この世界、あと5年で文明が滅びます。   作:白紫 黒緑

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私が隠れてるよ。(意味深)ゲス顔、


殲滅(蹂躙)

向日葵と別れてから暫く進んで目的の二十階に着いた。ここには二人いる。まずは話し合い。ダメそうならここからゴルドー子爵を抑えに行く。

「もしもの時は頼むぞ、アリス、クロエ、」

「「はい、」」

ここにはこのビルを覆う結界を維持する為の部屋がある。そこの防衛を任せられているようだ。

「………おっ、こっちにもお客さんか、暇で仕方なかったし、こいつといると気が滅入ってくる。丁度いいし、相手してくれるか。」

「…………」

 

これは………、測れないな。もう少し話すから、抑えてくれませんかねー?アリス?

「おたくはどういう関係でゴルドー子爵の所に?」

「俺?楽に過ごせるって言うから着いてきてるって感じだな。実際楽だし、こういう所に居ればいいだけだし、暇になったら遊びに行けばいいし、」

「………強い奴と戦える。それで十分だ。」

「いや、………お前の相手は疲れるんだよ。今日玄関の今井川に付き合ってもらえよ。」

 

遊び………ねぇ、真理を使い過去の行いを閲覧する。………なるほどね、そういう店から出禁になってるし、強姦の常習犯(ゴルドーが証拠を消している)、元の世界でもやってたみたいだな、心神喪失や責任能力を問えないだので、不起訴になってるが、釈放される事、9回、内面を覗けば愉快犯、酒を飲めば犯行自慢げに語る。列車に轢かれて死んだようだが、4回目の被害者の遺族に突き落とされている。遺族という言葉で気付いたと思うが、4、7、8回目の被害者は暴行の末死亡している。もう一人の無口な方は自殺。元の世界ではいじめの標的にされていたようだ。元の世界に戻せないな。どっちも、力を手にした今何するかわかったもんじゃない。無口な方は隔離してやりたいが…………、

「アリス、クロエ、あっちはいいぞ、静かな方は出来るなら確保、無理そうならいい。出来たらでいいからな無理するなよ。」

もし確保に固執して、アリスやクロエに被害が出ても困る。俺自身がやるならともかくだが、こういう時に制約や枷になる事は言わない方がいい。ただまあ、このフロアを覆う結界は張っておく。この手の奴ら逃げるので、アリスとクロエは通過出来る。勿論俺達も、

「任せたぞ、」

「頑張ります!」

「おまかせください!」

「………本来は侵入者は発見次第殲滅なんだけど、ここを守るのも仕事だし、気楽に楽しもうか。」

「倒して追う………」

軽口を叩きながら長さの違う剣を構えると、横ではゆっくり大盾を構える。アリスは太股辺りにつけてあるホルダーから鋏を引き抜き、クロエは巨大なライフルを作り出す。

 

はじめに動いたのはアリスと二刀流の男、正面から来た男に鞭で牽制、しかしここは通路壁を擦った鈍い動きでは牽制の役割を果たしていない。仕方がないので間合いを取り直して鋏に戻し、攻撃を受け止めて、剣を切断する。

「あ~あ、これ高いんだよ。」

一度の開閉でシュレッターのように細かく切り刻まれ、破片がパラパラと落下する。そう言いながら半歩後ろに下がる。

「これは、マスターがワタクシに、そう!ワタクシの為に作ってくださった鋏です!斬れない物なんて………」

そのマスターがこの場に居れば間違いなく注意するだろう。相手が半歩しか下がってない事を、

 

ガキィ、

 

「うわっ!硬っ、」

「ちょっ!何するんですの!」

鋏を持っている方の手首に隠し持っていたもう一本の剣で攻撃するが、アリスは特にアダマンタイトがを多く使われてある為、鉄製の剣では傷一つ付かない。むしろ剣が刃こぼれした。しかし、傷が無いか手首を凝視するアリス、敵の目の前でする行動ではない。その隙にアリスの脇を抜けて、刃こぼれした方の反対の刃を使い、

「こっちはどうだ!」

 

ジッ!

 

クロエに接近し、横薙に一閃。掠った手応えはあったが、それだけだ。クロエは後ろに飛んだが、その後そのままの姿勢でぴくりとも動かない。ただ目の下に手を当てて………

 

「おい、」

 

その一言、たった一言であたりの空気が一変した。アリスは恐る恐る後ろの声の主を見る。さっきの声は低い声だったが、男性のものではない。表情は見えない、と言うか見れない。それだけの威圧感を纏っていた。何があったのか、それはさっきの一閃が目の下、つまり頬を掠めたのだ。

 

「テェメェ何したかわかってるか?」

 

誰も動けなかった時間は唐突に終わりを告げる。クロエの手が男の頭を掴む。その激痛から武器を捨て、クロエの手を外しに掛かるが、ビクともしない。ただこれはあり得ないことだ。クロエは、遠距離攻撃主体に作られている為、人に比べれば力は強いが、相手が相当非力でない限りは全力でやれば外れる。

「死ね、このクズ野郎!」

 

ベキッ!パキギシッ!グチュ、ビチャ、

 

聞いたこともない音がしたが、恐らくは頭蓋骨が砕ける音だったのだろう。軋むという過程を無視し、一瞬で握り潰され、ゴミを捨てるように軽々と後方に捨てられる。内からの圧力で飛び出た床に落ちた眼球を足で踏み潰し、盾を貫かんばかりの眼光で睨みつける。

 

「次はお前だ。死ぬか、大人しく四肢を引き千切られるか選べ、」

「えっ?!クロエ、それは………」

「あ?」

「な、なんでも無くてよ!お気になさらずどうぞ!はい!」

「死ぬ気も五体を引きちぎられる気もない。」

「じゃあ、死ね」

瞬く間に距離を詰められ拳が振り上げられた。それを間一髪防げたのはこの世界に来てから培って来た経験の賜物だろう。が、途轍もない衝撃で後ろに吹き飛び腕に激痛が走った。状態を確認すると盾は使い物にならない。腕も折れている。しかも盾が拉げて腕も抜けない。一撃でこれだ。

 

「こ、降さ……………」

それを言い切るより早く、背中のブースターで加速し、頭に一撃、死んだ後も乱打を浴びせ、挽肉を作りあげている。あの声の後、一歩も動けないアリスは眺めている事しか出来なかった。

 

………何か物凄く揺れてる。多分下の方。大丈夫か?建物そのものが潰れたらこっちも終わりだぞ?異世界人は歪んだ連中が多い気がする。精神面が、

「しかし、予想に反して熱烈歓迎してくれるみたいだな、」

「敵?」

「まあ、寄せ集めだがな、」

「私、相手するよ、」

「大丈夫か?結構いるぞ」

この先は重役のエントランスホールで天井を三階分抜いている。柱は立っているので強度に問題はない。ただ下で暴れてるのがいるので絶対に潰れないと確約は出来ないが、

「じゃあ任せる、でも、無理はするなよ、」

まあ、初撃はこっちで引き受けるか、足首と手首を回し準備運動、手を床に付いてクラウチングスタートの姿勢で前を見据える。よーい、………ドン!

 

バン!ドン!ガシャン!ボウッ!

 

エントランスの入り口を潜ると同時に魔法が炸裂する。俺の後方に、その後を追うように、行く手を阻むように飛来する魔法を避けながら前に進む。ただすんなり通して貰えないのは確認済み、盾を持った者たちが階の入り口を封鎖している。なので、

 

「ウインドボール」

 

魔法で軽く吹き飛ばし、開いた道を直進する。その後は結界で封鎖する。

 

階が本来ある位置にはテラスが設けられている。普段は息抜きに景色を眺める者や、一服する者の姿があるが、今は侵入者を攻撃する足場となっていた。攻撃が殺到する先には幼い少女がいる。しかし、その攻撃は床に当たることもなく途中で霧散する。扇を持ち、舞いながら、詩を歌うように詠唱を紡ぐ、その舞は美しく、歌う姿は儚げで、気を抜くと魅入られ動きが止まってしまう。実際魔法を放てているのは半分に満たない。断続的に魔法を打つローテーションはすでに崩壊している。

 

聖光魔法 サンクチュアリ

聖魔法以外の効力を減衰、無効化する空間を作り出す魔法だ。救恤により強化された魔法は他の魔法を容易く無効化する。そして舞は催淫の効果上昇と範囲の拡張に使われている。儀式に関係するスキル舞、北川とクロエが図書館に行っていた日。アナスタシアは丸ごと一日、24時間舞い続けた。彼女には時間が無かった。食事の準備、買い出し、洗濯、と洗濯物の防衛。家事全般をこなしながらスキルの強化や練習に割ける時間はあまり無い。その為の舞の練習だった。そんな時にある称号を取得した。その名は舞姫、魔法の効果をより広域に発揮する能力を持ち、その効果は普段から発動しているが、舞う事でその効果を更に高める。いや、高まっていく。

「呑まれるぞ!」

「早くなんとかしろ!」

範囲はどんどん広がっていき、テラスを呑み込むのも時間の問題だった。盾を持った者たちが空間に飛び込み、抑えに掛かるがアナスタシアの舞は止まらない。鮮やかに避ける。時より光を放つ魔法ライト、一瞬閃光を放つフラッシュを使い撹乱、そしてフロアを覆い尽くした。

 

「我らが敵を討ち滅ぼし給え、天罰【ヘブンズシャジメント】」

 

サンクチュアリ内にいた者が倒れる。精神攻撃の一種なので死んではいない。

 

パァァァン!!

 

「すいません遅れました。……ご主人殿は?」

向日葵が追い着いたようで入り口の横の壁を撃ち抜いて何事も無かったかのように話し掛けてきた。

「………この先、」

「わかった。じゃあ早く……」

 

パリィン!

 

「私達を忘れて貰っては困りますの!」

ガラスを突き破ってアリスが突入、後ろに翼を展開しているクロエが見える。

「見えた、薄紫………キリツ」

「ちょ!人の下着の色を晒さないで貰えます!」

「クロエは黒ばっかりだもんねー。」

「おいコラ!イジるならアリスだけにしろ!」

「それもおかしいんですけど……、アナスタシアも白ばっかりじゃないんですか?」

「当たり」

そう言ってスカートをたくし上げる。

「見せなくてもいいんじゃあ、………私は今日緑です、」

「まさか、自分から言うとはな………揃ったことですし、行きましょうか。」

クロエは、荒っぽい口調を元に戻すと先を促す。




………下品ですいません。

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