「ノルン、寄り道してもいいか?」
「はい、お父様の身心のままに、」
どこで習ったその台詞………、目的地はあの建物だ。ポイントもあるので一瞬だ。付いた先では二人が某社のカップヌードルを食べてた。何食ってんだ!俺にも寄越せや!ちなみに芦原さんはカレー味のやつ。詳しく聞くと、どうしても食べたくなり、筒状の認識で気合を入れてカップヌードルを出せる可能性を引き寄せたようだ。カップ焼きそばとか容器の形が変わると無理らしい。無念。今食べる分と隔離ストック分を大量に貰っておく。
「………で、この団体の名前って何?」
「それ北川さんが決めるんじゃないんですか?」
えぇ………
「勝手につけてええもんかも、わからんかったしな」
…………それもそうか、じゃあ、テキトウに、
「異世界NGOアスメシア支店とか?」
「………支店って、本店は?」
「そんなものは無い。キッパリ」
「えー………」
「NGOってなんの略や?」
「非政府組織ですよ。赤十字の国境なき医師団とか、そんな感じの………まあ、こっちはいろんな意味で超えちゃってますけど、」
「ほぉ、ええな、何より非政府組織っちゅう響きが気に入ったわ!」
あなたが言うと何故か物騒や感じがするんですけど、芦原さん………
「ああ、あと、藤白にも用意してほしい物が二つある。片方は出来るか分かんないから、そっちはできなくてもいいよ」
「ええっと、………それってどういう薬ですか?」
「片方は消毒と汚れの洗浄に使うやつの二種類、消毒用エタノールは知ってるだろ、もう1つは毒だな。」
両方準備できるみたいだな、藤白の毒物・薬物効能操作・製造の能力で作れる範囲は結構広いみたいだな。しかも毒の方は錬金術の範囲に入るのでは?というものだったのたが、できるようだ。………ただ魔力がすぐ無くなってしまうようだ、こっちは俺の方で作るとしよう。…………あ、土産がカップヌードルになりそうだな、ま、こっちでは珍しいものなのでいいか、なんて周囲を見渡すと、
「うぉ、…………なんだあれ」
空間に歪みのようなものが、取り敢えず真理、
ポイント
こんなものまで見えるのか………、千里眼を使い、移動前の場所を見るとここにも、歪みがあるので真理を使うと、
空間の歪み
空間系魔法によって生まれる歪み、転移魔法の使用痕跡、
うーん、これは奇襲とか潜入とかで痕跡が残りそうだな、これは後で実証実験が必要だな、
「ご主人殿!おかえりなさいませ!」
転移したら向日葵がいた件、お前、留守何かあった時は頼むって言っといたよな?!………はぁ、これは増員が必要そうだな、ついでにこの家の増設も………手が足りないな、色々と考えて内にアナスタシアとクロエは部屋から出ていった。多分食事の準備だろう。
「明日の朝は、飯は作らなくていいぞ、頼まれてた土産があるからな、」
「わかった………シュン」
「では私は周辺の安全確保を………」
「そう言えばアリスは?」
《懸命に子供達の相手をしていたようですが、現在寝転がっています》
うーん、まあ仕方ないよな、結構体力いるし、………うわー、目死んでない?服も乱れてるし、
「大丈夫か?土産を………」
ガバッ!ゴッ!
痛ぇぇ!……………頭突きくらった、頭が、
「あ!すいません!ご主……」
「………退く、ロストリバーサル」
おい、それ現在持ってる最上位の回復だろ。そこまで深刻じゃないぞ。頭の痛みはスッと引いたけども、
「アリス」
「アリス、ちょっとこっちに、」
「アリスー、ちょっと付き合ってほしいにゃ」
「アリス………」
え?………怖!それよりも、
「お前ら殺気抑えろ!死人が出る!」
俺は同じ悪魔系だし、アナスタシアはそれらを防ぐ天使系のスキルがあるか、保護してる子供達にそれは無い。混ざった殺気は部屋の中を真っ黒に染め上げていた。が、瘴気とも思える霞はすぐに霧散する。………と言うか目がヤバかった。クロエは眼鏡で見えなかったが、クロシェットは肩に力を込めてた、笑顔だけど目が笑ってなかった。ノルンは蔑むような目をして、掌に炎を発生させてた。一番ヤバかったのが向日葵、いつもと変わらない笑顔かと思ったが、その顔からは表情が抜け落ちていた。その目の奥には覗いても見通す事ができない闇が首を擡げている。
アリス、状況の変化に置いていかれる。
俺、ドン引き、
アナスタシア、回復魔法を使った後、まだ容態をみている。
「………こんな事でキレるなよ、悪意があったわけでも、わざとでもないだろ、それにこっちの不注意でもあるしな、」
感情抑制は戦闘でも大事になってくる。熱くなるのはいいが、暴走するのはアウトだ、
「それにアナスタシア、この程度のことに最上級の回復魔法使うな、すぐ魔力切れになるぞ」
「心配………」
「心配してくれるのは有り難いが、使い過ぎて瀕死になってる時に使えないなんてことにならないようにしろよ」
「ん、気をつける」
いつになく真剣な表情のアナスタシア、凛とした、それでいて可憐、吸い込まれるような………催淫使ってないよな、
「よし、………さてと、お前らについては周りをよく見ることやらが欠けてる。反省に少し組手だ、アナスタシアとアリスは無しな、」
「「なんでですか!?」」
「なんでにゃ?」
「………無理。」
当たり前だ、致死量の殺気垂れ流した罰なんだから。
「明日、湖の前な、ノルンは厳しいから、火球を作って維持だ。」
「私に合わせて………ありがとうございます。お父様。」
「………30個六時間維持だ。」
「え………」
楽な課題じゃ、罰にならん。俺も徒手格闘の練習したいし、もし刀が無くなったりした時のためにやっておいて損はない。
「よし、動き易い服装……に着替えたか?」
いや、何名かはわからんでもない。クロシェットはブルマに何処の学校のかは知らないが白の体操服上。………目のやり場に困るな、向日葵はブカブカのジャージ上下(上は赤、下が緑で両側面に白いラインが入っている。)クロエは………
「………何故メイド服」
「ええっと、………駄目でした?」
逆に聞こう、何故大丈夫だと思った?………いや、普段からその格好だけど、
「まあいい、向日葵から来い。ノルン、ちゃんと見てるからな、」
「う…………」
代行者にも見てもらうので、そっちにはあまり意識を向けないようにしよう。今の相手は肉厚な脂肪に覆われたオークの腹に風穴を開けられるパンチを放てるのだ。気持ちを沈め、集中する。
「じゃあ、………来い」
「で、では、…………行きます!」
普段より格段に遅い攻撃が来た。姿勢を落として避け、突き出された腕を掴み一本背負い、
「………それで敵が倒せるか、練習にならない。」
「は、はい!」
取り敢えず後ろに飛びながら受けてみる。ぐっ……………三十メートルは飛んだな。手も痺れてる。ただ、この感じは殴られた所から先が血の通ってない感じ。神経の異常に近い。握り拳を作ったり、開いたりを繰り返す。………動作は少し遅れるが動く。問題ない。
「行きます!」
真っ直ぐ突っ込んできた所を手を取り、側面に回り込み押す。合気道の回転投げだ。面白いように転がるな。
「行きます!」
「………ほっ!いちいち言わなくていいぞ。」
速度が結構乗ってきたな。小手返しから一教、………小手返しからの制圧とも言う。
「一旦終わりな、次はクロエ」
クロエにはあまり体術を教えていない。
「ええっと、…………お、お願いします。」
「形は気にしなくていい。向日葵もあんな感じたし、」
初心者に毛が生えた程度の空手だからな、
「は、はい!………で、では、いきます………」
………なんかもう、死にそうなぐらい顔色悪い、
「………………無理だけはするなよ」
死亡フラグが立たないといいが、………取り敢えず四方投げて対処する。………これ以上は止めといた方がいいな。多分吐く。………いや、うーん、人形でも吐くのか?
《次、入身投げをした場合、87.6%の確率で………》
ちょっと黙ってもらえます?
「お兄ちゃん、私はまだかにゃ?」
「あ、ああ、クロエは休んでろ、な」
「は、はい………」
茂みの中に消えていったクロエの背を見送る。………なんかダメっぽいな、
「アナスタシア、回復頼む。」
見学しているアナスタシアの方に腕をみせる。今回はロストリバーサルで頼んだ。
「さあ………始めようか、最初はスピード抑えてくれよ」
「わかったにゃ!」
正面のクロシェットに意識を集中する。が、次の瞬間、俺は横っ腹を抉るような掌底を受ける寸前で手首を掴んだ。
「みゃっ!」
そのまま腰投げ、………が、地面に背中か触れる事無く着地する。やっぱり対処してきたか。前八極拳の技を使っていたが、俺は誰にも教えていない。見ただけで覚え、それを使っている。対処に関しては投げ技を予想してその場で動きを決めているようだ。
「お兄ちゃんすごい!なんで分かったの?!」
………お前スピード抑えてアレか、残存初めて見たわ、
「………間合いだ。攻撃の届く範囲に入った物を反射で対処する技術だな。経験則、武術の基礎、修練の賜物ってとこか」
とは言っても、横っ腹に当たる寸前まで間合いに進行してきていたからな、本来、間合いに入るか否かで迎撃するのだが、速過ぎて対処が遅れてしまった。これより速度を上げられたら防御を抜かれてしまう。………仕方ないか、未来視を使おう。それと刀も持とう。武器を持てば間合いは大きくなるため、対処も早くなる筈だ。感覚を鋭く研ぎ澄まし、構える。
「………よし、来い」
「じゃあ、行きます」
………あれ?語尾は?嫌な予感しかし無いんだけど、直後に正面からくるイメージが伝わってくる。未来視の攻撃予告だ。受け流す為に手を前に出すと、同時に何かに触れる。その直後地面が爆ぜる、しかし、それ同時に手を掴まれる感覚がした。しかも掴み方からして小手返しだ。重心を動かすが、あっさり投げられる。その地面に着くまで刹那、制圧までの流れが未来視で伝わってくる。………これは避けられんな。あんまり使いたくない手だが仕方ない。着地するまでの時間に体を捻り、足を体が付くより早く降ろし、捻じれを俺の肘に集中させる。
コキッ!
負荷に耐えられなくなった関節が外れ、痛みが走る。開放された左腕は下手に力を入れると痛いので力を入れず、自然のままに任せている。クロシェットは………ホントゴメン、普段の天真爛漫な表情が想像できないほど顔面蒼白になって固まっている。ただ固まってしまうのは良くないなー、寸頸、
「………………」
無言で転がるクロシェット。魂が抜けたみたいになってるな………
「ビックリしたか?手錠で拘束しても関節を外して抜ける奴もいるからな。」
身振り手振りを交えて周りの空気を解す。
……………あっ、手戻してねぇや。
ブラブラしてた左手を掴み、前に少し前に出してから、一気に後ろに引く。
カコッ!
うん、違和感ないな、血が巡ってるのが分かるわー、
「さてと、続けるぞ」
「ご主人殿!もう休んだ方が………」
「おいおい、これは罰だぞ、良いかどうかは俺が決めるし、クロシェットはまだだろう。」
「…………へ!?は、はい!!」
今度は不意を付かれないように更に気を張る。すぐさま飛び込んできたクロシェットを刀で迎撃するが間に合いそうにない。なので柄頭を使って殴る。
「にゃ!」
が、直後に背後に回っている。鞘の小尻を使ってなんとか間に合った。少しづつ加速していくクロシェットとギリギリの綱渡りをしながら、少し余裕が出てきた頭で疑問を整理していた。…………まあ、まず何故余裕があるか、速度は上がっているが攻撃が単調になっているのだ。ほぼ直線軌道なので、来る方向が分れば迎撃は簡単だ。次だが、叩く度に出る声が………
「みゃ!」
「いっ!」
「はひゃ!」
「おぼっ………」
……………なんか、艶めかしくなってきている。
《クロシェットは称号 ドMを得ました》
…………い、要らねぇー。そして疑惑が確証に変わった。
「じゃあ、もう一回、向日葵からだ。」
爽やかな笑顔と共にクロシェットとの組手を打ち切る。因みに後で一個火球をケチっていたノルンは一時間時間を追加した。もうすぐ6時間になる手前にな、