この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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選択授業 ベルナー観光のついでに

ふぅー、やっと終わった。……………子供や犬猫を十分相手する体力があっても変態は別枠だ。今日初めて思い知った。あの恍惚とした表情は原因がアレでなければ男女を問わず引き寄せる魅力があっただろう。今日は作業の日だ。感覚的には日曜日だな、とは言っても結構忙しい。基本的に家から普段使う椅子や寝具、芦原さんが確保できる物以外は全部Made by 俺、新しく作ることは出来なくても管理できる人員は欲しい所だ。

 

『お困りの様ですねー、旦那様ー』

 

………本棚の奥から出てくるなよ、動けないんだろう、多分、両端の本を横に避けると、本棚から勢いよく出てきた。

「で、なんかいい案でも?レア」

『レア?……………もしかして、それ、私の名前ですか?と言う事は、今は私の身体を………』

「そうだな、今作ってる」

『マ、マジで!このイベもっと早く言ってよ。好感度爆上げだよ!超DS!』

 

……………DS?上下2画面の携帯型ゲーム機の?

 

『あれ〜?………もしかして伝わってない?』

「………と言うかどこで覚えた?」

『いろんな子達にー、若い女の子らしい喋り方を聞いたらこうだってー』

「ちなみにDSって何の略?」

『そ、それはー………そ、そんなことより、私の案、聞きたくないですかー?』

 

下手だな、誤魔化すの、後で教えた本人にでも聞けばいいし、話に乗っとく。

 

「で、どうするんだ。外から雇うのは止めといたほうがいいぞ。」

『それは旦那様がお作りになさったほうがいいですよー。………例えば私とかー』

 

あー、そう言うこと、

 

「それで良いのか?戦う方の能力は下がると思うけど」

『それは………、出来るならそうしたいですけど、他の側面から支えたいと思ったんですよ。料理はアナさん、クロエさん、クロシェができますけど、他の家事はクロエさんには出来ませんし、ノエルは能力的にーねぇ、アリスさんは一応、洗濯は出来ますけど、料理は向日葵さん含め生ゴミ製造機ですからー、実質アナさん一人でやる事も多いですが、一人で買い物には行けません。それだったら、専属で作った方が、と思いましてー』

 

……………全員家事に問題あり過ぎるだろう!まあ、実際アナスタシアとクロシェット、それと俺で何とかしているが、まだ、クロシェット一人で料理をさせるのは危なっかしい。クロエも普通に料理できるが、料理のみだ。配膳で皿を持つと足が生まれたての子鹿のように震えている。棚の皿のトラウマだろう、……………しかし、生ゴミ製造機って、

「…………わかった。レアの現状を憂う気持ちも、覚悟もよくわかった。それに答えられるよう俺も頑張ろう。」

 

とは、言ったものの…………どうしたものか。魔法は魔石や魔晶を使えば事足りるが、家事は明らかに技能、本来は経験を経て、身につくものだと思うのだが、こういう時は代行者ー、

 

《いくつか候補があります。一つは完成後に習得させる。二つ、記憶水晶に記憶をコピーし、それを人形に使う。三つ、冒涜を使い習得させる、です。》

 

……………んー、二番目だな。記憶水晶ってのは?作れる?

 

《錬金術で製造可能です。魔力を七割使えば最も良質な物が出来ます》

 

………七割か、俺の魔力は回復が遅い、前三割使った時も、回復に2日掛った。………まあ、だからといって特別な事もなかったが、

「早速、取り掛かるとするか」

 

ー1時間後

 

「どうするかな、これ、」

記憶については俺の芸術関係から銃やら戦争やらの知識を片っ端からと、アナスタシアの今までの家事炊事の記憶とを合わせて入れてみたんだが、水晶なので透明なのだ。それはいいが、所々金色の筋のようなものがあり、見てる分にはキレイなのだが、

「色塗りに影響しないといいが………」

ぼやきながらも眼球に仕上げていく。削った分は髪に使う金属の炉に放り込む。残りの時間は髪の毛作りで終わりそうだな。完成は程遠いな、

 

今日はノートにリクエストに応えようと思う。あっ、カップヌードルは好評だった。

「今日は自由参加の授業だ。みんなからいろんな要望を貰ったんだけど、みんな興味あることが違ったから、ここから一週間の授業内容を張り出します。時間はいつも通りだけど、参加しない子達も悪い事やイタズラしちゃ駄目だからね。えーと、今日は裁縫をやります。」

材料はピンクの化物の店で買った。…………品質や品揃えいいのにあんまり行きたくないと俺が思う店は数少ない。行く時は基本まとめ買いだ。はじめに作りたい物を聞く、後は型紙なんかを用意して制作開始。物によっては一日では無理なので、半分遊びみたいなものだ………人形率高いな。

 

「じゃあ、今日は金属の加工、鍛冶をやってみよう。ただし、危険が伴うから。言うことを聞くこと、わかった?」

熱した金属は危険なのでしっかり管理できるように5人一組のグループを4つ作り、指導を行っていく。知識としては鍛造や鋳造が出来るが、経験としては熱して半液状にした金属を素手で捏ねる方が早い。が、炎熱無効が無い子供達にそんな事をさせるつもりはない。今日の所は小さいイヤリングくらいにしとくか。

 

「天気がいいな、いい指導ができそうだ。今日は格闘術だ、まず、突き、蹴りの出し方とその反復練習、最後に俺が相手して直すところを言うからな」

丸太(クッションでカバー)を地面に突き立てておき、それを蹴ったり、殴ったりする。体格によって向き不向きな攻撃もあるため、その辺りも見回った時に気付いた事と共に教えておく。

「さて、そろそろいいか、ルールは素手のみ、俺は攻撃はしないが吹き飛ばしたり、足で捌いたりはする。誰か一人でも一撃入れられればみんなにアイスを出そう。」

箱のファミリーサイズの奴だけど、芦原さんに提供してもらって隔離してある。それと家の地下にも魔力で動く冷蔵庫モドキの中にもある。………テキトウに刻印彫っただけの箱だけど、ただまあ、こう言うのって子供のやる気上がるからね。こっちでは珍しいし、氷も貴重だ。さて、間合いの基礎の技術の一つ、円圏を鍛える。太極拳の奴だ、

「時間は三時間だ。初め!」

円を描くように、流れるように、人は意外と自分の体のことを知らない。………ホクロがどこにあるとか、そういう話じゃない。手の届く範囲と言うと、それ、わかんない奴いるのw、みたいに笑う奴がいるかもしれないが、その当たり前が難しい。例えば新体操の技を経験一つ無い者ができるか?という話だ。他にも絵、モデルの顔を書いてくれと言われてもその顔のバランスが整っているかとかな、鏡で自分の顔なんていくらでも見てるからどこに鼻があり、目があり、口があり、なんて事は頭では理解できているだろうが、実際にやるのはそう簡単ではない。そもそも人の顔は左右非対称(アシンメトリー)だし、完璧に真似ればシンメトリーにはならない。そこをどうするかは、その人次第だし、絵の醍醐味とも言える。………まあ、だいたい言いたい事はわかってもらえたと思うが、

 

パシッ

 

間合いに入ってきた拳を、軌道を変えるよう手を添え、受け流す。その間に間合いの中に入ってきていた攻撃を肘で迎撃。足に来た攻撃は軽く飛んで回避、軽く肩を押して距離を取る。…………結構序盤から容赦ないな、はたき落としたり、受け流したりを繰り返していると変則的な攻撃や連携が混じりだす。ただ最初の型が崩れ始めている。工夫は大事だけど変な癖がつくのはアウトな、

 

ベシ、ベシ、

 

「あだっ!」「痛?!」

「動きはちゃんと意識してるか。型が崩れて変な癖が付くとなかなか直らないんだぞ」

「もらったー!」

「お前にも言ってるんだぞー」

 

ゴッ!

 

チョップ三連発、これは攻撃じゃないぞ。

「ほら、足元が疎かになってるぞ」

「今のは良かったぞ」

「ほら、もっと踏み込め。当たらんぞ」

「体重移動をもっと心掛ければいい突きが出せるぞ」

 

そんなこんなで三時間、何とか当たらずに済んだ。後半二十秒は走って逃げたくなった。汗が凄いな、

「さて……じゃあみんなに参加賞だ。当てられたらもっと増やしたんだけどな」

そんな訳でアイスを一本ずつ配る。隔離空間内は指定した物の時間を停止、倍速、普通の設定が選べる。アイスはもちろん停止、俺も食べるか、ラムネかソーダか知らんが青いアイスの包装をめくり、齧る。

 

「今日は雨が降ったので明日予定していた料理にします。アナスタシアもよろしく」

昨日は男子中心だったが、今日は女子中心のようだ。鍛冶はドワーフ全員参加してた。昨日も獣人は全員いた。種族ごとの考え方もあるのだろう。まあ、初めてだし簡単な物を2、3点くらいでいいか。そろそろレアの体も完成しそうだ。

 

………また雨か、後は魔法と武器、どっちも室内だと不安が、なんて事を思っていると、

 

《最終日の観光を前倒しにしては?現在ベルナーは晴れです》

 

…………いや、ベルナーって何処?千里眼で景色を見る。…………おお、いいところだな、町並みも綺麗だ。でも遠い。

 

《前回クロシェットが街を訪れた際、ノルンにポイントを設置させています》

 

………なんだと、あ!首根っこ咥えられてた時のか、クロシェットの速度で移動すれば多分、分単位の距離だ。………そして他にもあるな?

 

《はい、42箇所の近隣の街付近にポイントが設けられています》

 

よし、後で二人を褒めてあげよう。

 

「今日は本来、七日目に予定していた観光をしようと思う。行き先はベルナーだ」

「い、今からですか?!」

「準備が~」

「大丈夫だ。移動は日帰りで行ける。クロシェットとノルンのお陰でな。二人に拍手!」

 

パチパチパチ………

 

「じゃあ、頼むノルン」

「承りました」

一瞬で景色が切り替わる。………少し先に行けば海が見える。千里眼で確認済みだ、後ろを付いてきた子供達や人形からも声が上がる。落ち着いた所で話を切り出す。

「街の中でこの団体は目立つから、何グループかに別れよう。人数は6〜7人ぐらいかな。向日葵達が引率してくれ、何かあればすぐ行く」

「はーい!」×40人

「「「「「「分かりました」」」」」」

 

さてと、俺は俺で掘り出し物を探すか、それか描きたいと思える所を探すのもありだな。

 

ー5分後

 

早速問題発生。早くないかな?早いよなー?まだ店の情報も聞いてない段階なんだけど、アナスタシア達に絡んできた人攫いの五人組をボコって門の前の詰所に引き渡す。殺人未遂、強姦、脅迫等の選り取り見取りの罪状を添えて、

 

ー詰所を出て30秒

 

今度はアリスの所か、魔眼とかあるので遅れは取らないが、急行してボコって、詰所に引きずる。罪状を添えて、

 

またか………、クロエの所に湧いたので風魔法で壁などに叩きつけて、詰所に引きずる。罪状(以下略)

 

「お兄ちゃんー、これお願いにゃ」

詰め所にいたらクロシェットが追加を持ってきた。後は流れで当直の人がやってくれた。

 

……………多いんだが、これまでも少なくない回数のトラブルはあったが、いい加減潰したくなってきた。人の目があるからいちいち引きずらにゃならんし、代行者、団体さんの情報頼むわ。

 

《現在、三つの組織が存在しています。頭、双斧、ゴールドアイ、その内ゴールドアイのみ接触がありません》

 

そうか、じゃ後その2つの組織の隠れ家なり、拠点なりを教えて、吹っ飛ばすから。麦茶のような物が入ったコップを暫く眺めてから、口に含んでみる。………味は変わらんな。

 

「あの、えっと、」

「ん?」

「ここで作業されるのはちょっと………」

詰所の休憩室の一角に並べられた手足、傍目から見ればバラバラ殺人みたいなものだが、人形の部品だ。

「………すみません。あと5分」

図太く粘る。もうね、ここにいた方が早いんだわ。色々と、掘り出し物探しは街の掃除を終えてからにするつもりだ。それとは別にやりたいこともある。

 

さてと、殲滅する前に情報を整理しよう。狙われたグループと狙われなかったグループの違いはエルフがいたか、いなかったかだ。なら、他に被害者がいる可能性がある。どうだ?

 

《合計でエルフの子供8人と、サラマンダーの子供4人、セイレーンの子供5人、アルラウネ1人です》

 

…………………ちょっと、ボスと幹部連中何人いるか知らんが生け捕るわ。無理なら殺すけど、逃げられないように結界張るし、それと代行者、監視と情報を頼む。

「じゃあ、行こうかレア・ギフト」

「あのあの~、私大丈夫でしょうかー?」

清楚な印象を与える銀の髪とワンピース、あどけなさの中に何処か大人びた雰囲気を漂わせる顔立ち。そして頭のてっぺんから垂れるウサ耳。後ろに回れば尻尾もあるが今は、ワンピースの中。

「問題ない。これを持っとけ。今回はこれさえあれば事足りる、………ただあまり敵に近付き過ぎるなよ」

メタリックな液体の入ったガラス管を何本か渡す。

「なんですかー?これ、どうするものなんですか〜?」

「それはな…………」

 

「ふぁー…………はふ、数ばっかり多いな」

欠伸を一つして鞘に刀を戻すと、物がぶつかるドサッという音と不快な水音が複数耳に入ってくる。………流石に手入れが必要だろうな、刀を隔離して先を進む。物陰に隠れてる奴は千里眼で確認済みなので、火魔法で塵一つ残さず焼く。一瞬で焼き上がるので不快な臭いはしない。そこらじゅうで上がる火柱には目もくれず、断末魔が響く中カツカツと一定のペースで足を進めていく。すると、周りの廃れた印象とは明らかに違う扉が見えてきた。年季は入ってるが汚いと思わない。…………ちょっと蹴り飛ばすのは躊躇われるな。仕方ないか、少し横にずれて腰を落として、息を吸い込み、そしてゆっくりと息を吐き、壁を撃ち抜く。

「うぉ!何だ!」

………おいおい、何してんのこいつら?結構派手にやってたのにここまで来るまで気づかなかったのか?机の上にはコーヒー(湯気付き)だと思う物がある。

「動くな」

お、銃か?…………でもこの狭い部屋でアサルトライフルは取り回し悪くない?特に真ん中の円卓が邪魔、これがあるために拳銃でさえ微妙なのだ。素早く間合いを詰めて、壁を蹴り背後から後頭部を蹴り飛ばす。円卓に着地し、手近な奴から顔面を蹴っていく。後は隔離して、レアに合流する。

 

「あのあの~………これどうすればー?」

痙攣している大男を尻目にこちらに判断を仰いでくる。

「取り敢えず離れろ。あと今使ってるのも止めとけ」

「はいー」

双斧の生きてる似たような状態の奴を代行者の指定で隔離する。この状態ではまともに喋れないと思うが、魔法もスキルもある。読心を使えば質問を投げかけるだけでいいし、無理そうならアナスタシアが治す。…………これを治せるかは知らないので、実験も兼ねているのだが、集合時間が近いので帰るとするか、


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