この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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家ができるまで

「ガアァァァァ!」

 

ブン!

 

迫るオーガの拳に腕を添え、正面から受け止めずその軌道を逸らす、そこから前進、懐に飛び込み、双撞掌、勿論接触する際には冒涜を使った存在値の吸収を行っている。刀を使えば簡単に勝てるのだが、刀をなしにしても勝てるか、ちょっとわからなかったのと自分自身の格闘術のレベルアップとトレーニングを兼ねて行っている(それと魔石の収集)。………おっと、たじろいて距離を取られるのはよろしくないな、相手の股下まで踏み込み、川掌、こうすると深く刺さるような突きが出せる。そこから腹を刺すように蹴り、そこを足場に、左足で顎を頭上にある顎を蹴り上げる。近い技のイメージとしては連環腿だが、バク転してまで蹴るものを連環腿とは呼ばないと思う(本来二段蹴り、振り子の容量で一度目に放つ蹴りを戻す勢いを利用して更に高い二発目の蹴りを放つ、通常頭部を狙う)。俺自身習ったことがあるのは居合だげだからな、八極拳は本を読んだり、某動画サイトの型やらを見たり、ゲームして覚えたからなー、使える技は少ない。その実、投げ技は居合の柔術に頼りきっている。蹴り技と言っても連環腿しか知らない。そもそも数が少ない。陸の船と形容されるほど動かない。敵の防御の上からでもダメージを通す大砲に例えられるその威力、それにはしっかりとした土台が必要なのだ。蹴り技の代わりに歩法が武器となる。かんたんに説明すると、

 

「ガアァァァァァ!」

 

雄叫びを上げて、乱打を放ち突撃してくる。それを腕を回す動きで体の外側へと弾いていく。ゆっくり前に進み、

 

「グガ?!」

 

ここで梱鎖歩、相手の足に添えるように当て、体の内側から外側に押す。肘で胸部を攻撃し………

 

「ガァ?」

 

やっぱり見失ったか、本来はここから、鼻やら金的やら急所を攻撃するのだが、体をホールド、そのままジャーマンスープレックス、俺には冒涜があるのでしめ技やらフィニッシュホールドやらが絶大な威力になる。話を戻すと八極拳は半歩拳法とも呼ばれる。だが、相手との距離数センチで限界まで踏み込めば、一歩で相手の背後や側面がとれる。意識外からの攻撃はダメージが大きくなる。現にオーガの意識は無いため、吸収がすぐ終わった(関係ないか)。さて、ステータスは、っと、

 

名前 北川 龍登

種族 #%5*;¥

 

パーソナルスキル 真理ノ瞳 万能結界 冒涜

 

スキル 芸術10 指導8 鑑定5 武芸4 隠密1 雷撃魔法5 火魔法5 水魔法2 土魔法3 錬金術ー 人形作成10 義体・義肢作成10 頑丈5 剛力2 体力自動回復3 魔力自動回復2

 

耐性 炎熱無効 低温耐性7 雷撃・突風耐性6 衝撃耐性7 闇魔法耐性5 聖光魔法攻撃耐性6 精神攻撃耐性6 毒耐性2 麻痺耐性2 衰弱耐性4

 

称号 爆死 稀代の人形師 害虫ハンター

 

剣術7 体術8 棒術3 格闘術4 斧2

 

格闘術が少し上がったか、それとオーガからの剛力、腕力を強化するスキルだ。頑丈も同系で防御を強化する。周りを見ればオーガと一対一で戦っているのが目に入る。邪魔されたり逃げられたりしないように一定の範囲に結界をはってある。藤白はきつそうだな、相手のオーガも大分ボロボロだが、藤白の消耗が激しい。あと何回武器を振れるか、最初は良かったが、後半空振りが目立ったからな、芦原さんはそこらへんは大丈夫そうだが、どうも筋肉に阻まれて、斬撃が通らない。浅い傷をたくさん付けているが、決定打に欠けるようで長期戦になりそうだ。………そう思っていると、

「じっと、せんかい!アース!」

その直後オーガの足元の地面が窪む。体制が崩れて倒れた所へ頭部に刀を突き立てる。

「またか、一番になかなかなれそうにないなー」

そんな事を言いながらこっちに来る芦原さん、それは無理、クロシェットは一瞬だったし、向日葵やクロエも一撃で敵に風穴を開けている。アリスは相手の動きを封じて止めを刺している。俺はアリスより少し早い程度、刀を使えば早くなると思うが、クロシェットに勝つのは無理、アナスタシアは………もう片付いてるな、

「制御が難しい。」

アナスタシアが使ったのは魔法だ。昨日聖光魔法を進化させておいたのだ。その名も星輝魔法、

 

アナスタシア オートマタ

機構精霊 雪解けのエーデルワイス

パーソナルスキル 救恤 奇跡ノ使徒

スキル 星輝魔法5 精霊魔法10 自動修復3 読心7 家事8 扇7

耐性 毒・酸無効

称号 生きた人形 良妻賢母? 舞姫

 

………読心レベル上がってる。精霊魔法は進化先がないので据え置きなのだが、舞姫ってなんぞ?

 

《一定時間舞い続けた女性に送られる称号です。広域に影響を与える魔法や儀式を強化します》

 

一定時間とは?

 

《24時間以上です》

 

うん、無理、同じ動きをサイクルするにしてもキツイわ、飯とか食えないじゃん、おっと、忘れてた、

 

星輝魔法 キュア

     ライト

     フラッシュ

     ヒール

     ディスペル

     サンクチュアリ

     ジャッチ

     バイタルキュア

     ロストリバーサル

     シューティングスター

     レーザー

 

聖属性の魔法は種類が多い、そして魔法なのだが最近代行者に聞いて新たなことがわかった。それは位階の存在だ、なんでも一から五まであるらしく、火魔法や風魔法は第二位階に属し、第三位階は俺が持ってる雷撃魔法、聖光魔法、その上第四位階はクロシェットの雷光魔法と、進化させた星輝魔法だ。オーガを倒すのに使われたのはレーザーだ、オーガの体に複数の小さな穴が空いている。ついでに、バイタルキュア、ロストリバーサル、シューティングスターこの三つの効果は?

 

《バイタルキュアは精神攻撃で受けたダメージを回復し、ロストリバーサルは欠損や失われた機能や感覚を再生し、シューティングスターは聖属性の魔力の塊を落とします。》

 

いや凄いな、雷光魔法は?

 

雷光魔法 ウインド

     ライトニング

     チャージ

     ボルテクス

     コンダクター

 

《ボルテクスは体に電気を纏い、コンダクターは電気の通り道を作る魔法です》

 

ふーん、使い方次第かな、それと魔法系のスキルを進化させるとレベルが半減するが、これはポイントを使った訳では無い。必要になるポイントが倍になるのだ。第一位階の魔法はスキルは不要で、生活魔法、黒魔法、白魔法、光魔法、影魔法、刻印魔法、そして、結界がここに含まれる。ちなみに錬金術や死霊術は第三位階。万能結界も効果は違えど第四位階にある。さて、

 

「そろそろ終わらせろよ、火魔法で焼いたらどうだ?」

ちなみにこの言葉は悪手である。ちゃんと自分で判断する能力を身につけてもらわないと困る。オーガは炎熱耐性がある。ただ耐性なので俺のように効かない訳ではない。要するにオーガが決死の突撃をせざるを得なくなる。こういう危機は経験して覚える方が身に付く。当然後で講義もする。そして言葉に従い火魔法を使う藤白を見ながらどうすればより身に付くか思案する。………ギリギリで助けて講義できっちり絞るか、

 

「…………で、って、こんな時間か、そろそろ帰るか」

「あの……本当に大丈夫なんでしょうか?」

「ああ、ただ戦う分には大丈夫だろう。本格的に強さを身につけるにはまだ全然足りてないけどな。」

地力はほぼ完成しているが、経験、技術、精神面は不安しかない。狡猾、老獪な敵には対処法を仕込めていない。手っ取り早いのは圧倒的な力と技量の差を身に付けてもらうことだが、それこそ十年単位でやらなきゃ無理、芦原さんは応用力、経験は文句無しだが、我流故に、技術には偏りが見られる。精神面は実際窮地に立ってもらわないとわからない。………今の内に済ませとくか?

「よし、藤白、今更だが股割りするぞ、みんな手を貸してくれ、」

一ヶ月は地獄を見るが、柔軟性、可動域が拡がり、怪我をしにくくなる。損は無い、ただ暫く戦ったり出来無くなるが、筋力もつけとかないと、体の柔軟性だけではゴブリンから逃げることもできない。出会った頃はそのくらい地力低かった。

「初めは手伝うから、継続してやれよ。芦原さんもどうです?」

「え、遠慮しとくわ」

「あだだだだだ!」

大体の限界を調べ、引く、次にさっきの限界より少しだけ押す感じになるようにゆっくり押す。一分くらいかけて、無理やりやると筋肉が縮んで更に硬くなる。ゆっくり時間をかけてやるのがコツ、

「い!ったい!痛い!いだだだだ!」

慣れない内はどれだけ少しでも痛い。一人でやる方法も教えておく。

 

宿に戻ると二人共寝てた。例え怪我を回復したとしても衰弱で失った体力まで回復できない。それに夜遅い、丁度いい。

「アナスタシア、ロストリバーサルを使ってみてくれないか?」

ウィルとキリエにかけてどのくらいの効果があるのか検証することにした。昨日の兄妹だ。

「わかった。ロストリバーサル」

首の傷が消えていった。腕の火傷も痛ましいかったものが普通の手に戻っていく。が手首のあたりで止まる。

「………しっぱい、ロストリバーサル」

やっぱり上位の魔法は難しいみたいだな。手首から先の回復が再開される。後は目が覚めた時におかしなところがないかさり気なく聞くか。前に位階について聞いた時に、一般的には第二が普通、第三は国で秘匿される程、第四なんかは英雄だの聖女だのの領域で第五は存在するか否かも不明とされている。と代行者が言ってた。しかし、存在する事は確からしい。冒涜と真理を併用して使ってみた所、第五位階は存在している(冒涜で進化させるスキルを選び、真理で進化先を調べる)。しかし魔法は進化させるごとにレベルが上がりにくくなる。第三で二倍になった物が第四で四倍、第五位階になれば八倍、もしかしたらまだ上がある可能性も否定できない。

 

やっぱり朝は眠いわー、アナスタシアに負担が集中ている事をあらためて認識した日から朝食を交代制にしたのだが、そのサイクルは俺とアナスタシアだけ、残りのメンバーは料理が壊滅的だった。俺なんてスキル無いけど料理できてる。味は普通だけど、あと少しすると料理のスキルが習得できそう。………あまりアナスタシアの負担軽減になっていないのが実情だ。

「主様、どうか私達をお導き下さい」

 

ん?どこの宗教だ?朝っぱらから布教活動か?あっちは選挙カーとかがうるさかったがこっちは宗教関係か、………うんざりしてくる。と、おもむろに塩を取ろうと振り返った時に、手を胸の前で合わせるように組み、祈るような姿勢で膝をついている兄妹が目に入った。…………えー、どゆこと?あれか?決まった時間に祈りを捧げる系のやつですか?聖地の方角に、だとしても共有の調理スペースのさっきまでキャベツの芯(片付けた)が落ちてた床に膝ついてやるかねー。しかも、俺の真後ろ、それはそうと、こんな声だったのか、

「傷の方は問題ないのか?」

「はい!この通り喋れるようになりました。」

「風が当たるだけでも痛かった腕が元通りになりました。」

 

そうか………おっと、同情なんてなんの足しにもならないよな、

「二人はこれからどうする?行く宛がないならうちに来ないか?………家は作ってる最中だが、これからも人数が増えると思うし、食事や洗濯で手が足りないんだ、衣食住は保証するよ。」

こんな事、元の世界で言えば誘拐犯だと思うが、はじめに合った段階で代行者に血縁者、引き取り手を探すように頼んだが、候補は三件、うち二件は経済的に無理、もう一件も似たようなものだ。孤児院も調べたが、この街には無いし、近くの街を見るとかなりギリギリか、名前だけで機能してないか、それにこっちも手が足りてないので、手伝って欲しいのは本音。俺が勝手に決めるのもあれだが、助けた人が不幸になるのは気分がよろしくない。十才に満たない子供なら尚更だ。なのでその三件と近くの孤児院の情報を紙に纏めて渡しておいた。答えは明日で構わない。出来上がった朝食を運んでもらう。勿論俺も運ぶ。食事をしながら色々と考える。安定収入、どんな手があるだろう。経済的な破綻から救う方法の一つとしては物流関係、物と金を回せば、デフレとインフレのバランスがとれる。手段に関しては万能結界と千里眼で、もう一つは、エドガーの娘に作ったような人形を売る。義手や義足を売るのも悪くない。一応それ用の金属も買い込んでいる。後は短期的な方法は腐るほど思い付くが、5年の猶予が縮みそうなのもあるので、そこら辺はよく考える必要がある。今日は街の外に出てちゃんと組み立てられるか、加工した材木をチェックする。それが終わったら藤白のトレーニングだ。


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