この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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ゆるーい。


まったり、まったり

バキバキ、パキッ、

 

「あぁ………」

体が硬い。寝て起きてから無茶の代償を知る。だが、今日はやけに体が重い。特に左手が痺れている。こんな時はまどろみに身を任せるのがいい、幸い今日は休みだ。姿勢を変えるべく寝返りを打とうとしたが、全く体動かない。

「ん?」

これは疲れて体が重いんじゃないな。痺れている左腕を動く範囲で動かす、何かに当たったが、痺れているので何かわからない。

「………みゃ、ぅ……」

枕を挟んで反対側何があるのかは知らないが、やけに重い、引き抜こうと思えば引き抜けるので、手を開放すべく少し強引に引っこ抜く。

「にゃ!……ぁふ……」

……………………………、ゆっくり枕を退かす。そこには布団から出た下半身とその後ろでせわしなく動く緑の尻尾が、聞こえにくかったが、さっき布団の中から呻き声みたいなのが聞こえたからな。………さっき俺は何を触ったのだろうか?とにかく現状を把握すべく首を降るがどうにもならならないので千里眼で視点を切り替えて見る。布団を挟んで俺の上に向日葵、クロシェットの俺を挟んで反対側にノルン、ルシアは壁とベットの隙間に挟まっている。レアは何故かパンツ一枚で扉の前にアヒル座りでもたれている(廊下にレアの服が)。アナスタシアとクロエ、アリスはざっと見た感じ見つからない。とにかく起きる為に結界を使って起こさない様に退かす。

「あれ、………まさかな」

布団を捲ってみるとアナスタシアがいた。こっちもやんわり退かす。………しかし、今日の朝食はどうするのだろう。みんなここにいるので、作り置きでもない限りは朝食が食べられない。自分だけならまだしもあの子達も食べられないのは良くない。たまにはみんなを休めるのもいいだろう。そんなことを考えながらカーテンを開けた。

 

「……………………………」

 

クロエが亀甲縛りで吊るされてた。取り敢えず救助、

「……………………………なあ、早々で悪いんだけどアリスどこにいるか知らないか?」

「ベットの下です……………まさか集中攻撃にあうとは」

「……………………………」

「…………………アリス」

クロエも所々服がボロボロ担っていたが、アリスはお見せ出来ない状態と言うか、女の子なら見られたくない姿だろうな、………自然と目が覚めるのを待とう。

「クロエ、朝食を作るから手伝ってくれるか?」

「はい!マスター!」

「吊るされてたのに悪いな、休めてないだろ」

服はボロボロだが、その内再生する。クロエみたいにメイド服以外をあまり身に着けない子はその服に自動修復系の刺繍がしてある。丸ごと消失していれば機能しないが、刺繍は無事だ。

 

「「……………………………」」

 

レアを壁際に避けて、部屋を出る。

 

手の混んだものは時間が掛かるので、適当にサラダとトースト、あと、デザートでいいだろう。………ゆで卵なんかもあるといいな。

「サラダとゆで卵頼むな、トーストは最後でいい。俺はデザートを作る」

この森、栗が多いんだよな。決まった範囲だが結構危ない。代行者に回収させているんだが、隔離の肥やしになっている。たまに魔物の足元に出したり、頭の上に落としたりくらいしか使ってない。中身を鍋に出して茹でる。

「渋皮ってとりにくけど、この世界だと器用さ補正があるから簡単に剥けるな」

機械でもこうはいかないだろうな、暫く剥き栗マシーンになりながら、今度は鍋に水と砂糖を入れて煮る。落し蓋をして沸騰したら日を弱めて、待ってる間に次の栗を茹でる。煮てる栗がいい塩梅になったら、栗を潰して、裏ごしする。マッシャーがあればそれを使う所だが、ないので木ベラで潰して、裏ごしも木ベラでいく。それと前に余って隔離してあった生クリームを混ぜ、ロールケーキの端を適度に切って丸めて、スポンジの土台を作り、その上に味を調整し直した生クリームとその他諸々、最後に栗クリームをビニール状にした結界で糸状にして載せて粉砂糖をまぶし、完成。………なんやかんや結構手間かかったな、一回できてしまえば量産は簡単なだが、余った分は隔離していくつかはクロシェットにあげるか、

「さてと………まあこの際だ、昼の肉料理でも作るか」

凧糸で肉を縛り、あるものは鍋に、あるもの燻製窯に、昼食にのぼるものはフライパンの上に乗せられじっくり火を通されている。前持ってフォークで万遍なく穴を開けて、ニンニク、オリーブオイル、胡椒等をすり込んである。ソースは醤油や酒何かを調理後のフライパンに入れて作る予定なのですり込みとは別にスライスニンニクも用意してあったりする。これだけあれば暫くはゆっくり出来るだろう。

 

「せ、先生!わ、私達に料理を教えていただけないでしょうか?!」

「………達?他にいるの?」

「あっ!いえ、………すいません。つい癖で」

確かこの子は梟の獣人だ。獣人と言ってもみんな同じではない。各々個体差があるのだ、ハルトは犬耳と尻尾がある一番オーソドックスなタイプだ、それぞれの特徴がどこかに出るのだが、稀にそれが出ない子がいたり、本来より人寄りの部分が多い子がいるのだ。この子もその一人。彼女は翼が無い代わりに人の腕がついている。その為鳥系の獣人からは差別を受けていたようだ。

まあ、目を見ない限りは獣人だと気づく要素が無い。あとは鑑定ぐらいだろう。因みに獣人は人寄り以外にも動物寄りの子もいる。本能の制御が大変だが、感覚が鋭いとか。

「何が作りたいかにもよるけど、俺以外にも料理を作ってる子ならいるし、みんなにも聞いてみるといいよ、もちろん教えるけど」

包丁とか火とか危ないし、何よりこの子は勇者のところで保護されていた子なので料理は完全に素人、いつも注意しているが更に注意しなくてはならない。

「お肉の料理についてお願いします」

視線は手元より肉にいってるな、

「…………………これは昼食べる奴だから、やらんぞ」

トングで挟んで右へ左へ動かすと視線も右へ左へ、気にせず調理を続けることは出来るがこのまま放置はちょっと…………………人数分は確保できてるし、残りは薫製にするか、

「ローストビーフを切り分けるから、少し摘むか?」

「ぜひ!」

切れ端とか見た目が少し悪いのは食べてしまう。クロシェットがよく近くにいるのであげたりしているが、俺も少しは摘む、

「ウィル達もいるか?」

「「「「頂きます」」」」

「うわ!」

が、量が量なので今いるメンバーでつまみ食いする。勿体無いし、味は変わらない。

 

まだ太陽が高い位置にいる内から作業するのは何時ぶりかなー、と思いながらいつもの様に炉に火を入れる。………チャーシューも結構作ったから、炒飯もいいな、っと、身体は概ね完成したが、付与するスキルとかが決まってない、と言うか無い。そんで代行者にリクエストして作ってもらった。優先で作って貰ってる二つの進捗は?意識の一割ほどを代行者の方に向ける。

 

《一つは問題ありませんが、もう一つは明日になるかと》

 

なら、この際完成させとくか、まあ、いつもの事だが最後に残るのはこの植毛作業だ。気が向いた時にこまめにやってるのだがそれでも最後にやることになる。ただ今回は事情が異なる。まず木と言う物は同じ部分は無い。それは色合いも同じで微妙に差がある。この世界樹の表面はオリハルコンでコーティングしてあり、光の反射でピンク(赤強め)にも見えるようになっているが、そこを調整しないと仕上がった時に違和感が生まれる。つむじから薄め、毛先に行くほうが濃い目になるようにする事で違和感なく均一、色ムラはないように見える。さてと、こっちは完成、もう片方はミスリルと青生生魂(ミスリル多め)で作った毛を植えていく。………流石に二体は無理があるな、ここまで手がプルプルしてると暫く手は使えないだろう。

「マスター、紅茶 |彡サッ」

 

こんな時に限って行っちゃった、早っ、………休憩した方がいいのは確かなんだが手がこれでは飲めない。

「|д゚)チラッ………。」

「あーあー、これじゃあ休憩できないなー(棒)」

 

………絶対、俺の心読んでやってるよな?これ、

 

入り口の影から期待の眼差しを向けるアナスタシアを見る。………千里眼でローアングル。

 

ガバッ!

 

………うん、絶対読んでるわ、スカート押さえたけど、今の俺見てない。思っただけだから、あっ、ほっぺた膨らましてこっち見てる。………というか読めるんだったらストレートに来てほしい。

「アナスタシア、手が使えないんだ」

「そうなのですかー(棒)では、私はどうすれば宜しいですか?」

 

あーはいはい、

 

「棒読みはやめて」

「くっ、………悪いんだけど、食べさせてくれないか?」

「………マスターはM?それとも肉食系?」

 

何その二択?Mはテンプレだろ。「何が食べたいのか言ってくれなきゃわかんなーい」みたいなアレ、………別に卑猥なこと無いよな?クッキーだし、もう片方は?

 

「え、私?そんな!いきなりこんなところで………、いやーん!………的な」

「………レアには、あとでお話があると伝えといてくれ」

吹き込んだのあいつだろ?

「はい、レアです」

「あっさり売ったな、………とにかく食べさせてくれ」

「はい、マスター………あーん」

「むぐ、………、ありがとう」

「紅茶はいかがですか?」

ちょっと危険な気がするけど、

「悪いな、いただくよ」

「仕方ないですね」

そういうアナスタシアは嬉しそうだ。

「あたり前」

はは、可愛い可愛い、頭を撫でてやりたいが、生憎手が………

「じゃあ、ぎゅってする」

まあ、いいか、

「やったー」

ぽふっ、と服に顔を埋めるアナスタシア。………最近心を読まれるのも慣れてきたな、そういえばギルドにもあんまり顔出してないし、行っとくか、エドガーの家、

 

ついでと思って寄ったギルドが賑わってる件。

 

この時期金払いのいい依頼は少ないはずだが、イベントか何かか?となると、また芦原さんが酒を?適当に近くの人に話を聞く。

「すいません」

「ひゃわっ!……………な、なに!?」

また、脅かしてしまったみたいだ、後ろから話しかけるぐらいよくあるだろ、冒険者あるあるなのか?

「賑やかですけど何かあったんですか?」

「…………………この時期はいつもこうよ、知らない?あと斥候職の人に後ろから声を掛けるのは辞めたほうがいいわよ」

「ああ、よくびっくりされるのはそのせいか、で、なんの」

改めて聞こうとしたら人だかりの中心から独特な声が聞こえてきた。………競りか?

「今日の目玉ね、ある渡来人が最高の鍋を作る為に作り出したとされるポットピッグ」

「ポットピッグ?」

ここから見えないので千里眼と真理、

 

ポットピッグ

異世界からやってきた。丸山 銀路が作り出した豚、どんな鍋にも合うとされるが、ポン酢で食すのを最も好んだ。

 

うん、俺も好きだけどポン酢で食べるの、ただ豚が可哀想だ。食べるのがとかじゃなくて、見た目が、まず全身銀色でなおかつ額に鍋用の文字、………産まれた段階から調理方法が額に書かれてるのが忍びねぇよ。ただ、結構な値がついたっぽいな、幾らかは知らんが周りの反応からそれぐらいの事はわかる。競りに参加してるのも大半が料理人みたいだし、改めて依頼表に目を通す。

「戦闘力は低いけど厄介なのが多いな」

依頼内容に目を通すと依頼の殆どが助っ人要請や目撃情報だ。危険性の高いのは金払いがいいので俺がやる。厄介と言うのは例をあげて説明すると、とある鳥型の魔物(ダチョウ)なのだが、飛べないがとにかく脚が速い。なのでどこかに追い込んだり囲い込んだりする必要があるのだが、その際に必要な能力を持つ人がパーティー内にいない為の募集のようだ。募集については実力不足、ならせめて情報を売ったという感じのだ。ただまあ、この辺りが平和なのはいいが、報酬は下がり気味、冒険者は目に見えて減ったが、商人はよく来るようになった。魔物があまり出ない道と魔物がよく出る道、どっちを行くかなんて聞くまでもないだろう。

「あ、鮒の依頼がある」

泥を吐かせるので生け捕り限定か、隔離すれば出来なくは無いけど、色々めんどくさそう。収納系のスキルは生き物入んないんだよ、どうやっても言い訳に困るし、手掴みは効率が悪い。ここは安定のスルーだ。

「少しスキルの実験も兼ねて、ステータスの高い魔物を捕まえたいですが、何か無いですか?」

捕まえる?頭の上からするノルンの声に疑問を感じた。

 

《ノルンには無限回廊のスキルがあります。無限回廊は隔離のように物や生物を仕舞う事が出来ます。内部には時間停止等の作用はありません》

 

真理の銃(トゥルースマグナム)は無限回廊に入ってるのか?」

「いえクローゼット、空間魔法で管理してます。無限回廊だと手を入れないと持ち出せないので」

前の時は手の中にいつの間にか出現していたが、確かに奇襲された時に、異空間に手を突っ込んで武器探してるのは間抜けだな、まあ、ノルンなら魔力回復速度が早いので、空間魔法を使いっぱなしでも、消費は気にならないだろう。その点俺の隔離の方が便利だな。

「希望あるか?」

「足用が一匹、あと魔法使うのと、防御力の高い魔物がいいです」

足用ね、まあ、5歩で息切れだもんね。街中でも騒ぎにならないのがいいな、調教(テイム)するのだろうな、多分、代行者今のリクエストに最適なのと、あと高く売れそうな食材魔物を討伐する依頼をピックアップしてくれ、こっちで食う分以外は卸す。

 

《了解しました》

 

ギュッギュッ、とゴム手袋を嵌めて、月と書かれた甲羅を掴む。たまたま見つけた奴も旨いらしいので隔離しとく、意外性もなくすっぽんだな、うん、…………なんと言うかこっちに来たやつ食料として品種改良する奴に字書き過ぎだろう。流行ってんのか?

 

《一番簡単にできるからでは無いでしょうか?》

 

作ったことないからそこら辺はシラネ、辺りを見渡すとダチョウみたいに飛べない鳥を逃さないように短距離転移で先回りしてる。しかし、

「ノルン、………それはやめとけ、確かに乗れるだろうが、色々怖い」

ドタドタと走っていく背中を見送る。足には最適だろう。ただ………

「あれFFでお馴染みのだな」

ダチョウの仲間かどうかは知らんが、黄色い羽毛がフワフワの奴だ。この辺りの生態系の情報は少し聞きたくないな、

「適当な狼がいいか、頭もそれなりに良いし」

水辺から離れて、周囲に人がいない事を確認して、千里眼で手頃な魔物を探す。ボロ布を纏った杖持ちのスケルトン、それとお馴染みリザードマン、赤毛の狼を隔離して順番に出す。

「実験だし、こんなもんでいいだろう」

「ありがとうございます。お父様」

そう言うといつも乗ってる綿に手を突っ込み。取り出した黒い物を三体の前に放った。黒い塊は地面についた瞬間に蔦を伸ばし三体を捉えた。あれは寄植・合成百草樹(ミストルティン)、ベースはヤドリギだが、冒涜なんかで色々改造しまくって作ったノルンの武器だ。魔力を込める事により、急速に成長させることができ、その際にどういう目的があるかを魔力に乗せる事でその目的にあった遺伝子が強くなる。捕まえる事に重点を置いたために今は蔦だが、刺し貫くだったら竹になるだろう。動けなくなった三体の前にショートカットで移動するノルン。すると三体の足元に空間な開き、それぞれの蔦が緩み、重力に従って落ちていった。

「それが無限回廊か」

「はいお父様、入れるのも出すのも私から一定距離内でしか行なえません」

「そうか、あっ、あんなところにバードランナー」

隔離から取り出した手榴弾のピンを抜いて、隔離を介してバードランナーの足元に出す、

 

パアァァン!

 

煤けた羽根をしたダチョウみたいなのを隔離しておく、こういう事は無限回廊では出来ない。俺には代行者もあるので中身はある程度管理されてる。ただ、微妙に違うのは、こっちはただ物をしまう収納スペースだが、無限回廊はいわばダンジョン。物の出し入れが少し融通が利かないだけで、人も暮らせるし、動物も飼える。管理は大変だろうが、俺は代行者任せにしてるのでさっきの手榴弾もだが、レアが起爆までの時間をそれぞれ調整したものが隔離空間内にゴロゴロ転がっているが、見た目でわかる訳がない。なのでそこら編の管理は丸投げしてある。なのでピンを抜いてから時間を測れば正確に相手の頭上で爆発させることもできるし、届かないところに逃げられたら、相手の背後なり足元なりに隔離を介して飛ばす事もできる。………まあ、どちらも長所と短所がある。それぞれ使い分ければいいと思う。

「あの子達はどうだ?他のみんなに付いてもらってるけど」

ウィル達にも狩猟のを経験して貰うべく、向日葵、クロエ、アリス、ルシアにそれぞれ引率して貰い、代行者に危険が無いか監視して貰っている。危なくなったらクロシェットが行く。レスキュー要請がない間は………

「にゃは!にゃーあ~?………にゃ!」

 

バシャバシャ………パシャ

 

………川で遊んでるな、うん、クロシェットは基本的に薄着でTシャツ短パンくらいのラフな格好が多い。なので靴を脱げば浅い川ぐらいなら気軽に入れる。

「お兄ちゃん〜!みてみて!」

そう言いながらこっちに手を振るクロシェット。ん?その姿勢は、

 

ボボボボォン!

 

川の水が爆ぜる。複数の水柱が爆破音を伴って遠ざかっていく、まあ、何をしたのかは姿勢でわかる。クラウチングスタートだったし、これを起こした張本人であるクロシェットは俺の後ろから抱きついてくる。こんなの見せられてもコメントに困るわ、

 

「あれ?」

昨日は何事も無く狩猟を終え、今日はあの子達に身体とスキルをあげようと作っておいた身体を見に来たのだが………少し想定が甘かったか、

『髪の毛が短くなってる?ピンクのほう』

「いや、短くなってる訳じゃない」

オリハルコンで薄くコーティングしたのは世界樹。つまり木材だ。柾目材は変形しにくいのだが、全くしないと言う訳ではないし、こんなことを言うと元も子もないが木材に熱した金属をかけて燃えなかった時点で、予想できる訳が無い。もちろん燃えないかは実験してたが、水分による変形はノータッチだった。

「パーマでもかけるか、………取り敢えずこれは朝日の身体な、あっちは月夜」

『身体に慣れたら、小生は刀の使い方を教えてほしい』

『もうっ、ちゃんと可愛くしてよねっ。じゃないと姫、拗ねちゃうんだから』

「わかった、わかった」

一先ずランタンから出して二体の人形に移し、二人の頭に手を置き、それぞれのスキルを与える。それぞれ要望があった服を側においてあるのでそれに着替え終わってから、手招きをする。

「朝日、髪の毛にパーマあてるからこっち」

まあ、何をするにしても初めはストレートの状態のほうがいい。クロエやレアなんかは常にストレートだが、アリスは髪飾りをよく飾ってるし、アナスタシアは偶にツインテールにしたりしてる。ルシアは後ろで纏めてポニーテールにしてる。姫と呼ぶに相応しい髪型にするか。服装もドレスだし、目標としては気品と無垢さが活かせる髪型にしよう。となると巻髪カールは気品が強くなりそう、………一部を三つ編みにするあれでいくか。両サイドから三つ編みを黙々と作っていき後頭部辺りで前作ってたミスリルのバレッタで止める。あとは後ろ髪に慣らし、完成、簡単なのならこれでいいだろう。

「よし、できたぞ」

「ああ、それと、これは朝日の武器と、月夜の武器だ」

一本の刀とバトンのような短杖、仮面を渡す。あとそれぞれのステータスはこれ、

 

朝日 オートマタ

機構精霊 秘られた日長石

パーソナルスキル 黎明 終焉 神秘ノ使徒(ラジエル)

スキル 火魔法5 水魔法5 風魔法5 土魔法5 付与魔法5 聖光魔法5 時間魔法3 空間魔法3 自動修復3 催淫10

耐性 毒・酸無効 魔法耐性 絶 精神攻撃無効

称号 生きた人形 

 

月夜 オートマタ

機構精霊 純白の月長石

パーソナルスキル 忍耐 狡猾 信頼ノ使徒(イフディエル)

スキル 完全再生ー 読心10 催淫10 魅了10

耐性 毒・酸無効 不壊

称号 生きた人形 

 

まあ、なんだ………もう驚かないつもりだったんだけどな、悪魔系と天使系を一つずつとか誰が予想できるんだよ。

 

黎明 内略

すべての始まり 精神攻撃や妨害効果を防ぎ、魔法を原初の域に上げる。

 

新しい夜明け 如何なる物にも命を吹き込む事ができる。

 

終焉 内略

すべての終わり 魔法の適正が上昇し、魔法耐性 絶を得る。アンデッド等を回復させる瘴気や毒を発生させる事ができる。

 

開けること無き夜 能力圏内での自分以外の魔法が機能しなくなる。

 

神秘ノ使徒 内略

セファー・ラジエール 魔法技能の習熟を早め、どんな言語も読めるようになる。

 

見エザル者 不可視になれる。

 

忍耐 内略

不滅の信心 不壊の獲得。体力が尽きても、魔力等を代わり消費し、生き残れる。

 

神秘 大罪系、悪魔系の威圧や毒、呪いを退ける。

 

狡猾 内略

簒奪手 物を掴み、動かす手を作り出し、倒した敵や死体から知識や経験を抜き取る事ができる。

 

甘美な罠 魅了を習得する。

 

信頼ノ使徒 内略

真ノ友 使徒系のスキルを持つ者と自分の場所を瞬時に入れ替える。

 

一蓮托生 心を通わせる者の力の一部を模倣した能力が使用できる。

 

全部ブッ飛んでるけど、…………ブッ飛んでるけど、どっから湧いて出た催淫!

「………………」

ズイッ、と前に出てくる月夜。肉薄する褐色の肌が腕に吸い付くように絡んでくる。

「ご主人様………、小生は斯様な身でありますが、貴方様に尽くす事が至上の喜びです。精一杯、ご奉仕致しますので、満足していただければ幸いです………なにぶん初め……」

小生という一人称を除けば健気で献身的、腕に当たる微かな呼吸に、伏し目がちに頬を染めて、だが、確実にこちらに顔を近付けて、それに合わせるように目は少しずつ不安そうに見上げてくる。が、その前、こちらに詰めてくる時に舌なめずりをしたのを俺は見逃さなかった。しかし、視線を固定されたように動けない。後20センチという距離になった時、

「むぅー………!姫もご主人様にホウシするのー」

そう言って月夜の反対から飛びかっかって来た。打撃という意味では無だが、衝撃と言う意味では反発力を持つ朝日の胸が当たった結果、その衝撃の全てを額から額に月夜に伝える事になる。要するに頭突き(ヘッドバット)だ。

「………ぁぁぁぁ」

「痛い………」

「あっ、まだ髪の毛直してもらってなかった」

………朝日は今までに無いパターンだな。大概催淫持ちは計算高い子やあざとい子が多いのだが、この子は無自覚で天然、ある意味一番油断ならないかもしれない。

「ご飯できました〜」

遠くでレアの声が聞こえる。こっちも早く仕度しないとな。


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