この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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区切りが悪くてすいません。



救済と根絶とパーティーと摩耗したおじさん

今思えばどうしてこうなったのか。土地に余裕があるからと、好きにさせてたのが駄目だった。倉庫だらけ、

「これ何軒あるんだ?」

「129軒にゃ」

《129軒です》

 

一瞬姿が掻き消えたと思ったら数えてきたのか?そんなクロシェット本人はどこ吹く風とシュークリームに齧り付いている。

「順序が逆だけど、ミニチュアをやってもらうか」

それとダンジョンから出てきた宝石の原石はかなりあるし、これを使って宝石加工の授業をやるか、幸い、あんまり状態が良くないのもあるし、練習するにはちょうどいいだろう。今回はいろんな魔物素材を持ち込んで金にするつもりだし、その中に混ぜるくらい問題ないだろう。しかし、出来てしまった倉庫をどうするか?市場を操作するために要らないものも買ってるし、それを入れとくか?

 

《半分以上が余ると思われます》

 

………いくつかアイディアが無いでもないけど、社会勉強にはなるが、ルールをしっかり決めないと行けないことばかりだ。とはいえ、それも含めて勉強とも言えるが、果たしてあの子達にそれが適切なのか?………………一回試験的にやってみるか?結局それしかない。

「レア、ちょっと手伝ってくれ」

「はいー」

「それとものづくり組も集めてくれ」

「はいー、分かりました〜」

 

さて、今日はエドガーのところでケーキを作る。ちょっと前に約束したことだし、………要望はチョコレートケーキだったな、ベースはチョコで上をどうするか。高さを要求される場合は下がスポンジだと不味い。上を重い飴の塊にでもしなきゃ問題ないだろうが、アイス系にすれば硬いが温度管理がめんどいのと長持ちしない。果物選びもちょいムズだし、結構大変。

「無難なとこ、バナナ、イチゴ、リンゴ、後はケーキ次第でキウイ、ブルーベリー、ラズベリー………」

例を揚げてもキリがないな、香り付けとかでオレンジの皮だって合うだろうし、酒も何が良いか………

「まあ、なんにせよ、準備してから完成させるまでの時間との勝負になるよな」

 

溶けたら見た目も悪くなるしな。完成をイメージしながら、形を作っていく。…………三段ケーキにして脇にデカいチョコのオブジェを添えるか。いや、でも、………作りながら決めるか。

「いや、でも、………これは外せないか」

試行錯誤しながら大体の完成のイメージを固めて、それぞれ冷やしたり、溶かしたりしながら準備を整える。えーと他には、っと………

 

「公爵様本日はお招きいた………」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらですよ、来て頂いただけでも………」

「いえいえ!そんな………」

貴族の挨拶なんてみてて楽しいものでもないが、そこら中で行われていれば自然と目にする事になる。だがこれもコネクションを作る機会であり、疎かにはできない。それも公爵ともなれば、誰でもお近づきになりたいものだ。何せ彼は国防の最大責任者でもある。それ故に忠臣と呼ばれながらも、彼の領地は都から遠く危険な国境にある。

「エドガー、できたから持ってきていいか、時間との勝負なんだ」

「おお!出来ましたか!………うぅん、お願いしますね、キタガワさん」

「おっと、……………差し出がましい真似をしてしまい、申し訳ありませんでした。準備の方が出来次第、お持ち致します。引き続き、パーティーをお楽しみください。………では、私は失礼します」

「キタガワさん?!」

話しかけた時はそれこそ気軽に友人に声を掛けるようなものだったが、去る時はそれこそ上級使用人を思わせるような指先までしっかり揃った見事な礼をみせた。エドガーの動揺にパーティーの参加者が注目した頃には彼の姿は消えていた。

 

あっぶねぇー………誰とかいろいろ聞かれる前に撤退できてよかったー。正直、頭の中にはチョコが溶けるということしか頭になかった。もっと注意しないとな、はあ~あ、っと………………

「運び入れた後はみんなでラテアートするから、補充はレアとアナスタシア、空いた皿はクロエとアリスにさげてもらう。クロシェットは空いてる所に手を回してくれ、何もなさそうなら俺の手伝いで」

 

「キタガワさん、ありがとうございました」

「いや、僕も楽しませてもらいました。ありがとうございます」

「そう言って頂けると私も嬉しいですが………あんなことで釣り合うのですか?」

「はい」

 

世界樹を切るやつがいなきゃこんな事しなくて済むんだけどな、

 

「そういえば、あの子は俺があげた護符フル装備だったけど、まだ、怖がってる?」

「いえ、あれは家の力を見せつけるのに一役買ってますよ」

「よかった」

忘れない内に隔離から取り出した世界樹の苗を目的地に埋める。トラウマになってなければ安心だ。ケーキやラテアートは評判良かったし、

「それともう一つの件は話をつけておきましたから、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます」

さて、あっちも掛かるか、

 

場所を変えてテストラ帝国、昨日兵士達が凱旋し、今日は国を上げての祝勝祭が開かれている。聖国は属国となり、領土と名前は取り上げられたが、王はそのままだ。連なる貴族たちは財産をすべて没収されたが、まあ、王が生かされてるのは、損害賠償の責任をしっかり果たさせる為だ。

………でだ、俺はギルドを介して国のお偉いさんが集まるパーティーに招待されている。では、ここで質問、もし、能力の高いがまだ信頼できない人がいたとして、その人が大きな貢献や功績をあげたとしよう。信賞必罰は世の常、活躍した者を評価する事は末端の兵士の士気にも繋がる。

「帝国は能力主義なんだよな」

ただ、元からいる古参の人からはいろいろ言われそうだし、功績を与えると言っても多過ぎず、少な過ぎない量でなければならない。上に立つ者の苦労は計り知れない。んで、俺ならどうするかというと、

「近過ぎず遠すぎない、国境付近の敵領地を含む、辺境領と爵位だろうな」

優秀な人材は手放したくない。俺が送った汎用型80体は攻撃陣形を作る上で崩れない前衛となっていた。あと予想外だったのが透明化できる蜘蛛型人形が敵陣で大活躍してたみたいで殺傷力は低いが、酸を撒く事で装備を脆くしたり、目潰しとかで戦力を大幅に削ってたそうだ。俺からすれば見えるし、ガチャガチャうるさいし、脚の強度枝だから一番に潰れるじゃないかと思ってたが、まさか敵勢の三割以上をコイツが戦線復帰不能にするとは思ってなかった。………ここら辺は分析してみないとな、

「私には過ぎた事です。私には子供達の世話もあります。………森の奥ですが、私はあの子達の成長を見守るのが生き甲斐なんです」

誘いを断り、自分の場所を教えておく。さてと、今度は………

「ノルン、芦原さんの所に用があるから転移頼む」

「はい」

人目の無い場所に移動してノルンに転移してもらう。

「芦原さん………」

「ああ………」

「はじめまして、久米 義人と申します」

いかにも幸薄そうな、くたびれたサラリーマン、芦原さんと俺がこんな感じの反応なのは彼がこの世界に来る6時間前に遡る。芦原さんはいつもの様にギルドに行くために広場を通った時、噴水から水柱が上がった。そこにいたのが久米さんだ。久米さんは俺と芦原さんの合わせ技で送られてた。もう分かってもらえたと思うが、全裸で上空に放り出されたのだ。幸い噴水があったので死ななかったが、少しズレてたら間違いなく死んでる。その場に芦原さんが居なかったら連行されてる。更に言うと………

 

名前 久米 義人

種族 人

 

パーソナルスキル ローン

 

スキル 家事1

 

耐性 精神攻撃耐性 絶 不眠不休

 

称号 擦り減った魂 過労死

 

ローン 内略

期限を設定し、習得課程を飛ばしてスキルを得る事ができる。ただし期限内に熟練度を貯めないと、足りない分の寿命を消費する。なお、自分の寿命を超える条件は設定できない。設定した期限に応じて必要熟練度が増える。

 

擦り減った魂 内略

精神的な負荷によって存在値が減少した者、精神攻撃耐性 絶を得る。

 

不眠不休 内略

疲労、衰弱に強くなる。普通の人より休憩や睡眠をとる頻度を必要としなくなるが、睡眠等が不要になる訳ではない。

 

全体的に微妙なのと称号がね。纏っている哀愁という意味ではこの街では最強なんじゃないだろうか?

「私は北川といいます。前は………まあ、今も教師をしています」

「わしは芦原や、………まあ、見ての通りやな」

「えーと、私はこれからどうすればいいでしょうか?」

なんていうか親父狩りにあった人ってこんな感じなんじゃないだろうか?とか、ふっと頭をよぎった。

「と、取り敢えず、食事にしましょう。何か嫌いな物や食べられないものってあります?」

何とか空気を変えるべく手を打ち合わせて、体の前でパンッ、と音をたててみたが、反応は芳しくない。………少し重い空気が瞬間的に軽くなっただけだが、すぐに元に戻るだろう。

「特には………」

「よかった、準備しながら情報を擦り合わせていきましょう。久米さんはイーゼルって神様(笑)に会いました?」

「あっ、会いました」

「そうですか、という事は満足な説明は受けてないですね。僕も似たような感じで高所に放り出されまして」

「わしは真っ裸で町中に放り出されたわ」

「それは………お互い災難ですね」

 

「「全部アレが悪いんや」ですよ」

 

ここからはスムーズに話が進んだ。この世界の事や、5年後の事とか、いろいろ話した。

 

「それで僕たちの活動に協力してくれませんか?」

「私に何が出来るか分かりませんが、よろしくお願いします………」

「あんたは敵に回したらあかんな」

「何か?」

交渉とはテーブルに付く前に終わっている物なのだよ。俺はただリスクについても説明しただけだよねー。ねー、

「やりたい事ってあります?私が持ってるスキルなら指導で熟練度補正がかかるから、習得しやすくなりますよ」

俺のスキル指導は自分が持つスキルを相手に指導すると成長を早める事ができる。但し、伸びやすいレベルは俺のスキルを超えないのと俺の指導のレベルを超えないのが特徴だ。指導が8でもそれ以下のスキルはそのレベルまで、10のスキルを教えようとしても8までしか成長を早める効果はない。………と言ってもレベルの無いスキルは適応外になる。

「まあ、ゆっくり休んでください。僕はちょっと犯罪者を捕まえてきます」

「えっ?」

「おう、気ぃつけや」

「あっ、藤白はどうしてる?最近見ないけど」

「A昇級の為にダンジョンいっとるわ」

「じゃ、帰ってきたら結果はどうあれ、お疲れって言っといてくれる?」

「覚えてたら言うわ」

「ははは、じゃ」

まあ、何やかんやこのアスメシア支部も賑やかになって来ている。イーゼルから送られた人には直接会うようにしているが、学習能力が無いのか、いっつもこんな感じだ。

「ノルン、エンドリバーに頼む」

「承りました」

人々が運河の果てと呼ぶ。大陸の最南端にある街だ。貿易港も開かれている。ここに来るのは非常に簡単で、船に乗ってれば遠くでも一日二日で着く。逆にこの街から出る場合は鉄道か貿易船しかない。しかしこの街治安が最悪なのも相まってならず者やゴロツキがいっぱい、大量に商人も乗り込むので、貨物船に紛れ込まれたり、船頭は賄賂受け取るし、多くの商人が来るので手続きが多い為、簡略化されたチェックも緩い。信用もへったくれも無い。ただ、入る者がそんな感じなので列車や貿易船のチェックは厳重でよく捕まってる。さしずめ犯罪者の牢獄か、はたまた理想郷か、

 

しかし、このチェックを自由に抜けられる者がいたとしたら、というのが今回の問題だ。手口については解明済みなので下準備と実益と暇潰しと掃除を兼ねた行動を開始する。

 

「さて、………ケツの毛まで毟り取るなんて言葉はあるが、俺は無いし毟られる心配はしなくていいか」

 

手の中で弄んでいた金貨を一枚弾くとそれを掴み、建物の一角に進んでいく。

 

「………さてと、払えるなら結構だが、そろそろこの店にある金の量を超えないか?」

「………」

テーブルを挟んだ対面には脂汗を垂れ流す女性がいる。胸元や背中が大きく開いた赤のドレスは薄い生地が汗でくっついて体のラインどころか下着の形もはっきり分かる状態だが、それを気にしている余裕は全くない。少し汗ばむくらいなら相手が男なら籠絡したりする事もできるだろうが、度を超えたその量は体調を心配されるレベルだ。汗と言うよりバケツ一杯の水を頭から被ってきたと言われた方が納得できるかも知れない。

「まあ、できるだけ早く戻せるようにしてくれよ?………次がつっかえてるんだ」

原因は俺の手元で山積みになったチップだ。元は金貨一枚だが、スロットである程度増やして、その額をルーレットで番号に全額賭ける。未来視は限られた可能性の中ではその絶対性が強い。1から36までくらいだ(0もあるから要注意)。五年後の未来を予測するより簡単だろう。スロットは予想でもなんでもないただのビタ押し、ロールごとの絵柄を記憶して自分が揃えたい絵柄の前の特徴を覚えてタイミングを計り、揃えるだけ、後は一周する度に押すだけの作業と化す。後は裏から台を操作されたら移動するを繰り返してた。ルーレットでいきなりシングルナンバーとか勝負師の方から怒られそうだけど、これが一番倍率高い、なんと36倍、これなら一夜で億万長者になるものが居ても可笑しくない。黒か赤かでも2倍、勝ち続ければ相当な額になる。でいつの間にかオーナーが出てきていた。のだが、プロのディーラーはポケットを大体だが選べる。

しかし、如何にポーカーフェイスを貫こうと無意識に動く視線を読んで未来視を使えばポケットは分かる。狙えるのを逆手にとってやればミスらない限り未来視なしでも当たる。一時間もあればこのあこぎなカジノから有り金すべて毟り取れる、という訳だ。

「まあ、現金化はできる分だけしてくれ、………残りはまた来るよ」

通路にいっぱい伸びてるけどそれを避けながら、次のカジノを狙う。汚れた金だ、遠慮はしない。

 

きっちり巻き上げたった。次は不当に奴隷にされた者の開放とそれらを行う奴隷商の解体、大量の書類をカバンにまとめて七三にスーツ、サングラスを掛けて変装、喋り方も変える。次々摘発して、その日は街に泊まる。差し向けられた刺客は捕まえて、権力者(摘発した所の後ろ盾)に呼ばれれば相手の弱みをちらつかせ、動きを封じ、こちらも後ろ盾を持つ事をちらつかせる。あとはあちらの動きに合わせて決定的証拠を初動で掴み、終わりだ。後は夜を待って仕上げと行こう。

 

「ふぇ!………くしゅ」

………人形でも寒さを感じるのかな?なんて考えながらも、防寒の式の編まれたマフラーを向日葵とアリスに巻く。クロエは元から巻いてる。

船と陸路以外、この世界では魔法も含まれるが、元の世界では残りは限られてくる。ただこういう事は一気に潰さないと後でしらみ潰しに一つ一つ叩く必要が出てくるので一気にかたをつける。一つのルートには朝日と月夜を、もう一つにはレアとルシアを送ってある。アナスタシアとクロシェットは拠点防衛に置いてきた、ノルンは寄植・合成百草樹の綿で包まりフワフワしてる。

「………動きがあったぞ、準備できてるな?」

「「いつでもいけます」」

「ふぇっ!は、はい!」

「さて、二十秒後に降下する、………ショウタイムの始まりだ!」

そんな訳で真下の目標目掛けて落ちるように足元の結界を解除、宵闇に紛れて一直線に飛竜の背中に着地した。

「向日葵、カウント2」

逆手で刀を握り、敵が動揺している一瞬で決める。その後は翼の方に走り、跳ぶ。その直後に反対の翼が石化、クロエの銃弾で砕かれ、バランスが崩れ失速したところに、降りてきた向日葵が強欲で作り出した腕で飛竜の頭を潰した。この間、俺が呼びかけてからジャスト2秒。足元に出した結界で一気に浮上し、宿泊している宿に転移する。

「アリバイ作りをしとくからみんなは一応待機で頼む」

別ルートの方は心配にはなるがここでアリバイ作りを疎かにすれば本末転倒だ。危なければ代行者に隔離してもらうつもりだし、問題は起きないはずだ。

 

「行く手を阻めー、血の牢獄〜」

「な、何だ?!」

「閉所や通路ほど罠が強力なところってありませんね〜」

「ここからは私がやろう。少しは陛下に良い所を見てもらわねば」

「ジッとしててくださいねー、攻撃が来たら盾になってください〜」

「む、私もちゃんと戦えるのだぞ」

「いえいえ〜、私は戦闘用に作られたわけじゃ無いですからあんまり戦えませんしー、そもそも戦う必要が無いんですー」

 

ガシャン

 

閉じられた通路からする異音、真っ赤なその壁はただ、レアとルシアの方に迫って来る。彼らを押しながら、

 

ガゴッ!

 

「あ、足がぁぁぁぁ!」

「初めは虎挟みです。」

大型の動物、虎や熊等の力の強い者を対象もするこの罠は人間が踏めば肉は当然、骨まで粉々にする。そして罠は窪んだ位置にあり、後ろから迫る壁は調味料をするきる様に脆くなった足を引き千切って行く。

「この十五メートルは〜、結構いろいろ仕掛けましたからねー、楽しんで行ってくださいねー?」

強制的にゆっくりと壁に押されながら、だがその壁は止まらず、壁が止まるまで叫び声が止むことはなかった。

 

 




タイトルはあったこと書いたまんまです。

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