この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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気が向いたので異世界人探し(ウソ)

さてと、あのダンジョンは後でも行ってみたいな、財宝があるので稼げそうなのだ。そんな訳でクロシェットにノルンを連れてきて貰い、ポイントを設置してもらった。そのまま街でアナスタシアと合流して家に戻った。のだが………

 

「家に穴空いてたかな?」

無論、空いてた訳ない。しかも工房の辺りとなると………、原因は穴を塞ぐべく修理をしていた。

「レア、今日は手榴弾を作るって言ってたよな?」

ウサミミがピーンと立つと、ゆっくり振り返るレア、冷や汗タラタラ、

「えーと、あの……………一個だけピンが抜けてしまって、作ってた分が誘ばk」

 

レアについては簀巻にしてリンゴの木に逆さ吊りにしておいた。攻撃、白リン(焼夷)、破片、フラッシュバン、フレア類(ガス系)、クラスター(棘等各種)、後は応用と変わり種だな、軒並み爆発したが、白リン、フレア類、クラスター、応用と変わり種が無事なのは安心した。こいつらはガチでヤバい奴らだ。変わり種は言ってしまえば催涙の強化版だ。応用は複数の効果を合わせた対人殺傷力(ストッピングパワー)が高い仕様だ。こいつらが誘爆してたら、暫くこの辺りに住めなくなるどころか家が無くなりかねない。………まあ、他は軒並み全滅だ。

「はぁ………、明日はダンジョン行くか」

 

ダンジョンの魔物は基本的に倒すと素材を残して他は消える。金目の物がある宝箱だけを最短ルートで回収して、道すがら倒した魔物の素材も回収しながら進んで行くが、

 

「ダンジョン深すぎ、今何層だ?」

 

《67層です》

 

………ここから更に10層はある。救いがあるとすれば売値の高いものやら珍しい宝飾品やらが増えてることだ。今回はクロエとクロシェット、ノルンを連れてきている。魔物はサイクルで相手しているが、今の所危険な敵には遭遇していない。一対多でも捌けているのだから余裕があるくらいだ。ただクロエとノルンの銃のせいかやけに魔物が集まってくる。なので後半はノルンは火魔法で、クロエは水氷魔法で倒していた。

「一回休憩にしよう」

ダンジョン内ではゲートは使えない。往復の事を考えるとこの辺りが最適だろう。それと意外とダンジョンは楽しい。罠がたまにあるので単調な戦いで眠くなってきた目を覚ますのに丁度いい、洞窟内なので暗いのだが、俺の真理は暗闇も見通すためか、昼間のようによく見える。こういう所では不意打ちが怖いのだがその辺りは千里眼で予め知る事ができるし、ゲームのボーナスステージみたいになってる。

「マスター、こちらをどうぞ」

クロエから差し出された紅茶を手に一服。………うん、手間を惜しまず丁寧に淹れられたものだ。クロシェットは袋からシュークリームを引っ張りだして食べているが、周囲に意識を向けて警戒している。ノルンは雲の上に寝そべっている。雲とは表現で実際は綿の塊、これがノルンに与えた武器だ。………移動用の足でもあるが、余談ではあるがクロエからは殺気が出ており、俺たちを避け、通路を塞ぐように覆っている。邪魔をするものを排除すると言う意思表示だ。まあ、見えてるのだが、砂糖を入れてもう一口………

「うげぇっ!塩だこれ!」

「ふぇっ?!もも、申し訳ありまっ!?」

盛大にコケるクロエ。その拍子に黒いものが見えたが、そこは触れないお約束、

 

《クロエがドジっ娘の称号を獲得しました》

 

……………そんな称号もあるのか、まあ、前見た奴にあった犯罪関係の称号同様、マイナスというか不名誉な称号もあるようだし、あって当たり前か、

 

ドジっ娘 砂糖と塩を間違え、よくコケる者が得る称号。運が少し良くなる。

 

………なんと言うか割に合わない称号だな、黙っておこう。ここから3層分進んだがまだ終わりは見えそうに無い。ただ面白い物が見れた。

 

現状、この世界の経済は不安定である。例えば今手の中にある純金の指輪だが、この街で売ると、レートの二倍くらいになるが、ここから約50キロ、南南西の街では、レートの二割ほどの値段になる。俺達がいた世界では一グラムでも約5000円、高い理由はその希少性故だ、人類が保有(採掘したもの)している金を掻き集めても50メートルプールを2杯と半分程、海に含まれている金には到底及ばない。しかし、これは前世の話この世界には魔法があり、錬金術がある。それにダンジョンから金の装飾や宝飾の数々が見つかる。錬金術は金を作り放題、ダンジョンも財宝を作り、それも宝箱に入れて配置するようだ。市場のレートは需要と供給のバランスで決まる。が、だからと言ってここで大量に売り過ぎると、この街の市場から貨幣が消え兼ねない。個人で大袈裟な、と思うかも知れないが俺の前に渡った異世界人の何人かはそれで街を壊している。………ただ、

 

「金プラ買い、って書いてあるな………」

何か見たことあるような無いような看板の店に入るのが何となく嫌で長々と考察していたが、多分いる。異世界人が、

 

カランコロンカラン、

 

喫茶店か!っと心の中でツッコミを入れて、店の受付に行こうと思ったのだが、ゴテゴテの成金が座ってたので、思考がフリーズした。

 

名前 轡田 慎也

種族 人

パーソナルスキル 時は金なり 金欲

スキル 目利き10 鑑定8 強運8 水魔法6 槍術4

耐性 炎熱耐性2 毒耐性1 斬撃耐性1 生命力2

称号 一攫千金

 

初めて俺達以外の大罪系スキル持ちを見たな。

 

金欲 内約

亡者の蒐集 物にのみ触れられる触腕が伸ばせる。一定の範囲内の所有者がない物を回収できる。

 

大金庫 貨幣や金、宝石等を際限なく収納できる。

 

時は金なり 内約

自分とその支配下にある者の寿命を金に変えたり、金を寿命に変える。

 

予想はしていたが油断ならない相手だな、…………さて、どうやって引き込むか、幸い、交渉材料はあるしな、

「買い取りをお願いします。ダンジョンの物なんですが」

「おう、まず見してみぃ」

 

………芦原さん連れて来たほうが話し早いかな?

 

「量が多いので、どうしましょう?場所変えますか?それとも少しずつ出した方がいいですか?ある分全部買い取って欲しいんですけど、」

適当に金の装飾品を台に積み重ねていく。鑑定対策で冒涜でステータスは偽装してある。普段からしてるが、今回は幅広く低レベルから少数高レベルに変えている。

「あんさんは何もんや?」

「一応これでもSランクの冒険者なんだ、」

「ほうー、そりゃあ凄いなぁ」

身を乗り出してきたあたりから興味くらいは持ってもらえたか、

「で、いくらぐらいになりそうだ?」

「まだあるんとちゃいますか?」

「あるけど、あんまり出してもかさ張るし、これくらいのが後………」

 

《金の装飾品のみだと約256回分になります》

 

「………軽く200回分あるけど、買い取れるか?宝石付きのは別にして、金だけので」

 

暫くはポカーンとしてたが、

「がはははは、それは無理じゃな」

豪快に笑いだした。まあ、概ね上手くいったか、ここからが本題だな、

「で、代わりに情報とか伝手を教えてくれないか?色々と欲しいものがあるんだが、どこにあるものかも解らなくてな」

まあ、俺のスキルがあれば何処とかそんなの分かるが、紹介とかがいる所とかどうやっても無理だからな、これは長年こっちに居る奴しか持ってない。なら、街の顔役みたいな人に俺の事を憶えてもらうのが大事だろう。そして目的、冒険者の身分、そして見返り、基本となる要素は揃えたが後は俺の人となりを相手に知ってもらおう。

 

「また気になる物見つけたら来てぇな、ほな、おおきに」

「いえ、こちらこそよろしくお願いします」

まあ、全部は買い取れないと言う事だが、俺は偽装した中に収納を入れておいたので、容量いっぱいだから預かって貰い、手元に欲しい分を受け取り、情報料を差し引いた残りは藤白や芦原さんの方に寄付の形で送ってもらう事にした。受け取って貰う時、倉庫代は大金庫の事を仄めかして躱した。まあ、俺も大罪系のスキル持ちだと伝えて変な警戒を解くのも忘れない。パーソナルスキルは普通見えないのだ。だが、同系や対を成す天使系のスキル持ちは霧みたいなのが見えるから色で系統ぐらいはわかるからそこから予想することが出来る。ギリギリセーフだ。多分、……………さて、アナスタシアを迎えに行くか、今日も教会で治療をしている。最近分かった事なのだが、教会での治療のお布施が食費足らずを賄っていた。足りないなら足そうかと思っていたが、アナスタシア曰く、

「余った分は一応取ってあります」

心を読まないで欲しい。と思う今日この頃だが、お布施で余るほど貰うの?教会の分は?とか色々思ったが、教会の分はしっかり納めているそうだ。………しかし、悪魔系スキル持ちの俺が入るのに問題とか無いのだろうかとか頭の片隅で考えてしまうのは心配し過ぎだろうか?教会の前で立ち止まっていると、

「教会に何か御用ですか?」

「あ、アナスタシアを迎えに」

「まあ!そうですか!こちらへどうぞ!」

手を勢い良く引かれながら教会に飛び込む、静かな空気に正面には美しいステンドグラスから射し込む光が中央の台に優しく降り注ぐ、十字架が無かったりする所に違和感はあるが、いい場所だと思う。その台の前には幼い少女が目の前の怪我人を治療していた。(ちなみにこの台、説教台と言うらしい)

「暫く待つか」

魔法関係の本を読んで時間を潰していたが、結構捗る、一人で読書するならここが良いだろう。

 

「なんだい?うちは気に入った客にしか、刀は売らないよ」

「材料は持ちこむから、これと同じくらいの強度と切れ味の刀が打てるか聞きたいんだ、ここで無理なら………」

「おい、うちの工房はこの辺りでは一番の工房だ、見せろ」

釣れた、一見中学生くらいにしか見えないこの女性は父が異世界出身で、母がドワーフで刀にも興味を持ち研究しているため、代行者曰く、刀に関してはこの世界で彼女の右に出る者はいないそうだ、年齢は43歳、中学生ぐらいの身長でもドワーフとしては大きい方らしい。

「………ついでに研いで貰えるか?」

「これをか?手入れは行き届いているようだが………」

「簡単な手入れしかして無いからプロの目で見て貰いたかったんだよ、かなり使い込んでるし」

実際、解体して粉降って、拭って油付けて、戻すしかして無いしな、居合いは昔からやってたが、巻藁ぐらいしか斬ったこと無いし、生き物には骨がある。内臓に筋肉、皮膚もある。如何に刀が鋭くとも、容易くは斬れない。リザードマンなんかは鱗があるし、剥がして斬りますよー、という訳にはいかないし、なんやかんや酷使している。

「分かったよ、一応研いどく…………結構時間が掛かるけどいいか?この刀と同等のものを何本だ」

「六本は欲しいな、………あと材料な、それとと同じ材料を置いとくな」

アダマンタイトとオリハルコン、ついでにミスリルも置いとく、それと………

「これも使えたら使ってくれ」

前に倒したドラゴンの血だ。これも使えるらしいから置いとく、

「ガンガンとんでもないのが出てくるな、………しかし六本も何に使うんだ?」

「予備だな、一本は贈り物、あと代金はどうなる?」

「………予備って、お前なぁ、……………材料は貰ってるし、一本金貨30枚でどうだ」

「んー、やっぱり結構するな」

「材料費含めたらいくらになると思ってんだ、時間も掛かるし、かなりギリギリだぞ」

 

確かにそうだろうな、でも、手持ちの金を大幅に減らすのは不安だな、

 

「じゃあ、材料を多めに出すから買い取ってそれを代金に当ててくれないか?」

「おおお!それはいい、ドラゴンの血とアダマンタイトをくれ!」

 

 

……………引くぐらい食い付いてきた。

 

ま、まあ、こっちの納得出来る条件になったし良しとしよう。ドラゴンの素材とか使い方が分からんし、隔離空間の肥やしになるよりはよっぽどいいだろう。

「何時ぐらいに取りに来ればいい?」

「取り敢えず一本目は一ヶ月ぐらいは欲しいな。その次からはもっと早くなると思うが」

「分かった、じゃあ、また来るよ」

さて、お次は、っと、

 

「…………っで、そっちも見つけたのか」

「二人程やけどな、………にしてもなんで逃げるんや、手間かけさせおってからに」

 

いや、あなたに追いかけられて逃げるなと言う方が無理じゃね?顔を出してくれたはいいが出迎えたのが芦原さんだったので見た目でビビって逃げたのだ。もう一人は藤白が見つけたので逃げなかったが、手続きでまごついてたみたいだが、

「えーとあなたは?」

「もしかして、ここの若頭的な?」

「誰が若頭だ………、俺は北川 龍登、森の中で孤児院兼学校をやってる。Sランク冒険者でもある」

「え?Sランクなんですか?」

「最近上がった」

「わしでもまだ、三日前にA上がったところやのにどうなっとんね」

「………僕まだBですよ」

「まあ、取り敢えず二人のステータスを見せてもらうよ」

一人は移動系のパーソナルスキル持ちで十メートルを高速で移動できると言うもので転移ではなく移動だ、ただ高速で動くだけなので体力を著しく消耗するようだ。スキル名は初めの一歩、もう一人は………

「なぜターザンがこんな所に?」

「クエスト先の山に住んでたみたいで………」

腰巻き一枚の約2メートルの金髪ムキムキのどうやって街に入ったか気になるターザンだ。

 

名前 シリル クーパー

パーソナルスキル 森の守護者

スキル 投擲3 罠3 

耐性 毒耐性7 雷撃耐性9 衝撃耐性7 環境適応7

称号 電撃を浴び高所から落下

 

称号がそのまま説明と化しているな、………木の上で雷に当たってそのまま落下ってところか?

「工事にハンタイする意思表示として、鉄塔に登っタンダゲケド、電線に………タッチしちゃって、そこからはチョットワカリマセン。」

 

カタコトながらも内容はしっかり伝わる。森の守護者か、森での優位と魔物や動物との対話できるという内容で、耐性も高いので藤白たちと行動してもらおう。もう一人は連絡係になってもらおう。今から鍛えて行くとしても、結構時間もかかるし、その間はこの役割で行こう。せっかくだ、エドガーの所にも顔出すか、土産はシュークリームとモンブランだ、

 

相変わらずいつもあっさりと執務室に通される。出されたお茶に口をつけると、すぐにエドガーが来た。

「Sランクになったそうですね。おめでとうございます」

「はは…………、なりたくてなった訳では無いんですけどね」

本来はAくらいで止めときたかったが、未だ安定した収入が無いものの、金払いのいい依頼が多いので、そっちに行きがちで、家も作ってる現状、どっちの時間も割けない。殆ど自転車操業みたいな状態だが、家関係の材料の買い入れを止めれば結構な額が手元に残るようになるし問題ない。手土産のシュークリームを渡し、情報交換をした。いや、コネクションを作る為の交渉か、目的としては魔力に依存しない足が欲しい。問題はそこで俺が買えないという点だ。金は後で準備するにしても、門前払いにあえば金だけあっても意味が無い。俺の立場では行けない。紹介状でも無ければ、

「それと今回のは、ちょっと特殊な物を用意しました」

「これは………何でしょう?」

「まだ試作みたいな物ですが、小さな近衛兵、と呼んでいます。モデルは長靴を履いた猫です」

「おお、前にエリーがネコが好きだと言っていたのを憶えていてくださったのですね?」

「はい、気に入ってもらえると良いのですが………あと、今回のは戦闘するタイプで喋ります。名前は持ち主がつける事で登録され、持ち主の危険を排除するのが目的ですね。命令もできますが、危険を伴う事は止めるようになってます」

最初はこう言う防衛重視の物を売るつもりだったが、市場価格的に貴族しか買えねぇし、沢山は売れない。安く売ることは出来るが差があり過ぎて他の作り手が倒産してしまう可能性がある。特に性能面の違いが顕著に現れる。特に結界を貼るタイプよりも値段の設定が難しい。まあ、問題はそれ以外にもあるのだが、

「それと、この紙に魔力を通してください。こっちはエリーちゃんの分ね。紙は魔力を通すと黒くなってしばらくすると燃えるので、黒くなったら離してください」

よし、二人共行った通りにしてくれてるな、紙はテーブル中央の灰皿に入れられると間を開けて燃え始めた。

「これは一体何でしょう?」

「これで二人共、収納が使えるようになったと思います」

「「……………………え?」」

これは俺が冒涜を使って作ったスキル付与アイテムだ。俺のスキルを隠すためにはその秘密を知る数は多くない方がいい。知ってる者は触れて直接でいいが、スキルの事は隠しておきたいが、協力関係を結びたい相手にスキルを付与したい、その時の為に作ったのだ。拝借元はゴルドーと偽冒険者三人組の一人からだ。それとお土産とは別に持っていたエクレアや苺大福などを取り出す。

「収納がどの位入るかこれを入れて試してもらえますか?入った分は差し上げますので」

 

スイーツ詰め放題には意味がない訳ではない。………しかし、親子揃って収納にせっせとスイーツを仕舞っていく姿はシンクロしていた。代行者に計測してもらった所、魔力の最大保有量に容量は依存しているようだ。ついでに大量に持って、誰かに自慢してくれる事を願おう。ケーキとかは食品なので市場の圧迫は避けられる。特にこの街には喫茶店はあっても専門的にお菓子等を取り扱っている店が無い。新規参入する分大変だろうが、喫茶店にはケーキ類を卸してもいいし、そこらへんは大丈夫だろう。要するに種蒔き、後は………

「お前も完成させないとな、ルシア」


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