昨日の中華は美味かったなぁ、なんてパソコンの設置作業をしている最中にふと思った。そんな時、
《調査が終了しました。結果を報告してもよろしいですか?》
おう、長かったな、初めの頃に頼んだ事のはずなのだが、それだけ重大な事か、それとも無数と言えるほどあるのか、蓋を開けて見るまでわからないな、
《早急に対策が必要なものは三件です》
留守番のメーセッジみたいな感じがするが、大事な話なので意識を切り替える。
《一件、召喚した勇者を使って戦争を始めようとしている国です。二件目、大型船舶を使った海洋資源の収奪や乱獲、主導者は異世界人と帝国国王です。三件目、農作物を大量に生産している勇者、尚、使用した土地はしばらく枯れ、草木が育たなくなるため、転々と移動しています》
………………なあ、全員ブン殴って終わりでいいか?なあ、いいよなあ、あぁ?!なんでここまで馬鹿ばっかりなんだよ!!
「ああー………、もうヤダ」
嘆いた所で状況は好転しないが、その後代行者から詳細を聞いたが頭痛と目眩がした。
「………嫌です。帰ってください」
「分かりました。では、(土に)還ってください」
バキッ、
散々長い言い訳と間違った使命感と迷惑な優越感を混ぜて、偽善でコーティングした猛毒なんぞ俺は飲みたくない。こっちは迂遠な言い方を避けて角が立たない様に、尚且つ改善案も出したにも関わらず、拒否、理解できてないのかと更に細かく説明したが、理解する気が無い上に、分かったかのような口を効き、尚且つ拒否、顔面に右ストレート一発ぐらい撃つ。時間は無駄にするわ。自分が正しいと信じて疑わず、人の意見を間違いと断じ、聞かず尚且つ、まだ、農地を広げるだの抜かせば、蹴りの追撃だって出る。
「俺の六時間返せ、マジで」
《正確には6時間3分38秒です》
暫く喋るな。な?冒涜でスキルを回収、ゴミスキルなので分解して存在値に還元、掴んでいる
「マスター、お茶とお菓子」
「ありがとう」
「どういたしまして………」
………うん、美味い。何より紅茶の香りは気持ちが落ち着く。コーヒーではこうは行かない。それを知ってかあの子達も紅茶を煎れる事が多い。……………さて、今後について考えよう。あの勇者は孤児を何人か預かっているのでその子達はこっちに引き取ろう。問題は次、戦争を起こすまではまだ時間があるので放っておくと被害拡大する海の問題に掛かる、そこから取り掛かりたいが、
「海上なんだよな、いっそ船ごと制圧したほうが………」
逃げられると鬱陶しいんだよな。海上だから逃げられないという保証もない。ノエルのように転移できる場合、面倒くさい追いかけっこしなければならなくなる。こちらの動きに気づいていない一回で捕まえたいが帝国国王だのも別の場所にいる。出来るなら同時確保が望ましい。
「お兄ちゃん?………ふふん、何考えてるのにゃ」
「うおっ!………今日は連れてきてない筈なんだが?」
「来ちゃったにゃー」
移動手段は言わずもがな足ですわな………まあ、クロシェットがいるなら作戦の幅も広がるな、それと、
「殿下、お願いがあります」
今回はルシアも連れてきている。実力を図る意味もあるが、戦闘になった際に高い防御力のあるルシアが必要になると思う。帝国の城内と船の設備等を適当に目を通し、最良の作戦を模索する、候補は幾つかあるがどれで行くか悩んでいる最中なので意見は参考にしたい。
「私が帝国、クロシェットが船の………」
「却下だ」
「殿下………」
俺が何もしないのは気色悪い。気分の問題だけどね。それに………
「俺の隔離にもルールがあるんだよな、異世界人限定みたいだけど」
藤白や芦原さんを前、隔離したことがあったので見落としていたが、手紙の配達に出ている。津瀬くん(津瀬 敬信)を一時的でも連れてこようと思って隔離しようとしたのだが、出来なかったのだ。シリルさんも同様で出来なかった。代行者に聞いたのだが、どうやら戦って勝った、倒した相手しか放り込めないのでは?との事。(はっきりとはわからん)そしてこの帝国国王、面倒くさいことに、初代が異世界人なのが原因か隔離出来ない。勝つのは楽勝、だが距離が問題だ。………なんやかんや考えが纏まってきたな。このプランで行くか。
パァァン!
豪華客船と言っても通りそうなフェリー?クルーザー?どっちでもいいや、船の違いとかわからんし(多分エンジンかな?勝手な思い込みだけど)その船体に垂直に突き刺さっているのは結界で全身を防御している俺とルシア、クロシェットは上を通過した。戦闘機がミサイル打つ感じで運ばれてきた。埃やチリでもあの速度だと凶器なので、運ばれている段階で結界は張っていたが、出発したと思ったら直後に刺さってた。速すぎる。辺りを確認すると狙い違わず船長室だ。ツルンと滑り込み、ルシアを室内から引っ張る。いろんな証拠は既に隔離で抜いてある。後はここで本人を待つのみ、さっさと入り口側の部屋の隅に寄る。入ってきた髭モジャを後ろから制圧。
「お前!俺さ…ブッ!」
「自分に様付とか、恥ずかしくないのか?様付で呼ぶ奴に会ったこと無かったから、ちょっと聞いてみたかんだけど」
と言いながら、その様を言い切る前に髪の毛を掴んで床に叩きつける。
※良い子のみんなは真似しないでね、先生との約束だよ☆
後は二度とこういう事をしないように罰として、髭とか髪を切れ味の悪くなったバリカンで斑に毟り取る。幸い、体毛は腐るほどあるみたいだしな。
※資源は大切にしましょう。
「あぎゃぁぁぁぁぁ!!」
船内に悲鳴が響き渡る。その音にブチブチと何かを引き千切る音は掻き消されていく。
「チッ」
上半身裸の白目を剥いて気絶したおっさんを冷たく一瞥すると自分の体に毛がついてないか心底鬱陶しそうに払う。おっさんの周辺には様々な抜け毛が散乱しており、縮れ、ストレート、剛毛、それを結界で集めて海に捨てる。本体は残す、この船は鹵獲するつもりなのでこの穴も塞がないとな。残りの船員は異世界人関係の人はいないのでまとめ隔離、後で詰め所に密漁などで付き出す予定だ。レアを隔離を介して呼び出す。
「レア、この船をこの場所に着けてくれ、………クロシェット!移動頼むぞ!」
レアに場所を書いた紙を渡して、結界を張ると、どこにいるか分からないクロシェットを呼ぶ。
「あのー、だん………」
レアの言葉を聞き終わる前に、一瞬の浮遊感の後、帝国の城壁に突き刺さった。声を掛ける前に結界は張ってある。それと覆面も被っている。(吉川さんの店の前のドンキのパーティーグッズ)
「あの?殿下?僭越ながらお聞きしたいのですが、………私は必要なのでしょうか?」
視線を横に向けると、心底不安そうな顔をしたルシアが俺と同じく突き刺さっている。アナスタシアとノルンは船に置いてきた(二人は転移で後から来た)。………丁度、上半身と下半身の境目で止まるのは、クロシェットの加減のなせる技なのだろうか?ツルンと這い出すには丁度よかったりする。ルシアを前回と同じように室内に引っ張り込むと現在地を確認、周囲が騒がしくなるより前に部屋を早足で出て、ドアで一人迎撃、そのまま右に曲がり、謁見の間を通り過ぎ、皇帝の部屋に通じる廊下に差し掛かる。
「ルシア、この道の足止めを頼む」
「りょ、了解でありゅます」
…………噛んだ。
「通さなければいい、少し扉を破るのが一筋縄ではいかなくてな」
「はい!」
クールな美人なのだが、何というかクロエのような放って置けないドジッ子感があるんだよなー、前も思ったがクロエとアリスを足して2で割った感じなんだよな………………何かより不安になってきたので扉の解錠に掛かることにした。この扉はまず魔法を防ぐ式が裏面に彫られているため横からとは行かない建物全体も結界がある。物理的にも厳しい。なので冒涜で式に干渉する。ただ掘られた式に干渉するのは非常に難しかったりする。直接触れるならまだしも裏側、なので魔力のような物を流して作用するしかない。幸い千里眼で反対側から様子を見ることが出来るが、解錠には20秒は欲しい所だ。
「居たぞ!あそこだ!」
もう来たか、………あと十秒あれば見つかるより早く開けられたのに、
「そこで止まれ!これより先は通すなとの命を受けている!」
あと五秒、通路を塞ぐようにルシアの前に障壁が現れた。殺到する攻撃を次々と防ぐ、………おし、解錠出来たな。しかしドアを引くが開かない。………おかしいな、千里眼で反対から見たときに原因は分かったか、
「鍵か、3つも…………………いけるかな?」
正直、鍵無くした時、ロッカーを手元のクリップで開けるくらいしかしたこと無いしな、開けられるレベルかどうかもわからん。
……………アレならいけるか?
ダメ元で万能結果を鍵穴に押し付け、それを垂直に離す。…………不定形でも行けるらしい。鍵穴が鍵の型を取り、その容量で三つとも解錠、………まだ開かないか、………他の原因は無さそうだ。
…………代行者は何か無いか?気付いたこととか?
《現在は真ん中錠のみ施錠されていますが、》
……………………………………………あー、あれか、防犯の奴であったな、3つ錠をつけて真ん中の錠だけ反対になっている空き巣を防ぐ心理的な奴だ。解錠には手間三倍だし、一個自分で閉めてしまう。真ん中の鍵穴に不定形の万能結界を押し当て、そのまま形を固定して回す。………開いた。
「よう、帝王?………いや、皇帝陛下って呼んだほうがいいか?」
「…………」
押して黙っている人物に気軽に敬いの感情の無い敬称をつけて呼んだが、まだ、黙りこくったままだ、
「トラップなら無意味だぞ、自ら餌をやるのは最適解だが、相手は選んだ方がいい」
「………最期にお主の名を聞いてもよいか?」
盛大にため息を一つついて、素早くM1911を抜く。
パスッ、パシュ、シュ、シュ
四方に皇帝の背後、四方に向けて引き金を引く。一人は透明化、残りはカーテンの中に居た。純白のカーテンが赤く染まり、その影から二人出て来た。もう一人はカーテンをレールから引き千切るように捕まりながら倒れる。
「呪いに関する魔道具も分かってるからな」
天井の照明の一つに、照準を合わせて引き金を引く。
パリン、
割れたガラスに混じって落ちてきた。真っ黒な魔石(刻印済み)を撃ち抜けば目の前に守る者なき裸王(服は着てる)が完成する。この王手から逃れる術はもうない、
「さて最後に言い残すことは?」
「………………」
今度も黙りこくったままだが、顔には焦燥と焦りが色濃く張り付き、止めどなく汗が吹き出していた。
「無いなら無理に言わなくていいぞ、………じゃあな」
「ま、待てく!」
パスッ、パス
心臓と脳を穿つ二発の弾丸を放つ、次の弾を寄越せと言うようにホールドオープン、スライドストッパーを解除して、スライドを引いて黙らせる。薬莢は隔離空間に片付け、部屋を出る。
「………もういい、引き上げるぞ」
「了解であります」
噛まずに言えた…………珍しいな、内心テンションが高かったりするのだが、その前の様子を見て絶句した。それこそ日頃の訓練の賜物とも言える絶え間なく放たれる魔法の統制射撃………集中砲火と表現した方がいいかもしれない。それがルシアに向けて放たれている。が、当のルシアは微動だにせず、現在はこちらに挨拶するため、敵には背中を向けているが、その間も魔法は放たれている為、現在は背中で魔法を受けているが、まったく意に介していない。
「ク…………こっちでは合図決めてたな。」
空に向けてもう一丁の拳銃を空に向けて引き金を引く。
パンッ!
さて、カウント…3…2…1。
ヒュッ、
その音の後に前にも感じた事のある浮遊感を味わった直後、家の畑にルシア共々突き刺さった。あの轟音の中で一発の銃声を聞き分けた事は称賛すべきことだと思うが、何処かに突き刺さないと気が済まないのだろうか?………問題は解決したしいいか。あっちは準備が入りそうだし、レアの帰りを待たないとな。ルシアを畑から引っこ抜く。幸い、スカート以外の服というやつで軍服モドキを着せていたので中身が見える心配は無かった。上半身は土まみれだが、