「………まだ変な感じがするわ」
「…………あの、朝起きたら歯が生えてたんですけど、」
…………ホントだ、生えてる。なんで?
《健康体の作用です》
そんな感じで朝からとんでもないカミングアウト。耐性の枠に入ってるスキルだが、イマイチ効果がわからなかった。そんな訳で真理。
健康体 内約
状態異状の回復を早め、健康状態を維持する。
効果がよくわからないので、後半の文に真理。
風邪や病気を防ぎ、体の損傷、欠損を再生する。
……………これだわ、名前完全に間違ってるだろ、どの程度かわからないがこれあるならもう少しハードに鍛えても大丈夫だな。うん、
「あの、なんだか嫌な予感が…………」
「気のせいだ、それよりみんなは今日どうする?」
「私はいつも通りご主人殿に付いていきます。」
「ワタクシも付いていきます。」
「市場行く…………」
「少し本を見てきてもよろしいですか?」
マスター呼び組は行きたい所があるようだ。
「ああ、構わないぞ、藤白、芦原さんは?」
「特にないな、」
「少しギルドで依頼を受けてきてもいいですか?」
「許可なんていらんが、注意はしろよ、」
一応見守るが、基本手は出さないつもりだ。………しっかし、近接ばっかりだな、向日葵と芦原さんは言うまでもない。アリスは辛うじて中距離間接だろうか?俺?俺は近接と超遠距離特殊だと思う。見える範囲なら何でもありだし。
「少し気になる討伐依頼があったからそれをやろうかと思って、」
内容はでかい豚の討伐、でかいの単位はけた違いだが、今回の依頼内容は討伐と肉の納品で終わる。皮は食えない程分厚くなっているのでギルドで買い取り、鞄や靴、なんかを作る店に買われるのだが、それを幾分かこちらで貰おうと思う。勿論話も付けてある。では何故、今回声を掛けたかというと、
「今回まあ、頭数を揃えたくてな、」
最低でも4人で受けるそうだ、何でもレイドとか言うのを結成するそうで、俺の頭の中ではお一人様一パックの玉子を買いたいから付いてきてくらいの感じ、昨日でた依頼を受けて、最速で仕留めに行く。距離もそんなに遠くない。
省略、
そんな訳で、冒涜でやりましたが、何か?隔離して持って帰ってきて、現在は解体待ち、この大きさならギルドでも解体出来るそうだ。
「…………いろいろ気になるが随分早いな、収納持ちだからか?」
収納とはスキルの事だ、この依頼には、運び手も募集していたので、これも俺が受けた。別で報酬もでるので現金の方も貯まる。推奨項目には、収納、格納庫、空間魔法4以上、である。代行者曰く、
《収納はスペースの容量によって決まります。スキル保有者によって違いが大きいのが特徴です。格納庫は30の項目内に、一定の大きさ以下の物を最大15個入れて置くことが出来ます。項目を取り去れば大きなものも入れられますが、30以上の種類の項目は作れません。こちらはスキル保有者による変化がありません。最後は魔力を消費して収納を作る方法です。こちらは消費魔力、術者の技量に比例します。》
とのこと、いまいち格納庫はよくわからないが、回復に使うポーションなんかを多く保存でき、すぐ出せるので戦闘向きらしい。行商人にもこのスキルを持つものは多いそうだ。隔離は収納に近いようなので収納持ちと言うことでこの依頼を受けた。
「まあね、他にもあるけど、」
こう言うのは否定せず含みを持たせておく、しつこく聞く空気読めない奴は、無言で通す。相手するだけ時間の無駄なので、
「そうか、」
「そんじゃあ、俺はこれで、」
今度はドラゴンの解体現場に向かう。
「………で、いくらだ、」
部屋の中に転がる死屍累々、………まあ、生きてるが、
「お、おい!………こんなことをして」
ガンッ!
座っていた椅子を後方に蹴り飛ばす。
「ひぃぃ!」
「聞こえねぇ、…………いくらかって聞いてんだ、」
「それは、あの個体は若いもので、……」
「違う、素材の価値の話じゃない。…………テェメェの命はいくらだって聞いてんだ、」
まあ、こうなった理由を知るには少し時間を遡る。
ー五分前
俺は案内された部屋に通ると、商会と同じように護衛付きの部屋に来たのだが、全てが不快だった。その一、
「実はドラゴンの解体費用なのですが、素材の買い手が見つからず、あまり埋め合わせができていないのですよー、」
下卑た笑みを浮かべながら、ねっちこいしゃべり方をする小男、人を馬鹿にするのも大概にしろ、売れてない?売ってないの間違いだろ、裏で売約を進めて売る時期を遅らせているだけ、今は売れてないだけで買い手はしっかりついている。要は俺に借金をさせて、素材を安く買い叩き、その上でさらに金を取ろうと言う寸法、不快そのニ、
カッ、カッ、カッ、
護衛の貧乏揺すりの類いと、周りからの不快な態度と視線、視線もそうだが話してる最中に咳だの、鼻を啜る音だの、カッ、カッ、カッ、うるさい。腕もよくないのが窺い知れるほど態度も悪く、集中力もない。フラフラフラ目障りだ、おまけに話もどんどんアホな方に転がしていくし、最後決め手になったのは、これ、
「………しかし、お支払いが出来ないとなると埋め合わせが、そうです。あなたの傍にいつもいらっしゃる………」
最後まで言わせるつもりはなかった。鞘付きのフルスイングで鼻っ柱をへし折る。攻撃を許している時点で護衛の無能も露呈したところで後ろからの短剣取り出すハゲ、もたれ掛かるように貼山靠(八極拳と言えばこれ)で攻撃前に吹き飛ばす。次の敵の胸部に肘を叩き込み黙らせる。横から殴りに来た奴を避けて、鳳凰双展翔(避けて相手の背中に貼山靠)中途半端な距離の奴には寸勁(触れた相手に運動エネルギーで攻撃する技、発勁法)、最後はシンプルに川掌(腰を落として体を横に向けながら相手を掌で攻撃する基本の技)、存在値もちょっぴり拝借。そして、現在に至る。
「………あと、先に言っとくが、もし後からちょっかい出そうってのは止めとけ、俺の攻撃に距離は関係ない。」
いくら従うフリをしてもそれはフリだ、顔に出てるぞ、大袈裟に怯えてはいるが、憎悪や嫌悪が見えるってどんだけの屑だよ、こういうネズミは斬った方が早いと思うが、裏切りに注意すれば利用価値が高い。仲間ではなく利用だ。なので、裏切らないよう釘を刺しておく。物理的に、
ゴッ、
「痛っ!ああっ!」
鞘を床に押し付ける先を隔離で繋いでこいつの靴の先に出し、グリグリする。障壁で窓を作り隔離空間を概して繋げ直接攻撃出来る。出す場所次第で全方位から攻撃出来るし、相手の隙を作る駆け引きでは最高の切り札だ。正直受け取りたくないが、初めが肝心だ、緩い対応で後々背中を刺されたくないし、なので金額とかは確認せず、袋を受け取りさっさと出る。勿論出た後も千里眼で監視する。怪しい行動があれば、一回目は警告で声だけをとばす。二回目は行動次第だ、ただこの街には似たようなのが結構いるので拠点を構えるには向かないだろう。信用できない後ろ盾はない方がマシ、………あーあ、久しぶりになんか甘いもん食いたい。けど高いんだよなー、
さて、そんな訳で錬金術に頼ることにした。ただ作れるものと作れないものがあるようだ。クリエイターの錬金術は原材料を作るだけ、加工はアルケミストが得意な分野のようだ、塩、胡椒の実、は可能だが、砂糖、味噌、醤油、味醂なんかはできない。ルールがよくわからんが、何となく加工品は無理と言うことだろう。基本は、
「と言うわけでよろしく代行者、」
そんな訳で砂糖を直接作る魔方陣と、原材料のテンサイを作る魔方陣を作ってもらう。ちなみにテンサイは砂糖の原料となる株のような見た目の二年生の植物のことだ。砂糖と言うとサトウキビをイメージする人もいると思うが、国内の約20%程で、約80%がテンサイを原料とした砂糖である。北海道なんかで育てられている。さてと、地面にお絵かきタイム、
ー20分後
魔力を流すと砂糖とテンサイができた。………テンサイはいいが、地面に直に砂糖はやめてほしいかな、
《隔離で回収すれば砂等の不純物の混入は防げますが?》
そう言うことじゃないんだよねー、気分の問題。使うとき嫌じゃん、ここ地面に着いてたのかなー、とか考えるの、とりあえず回収、……………テンサイどうしよう。売るか?