………さて、今日まで頭を悩ませてきた問題に当たるとしよう。食糧だ。森の外からでもテキトウに隔離して持ってきたのを殺ればいいのだが、もしもの時の自給自足の方法が少ない。ウサギは勘弁してください。元からいたアンデットは食える訳がないし、あたりを調べても毒草の割合が高い。研究は捗るが腹は膨れない。そんな訳で、森の一角を木を根ごとを引き抜き土を起こし、畑にする。木は向日葵に抜いてもらい、こっちで隔離しておいた。ついでに家の周りも抜いて貰った。家に当たりそうになったのはあれだが………種は芦原さんの所からと街からの苗やらを買ってある(隔離を介してメモ帳と金を渡し、藤白にそれを買ってもらった)ので、それを使って軽く体験授業と行くか、
覚えてる限りの知識を教えたが不安だな、適した土、又は適した土地の作り方やアルカリ性と酸性のそれぞれに適した作物や、その土の見分け方、それと二毛作やら二期作(米は芦原さんから)、ノーフォーク農法等をまとめて紙に書いて見せたりしたが、所詮知っている限り、農業は専門外だし素人だ、リトマス試験紙なんかも無いので朝顔を使うつもり
だ。ヘブンリーブルーに近い品種があれば理想的だろう。効果があるかは分からないがマリーゴールドのようなハーブ(虫除け)を植えるのも忘れない。と言ってもこれらは、今すぐ食糧にできる訳では………
《可能です》
……………えっ?今なんと?
《一部の植物は明日には収穫可能です》
………………何故?理由を伺っても?
《職業の中に特殊な権能を持つものがあるためかと、他にもこの近くにいる際に英雄の覇気を出せばより良い実りとなります》
それでいいのか………英雄の覇気、権能ってどんなのかわかる?一部とか言ってたし、………あっ、覇気出しとこっと、
《畑の作物の対象は米、麦、トウモロコシ、ジャガイモ、リンゴです》
ん?ちょい待ち……………リンゴの苗が有ったのか?ヤバ、
バキバキ!!
「キャーー、何?!」
「木が…………」
「見て!あれ!リンゴじゃない?」
………………な、
「なんじゃこりゃぁぁぁー!(心の底からの叫び)」
対象はブドウ、リンゴ、サクランボ、ヤシ、米、麦、トウモロコシ、芋、リュウゼツラン…………根菜、果物、穀物等までも、最後のリュウゼツランでなんとなくわかったが、これは酒に関係した作物が対象なのではないか?現に大豆等酒にするには適さない豆類は全く成長してない。どの職業の権能なのか知る必要がある。この世界のシステムは何かとおかしい。その際たるものが権能やパッシブで何かに働きかけるスキルの副産物、それに今度は職業まで…………
《∝∠オ∏ソθの権能です。》
ソが追加で読めるようになったか、なんでか知らんけど、食糧事情はある程度回復した。何せ主食となる物の成長が一日で行われている。………シミレーションゲームでもこうは行かないと思うぞ。土地大丈夫か?駄目だよなコレ、早速色んな農法が使えない現実に突き当たる。
《肥料を定期的に与えれば、安定した生産量が確保できます》
肥料って、そんなんで………
《魔物の死体等を肥料にすれば、魔力を直接根から吸収し、即効性と成長や実りに必要な養分を確保できます。》
あー、はいはい、魔力ですな、現実問題俺の知ってる肥料で足りる気がしない。濃いすぎると根腐りするけど、そのくらい与えても養分が足りないだろうし、ここは謎の魔力パゥワーに頑張ってもらうしか無さそう。なので、森に放置してあるアンデット(肉体有り討伐済み)を隔離して木の根本に出す。するとりんごの根の下にゆっくりと穴が空き、そこに吸い込まれていき、最後には地面の下へ消えていった。穴はもう無い、
ー俺はあれがリンゴの木だとは断じて認めない。
というかこれ、近付く子供も危なくないか?いつの間にか誰かいないとか冗談抜きで勘弁だぜ、
《それについては問題有りません。生物には反応しません》
絶対か?絶対だな?よし、食糧を確保し、家に戻る。これで暫く持つだろう。さてと、なんやかんや結構な日数が経ったが、何とか今日、完成しそうだ。ノルンの体が、複数の尻尾をきっちり繋げて、完成だ。
「ノルン、完成したよ。」
『これが………思ったより小さい?これがお父様の理想とする姿?』
「それはまあ、この体に入ってみればわかると思うよ、」
『う~ん………わかったよ!』
ランタンを開けると茶色の光が人形の体に吸い込まれていく(今回は服を先に着せている)。あとはいつものように、能力を付与する。今回は
ノルン オートマタ
機構精霊 支配する琥珀
パーソナルスキル 怠惰 支配ノ使徒
スキル 火魔法3 時空間魔法5 月光魔法3 陰陽術ー 自動修復4 変幻自在ー 無限回廊ー 読心1
耐性 毒・酸無効
称号 生きた人形
……………読心がある。1だけど、あとは魔法と特殊なスキルのオンパレード。月光魔法は目に使った月光獣の魔石、刻印を隙間なく描き、効果を強めてある。正面には時計に見える部分を向けてある。反対の目には霊碑結晶を埋めてある。これは魔石ではないが、陰陽術を使う上では大切になるそうで使ってみた。習得もしたが、残りは………
怠惰 内訳
夢幻泡影 精神世界に干渉出来る。魔力の上限が取り払われ、動きをある程度止めると魔力の回復速度が上がるが、動くと魔力が減少する。空間魔法を習得する。
罪源 美徳系、天使系スキル保有者に攻撃が当たるようになる。
支配ノ使徒 内訳
幽閉スル支配者 無限回廊を習得し、回廊に収容した。生物のスキルやステータスを自分の物として引き出し、使うことができる。
永遠ヲ司ドル者 時間魔法を習得する。
当たり前の様に持っていた大罪系と俺が与えるブッ壊れ使徒系スキル、その中の時間魔法と空間魔法が合わさって、時空間魔法になったようだ。ちなみに第四位階に当るものだ、黒ノ時と同じだ。………まあ、少し想定外もあったが目当ての魔法も使えるようだ。
時空間魔法 ショートカット
クローゼット
クイック
ムーブ
スロウ
ポイント
ストップ
ゲート
「よし、早速で悪いけどゲートって魔法を使ってくれないか?」
「やってみます。………お父様、この魔法はどうやら行き先をポイントで登録しないといけないようです。」
う~ん、最初からうまくは行かないか、ゲートは転移系の空間魔法だ、複数の人や物を短時間で移動させる事ができる。が、ポイントで指定した場所にしか行けないようで、指定するためにも街に行かなくてはならないようだ。仕方ないので家の一室にポイントを使ってもらい、実験する。森や別の部屋から移動できるか、実験は上手く行った。後は明日街に出発しようと思う。
保護した子供達に仲良くするように言い含めておくと、傍らにあった鞄を背負い、家を出る。
「じゃあ、頼めるか?」
「…………う、うん、」
「が、頑張りますぅ…………」
「任せるにゃー」
…………ホント大丈夫かな?と言ってもこっちの方もなー、
「私達がご主人殿を守りましょう!おー!」
「ワタクシ一人で十分ですわ。」
「なにおー!もしもの時の為に私がいるんですよ!」
「二人共、マスターの前ですよ。」
微笑むクロエから二人に飛ぶ殺気。俺を避けるように赤いモヤが移動しているが、真理のある俺には見える。完全に裏から掌握してないか?クロエさん。しゃきっとする二人を見て視線を横にやるとノルンがいる。
「早く行きましょう。お父様」
「こら、引っ張るな、勝手にど………っか、」
「ぜぇー………はぁー………ぜぇー………」
え?マジで?五歩よ、五歩、元気一杯の女の子が、それこそ久しぶりに運動したオッサンのように息が上がっている。顔色も良くないな(人形なのに)、
《魔力切れに近い状態になってます》
早っ!これでは近接戦闘は無理だろ、武器というより移動手段を作ったほうがいいな、
「お、お父様………」
「動くな、じっとしてろ、今度移動用の乗り物を作ってやるから………今はこれで我慢してくれ、」
ノルンを抱き上げる。いわゆるお姫様抱っこ、
「あー!あー!」
「………先越された」
「ずるいですわ!ワタクシも!」
「あーもうほら、早く行くぞ。」
「あっ、待ってください。………これ、おわっあ!」
盛大にコケるクロエ、宙を舞うバスケット、まずバスケットをキャッチ、それからクロエを受け止める。………と行きたかったんだが、ノルンを抱えた状態では無理。
「ストップ、ショートカット」
クロエを止めて、バスケットにに飛びつくノルン、仕方ないので受け止められるように移動する。………というか、回復早、
「…………あれ?……マ、マママママスターー!えっ!?なんで?!」
「ショートカット、はい」
クロエの前に出てバスケットを手渡すと、クロエを押し退け間を作ると、
「ん………ショートカット、」
元の状態(お姫様抱っこ)に戻る。魔法の無駄使いじゃね?まあ、自分で動くととんでもない勢いで魔力が減るので仕方ないと言えば仕方ないか、回復ペースも早いようだが、
「「「じーー………」」」
「「ジトーー(ΦωΦ) ………」」
『『ヒソヒソ………』』
………視線が痛いッス。
「ほ、ほら行くぞ、」
「ああ!こちらをお持ちに」
バスケットをノルンに抱えさせ、結界で覆い出発する。移動中は魔法関係(国庫)の本を閲覧したり、貰ったバスケットの食事を楽しんだり、ノルンのスキルの確認をした。