この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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後半、偏った内容になってます。


実は………

後日依頼をこなしてエドガーが治めるアスメシアに戻ってきた。オークの集落の調査(殲滅)とか道すがら依頼をこなしてまとめて報酬を受け取る。あとはそこに、格闘技大会の賞金と放火魔の懸賞金を含めて藤白に渡す。団体の運用資金として、一千万相当の金貨を渡す。コンテストで得た金はあの子達の頑張りで得た物だ。それを渡すのは良くないと思う。同じ金といえ金だが同じ金だし文句無いだろ。

「困ったことがあったらエドガーか、俺に相談しろよ。金はエドガーを介して渡すから、」

「は、はい」

「じゃ」

さっさと森に出発する。

「えー!もうちょっと何か………これからどうしましょう」

「まあ、何とかなるやろ」

諦めに似た感情を抱きながらも、拠点となる場所を目指し足を進める。

 

征輝傀儡楼、その名を知るものは数える程しかいない。そんな中この組織の最年長たる老人の記憶で二回目の全員招集の会議、円卓を囲む向かいの五人、ここにいる老人含めて六人がこの組織の中心人物である。

「一応今回の議題について教えてくれ、連絡で聞いておるが、おぬしの口から直接聞きたい。」

議題はコンテストに当日参加し、三部門全てで優勝した者のことだ。

「北の花園………、製作者名じゃろうな、聞いたことのあるものは?」

反応を見る限り知るものはいないと見ていいだろう。話を続ける。

「バトルは猫獣人と思える姿をしていたが、毛が緑じゃ。対戦したオートマタやゴーレムを武装無しで瓦礫にな」

人型の物はほぼ戦闘に使われない。人型よりも多脚型の方が重い武装も付けられるし、相手が大きい場合、人型で勝てるのはスピードのみ、馬力など言うまでもない。人に車が衝突するのと同じだ。馬力が出せない分を武装、火力で補うのが普通。しかし、武装無しでどうやって、そんな疑問が老人の周りからどよめきとなって上がるが、結論はほぼ出ている。ちなみに猫獣人の種族の中には白、茶、黒、金の毛の色を持つものはいても緑はいない。

「…………素手じゃよ、一度の攻撃も受けず優勝しおった、ビジュアルに出た人形の性能は分からんが、一番問題なのはパワーの部門じゃが………」

「他の出場者の50メートル級のオートマタを持ち上げたと、」

彼らにとってこのコンテストは資金源でもあるが、最も一番の目的は有力な人材を集めることにある。コンテストに参加するにあたって三ヶ月前に資金が渡される。もう作っているもので参加する者は含まれないが、この資金の返済を枷に優秀な技士を彼らを手足とする。そして貴族側には、このコンテストに参加する事で権威を示せる等アピールし、競わせ、ありとあらゆる手で搾取する。この手足には優秀でない技士を使い、失敗したり、こっちの情報が漏れそうになれば切る。そしてそうやって作られたオートマタやゴーレムを戦争中の国に戦力として貸し付け、国の中枢に潜り込み、内側から思い通りになるよう変えていく。失敗しても金は請求できるし、弱みも握れる。少しずつ削り、国力が弱くなったところで手を差し伸べてもいい、だが資金を貸してもいない。それに腕が立つと言ってもそこそこでいいのだ。強過ぎると味方に引き入れれば心強い反面、目立つし、何より止められる者がいない場合がどうにもならない。

「やはり【世紀の人形師】か【稀代の人形師】の称号を持つものが現れたのでしょうか?」

「………生きた人形、か」

この2つの称号を持つもの以外作れないとされる人形だ。と言っても【世紀の人形師】でも三体作れば一体と言う所だ。そしてこの称号には特徴がある。

「世紀の人形師は、百年に一度現れるものです。ですが…………」

ここで言葉に詰まる女、そこに男の声が続く、

「………千年に一度の稀代の人形師、その可能性があると?」

稀代の人形師が作る人形には必ず生きた人形の称号を得る。作ったものは成長しない。だが生きた人形は成長する。視界の隅で下卑た思考を働かせてる若造(この中では若い)を無視し、話を進める。

「今回集まったのはこの者に対する対応をどうするか、じゃな、迂闊に手を出せばその手容易く斬れる故にな、」

利害の一致を計れるか、それとも敵対するか、接触についてを決める。それにあたって先行する者が出ないように釘を刺しておく。

「………ふむ、とは言っても、接触はできんのじゃがの、」

「………それは?」

「関所を通ったという報告もないにも関わらず、もう街にはいないようじゃ、賞金はきっちり受け取っておるしな、」

「引き伸ばせなかったのか?」

「出来たらしておる。そこにおった責任者………主催者をわしが支持を回すより早く言い包めて、街の宿で宿泊し、門兵に発見される事なく姿を消しおる。移動手段も分からん、」

考え込む呻き声が支配する中、お茶が運ばれてくる。そのお茶を飲み落ち着き取り戻し会議を進めるも具体案は出ず、不干渉、現時点で言う保留に留まった。しかし、この会議が見られていたことは彼らは知らない。

 

征輝傀儡楼か、こっちに来た奴が立ち上げた団体、ギルドに注意を払っていたが、こっちの元からの組織や現住民の団体にも調査が必要そうだ。代行者に聞いたところ、疑っていた裏が取れた。パワー部門の参加者の物が大きいのは、貴族には権威、それ以外にはそのほうが有利だと吹聴しているようだ。スクラップなんかも処理費を払えば処理して貰えるそうだ。………きっちり資源として再利用するみたいだがな、

「そろそろつくぞ」

「「はーい」」

「「「わかりました」」」

そんな訳で森に着いたのだが…………

「なんでこんなにアンデッド系の魔物が多いのかなー?」

半透明な人型の物にアイアンクローをきめながらボソッ、と呟いてみる。…………これ?ゴーストで実体はないらしいが、なんか触れる。

 

《考えられる要因が複数あるので明確な理由はわかりかねます。可能性としては次の通りです。》

 

一、冒涜

ニ、存在値

三、神聖

 

へー………としか言いようないな、何はともあれ掴めてる訳だし。冒涜で吸収する。周りを見ればクロシェットが掃除機の如く実体のないゴーストを吸い込んでいる。暴食の能力だろう。

「すぅーー…………おっとと、もったいにゃい、もったいないにゃ」

口元を抑え、悪戯な表情で無邪気に微笑む。明らかに人型の何かを吸い込んだ後でなければ惹き込まれていただろう。現在の状態はちょっと引き気味くらいだ。横に視線を動かせば舞ながらライトやフラッシュを使ってアンデッドを引き付け誘導するアナスタシアが目に入る。試す機会が無かったので実験に付き合って貰ったのだ。

「アイシールーム」

クロエが魔法で作った氷で囲むと、その縁にアリスが着地。黒ノ時の実験である。

「開け!」

氷で仕切られた空間の中心に歪みが生じ、次の瞬間に爆発、氷を穿つ、中に誘い込まれたアンデッドは足首ぐらいしか残ってない。きっちり球状に削り取られている。逆に球に当たる部分以外は何の効果もない。これは強力だが、使いどころが難しそうだな。最大効果を狙いに行くなら、準備が必要になりそうだし、避けられたら悲惨だ。ちなみに向日葵は非実体の物は強欲で捏ねくり回して、実体のあるアンデッドは拳で風穴を空ける。ただそれでは行動不能にならないので、続けざまに二〜四発打って上半身を丸ごと吹き飛ばしている。速度はあまり無いが威力が………そう言えばさっきの触れられる可能性で思い出したが、こいつらに神聖使えばよくない?発動っと、…………皮膚の内側から削られるような焼かれるようなピリピリ痛い。ただ得も言われぬ違和感のような喪失感のようなものがしたので効果を直ぐに解除する。

「「「「なんかピリッと来た」」」にゃ」

「?何」

アナスタシアだけが無反応。いや、この場合は………

「わっ!……びっくりしました……」

「もう〜、いきなり大きな声出さないでよ。」

連れてきていた兄妹、ウィルとキリエこの二人も反応無し、周りに目を向けると、アンデッドは壊滅している。スゲー威力。

 

《北川 龍登は祓魔師になりました。》

 

あー、はいはい、アンデッド関係かな?ただそれよりさっきのピリっと感はこっちにも干渉しているという事だ。他の四名も同様アナスタシアだけが効果なし、俺とこの四名とアナスタシアの違いは悪魔系のスキルしかない。

 

《正解てす。》

 

………お前、ほんと聞かないと答えないよな。どうでもいい呟きでも答える癖に、………あれ?悪魔?こっちが原因かも、…………どうでもいいや、戦い始めてからしてた体のだるさもないし先を急ぐか、

 

《先程までの精神汚染が原因かと、なお現在は神聖により、浄化されました》

 

そこ詳しく、五体ぐらいしか倒してない筈だけど。

 

《生きているゴブリン等とは異なり、アンデッドは死者がこの世に未練、後悔等の強い負の感情を持っている為かと》

 

それも吸収するから気分が悪くなるのか。選んだりは?

 

《無理です》

 

あんまり冒涜を使わない方向でいくか、時間をかければ浄化はできるか?

 

《可能です》

 

じゃあ、その方向でお願いします。神聖は詳しい事がわかるまでは一旦保留、周りのが片付いたので目的地に足を進める。

 

暫く歩くと森が開けて湖が見えてくる。周りのみんなには霧で見えないかも知れないが、俺には真理や千里眼があるので霧や夜の闇くらいなら問題にならない。………まあ、俺は知ってるから驚かないけど、

「あれ?あの建物は?」

「ああ、あれが俺等の新しい拠点だ。」

 

 

………………ですよね。ポカーンってなるよね。

 

 

「い、今から作るのでは?!」

「完成してるのは外装だけだ、内装は俺が作る。」

「説明、求む。」

「わーい、いい匂いがするにゃー」

「えーと、あれ?……ワタクシには難しくて理解が………」

兄妹は反応できずポカーン状態。向日葵はいつも通りの笑顔だな。この家は代行者が万能結界、千里眼を使って作った物だ。要するに、

 

基本設計・建築 代行者

デザイン・内装・材木の加工 俺 

 

代行者は俺が寝てる間も動くらしい。スキルは脳(体)ではなく、存在値(魂)の中にあるため体の状態に関係なく動けるそうだ。輸送は隔離を使えば一瞬、作って放り込めば現場に届く。微調整もやりやすい。

「とりあえず、寛げる部屋だけ完成させるから。晩御飯を頼むわ。」

「何がいい?」

 

《ウサギの肉がよろしいかと》

…………それ言う?いやまだ隔離してあるけども。生きてるから!肉とか言わない!あの状態見た後だと食うのが忍びねよ。その上俺の隔離空間内だし、どれを選ぶかとか罪悪感しかないのだが…………、解体もわからんし。お前の提案の軽さは冷蔵庫の余り物食べる?って聞くオカン並みだし、………………いや、問題の先送り良くない。ウサギの肉とか食ったことないし。何のために捕まえたとか考えると……………、

「…………二人はウサギの解体とかした事ある?」

「「はい、お任せください」」

 

…………どうしよう。乗り気だ。

 

何匹か隔離から引っ張り出し、どれか選んでもらう。こんな時の自分のヘタレさや責任逃れはあっち現代人として仕方ないかも知れないが、大人として最低である。………子供にみせる成ってはいけない大人の見本みたいな物だ。人やゴブは何の躊躇いもなく斬れるのに、そんな俺の自責の念を気にした様子も無く生贄が決まった。内装作りが手に付かない上の空のまま食事の時間を迎えた。

「どうぞ、自信作。」

…………忍びねー、何から何まで子供に任せ(調理は無理なのでアナスタシア尚更)、ウサギだったものは調理され、皿の上に野菜やタレに和えられ、細かく刻ま………食べやすい一口サイズに、鼻腔を擽る香ばしい香りに目を閉じ、選ばれていたウサギの姿が、…………アカン思考がどんどん引っ張られる…………

 

頭でわかってはいるが、スーパーで売ってる肉だって元は生物を殺し、その死体を斬り刻み、単価に従いその命に値段を付け、それが食卓に並んでいる。俺は肉は好きな方だ。だがそれを殺す時を見た者は数少ないだろう。

 

動物は人間より死に敏感だ。

 

保健所の犬や猫は預けられてから10日で処分される。処分する為の部屋は決まっている。一日一日部屋を横に移動していき、10分間の窒息死へ進んでいく。途中で掬い上げられる命もあるが、全体から見れば極僅かだ。その部屋に付くまでの段階、いや、保健所に連れてこられた段階から、普段は聞いたこともない声を上げる。言葉はわからない。だがそれは紛うこと無き死に対する恐怖だ。諦めるものや、死に怯えるもの、様々だろう。だが、ここで10日経てば、あるのは死だ。犬や猫自身にはどうしようもない。の身勝手が諸悪の根源と言えるだろう。それは保健所に限った話ではない。飲食店の食品廃棄物は約1700万tに及ぶ、世界の食糧援助量の約二倍の量が日本で廃棄されているというデータもある。この量には一体どれだけの命が含まれているやら。肉が全体のどのくらいなのかは知らんが、かなりの量になるだろう。これらが食糧支援に回されていれば何人助かるだろうか。そう考える人も少なくない筈だ。

 

………人間、追い詰められると妙に頭が回るものだな。ここで食べなければ、このウサギの命は文字通り無駄になる。感謝と供養の意味を込めて責任を持って食べよう。……………最も後日、ウサギを森に放ったが、

 

《嘘ですね?》

 

喧しい。お前に言われると尚更だ。自分を騙して生きる。みんなやってる事だ。自覚の有無はあるが、俺にさっき述べた大層な理由などない。ウサギに罪も恨みも無い。かわいい小動物だから殺したくない。そんなところだ。まあ、本当に仕方なくなれば躊躇いなく生きる為に殺すだろう。それこそ自分のエゴだが、何処のか忘れたがシーシェパードだったか、あれよりはマシだと思う。イルカは頭がいいからの食べてはいけない、みたいな事を言っていたが、それは頭の悪い、イルカ以外の今まで食べられている牛や豚等を食えと言うことか?では聞いてみよう、

 

イルカより牛や豚の方が頭が良ければお前達はイルカを食うのか?

もし人より頭のいい動物がいたらお前等はそいつに大人しく食われるということか?

 

どうせこっちが納得できる回答は期待できないのでどうでもいいが、一万年の牧畜の歴史の中で育て、殺し、積み上げられ、食い散らかして来た死体に「お前達は頭が悪いから食われたんだ」とでも言うのか?そこまで愚かではないぞ、俺は、

 

狩猟ならもっと前から始まってるし、………まあ、どこまで突き詰めても同じ人間である限り五十歩百歩のような気もする、不毛だ。最後に化けて出ませんようにとウィル君が持ってきたウサギの毛皮に手を合わせてから寝床に着いた。南無。


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