この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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チャラララッチャチャ、

白紫 黒緑はルビ振りを覚えた。


ダンジョン特別実習と日頃の成果

今日はダンジョンに来ている。メンバーはクロシェット、ノルン、レア、ルシアとウィル、キリエ、ハルト、ロイを連れている。戦闘訓練では事故が起きる可能性が高い。保護者が俺一人では対応できない可能性がある。

「じゅ、準備できてます。どど、どうぞ」

少年とも少女とも付かない中性的な印象を与えるコアの案内の元進む。普通の人と違う部分を上げるなら左腕にブロック体の数字があることぐらい(地味)。エレベーターか?これ、思っいきり岩に穴が空いてるだけだけど、動力とかどうなってんだ?それに乗り込むと案の定、床が移動し始める。それに伴ってコアを除く全員が俺に捕まる。………ちょっとよろけた。

 

暫く、いや、結構な時間が経ったあと、やっと光が差してくる。身体を動かすには丁度いい開けた空間に出る。

「じゃあ、武器はこっちにあるから好きに使っていいぞ、あと最初はある程度の強さのを一体、次はゴブリン×4その次が6で後は様子を見て決める」

「わ、わかった。じゃあ、最初のはトロールを」

「待て、デカ過ぎないか?」

「先生そんなに心配しなくても、俺達なら………」

「いや、そうじゃなくて、この天井の高さ、立ったら無理だろ。サイクロプスより小さいとは言え度、5メートル以上はあるんじゃないか?」

「あっ、じゃあキングオーガにします」

 

なんで俺か注意しなきゃならんのだ。

 

お前、コアだろ、ダンジョンそのものやん、思ったが口に出さずに様子を見ていると地面に魔法陣のようなものが現れ、その中央に光が収束していき人の形をとる。光が収まるとキングオーガがいた。挨拶代わりと言わんばかりに雄叫びをあげた。四人の様子を見てみるとスイッチが入った感じだ、確実に勝てるという自信を感じられる。因みに人形の四人の方はそよ風同然、クロシェットとレアは耳を押さえているが、煩いなー程度の物だし、ノルンは我間せず、ルシアは見守っているが、雄叫びを聞いても微動だにしなかった。

「準備はいいか?」

「僕は大丈夫です」

「私もお願いします」

「いつでも行けます」

「お、俺も、大丈夫です。先生」

キリエは鉄の棒、ロイはレイピアと、ハルトは最後まで悩んでいたが、刀六本に短刀四本、篭手、グリーブ、防御式刺繍付きコートで完全装備、ウィルは武器は選ばなかったが、防御式刺繍付きコート(魔法防御特化)を着込む、

「お前ズルいぞ!」

「…………何がしたいんだ」

「アホですね」

「う、うるさい!」

まあ、普通この歳の子がここまで装備を固めると動けなくなる。やはり獣人という部分のアドパンテージだろうが………

「ロイも何か防御式付きの装備を着たらどうだ?それとハルト、背中の刀は抜けるのか?」

「そうですね。じゃあこのローブを」

「え?ふぅっ!……………抜けない」

案の定、背中の刀が抜けないハルト。装備重量をクリアできてもまだ、体が完成している訳ではない、身長がもう少し伸びないとただの重りだな、ローブのスペースを探りに行くロイ。残念そうに刀四本を戻すハルト。ロイは何故か、迷彩柄のローブを選んできたし、

「それじゃあ、開始するけど、問題ないか?」

「「「「はい!」」」

よし、いい返事だ。キングオーガは腰巻き一枚で武器は無し、安全に連携を組み立てていけば余裕を持って勝てるはずだ。まあ、うまいく保証もないが、ヤバくなればこっちで救助する。

「オオォォォォォォォォォ!」

初めに動いたのはキングオーガ、雄叫びとともに腕を振り上げ襲いかかるが、最も身軽なウィルが足元に入り、脚の骨を蹴り砕く。しかも真正面から、

 

「グオォ?!」

 

パキン、

 

短い悲鳴の後、何かが硬いものにあたって折れた音がする。頭に向けて飛び掛かっていた。ハルトの刀が姿勢が崩れた事が原因で角に当たって折れたようだ。まあ、なんでもない中古の刀だからな、無論、状態の良い物を選んだが、防具以外は俺か作ったものじゃないし、なんの変哲もない刀だし、当然だろう。が、気にせずもう一本抜刀、空中で姿勢を立て直し、目を横一文字に斬る。が距離が足りないので、右眼を掠めたぐらいだ。暫くは開かないだろうが、こう言う時は額を斬って、血で目を潰す方がいい。集中力や戦意にも大きな影響を与える。これは後で教えてやろう。別に目でもいいし、もう一つの選択肢程度のものだ。

「おいぃぃぃ!刀が折れちゃっただろうが!」

「なっ!お前!主より借り受けた刀を折るとは………」

 

ペチッ!

 

二人に迫る手の甲を鉄の棒が弾く。弾くと言っても痛みで引っ込めたようなものだが、何回も打たれれば骨くらいは折れるだろう。因みにこの棒だけは俺作で、随分前、それこそ初めに武道を教えた時から頼まれていたものだ。

「敵の前で揉めるのは禁忌(タブー)だと先生に教えられたでしょう、兄さん」

それを言い終えた後に襲いかかるキングオーガの弐の手、参の手を躱し弾く。そうこうしている間に意識が疎かになっていた横から、風魔法で作った球が飛ぶ。当たった球は弾ける様に膨張してオーガの巨体を一発で仰け反らせ、追加の球で体制を崩し、抑える。

「早くしてもらえます?これ結構魔力消費するんで」

あー、思い出した、あの迷彩ローブ。防御式と透明になる効果を編み込んであるのだった。俺には通じないし、俺が着ると透明化が常時発動(パッシブ)だし、俺以外なら使えるかもしれないので置いといた奴だ。

「わかった」

「そのまま、抑えてろ」

「…………カウントするから、それに合わせるまで打てる?」

「ええ、大丈夫ですよ」

「じゃあ、5………4………3………2………1………Go!」

ハルトは準備していた火球を、ウィルは鋭い石の槍を、キリエは氷山を、それぞれ制御できる限界の魔法をぶつけた。なかなかにエグい。途中はアレだが、最後は文句無しだ。多分止めは氷山だな。ぶつかって更に相手を凍らせている。俺が見せた過冷却水のイメージも入ってるな。魔法に関してはキリエとロイが上だな。ただ発動速度はロイが格段に早い。普段から使ってる影響もあるのだろう。キリエはもう少し実戦で使うには遅い。ハルトは刀より剣のほうが向いてるな。体のスペック的にも、………それとウィルは肉弾戦では藤白に並ぶ破壊力だな、なんて蹴りだ。

「ほら次行くぞ」

「いやいやいや!滅茶苦茶強くない?!この子ら!何したらこの歳で四人パーティーでキングオーガ倒せるの?!」

「本来ならどのくらいいるんだ?」

「ほぼ単体でいること無いからあんまり参考にならないけど、集落規模なら十以上のパーティーのレイドが組まれるよ。取り巻きと一緒に相手したらBランクのパーティーを三つぶつけて、被害は多少出るけど勝てる感じの強さ」

 

大体分かったけど、俺のチェックあんまり当てにならないかもな、ふと気づくと、出されたゴブリンが伸びてた。…………当たり前といえば当たり前か、

「ゴブリン増やしてまた出す?無駄な気がするけど」

「………替えよう。オーク6に」

ウィルにはムエタイを、ハルトとロイには格闘術(生き残るための戦い方)、そしてキリエには杖術を教えた。それとあの棒は長さを変更できるギミック付きだ。ある場所から外れて、三節棍や収縮する槍にも薙刀にもなる。数を増やしても、オークに変えても変化なしだな、ウィルが膝や顎を砕き、キリエが槍として棒を使い牽制、白兵戦で敵の隙間を縫いながら攻撃するロイ、一体ずつ確実に仕留めるハルト、多分この程度では連携は要らないみたいだ。なら………

 

「一番弱い…………竜で行くか」

「えぇ!竜か〜、あの子達にはまだ早いよ」

「嘘付け、力の消費を渋るな、それにやられそうになったら助けるしな」

「わ、わかったよ出せばいいんでしょう。出せば」

ドラゴンには幾つか種類がある。初めて遭遇したのは翼竜、飛竜と言われる物で、翼竜は脚と翼があり、飛竜は手足があり、背中に羽根のあるものを指す。そして竜は翼が無く四足の物を指す。そしてドラゴンの中でも珍しいのは龍、または属性龍と呼ばれるもので、翼が無くとも空を飛び、手足もないが属性付きのブレスは如何なるものも悉く破壊するそうだが、肉はかなり美味いらしい。鱗は魔法を防ぐが、効果が強いのはその属性のみで火は炉の素材等のように使われるが、高級品だし、あまり需要はない。が肉はとんでもない値段が付くそうだ。あまり可食部は無いようだが…………あと竜は薬の素材として一般的だ。少しお高い薬程度だ。………んで、俺らが食べた飛竜は鱗は防具になる超頑丈な奴で、槍を弾き、少しの魔法程度ではビクともしない、当然鱗の下は皮と肉なのだが、そんな奴の肉が食用になる訳がない。あの受付知ってたなら止めてくれよ。

 

ギャオン!

 

そして竜登場。身は硬いので食用に向かない。あと泥臭い。内臓(ホルモン)肝臓(レバー)しか使えない(まあ、結構デカイから何人分になるやら)。

 

「あ、ドラゴンだ」

 

……………反応薄くない?

 

「落ち着いて対処すれば勝てます」

「主が戦えというのならば私は戦うだけです」

「初めは私が」

水が凍りつき、足を捉える。捕まえられる時間は短いが、戦闘中と考えれば十分過ぎる時間だ。ウィルとハルトが正面から突っ込みその影からロイが追う。

 

ゴォォォォォォン!

 

唯一攻撃手段であるブレスを放つ竜。それをウィルとハルトは左右に別れて避ける。その時ロイは透明になり、ウィルの後ろに付く。そしてウイルは頭、ハルトとロイは前足を攻撃する。が、一撃決めたあたりで完全に氷から脱出されてる。咆哮をあげ、怯んだ所に少し身じろぎをしただけ、それが竜側の思いだろう。しかし巨大な体躯は人の、それも子供の身体を吹き飛ばすには過剰なくらいだ。そのまま襲いかかろうとするところを、

 

「ただ見てる訳ねーだろ」

 

顔面を思いっきり蹴っ飛ばす。少しは時間を稼げるだろう。

「まあ、わかったと思うけど油断大敵、戦ってるのは自分より力の強い生き物だってことだ。技術で渡り合えるようになっても、使えない状態にされたらひとたまりもない。過信せずに………」

 

ガァ!

 

邪魔すんな、教材が口出しすんな、噛み付こうとしていた口を回転しながら躱し、横からジャンプして落下の勢いを載せた肘で、首の骨を叩く。その直後に竜の足の関節を四発の弾丸が矢継ぎ早に撃ち抜くと大人しくなった。まあ、ノエルが転移しながら零距離で撃ったのだが、見事に貫通している。

「………研鑽を積み、相手の実力の見極め、勝てない相手なら逃げるのもありだ、隠れて不意を付くのもいい、一番大事なのは引き際と諦めない事だ。―迫る死を避けるために思い付く限りの抵抗をしろ!受け入れるな!目を逸らすな!抗え!―強さは力だけじゃない」

 

どんなに強靭な肉体を持っても、首と胴が離れれば人間は死ぬ。当たり前の事だが、一瞬の油断で簡単に命は失われる。だからこそこの一回の敗北から多くの事を学んで欲しい。ヘンリー・フォードの残した言葉にこんな物がある。『唯一、本当の失敗とは、そこから何も学ばない事だ。』と、俺が守れるこの一回の敗北を余す事なく糧にしてもらいたい。

「さて、後はこれをどうするかだ」

身動きの取れない教材(ドラゴン)を一瞥すると、思案を始めた。


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