

小夜時雨(さよしぐれ)さん程臆病なつもりは無いですわよ?」

「………………いつ調べた。次の赴任先で受け持った生徒だぞ」

 

油断も隙もねぇな、何も無いといいが、………こいつが動いた地点で何かは起きる。

 

「なかなか遊んでくれませんでしたけど、迷いを振り切った彼女の一撃は凄かったですわ、………と〜ってもぉ♡」

「全く、いい性格してるよ。埜々(のの)に何したんだ」

 

あの子は臆病だってのに………あれだけ才能に溢れた子は目の前のこいつを除くと肩を並べられる者がいない。

 

「樫野さんはつまらなかったですね」

「貴光か、懐かしな」

「………あの考え方、先生でもどうにも出来なかったんですわね、本当にウンザリしますわ、チッ……………死ねばいいのに

 

………酷い言われようだな、

 

「………さて、そろそろ行きましょうか。」

「……………来い」

「いえ、来てください」

 

………ッ!なんだ!いきなり手足から力が、しかも引き寄せられてる。

「………あは」

足を凍らせて固定式(ソリッド)の銃を抜き、連射する。………目眩はするし、全然当たってない、辛うじて一発当たった瞬間に、引き寄せられる感覚が無くなったので魔法で風をぶつけて吹き飛ばす。しかし一定距離から俺が引っ張られ始める。もう既に地獄の楔はつけられてるみたいだな、千里眼で体を見てみたら背中にそれらしき黒い靄が刺さってる。………スキルを使って来ないから、すべてを把握していないと考えていたが、ここからが本番になりそうだ。今のはおそらく鮮血の排水溝(ブラッディーホール)を破戒を使って体内にある血まで操作したのだろう。ただ操作と言っても俺の体を引き寄せるのと血の流れを滞らせるのが限度、今は傷がないから血を引き出せないが僅かな傷でもつけられれば干乾びるまで血抜かれんぞ、これ、予想より自由度が高けぇし、

「………魔導教本には、体に宿る魔力に干渉するには身体接触か表皮より内側に斬り込んだり、撃ち込んだりしないと無理、まして血は魔力の伝導性が高く、体の主の魔力が多く含まれている。出来てもやろうと思わないほど労力がかかるしな」

「はぁ、はぁ………う、ぁ」

うわ、瀬戸原がヤバイことになってる。多分血涙と鼻血なんだけど真っ黒、静脈血とかも黒っぽいがそれなんかより黒い。

 

《破戒の負担によるものです》

 

んなもんわかっとるわ、俺の冒涜には負担云々の文言は無かったが精神汚染の負担があった。書いてあるなら言うに及ばずそうなんだろうが、おそらく体その物に直接負荷が掛かるタイプだ。血なら集められるのに集まっていかないと言う事は、この黒いのは最早血では無く、老廃物と同じ扱いなのだろう。………なら、ここは勝負に出るべきだろう。銃一丁以外をすべて仕舞うと、冒涜でスキルの干渉を防ぎ、魔力を体に僅かづつ込めていく。

「合計37%」

速さを増やせる最適な配分、代行者はもう少しいける的な事を言っていたが、これより上げると動きのしなやかさに影響するし、肩とか回した時に筋が引っ張れる感じがする。代行者が言う量は理論的な限界である場合が多い。ある程度余裕を持っておかないとホントギリギリだったりする。増えた筋力で凍った足を剥がし、靴に付いた氷を火魔法で融かす。

「ヒートエッジ」

刀を取り出し、熱を付与し、腰を落として構える。

「………先生さぁ、私のスキル見えてるよねぇ」

「………」

「否定しないって事はそうだよねぇ、普通パーソナルスキルは見れないって聴いたのに、………そろそろ楽しい時間も終わりかな」

「………生きてる限り終りじゃない。お前に死なれたら俺の負けだろ?」

「ぷっ………、先生はそういう人、でしたわね。………昨日までの常識が明日も通じる保障はない、塗り変えたその瞬間、ただ歴史になる。塗り変えていくのは君達だ、若人、でしたっけ」

「よく覚えてたな、なら続きを言うとな、その変革を受け入れる強者であり続けたい。ただ恐れ、抑圧し、立つ場を汚して託す老害や過去の遺物にならない者でありたい。かな」

 

始めた時は革新的な方法も時代の流れと共に因習や弊害になる。政治に完成は無い。動く世の中においては常に新しい風か水を滞り淀ませること無く適切な方に流す必要がある。自分がそんな淀みにならない為の努力が最低限はいる。人に教える立場なら尚の事だ。………まあ、当然間違えた方向に水を傾けると大変な事になるのだが、

「………どうやって勝つのか分からないなら、いっそここは単純に楽しませてもらいますわ!あははは!」

「まだ続きがあるぞ?」

迫る鋏を一刀の下に切り裂く。

「あうっ!………見た目は似てますけど刀身は別の刀ですわね」

「………不本意ながら似せなければならなかったんだよ、こういう時のためにな」

影打ちもまとめて買う価値も道理も分からない客に見られただろうが、相手の虚を突くには役立つ。………似たようなのがあと三本ある。今振ったのは真打、今までのは簡単に折れはしないが、物を斬るには何かと気を遣う古い刀だ。色々注文つけたので結構金が掛かった。

「変革を受け入れるって事は次を継ぐものがいる。生きてる内は間違いは正させてもらうし、穴があるようなら掻い潜る。まだまだ老害どもには負けるが、悪ガキ程度なら多少クレバーな手で十分さ」

笑みを浮かべながら語りかけると………なんか微妙な顔してるな。

「………そんなあくどい顔で嗤う人初めて見ましたよ」

 

失礼な、笑みだよ、えーみ、にっ、って笑う奴だよ?誰があくどいんじゃあコラァ!

 

「こら、人を悪人面最上級みたいな言い方すんな」

「怒られてしまいましたわ」

なんて言いながら鋏と直刀を手に取る。どっから出してるんだよ、

「その直刀、銃刀法違反だろ」

6センチでアウト(鋏や折りたたみナイフは例外で8センチ)、………まあ、他の法律でそれ以下でも罰則を受ける場合もあるが、俺の刀は言うに及ばず、40センチの直刀もアウト(薙刀等と同じ分類で15センチ以上はアウト)、完全に護身目的の刀だ。

「………先生〜、今更いいっこなしですよ?早く始めましょう?」

「………悪いがもう終わったぞ?」

「え〜」

「俺のパーソナルスキルには未来を見る権能がある。………元はそれだけだったがな」

俺がただ真理ノ瞳を持つだけの者なら、もっと勝利を暗中模索しなければならなかっただろうが、

引力の渦(ヴォルテックアトラクション)、ストライカー、起動」

少し間があってから彼女の意思に関係なく腕が曲がり始め、可動域を外れるのにそこまで時間を必要としなかった。だがそれでも動き続ける。そして倒れると同時に彼女を中心に地面が沈み、亀裂が入る。後者はシンプルに重量を増やす目的の物、前者は力の渦を作くる物、変化が生じるのは銃弾を受けた箇所だ。頭と左半身を重くして、肘、膝、肩に渦を、それぞれ撃ち込んだのだ。

「術式弾だから起動さえすれば撃ち込まれた側の魔力で維持出来るし楽だが、一発ずつ作るから勿体なくてバカバカ撃てないんだよなぁ」

 

こういうとこ貧乏性なんだよな。手間考えればアレなんだけど、………まあ、無駄遣いは良くない。うん、

 

「これどんな風に映るのかしらね?」

「人形劇イメージのアニメーションで出てくる関節クルクル回る登場人物仮?」

………魔力の制御の上手い者なら体内に作用する物でも止められるが、止められなきゃねじ切れるまで回る。そんなに回転速度は速くないがブチブチいいだすのは時間の問題だろう。というかもう既に2〜3発抉ってるし、………チッ、もう少しだったんだが、左手が使える状態になってる。

「先生、……………そろそろ限界なので絶頂(イキ)ましょう?」

「はぁ………、たまには痛い目見たほうがいいか」

手に取ったアンプルの先端を割って咥える。あっちも血で体を治しているが、全ては治っていない。血が足りないのか、負担の影響か、どっちにしろ、必要なのは………

 

拘束、嫌い。快楽、好き。停滞、嫌い。苦痛、好き。我慢嫌々、大嫌い!血、大好き!

甘い物は好きだけどただ甘いだけのものは嫌い。綺麗事、嫌い。法律(ルール)はゴミ。退屈も同じくらい嫌い。先生………好き。

あぁ、真っ赤な飾り付け(デコレーション)と愛おしい身体(キャンバス)を引き裂く鋭利な(絵筆)、焦らす様に付いては離れる演舞(ステップ)………思い馳せると弱りゆく様も、一手たりとも間違えられない焦燥感もその一瞬の為なら如何なる犠牲も厭わない。例えこの先、これ以上楽しいことの無いつまらない人生を送る事になったとしても、

「ふふ………先生♡」

死はもどかしい。首を吊ると死ぬ。でも一定で切れるようにしておけば、暫くは愉しいが、落ち着けばまた欲しくなる。………後始末は少し惨めだ。嫌いじゃないけど、

死は一回限りだ。服毒は少し物足りない。失血は意識がすぐ無くなる。火や切り傷は苦しみが足りない。凍傷は痛いのは初めだけで感覚が無くなる。銃もいきなり力が抜ける感覚があるが物足りない。………死ぬなら先生に絞め殺してもらいたいな、そのほうが気持ちいいと思う。最期に苦悩する顔も見られそう。あの優しい手で、繊細で細い指を使って、暴れてもびくともしない程、強く、

「………負けなければいい。勝利は、退屈、愉しくないなら、それは負け………そろそろ限界なので絶頂(イキ)ましょう」

死を見据える事で生を実感する。歪で、愚かで、狂おしい。陶酔した意識の中で、自分の体から意識が離れた様に息をする音が遠く、しかし速く止めることもできず、吸い込み吐き出し続ける。ひり付く焦燥、背や首筋を伝う冷たい少しの汗、体が幾ら逃れようと藻掻いても、心は求めて止まない。

「これからお前が一番嫌がるであろう事をする。罰でもあり、俺の能力不足からくる問題でもある。なぁに、措置に関しては学校にいた頃と変わらない」

わからない事は愉しい。それが先生の考えなら尚更笑いが止まらない。

 

「………俺はこんな笑い方する奴にあくどい顔って言われたのな」

「やぁん♡ひっどぉ〜い私だってぇ〜、女の子なんだからぁ、そんな言い方ないんじゃないですの?先生」

「さっきの仕返しだ」

より腰を落として勢いを付けられるようにして刀も背中に隠すように後ろに引く。頭に撃ち込んだ一発は重量を増やす効果がある方の物、頭という物は約5キロもある。それを脊椎で地面から垂直に支えているが、脊椎がS字に曲がっているのは体重の8%に当たる負荷を分散させる為だ。重さが増せば全身に負荷が掛かり、支えきれなければ倒れるし、バランスも崩しやすくなる。流石に頭の銃弾を鋏や短刀では取り出せないし、俺が確実に当てたかった一発だという事は気づいてるだろう。

 

瞬きの一瞬、十メートルはそんなに遠い距離では無い。流れるように地を滑る様に踏み込み、豪快で大胆に、だが華麗に魅せるように放たれる手本の様な大振りだが効率的な一閃、………と見せかけて隔離ですり替えておいたショットガンを突き付け胴体に向けて発砲、が、

これは地面を転がって横に回避、それと同時に俺の膝裏に蹴りを放ってきた。姿勢が崩れた所に飛び掛かって来そうなのでショットガンを撃って牽制、その間に姿勢を戻し、隔離で細剣と入れ替え、連続で突きを放つも血を操り盾にして防がれる。絡め取ろうとして来た(変な方から力が加わる感じがした)ので手を離し、飛び退きながらショットガンを撃つ、しかし血が複数の弾体を包む様に防いだ。間髪入れずに鋏、鋏、短刀の順に振りかざされる攻撃を躱し、背後から後頭部を押してあしらう。振り返りざまに振られた短刀を首を捻り躱すと、

 

ズガァン!……ガチャン、ぼとっ、

 

鋏を持っている方の肘にショットガンを撃ち込み鋏ごと吹き飛ばす。しかし何事も無かったように、寧ろ笑みを浮かべながら斬りかかってくる。怖ぇ、予想通りだけど怖ぇ、

 

ミシッ!

 

ショットガンと入れ替えで刀を出し、鞘で止める。

「えっ!これ………」

戸惑うよな、本来刀が入ってる位置よりも短刀の刃が食い込んでいる。これはあの子達の実戦練習なんかの相手になる時、あんまり丸腰のままだと何かとプライドを傷付け兼ねないので飾りで持ってる……

「良くできてるだろう?見た目一緒だけど、俺が一から削り出した木刀だ」

腕を捻り、短刀を絡め取る様に投げ、姿勢が崩れた所を確実に押える。片腕を吹き飛ばしたのと頭の重みが増していることも相まってまともに立てなくなっているので取り押さえるのは簡単だった。口に咥えていたアンプルの中身を腕の傷口にかけると新たに失われた腕が生えてくる。

「………はい、終わり」

「………え?」

子供に注射を打ち終わった医者ぐらいの感じであっさり告げる。

「痛覚変換・快楽を痛覚無効に書き換えさせてもらった」

手に冒涜を発動させて、黒い霧を見せびらかす。

「おぅぅ………、お揃いなのは嬉しいけど、嫌な予感が………」

「どっちも悪魔系で傲慢(スペルビア)だしな、お前のは背教で俺のは冒涜だ」

「こっちのが先生に効かない訳ね」

「そのスキルは多い方から引っ張れないだけだ、それと対象が一つに絞られるから一対多数向きじゃない。使い方次第だが」

相手の存在値が多い場合は距離制限を掛けるだけになるし、多いと一人ずつになるから、時間も掛かる。攻守においてはどれだけ自分に有利な戦いができるかに掛かっている、………まあ、俺のは接触だから遠距離の対象には何の効果もないが、触れると言うのは防御にも使えるので、こっちに不利にならないように立ち回ればそれ程バランスの悪いものでも無かったりする。ぶっちゃけ破戒が鍵だな、

「公序良俗に反するので没収です」

「えー………先生が慰めてく………」

「公序良俗に反するので却下です」

「うーん………じゃあ、先生を………」

「却下です」

「早い〜!だったらボロ雑巾みたいにしていいから………」

「そういう事、言うもんじゃあ〜ありません」

「じゃあ………見てて」

そう言うと地面についていた右手を見せつける様に膝から内腿へ這わせていき………

「待て待て待てぇ!おいぃぃっ!」

腕を掴んで止める。どうせ右手だけ掴んでも次は左手が動くので両手を掴む。この変態を野に放ってはいけない、そう心から思ったが、芦原さんや藤白には荷が重い。………こっちで引き受ける他無いなぁ。

「はぁぁぁ………………仕方ねぇか、仕方ねぇよなぁ………」

「そ、その反応はあんまりではありません?」

「………お前の行いをすこし振り返ってみれば分かるんじゃないか?まあ、立場なんかは追々決めるとして俺のとこに来てもらえるか?学校、というより孤児院なんだが」

「そこって愉しいところ?」

「………問題起こしたら軟禁して懇切丁寧に世話するからな」

「うぇ」

心底嫌そうな声を出す瀬戸原、SとMの両方を持っているので、罰は与えられないが、平穏で何もない事が、飽き性で刺激を求める性格上唯一無二の罰となる。

「ノルン!すまないが、コイツを先に送るから転移してくれ!」

指と手首に結束バンド(芦原さんから仕入れた)を付けて固定しておく、後ろを振り返るとノルンがショートカットを連発して移動いるのが目に入るだろう。

「拠点の方で頼む」

「承りました」

すぐにノルンと瀬戸原が消えるとほぼ同時に背中から抱き着かれる。

「お兄ーちゃん!お迎え行ってくるにゃ?」

「入れ違いになると困るから前の街のポイントで見つからなかったら、届け先の街のポイントを見てくれ」

「わかったにゃ〜」

ノルンとは違う方法でクロシェットの姿が掻き消えるの確認すると空を見る。雲がやけに多い。………まあ、色々墜したのが燃えてるからな、こういう時、煙草を吸う奴は吸うんだろうがどんな気持ちで吸うのか?喫煙者の気持ちは分からない。ただ鈍痛を訴えかけて来る箇所を押さえながらため息をつくだけだ、

「代行者、鎮静剤か精神安定剤、どっちか寄越せ」


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