この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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前回、名前を入れ間違えていたので修正しました。
誤 クラリス
正 ルシア


人はそれを勇者と呼ぶ。
ルシア


「………よし、随分待たせたな、ルシア」

『ルシア………それが私の名前でありますか?』

「そうだ、よろしく頼む」

『い、いえ!こちゅら………お願いします』

 

何故、噛む。

 

「………今日からこれがルシアの身体だ」

ランタンを開け、小さな光が人形に吸い込まれて行ったのを見届ける。その後打ち震えるように、片膝を付いて礼をする。

「今この時より、私は殿下を守る盾、剣となりましょう。にゃにぞど………」

 

人形に宿っても噛む所は変わらなかった。黙っていれば凛としたクールビューティー、喋ると噛み倒し、………何かクロエとアリスを足して2で割ったような印象を受ける。

「殿下、指示をください」

「ん、ああ………まあ、何ができて何が出来ないか把握する為にも一通り、家事をして貰えるか?方法はアナスタシアやレアに聞くように」

「了解であります!」

「意欲があるのは良いが、服を着てからにしろ」

「了解であります!」

目の前で置いてあった服を着だすルシア、ただそれは、俺の洗濯から帰ってきた服だ。

「それは俺のだ………」

「はっ!も、申し訳ありません!」

 

だからと言って、スポンと脱ぐな!そのすぐ脱ぐ奴は下着も巻き添えにする。途中苦戦していたので、着せるのを手伝った。

「御手を煩わせてしまい、申し訳ありません………」

「気にしなくていいよ。ただズボンとかの方がいいなら用意して置くよ?」

「で、では、お願いします。………少し、恥ずかしいので」

 

あー、そこら辺あんまり考えた事なかったな、向日葵は半袖のブラウスとスカートを最近よく着ているが、クロエやアリスは長いスカートが多い、と言うよりあの二人がミニスカートを履いている所を見たことないな、レアなんかは作業に合わせてツナギや白衣を作ってた。

「いくつか準備しておくよ、戦闘面は最後に見る。頑張ってね」

頭に手を置いて審判ノ使徒を付与する。

 

ルシア オートマタ

機構精霊 忠誠の金剛石

パーソナルスキル 忠実 審判ノ使徒

スキル 音響魔法3 飛行4 自動修復8

耐性 毒・酸無効 魔法無効 物理攻撃耐性 絶

称号 生きた人形

 

………もう、ここまで来るとどうにでもなれと思う。

 

忠実 内略

気高き御霊 魔法無効

 

忠義の志 物理攻撃耐性 絶

 

審判ノ使徒 内略

断罪処刑 結界を無効化し、直接攻撃できるようになるが、使用中は下記の権能を得られない。

 

無罪放免 どんな攻撃も防ぐ障壁を張れるが、発動中は使用者から攻撃はできなくなり、使用中は上記の権能を得られない。

 

攻撃力が高くなるようなものは無いが、結界を砕く権能と防御特化の印象だ。魔法無効とか結構えげつない。あと着替えを苦戦した理由は飛行のスキルがあるので分かってもらえるかもしれないが、羽根があるのだ。背中に、扱いとしては翼人となるそうだ。そろそろ昼飯も近いのでキッチンを目指す事にする。

 

「これー、味見してもらってもいいですか〜?」

「ラーメンか、いただくよ」

「はいー、また感想をお願いしますね〜?」

………ツナギエプロンとか斬新だが、そこはスルーさせてもらう。前のファスナーは全開になっているが、同様にスルーしておく。少し鶏油が欲しいか?こっちでは見たことない物は色々と工夫しているが、なかなか難しそうだな、感想を伝えてルシアの様子を見に行こうとすると、

「あのあの~、倉庫にあるウサギの毛皮って、使っても宜しいですか〜?」

「うん、いいと思うよ(即答)」

あの子達、狩りの練習するんだけどこの辺りはウサギしか出ない。熊とかはクロエがヘッドショットしたし、危険な奴は粗方、食卓に上った。狩れば解体の練習をする訳で、肉と毛皮がものづくりチームの作った倉庫に保管されているのだが、肉は食うが、毛皮は減らないのだ。使えるなら使って欲しい。なんと無く倉庫にも出入りし辛いし、気持ち的に、

「はいー、ありがとうございます〜………こういう時は『忍びねぇな』って言えばいいんですかね?」

「………………構わんよ」

 

それ以外どう返せと…………

 

元の世界の知識を持つ者としか通じないネタのやり取りはさておき、ギルドに行って、適当な依頼を受ける。大量繁殖したコカトリスの討伐だ。報酬はそこそこだが、食料の確保はできる。背伸びをして、上体を反らして、腕を回して、準備しておいたタグ付きのペンダントを首に点ける。このタグには石化無効の効果がある。このタグを交換すると他の状態異常にも対応できる仕様だ。前は足を石化させられたしな、

「鶏ガラ、鶏油になりたい奴から前に出ろぉー!」

 

来なければ呼ぶがな、千里眼で捕捉、隔離して引っ張って来て………シメる。血抜きと羽根むしりは怠らない。尾は適当に切り飛ばして、よく見るチキンの状態になったら袋へ(そこから隔離)、魔物とか向かってくるのは平気でシメられるんだが、やっぱり無抵抗と愛玩用の動物は躊躇われるな。何処かでブレーキがかかる。周辺の刎ねられた鶏頭をいるのか要らないのか思案していた。犬の餌とかでは売ってる事があるんだよなー、缶詰めで、解剖の練習なんかにもいいか?迷うのはあとでも出来るし持って帰ってから決めよう。隔離、隔離っと、

 

ガサガサッ!

 

なんか来た、食える肉だといいが、皆さん食べ盛りなので、量もあると有り難いです。

 

グオ、

 

残念、オーガでした。こいつ等の肉はドラゴン同様に硬くて食えたもんじゃない。が、狩る。魔石とか討伐報酬が多いので、因みに証明は角だ。

 

グオォォォォォーー!!

 

オーガの叫び声が山にこだます。

 

「あ、あの………」

「ん?どうかしましたか?」

「ひっ!なんでもないです!こ、こちら報酬です!おおお、お確かめを!」

 

なんでこんなに恐れられているのやら………、別に変な事はしてない筈だが、可能性としては受付嬢が新人、もう一つはSランクとかか?あと俺が異世界人って事もか、後が支える前に、代行者に確認して、

 

《銀貨が三枚足りません》

 

…………仕方ないが、数えるしかないな、でもって確かに足りないことを確認して申告する。

「すいません。銀貨三枚分足りないんですけど」

「えっ?!申し訳ありません!ももも、戻って確認しますので、お、お預かりします!」

途中で柱に突撃していたが、袋の中身をばら撒く事は無かった。何気にすごい、暫く奥の方で大きな音や何かが割れる音が聞こえるが、大人しく待つ。

「………申し訳ありません。ここのギルドマスターにあってもらっても宜しいでしょうか?」

 

……………なんで?

 

「ひっ!ええっと……………用事等があるのでしたら大丈夫………です。はい」

もう、訳わからん、疑問に関しては顔に出てたと思うが、呼ばれてるのに行かないのもあれだろ、面倒事じゃないと思うけど、

 

…………わからない。どうしてここまで歓待されているのだろうか?厄介事ならそろそろ本題を切り出しても可笑しくない頃だと言うのに、これなら厄介事の方がマシな気がする。精神的に疲れた。ただ、時よりこちらの機嫌を伺うような視線を向けてくるのが、答えに繋がるヒントのようだ。

「すみません。少々伺ってもよろしいですか?」

「「はい、何でしょう?」」

受付の方も返事したよ。丁度いいか、身を捩って入り口の方にいるさっきの受付嬢に聞く。

 

「………何故、怯えているのですか?」

 

推理は無理ではないが、時間が掛かるし何より無駄手間、

「それは………」

「それについては、多分、あなたがSランク冒険者で渡来人だからです」

言葉に詰まる受付嬢の代わりにギルマスが答える。異世界人の使うスキルはどれも強力だ。特に戦闘に特価した者はすぐにSになる傾向がある。実績が分かりやすいというのもあるだろう。だが、所詮力は力、使う者が精神的に未熟、傍若無人な振る舞いをする者であれば多かれ少なかれ、傷付けられる人が出てくる。そんな中で一番狙われやすいのが受付嬢らしい。まあ、関わりも多いし納得だが、まさかと思うが、何かある度にこの応接室でご機嫌取りをするのか?

「この辺りだと、無銭飲食、娼婦への暴行、恐喝や脅迫が多いな」

 

この辺りにもいるのか、ただ、特定出来ていても逮捕とかできない事情がありそうだな、因みに代行者、この辺りを拠点にしているSランク(俺を除く)の冒険者は何人いる?

 

《1人です》

 

うわぁー………お巡りさん、こいつです。

 

「現行犯で見つけたら引っ張って来て良いですか?こっちが手を出せれても黙っておく理由はないですし」

「そ、それは助かるがいいのか?

「大丈夫ですよ、あっ、報酬はください。現金で」

「………あんた、そういうタイプだったか、ならどの位出せばいい?」

「オーガ十体分ぐらいですから、金貨五枚くらいで、あと私の実力面はどうやって知ったのでしょう?参考までに聞いても?」

「…………安くないか?いや、いい、実力だったよな、まあ、いろいろあるが決めてはこれかな」

取り出されたのはなんの変哲もない角、だが見覚えがある。なんせ俺が持ってきた奴だし、

「ここを見てくれ、頭蓋骨の一部が付いてきてる。これは刃物で切ろうとしてできるものじゃない。それこそ尋常ならざる力で引き抜いた、毟り取ったでないと説明が付かない」

 

あー、あれは何かカウロウした時、角が丁度いい持ち手になって渾身の膝が顔面に入ったとき、なんか取れた。ちょうど良かったのでそのまま持ってきたのは不味かったか、ただオーガの角はちゃんと骨らしい。鹿は角質、サイは毛と異なる動物も居たし、似たようなのもいるかもしれないな、

「見かけたら声を掛けてみます。一応同じ所から来たかもしれないですし」

 

「すいませ〜ん。もしかして三嶋さんですか?」

千里眼がある俺にとって人探し、ペット探しは全く難しくない。見た目はヤンキーがそのまま二十歳ぐらいになった感じ、お前らどうやって染めてんの?頭髪は赤に一部金、ピアス多いな、こういうの見てると指導したくなるが、これは俺の生徒でもないし、責任ある大人だ(年齢上は)。後は本人(中身の問題)がしっかりしていれば何も問題ない。

「ああ?!誰だオマエ?」

 

…………例え第一印象が悪くとも、それで決めてはいけない。(8割は決まった)まだ………

 

「あんたもしかして……………なあ、金貸してくれよ、今持ってるだ………」

 

はいアウトー、返事代わりに半歩前に踏み込み、胸部の中央に貫手をくれてやる。ショートなのでほぼノーモーションで打てる。人間の弱点は体の中央に集中している。護身術なんかで説明を受けると思うが、頭頂部、額、鼻、口、顎、喉、そしてさっき突いた胸部に腹(男はこれに加え、金的が入る)、相手を倒せなくても逃げる一瞬のスキを作るには怯ませられる場所、力が弱くても当たればそれなりの効果が期待できる場所として狙う。

 

ゴツッ、

 

「うぅぅぅ!………痛ぇぇ」

口から唾液が溢れ、胸を抑えて前屈みになっている。普段はカウロウからの病院行き確定のコンボに繋がるのだが、唾液が汚いので、踵落としで、沈める。後は襟首を掴んでギルドまで連行する。

 

「ふぅー………色々できたな」

和風の内装の家と西洋風の内装の家の二軒を見ながら、一杯飲みたい気分だ、大きさは西洋風の方が大きいが、和風の方は部屋数が多い。装飾は金が余っているのでそれを溶かして、贅沢に使用した。和風の方は応接向け、西洋風の方は芸術と子供たち向け、体育館みたいな物だ。今は縁側に座り、枯山水の岩の配置を調節している。微調整の時は近くまで行ってせっせと動かし、また縁側から見て確かめるを繰り返している。

「………………」

右か、左か…………いっその事、逆さまにして半分くらい埋めるか?そんな思考が行き交う中、服の袖を引っ張られている事にかなり遅れて気づいた。

「ノルンか、どうした?」

「お菓子の時間です。今日はチョコレートの気分です」

隔離から板チョコ出して、一欠片割って小さな口に人差し指で挿し込む。もう一欠片を自分の口に運び、もう一欠片が溶けると嫌なので、自分の口に運ぶ。………何やかんや芦原さんの能力は生活を豊かにする方に特化している気がする。元が嗜好品(煙草)召喚のスキルだしな、戦闘に使えそうなものはあまりないが、一部すごく使えるのもある。(酒、殺虫スプレー、混ぜると危険な洗剤等)ただ食品も出せる(板チョコは雑誌の応用で出せるようになった)ので飢える心配は皆無、金がなくならない限りだが、次に行くときにはメニューが見えるようになるらしい。こっちも存在値集めを頑張るか、

「ご主人様、こちらでしたか」

「アリスか、どうした?」

「いえ、姿が見えないのでワタクシが勝手に探していただけですわ」

「食べるか?」

「はい、ありがとうございます」

「…………立ったまま食うなよ、ほら、横座れ」

「は、はい………」

若干距離はあるものの近くに座るアリスそれを確認して膝に滑り込んでくる、ノルン、こうやってゆっくりと過ごすのもいいな、…………あれはもう少し左にやろう。


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